インセンティブのメリットは?企業に導入する時のポイントを紹介!

インセンティブ制度とは、ビジネスシーンで成果を上げた社員に対して支給される報奨金を意味します。この記事では、インセンティブ制度の特徴や、自社に導入する際のメリットやデメリット、注意すべきポイントなどをお伝えします。
- 01.インセンティブとは
- 02.インセンティブ制度を積極的に取り入れている業種
- 03.インセンティブのメリット
- 04.インセンティブのデメリット
- 05.インセンティブ制度を導入するときのポイント
- 06.制度として導入におすすめなインセンティブツール
- 07.金銭以外のインセンティブ
- 08.インセンティブを導入している企業例
- 09.まとめ
01インセンティブとは
インセンティブとは、英語で「insentive」と表記され、「動機」「誘因」「刺激」といった意味を持ちます。ビジネスシーンで使われることが多く、似たような意味を持つ同義語も多いため、次で解説する内容を押さえて、適切な意味を押さえていきましょう。
ビジネスにおけるインセンティブとは
ビジネスシーンで使われるインセンティブとは、目標達成など成果を上げた社員に対して支給される「報奨金」を指します。ほかにもインセンティブは現金支給に限らず、昇給や昇進、昇格、褒賞旅行などのかたちで与えられているケースがあります。基本的には社員のモチベーションを上げる目的で設けられるものが多く、新しい顧客に対して不動産の売買を促す不動産業界や商材が高単価な医療機器業界、新規開拓が求められる広告業界・保険業界などの業界で多い傾向にあります。
インセンティブが普及した背景
インセンティブという概念は、経済やビジネスにおいて古くから存在しています。報酬を与えることで人々の動機付けを高める考え方は、古代からの人間の行動心理に根差しています。現代のビジネスにおいてより形式化されたインセンティブ制度が普及したのは、20世紀初頭から中盤にかけてです。この時代における産業の成長と労働市場の変化がインセンティブの導入を促したとされています。ただし、時代とともに社会や経済の状況が変化するため、インセンティブの形態や重要性も変わってきています。
歩合制とインセンティブの違い
インセンティブは成果によって給与が変動するという意味から、「歩合制」というワードを思い浮かべる方がいるかもしれません。求人情報をチェックするとインセンティブと併せて、歩合制と記載されているケースが多いものです。 「歩合制」も「インセンティブ制度」も、成果に応じて支給額が変わるという意味は同じです。ただし、どちらも固定給にプラスして支払われる場合があります。この場合、固定給は毎月安定した収入として得られることになりますので、成績が振るわなくても収入がゼロになることはありません。 生活を安定させたい場合は、固定給が保障されている給与体系、より自由に働きたい場合は歩合制もしくはインセンティブ制度のみの給与体系を選ぶことをおすすめします。
手当との違い
手当とは、会社から支給される「基本給」とは別に支払われるものを指します。たとえば、「通勤手当」「残業手当」「役職手当」などが該当します。基本的には、労働条件など一定の条件を満たせばもらえるお金です。物によっては、「資格手当」といったように資格などで一定の点数や級を取った場合に、インセンティブのような形で賃金を支給する場合もあります。
賞与・ボーナスの違い
インセンティブは賃金に限らず、昇進や旅行など働くモチベーションを上げるために支給するものですが、国税局では、賞与を次のように定義しています。
- 定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいう。
上記から賞与・ボーナスは基本的に同義であり、お金として支給されるものが該当することがわかります。インセンティブは金銭の支給も該当するので、賞与やボーナスと近い意味で使われる場合もあります。
報酬との違い
報酬とは労働の対価として、支払われるものです。健康保険法第3条5項では、報酬を次のように定義しています。
- 「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。
このことから、インセンティブや賞与・ボーナスなども報酬に含まれます。
02インセンティブ制度を積極的に取り入れている業種
営業活動を積極的に展開している業種では、インセンティブ制度を取り入れていることが多いものです。そのなかでも、とりわけインセンティブ制度を積極的に取り入れている業種を、ここからは紹介していきます。
不動産業界
まず、不動産業界はインセンティブ制度を取り入れていることで有名です。不動産業界は住宅やビルなどの建物など、価格帯の高い商品を扱っており、売上金額に応じたインセンティブが報酬として支払われることが多い業界といわれています。
