公開日:2022/02/01
更新日:2022/08/24

ラッカープランとは?社員の賃金を考える手法を解説

ラッカープランとは?社員の賃金を考える手法を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人事制度に関する手法に、ラッカープランというものがあります。ラッカープランは、日本の産業界では賞与、所謂ボーナスの原資計算に用いられる考え方が一般的です。この記事では、ラッカープランを通じて社員の賃金を考えていく手法について解説していきます。

 

01ラッカープランとは

そもそもラッカープランとは、企業が企業活動を通じて創出している付加価値を基準にして、社員の賃金総額を決定する手法のことを指します。つまり、付加価値を大きく出している企業または部署などは、大きな賃金を得ることに繋がっていくということです。 この考え方は、米国の経営コンサルタントのアレン・W・ラッカーによって提唱されたものです。 ラッカープランは、企業の付加価値と人件費総額との間に発生する相関関係に着目しています。つまり、賃金総額を論理的に管理する考え方で、付加価値に標準労働分配率を掛け合わせて人件費総額を算出した後、すでに支払った賃金総額を差し引いた残額を、一時金として社員に還元・分配するような流れになっています。

ラッカープランの計算式

それでは、そのラッカープランの計算式はどのようなものでしょうか。そもそものラッカープランの成り立ちは、ラッカー自身がコンサルティングをする中で、アメリカの製造工業統計のデータを分析し、企業の創出する付加価値と人件費総額との間に高い相関関係があることを発見したことが始まりとされています。 企業から創出される付加価値全体のうち、人件費として社員に還元される割合を「労働分配率」と呼び、【労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100】で計算します。そしてラッカーは、この労働分配率が40%以下であるのが優良企業であり、30%以下が超優良企業の条件であると定義しています。これを賞与に合わせて考えると【賞与支給額=付加価値×労働分配率-毎月支払った賃金総額】となります。

 

02ラッカープランの目的

ラッカープランを導入する目的は、企業が生み出す付加価値が労働者と使用者の努力と協力によって生み出した会社の価値であることを前提に、企業業績の基準を明確に示すことです。仮に売上高が増えなくても、コスト削減によって付加価値を増やすことに繋がれば賃金総額や賞与額は大きく算出されます。 これは、社員の生産効率の向上を目指すモチベーションにも繋がりやすくなる良い事例です。つまり、ラッカープランは、社員のモチベーションを引き上げるという目的も持っているのです。

成果主義人事への連動

また、ラッカープランは成果主義人事への連動性も高いことで知られています。成果主義人事とは、社員の報酬を出した成果に連動させたり、昇進や昇給の基準を年齢や社歴ではなく、成果に紐づけていくことで会社全体の成果を大きくしようと狙うものです。成果が大きくなればなるほど、社員の成果主義人事への納得度もモチベーションも上がる傾向にあります。

成果報酬制への移行

そしてラッカープランを導入した次の段階といえるのが、成果報酬制への移行です。 先述した通り、社員のモチベーションを高める効果を発揮します。役職だけではなく、自身の出した成果、つまり付加価値に応じて給与が支払われる仕組みは非常に明瞭で分かりやすいものです。 しっかりと成果を出した社員には成果に見合った報酬を与え、成果を出せていない社員には努力を評価しつつも報酬としての差をつけることで、頑張るほど自身に良い結果が返ってくることを実感してもらい、モチベーション向上の効果が期待できます。

 

03労働分配率の考え方

ラッカープランの肝ともいえる労働分配率の考え方は非常にシンプルです。先述した通り、労働分配率は会社が創出した付加価値全体のうち、人件費として社員に還元されている割合のことを言います。計算式としては【労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100】で求められます。ラッカーは、この労働分配率が40%以下になっている状態を優良企業、30%以下を超優良企業と定義付けしています。

部署ごとに損益を算出することが大切

ラッカープランにおいては、この労働分配率を部署ごとに算出し、損益を明確にしていくことが大切です。部署ごとの損益を算出することによって、自社の強みや稼ぎ頭がどの部署なのかを明確に示すことが可能となり、社員に現状を伝えるのにまたとないデータが完成します。 ラッカープランではこの部署ごとの損益、つまり創出された付加価値と賃金との相関関係に着目して、過去の労働分配率に基づいた「標準労働分配率」を部署ごとに定めることを勧めています。その標準労働分配率に当年度の付加価値額を乗じて、賃金総額を算出します。部署ごとに算出しておくとどこから改善のために手を入れるべきかが明確に分かるようになります。

