公開日:2022/10/07
更新日:2023/02/02

職務等級制度とは?人事評価に活用するメリットと導入手順や事例を解説

職務等級制度とは?人事評価に活用するメリットと導入手順や事例を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

働き方改革によって同一労働同一賃金という考え方が広がったことで、「職務等級制度」を行う企業も増えてきています。この職務等級制度とはどういった人事評価の方法なのか、また活用するメリットや導入手順、事例について解説します。

 

01職務等級制度とは?

職務等級制度とは、従業員の担当する仕事・職務・業務によって等級を分けることで人事評価をする制度のことです。

これまでの日本の企業の終身雇用や年功序列という考え方とは異なり、実際に従業員が行う仕事・職務・業務の成果を評価していきます。そのため、成果主義的経営となっていきます。また、同一労働同一賃金となり、正社員もパートもそれぞれに職務に応じた賃金が支払われるものです。

職務等級制度の特徴

職務等級制度は、学歴や勤続年数、能力といった属人的要素では判断しないことが大きな特徴と言えます。職務等級制度は、難易度や責任レベルによって予め職務別の等級が決まっており、その遂行状況によって最終評価がなされます。

いかに会社にとって重要な職務を担うか、そしてその業務に対していかに成果を上げるかが評価のポイントとなるでしょう。同一労働同一賃金が実現しやすい制度である一方、職務以外の要素があまり考慮されないので、職務を変える以外で大きく賃金を変える方法がないのが特徴です。

 

02職務等級制度のメリット

職務等級制度のメリットは、専門性のある人材を育成することができることにあります。また、それぞれの職務内容が明確になるため、それに対する勤務時間も明確になっていくでしょう。

特にコロナ禍以降、テレワークで社員のマネジメントが難しくなっています。しかし、職務等級制度を導入することで、成果を中心に見ることで評価でき、プロセスの把握がしづらい場合にも公正な評価が行いやすいメリットがあります。

 

03職務等級制度のデメリット

職務等級制度にはデメリットもあります。年功序列での評価とは異なり、職務で給与ベースが決まるため必ず賃金が上がることはなくなっていきます。従業員からすると、長年勤めているだけでは賃金が上がらないのがデメリットです。

そして、職務等級制度では職務内容がベースにあるため、、職務が変われば昇給することもあれば減給となる場合もあります。勤続年数によるメリットも減り、社員の定着率が下がる可能性があるでしょう。

さらに、従業員を職務で評価する職務記述書の管理を人事が行わなければなりません。業務が煩雑化するデメリットが生じます。

 

04等級制度の種類

「職務」以外にも「職能」「役割」で評価する制度があります。他の等級制度についても知っておくのがおすすめです。

「等級制度」には、以下の3つの等級制度があります。 それぞれ、評価基準が異なるため、自社に合ったもの、従業員構成や業務に合った評価制度を選ぶことが大切です。

  • 1.仕事の成果「職務」で評価するもの
  • 2.個人の「能力(職能)」で評価するもの
  • ・3.個人の「役割」で評価するもの

職能資格制度と職務等級制度の違い

職能資格制度では、個人の能力を等級を作って評価していきます。それぞれの能力が評価されるため、企業に長く勤務することで評価も高くなっていくことが多いのが特徴です。職務の成果で評価される職務等級制度とはその点が異なるでしょう。

また、職能等級制度は、職能を定量的に、正確に数値などで測ることが難しいため、等級と業績や貢献度がかけ離れる可能性があることが注意点です。

役割等級制度と職務等級制度の違い

役割等級制度は、責任を負うべき業務の内容や役割で等級を作って評価する制度です。役割等級制度と職務等級制度の違いですが、職務内容だけではなく、個人の能力面も考慮される点が挙げられます。職務等級制度では職務にこだわる従業員が多くなり、それ以外の仕事をしなくなるケースが発生しますが、役割等級制度はそのデメリットをカバーできる仕組みとなっています。

個人の役割が大きいベンチャー企業やスタートアップ企業で採用されやすい評価制度と言えるでしょう。

 

05職務等級制度の導入手順

次に職務等級制度の導入手順について、6つの手順にわけて解説します。

  • 1.等級制度導入の目的を設定し方針を決める
  • 2.職務分析を行って職務記述書作り
  • 3.等級の数を決める
  • 4.各等級の定義を決める
  • 5.部門や職種毎に各等級に求める仕事内容を決める
  • 6.職務評価を行なう

1.等級制度導入の目的を設定し方針を決める

まず、職務等級制度を導入する際には、等級制度導入の目的と方針を決める必要があります。自社がどのような成果を上げるのか、またどんな職務を行う人材が必要なのかを等級制度で見直す必要があるでしょう。企業が必要な職務を等級で割り当てていきます。