金融業界
金融業界では、保険、銀行、証券それぞれで、案件の獲得に伴って固定給にプラスしてインセンティブ制度を取り入れている企業が見られます。特に外資系金融の年収は、ベース給とインセンティブ給から成り立っていて、インセンティブ報酬の割合が高いようです。とりわけ外資系投資銀行は、圧倒的な実力主義を取っている企業がほとんどです。
医療機器メーカー
医療機器メーカーでは販売営業でインセンティブ制度を取り入れていることが多いです。こちらも商品の価格が高いので、報酬も高めの傾向となっています。 基本的には会社に出社することはなく直行直帰で、月に数回進捗状況の報告のため出社することが多く、働き方・報酬ともに自由度が高いと言えます。
自動車販売会社
自動車販売会社では、基本的にそれぞれのメーカーごとに新製品や強化商品など売り出したいものが明確です。一定の期間内に対象となっている自動車を販売できると、通常のインセンティブよりも、高い報酬を得られることがあります。
03インセンティブのメリット
実力が伴い、成果を上げなければ報酬が期待できないインセンティブ制度ですが、魅力も少なくありません。インセンティブ制度を取り入れるメリットとして、大きく次の3つが挙げられます。
- ・成果が給与に反映される
- ・仕事へのモチベーションを上げられる
- ・頑張りに対して公平な評価をできる
ここではインセンティブ制度を取り入れるメリットについて詳しく紹介します。
成果が給与に反映される
まずは、インセンティブ制度では成果が正当に評価されるという点がメリットとして挙げられます。入社年次や、役職などに関係なく、個人の実績に応じて報酬を設定することができるので、社内での仕事に対するモチベーションへの刺激にもなります。また、給与に対しての不公平感が減るところもメリットです。
仕事へのモチベーションを上げられる
インセンティブ制度は、従業員のモチベーションにつながるものです。実績に対して目に見える報酬があるということで、頑張った分に対しての対価を感じやすく、従業員にとってモチベーションが上がる仕組みのひとつといえます。 目標達成まであとわずかという時にも、達成後のインセンティブがあるかないかで、最後の追い込みを頑張れるかどうか、違ってくるはずです。一人ひとりのやる気が向上すると、社内の活気へとつながり、結果として会社全体の業績向上に貢献することを期待できます。
頑張りに対して公平な評価をできる
インセンティブは評価制度として、成果を上げた方にはその分の報酬が支払われるので、公平な評価ができるというメリットもあります。やってもやらなくても給与が変わらない会社では、頑張ろうとはなかなか思えないものです。インセンティブ制度は個人の頑張りを適正に評価できるため、従業員も前向きに仕事と向き合えます。
04インセンティブのデメリット
デメリットが多いように思えるインセンティブ制度ですが、デメリットがあることも事実です。具体的には次が挙げられます。
- ・安定した収入を期待できない
- ・ノウハウが共有されない
- ・個人プレイに走りがちになる
ここでは、インセンティブのデメリットを中心に紹介しますので、自社制度を決めるときの参考にしてください。
安定した収入を期待できない
まず、インセンティブには安定した収入を期待できないというデメリットがあります。インセンティブ制度では、個人の対象期間内での実績に応じて給与が変動するため、収入が不安定で、車やマイホームのローン計画も難しくなります。そのため家庭を持っていたり、安定志向が強かったりする従業員は、インセンティブをネガティブに捉えてしまう可能性があります。
ノウハウが共有されない
また、成果を出した一部の社員のみにインセンティブが支給されるとなると、仕事のノウハウをほかの社員と積極的に共有したいという思いが弱まります。社員同士が助け合えなくなるなど、社内の人間関係の悪化も心配な要素です。
個人プレイに走りがちになる
インセンティブ制度によって必要以上に社員同士が競い合う事態になれば、チームで達成しなくてはならないミッションがあった場合、スムーズに遂行するのは難しくなります。チームワークが欠如することで、業績へ悪影響が出てしまうおそれも考慮しなければいけません。
05インセンティブ制度を導入するときのポイント
デメリットを知りつつも、インセンティブ制度を導入したいと考えるのであれば、ポイントを抑えて制度を決めるようにしてください。ここではメリットを最大限に生かしつつ、インセンティブ制度の導入時に大切なポイントを3つ紹介します。
インセンティブの対象者を限定する