 

04ラッカープラン導入のメリット

ラッカープラン導入のメリットは一体どのようなものがあるのでしょうか。それは大きく分けて2点です。企業経営の中でも重要な視点となっているため、詳しく解説します。

賃金の過払いの回避

まずメリットとして挙げられるのが、賃金過払いの回避という観点です。ラッカープランは、各部署の付加価値から賃金総額の目安を明示します。つまり、その部署に対してどのくらいの人件費予算が適切なのかを数字上で明確に示せるメリットがあるのです。 賃金を支払いすぎている部署の場合は、人員を削減した上で同じ業務をこなせる工夫をするるか、またはその人件費が適切となるように事業を拡大していかなければなりません。このように、経営視点で物事を捉えることが出来るようになっていくという点でメリットは大きいといえるでしょう。

コスト削減意識の向上

そして2つ目のメリットとして挙げられるのが、コスト削減意識の向上です。ラッカープランによって自部署の状態が見える化するため、社員一人ひとりが売上向上意欲だけではなく、付加価値向上に着目することができる点が大きなメリットといえます。 付加価値を向上していくことに目が向くことで、会社の雰囲気は引き締まったものになり、無駄なコストは大きく削減され、付加価値を創出できるような組織が作れるでしょう。

 

05ラッカープラン導入のデメリット

反対にラッカープランを導入することで考えられるデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。大きく分けると2つのデメリットが考えられます。

標準人件費率設定時の同意が困難

デメリットの1つ目として挙げられるのが、標準人件費率設定の際に、労働者側の同意を取ることが非常に困難であることです。なぜなら、標準人件費率を設定することで、計算上の賃金に上限が存在することがある程度決まってしまうためです。 また、社員によっては賃金過払い状態となることも明確に示されるリスクを感じてしまうでしょう。労働者、使用者の継続的な対話が望まれる点であり、相互の納得を得るまで時間を要する点ということがデメリットです。

コストを使う新たな取り組みへの意欲減退

コストを削減することで価値を創出することに慣れすぎ、会社側もそれを重視しすぎると、コストが必要となる新規事業などの取り組みに対して、消極的な反応を示す社員が増えるデメリットも挙げられます。コストがかかることを恐れ、売上の現状維持を目指すようになり、企業の成長自体が止まってしまう可能性すらあるのです。 ラッカープラン導入時には、この点にも十分に留意し、新規事業のバランスも考えた事業計画を立てた上で導入に踏み切ることをおすすめします。

 

06スキャロン・プランとの違い

ラッカープランに対して、スキャロン・プランという考え方があります。この2つの考え方は、企業の人件費を考えていく上で、対峙するものとして有名です。 主な違いは賃金総額を決定する基準が異なることです。この違いについて詳しく解説します。

スキャロン・プランとは

スキャロン・プランとは、企業の売上高の変動に応じて社員の賃金総額を決定する賃金総額管理の手法の一つとして、アメリカのマサチューセッツ工科大学講師であったジェセフ・スキャロンによって提唱された考え方です。 スキャロン・プランは、売上高に対する人件費の比率を一定にするという考え方で、賃金総額が売上高に応じて上下することになります。そして算出された賃金総額と、実際に支払った賃金との差額を賞与などとして支払うことで、売り上げに応じて合理的に人件費を管理することができる特徴があります。

ラッカープランとの違い

ラッカープランとの大きな違いは、賃金総額を決定する基準です。スキャロン・プランは売上高から賃金総額を算出し、ラッカープランは創出される付加価値の変動に応じてそれぞれ社員の賃金総額を算出します。 一見するとスキャロン・プランは売上高という分かりやすい指標を用いるので、社員のモチベーション向上やその管理に繋げやすいといえます。一方でラッカープランにおける創出される付加価値は、売上よりも算出が難しくなりますが、経費削減までの意識を社員に持たせることができます。そのため、ラッカープランの効果は企業の利益向上へ直結しているといえます。。一般的には、ラッカープランのほうが優れていると評価されることが多いです。


 

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07まとめ

ラッカープランは、スキャロン・プランとあわせて、社員の賃金総額を管理する方法として知られています。前者は売上高、後者は創出する付加価値をもとにして賃金総額を決定します。 一般的にはラッカープランの方が企業に利益を出していく手法として優れているとされ、導入の推奨がされています。しかし、現在はまだ成果配分という明確な制度として利用する企業は少ないのが現状です。

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