2.職務分析を行って職務記述書作り

そのために最初に、企業全体の業務・職務を種類ごとに細かく分けて、業務・職務一つ一つに求められるスキルや知識・難易度を職務記述書にまとめる必要があります。

職務を分けるには、4つの方法があります。

  • ・現場に出向いて業務を観察して決める「観察法」
  • ・従業員と面接して業務内容を直接聞く「面接法」
  • ・アンケートで業務について書いてもらって分析する「記述法」
  • ・従業員の業務を自ら行うことで分析する「体験法」

以上の4つの方法を活用して、やりやすい方法で分けていくといいでしょう。

3.等級の数を決める

職務を分析したら、職務等級制度の等級を作る必要があります。等級数をまず決めることが大切です。

一般社員の場合には4段階、5段階に分けることが多く、最も少ない場合は一般社員は一段階だけの場合もあったり、多い場合は11段階に細かく分けたりする場合があります。役職などとの兼ね合いも考えながら決めるといいでしょう。

4.各等級の定義を決める

次に各等級での行うべき職務についてきちんと定義を決めます。これだけの職務を行わなければならないという目標となるべき職務を明文化することが大切です。

また、定義の段階では、部門や職種に関わらず適用可能な内容にしておくのがポイントです。

5.部門や職種毎に各等級に求める仕事内容を決める

さらに細分化して部門や職種によって等級を分けていきます。目標とすべき具体的な仕事内容、職務を決めていきます。 「これだけの成果を上げればいいのだ」という従業員が誰でもわかりやすい具体的な仕事内容、職務を決めておくことが大切です。

6.職務評価を行なう

そして、職務記述書が完成した所で実際に導入し、従業員一人一人の職務の遂行状況を職務記述書で確認していくことになります。 職務ができていないと評価された場合は、その原因や課題を解決して、次にまた挑戦できるようにしていくことが大切です。職務を遂行していくことが目的の職務記述書となるため、従業員の評価を繰り返しながら、職務記述書の等級が達成されていくことを見ていく必要があります。

 

06職務等級制度を導入している事例:カゴメ株式会社

ここで、実際に職務等級制度を導入している企業事例についてもご紹介します。カゴメ株式会社は、グローバル人事制度を導入している企業です。

グローバル人事制度では、世界の従業員が自分に合うキャリアを選択し、世界中どこでどんな仕事をしても公平な基準で評価される制度です。まさに、職務によって公平に評価しようとするグローバルな職務等級制度と言えます。 カゴメ株式会社の場合には、まず海外の子会社からこの職務等級制度を導入して、日本にも導入しやすくしています。最初に社長と役員から導入し、次に管理職に導入したのも特徴です。 導入が難しい時もありましたが、直接従業員に説明を何度も行い、従業員の指摘による修正を行いながら進めています。また、一度等級が下がっても昇格、昇給するチャンスがあることも大事に紹介しています。そのことによって、職務等級制度の導入に成功している企業と言えます。

▶︎参考:https://www.kagome.co.jp/company/csr/employee/employment/

 

07職務等級制度の問題点と課題

職務等級制度の導入に成功した企業でも、課題がいくつかあります。これまでの人事評価制度から職務等級制度に変わることで、従業員の仕事の仕方も変化します。 また、職務による等級で評価されることで、評価と報酬に従業員が納得いかないということも導入時に起きるでしょう。それらの問題点と課題について詳しく見ていきます。

組織運営や職務遂行が硬直化しやすい

職務等級制度を導入した場合、自分の職務にだけ集中して成果を上げようとして、横の連携がなくなってしまうことがあります。また、異なる職務間で人事異動をすることは前提として考えられていないため、環境の変化に応じて柔軟に人材配置を調整することが難しくなるという問題点もあります。 導入する際には、その職務遂行における他部署との連携や、将来的な職務を取り巻く環境の見通しも含めて判断をすることが大切です。

職務等級制度の課題、評価と報酬について

評価制度を変更する際は、従業員に対してよく説明をし、納得を得ることが大きな課題になります。職務等級に変わったことで自身の待遇が下がる場合、評価と報酬に納得しない人も多いでしょう。 従業員に納得してもらうことは必須であり、導入時には報酬が見合わないと捉えられた場合でも説明が重要です。中期・長期的に見て目標を達成していくことで評価され、報酬も高くなることを説明する必要があります。職務等級制度の場合には、どうすることで、評価と報酬が上がるのかについて具体的に説明していくといいでしょう。


 

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08まとめ

職務等級制度についてご紹介しました。職務等級制度を人事評価に活用する場合には、コロナ禍以降のテレワークなどでは活用しやすくておすすめです。業務、職務の成果によって評価されるため、具体的で評価しやすいメリットがあります。

職務記述書を作るまでの導入手順なども知って導入してみるのもいい方法です。ただ、部門や横の繋がりなどを重要視するような企業には向いていないかもしれません。問題点について理解しておくことも必要です。また、職務等級制度については、従業員の理解も必要となるため、徹底して説明していくことも大切です。

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