まずは、インセンティブの対象者を限定することから考えましょう。誰もがインセンティブ制度を導入する際には、優秀な社員を評価したいと考えるものです。しかし、インセンティブ支給対象者を一部の上位社員のみに絞ってしまうと、「どうせ自分はインセンティブ報酬はもらえないから、ある程度までしか頑張らない」と他の従業員のモチベーションが低下してしまうリスクがあります。 組織には「2:6:2の法則」が存在すると言われていることをご存じでしょうか。組織の構成は、2割がハイパフォーマー、6割がミドルパフォーマー、2割がローパフォーマーに自然と落ち着くという法則です。 この法則では、上位2割はインセンティブがなくてもよく働くということになります。そのため、組織全体のパフォーマンスがアップさせるには、残りの8割のやる気を引き出すべきと考えられます。成果を上げる人を評価し、対価を与えることももちろん重要ですが、成果を上げられていない人に、どのようにしてインセンティブ制度を活かすかという点も重要です。
評価の対象を営業成績だけにしない
評価の対象は、営業成績以外としても問題ありません。たとえば成果達成までのプロセスや、チームの育成への貢献度などがそれにあたります。評価対象の幅が広がることによって、「営業成績で成果を上げられなくとも、自分も評価してもらえるかも」と感じる従業員が増えるかもしれません。 インセンティブ制度を成功させるためには、最終的な成果だけではなく、社員それぞれが努力することで達成可能な目標を設定してみてください。 到達できそうにない目標では、インセンティブがどれほど高額であったとしても社員のやる気は起こりません。個人ではなく、チームを対象としたインセンティブを取り入れることで、チームワークを取れるかもしれません。
金銭以外のインセンティブを取り入れる
金銭的インセンティブには、収入格差や収入が不安定さなどの、デメリットが目立ちます。目の前に報酬をちらつかせることで短期間への成果をあげられる可能性は高まりますが、持続して成果を上げ続けられるとは限りません。かえって、従業員の不安感やモチベーション低下を招く可能性もあります。 また、今の時代は個人の働き方の価値観も多様で、金銭的報酬がモチベーションアップにつながるとも限らないのです。インセンティブ制度を導入する際には、いかに社員のモチベーションをアップできるのかを考えるようにしてください。
06制度として導入におすすめなインセンティブツール
インセンティブツールとは、従業員やチームのモチベーションを向上させるために使われるソフトウェアやプラットフォームのことを指します。これらのツールは、従業員に対してフィードバックや報酬を与える仕組みを提供し、ポジティブな社内文化を醸成することに焦点を当てています。以下に代表的なインセンティブツールを解説していきます。
Unipos
Uniposとは、Unipos株式会社が提供するインセンティブツールです。仲間や同僚を表す「peer」と報酬を表す「bonus」を組み合わせた『ピアボーナス®』を社員同士が互いに贈り合うことができる仕組みを指します。ピアボーナス®は、特定の成果や行動に応じて与えられ、特典や景品と交換することができます。社内のチャット上など、オープンな場所で感謝のやりとりが行われるので、心理的安全性の向上やメンバー間のコミュニケーションの増加、組織風土への良い影響をもたらすことができます。
インセンティブ・ポイント
インセンティブ・ポイントとは、福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」などを展開する株式会社ベネフィット・ワンが提供するインセンティブツールです。「サンクスポイント」と呼ばれるポイントを従業員間で送ることができ、ポイントはアイテムと交換可能できるので、日頃の感謝やプロジェクト成功など、メンバー間の評価をライトに行えることが特徴です。また、インセンティブ・ポイントは、ポイント管理システムの提供から、交換アイテムの仕入・配送、カスタマーサポートまで、ワンストップで行ってくれるので、導入後の運用も容易といえます。
07金銭以外のインセンティブ
前項で解説したようにインセンティブは金銭だけに留まりません。大きくは「評価的インセンティブ」「人的インセンティブ」「理念的インセンティブ」「自己実現的インセンティブ」の4つが挙げられます。次で詳しく解説していくので参考にしてみてください。
評価的インセンティブ
評価的インセンティブとは、年間・月間MVPや新人賞などといった「表彰」や成果に見合った「評価」を指します。「働きに対して賞賛や評価をする」ことを報酬とする考え方です。これにより、社員は明確な目標を持ちやすく、「表彰のために頑張る」といったモチベーションを産むことができます。一方で、得られる効果は一時的なものになりやすく、継続的に実施したり、表彰がモチベーションとなってしまうと受賞して以降に燃え尽きてしまうこともあるので、継続的に実施したり、表彰後のアフターフォローは必要です。
人的インセンティブ
人的インセンティブとは、上司や同僚など周囲の人間のために頑張りたい、成果を出したいと思える環境を作ることで、業務へのやる気や目標達成に向けた取り組みを促進するものです。社内の人間関係を良好にすることで、「会社のために貢献していきたい」といったように社員のモチベーションを向上させる手法です。人間関係について相談しやすかったり、異動希望を出しやすいなど、「風通しの良い」環境にすることがポイントです。
理念的インセンティブ
理念的インセンティブとは、社員が共感できる企業理念や価値観を共有することでやりがいをあげることです。会社のミッションやバリューを浸透させることにより、自分たちのやっている業務や提供しているサービスがどのように社会貢献しているかを客観視することができます。これにより、仕事への意義が明確になり、モチベーションを上げる動機づけになるのです。
自己実現的インセンティブ
自己実現的インセンティブとは、仕事を通じて達成感ややりがいを受けやすい環境にすることで動機づけをおこなうものです。「やりがいある業務」や「自分が実現したいことに対しての周囲のフォロー」、「自分自身のなりたい像をより実現できる環境」などを整備し、実現させることで社員のモチベーションアップにつなげていきます。
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08インセンティブを導入している企業例
インセンティブは金銭に止まらず、さまざまなものがあります。これらは従業員の士気を高めたり、社内のコミュニケーション活性化など、導入の目的によって、インセンティブの形も異なります。ここでは、具体的に導入実施している企業を参考に導入事例を紹介していきます。
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」を提供する株式会社メルカリでは、Uniposを活用して、社内独自のピアボーナス制度『mertip(メルチップ)』を導入しています。メルカリでは、「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」という3つのバリューが存在しますが、これらの行動指針に沿った行動をした社員に対して、気軽に感謝の気持ちを表せるものとして、導入されました。元々、四半期ごとにThanksカードを贈り、感謝を伝え合うAll for One賞の文化がありましたが、mertipの導入により、拠点を超えて、気軽に賞賛し合う文化を醸成することを可能にしています。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
総合人材サービス・パーソルホールディングスのグループ会社でITコンサルティング事業を展開するパーソルプロセス&テクノロジー株式会社では、ダイバーシティや働き方改革への取り組みとして、労働時間の制約に関係なくパフォーマンスを発揮できる組織を作っていくことが求められていました。そこで、時間管理型で働くメンバーの月間平均残業時間である20時間分を、残業ゼロの社員に対して支払うインセンティブ制度を開発・導入しました。これにより、生産性を高め、限られた時間の中でパフォーマンスを発揮できています。
09まとめ
この記事では、インセンティブ制度を導入するメリットとデメリット、またおすすめの導入方法について紹介しました。インセンティブ制度は、社員のモチベーションアップや会社の業績達成のために、ぜひ活用していただきたい制度です。 ただし、気を付けなくてはいけないポイントなどもあります。インセンティブ制度の導入を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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組織マネジメントや目標設計、人事評価についてのウェビナーアーカイブです。20年以上、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、書籍、人事塾などによって、企業の人事を支援している、株式会社壺中天の代表である坪谷氏をお招きし、働きがいと成果を同時に実現する人材マネジメントについてお話しを伺います。
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登壇者:坪谷 邦生 様株式会社壺中天 代表取締役
立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。