成果主義とは?メリットやデメリット成功に導くポイントを紹介
成果主義とは、勤続年数や学歴、年齢に関係なく成果を上げた者が評価される人事制度です。本記事では、能力主義や結果主義との違いや、成果主義が注目されるようになった背景を解説していきます。また、成果主義を導入する際のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 01.成果主義とは
- 02.成果主義が注目されるようになった背景
- 03.成果主義のメリット
- 04.成果主義のデメリット
- 05.成果主義を成功に導くポイント
- 06.まとめ
01成果主義とは
成果主義とは、仕事の成果、成績などに応じて昇給、昇格などの待遇を決定する人事制度のことです。勤続年数や年齢、学歴、経験などに関わらず、会社への貢献度が高ければ高いほど評価されます。英語では「Result-based Human Resource Management」といい、欧米では元来主流の制度となっています。
成果主義と年功序列の違い
年功序列とは、年齢が高く、勤続年数が長くなるほど役職や給与が上がる人事制度です。年齢や勤続年数に関わらず、成果によって待遇が決定される成果主義とは、対偶に当たる制度だといえます。
年功序列は時代にそぐわない、と批判されることも多いですが、帰属意識が高まったり、長期的に働いてくれたりするため、社員が退職しにくく安定した経営ができるなどのメリットもあります。
年功序列は「日本的経営」の象徴ともいえるほど、日本企業に深く根付いている制度です。年功序列が日本で浸透した背景として、儒教的思想があります。大昔から年長者を敬う習慣がついている日本人にとって、年功序列はなじみやすい制度だったというわけです。
成果主義と能力主義の違い
成果主義と能力主義の決定的な違いは「仕事」に焦点を当てているか、「人」に焦点を当てているか、という点です。能力主義でも成果主義と同じように、成果が評価対象になるため、よく混同されがちです。しかし能力主義では、仕事の成果というよりは、成果から測れるその人の顕在能力を評価します。加えて、知識、経験、資格などから測れる潜在能力も評価の対象となります。
成果主義と比べ能力主義は、すぐに成果がでなくても評価される可能性がありますが、経験や知識も評価対象になる分、早期の出世はしにくい傾向があります。
成果主義と結果主義の違い
成果主義とよく似た考え方にもう一つ、結果主義というものがあります。結果主義と成果主義の違いは、成果を出すまでの過程を評価対象にするか否かです。成果主義では、成果だけでなく、成果を出すまでの過程も評価の対象になりますが、結果主義では成果のみが評価の対象となります。
成果が出るまでの過程は、数値化しにくく、評価に評価者の主観が入ることもあります。その点、結果のみに焦点をあてた結果主義は客観性が高く、より公正な評価が下せるといえます。
しかし、能力や努力が必ず成果につながるとは限りません。結果主義では、能力が十分にあり、かつ意欲的に業務に取り組んだのにもかかわらず、運が悪く成果が出せず評価されなかった、といったことも起こり得ます。成果を出すまでの過程も評価に加えれば、そういったケースもカバーできます。優秀な人材のモチベーションを下げないためにも、企業としては成果主義の方が相性が良いといえます。
02成果主義が注目されるようになった背景
成果主義が注目され始めたきっかけとなったのはバブル崩壊です。
戦後からバブル崩壊までは、年功序列が一般的でした。高度経済成長によって順調に業績を伸ばした企業が多かったため、年功序列による人件費の無駄は軽視されていたのです。しかし、バブル崩壊によって業績が悪化したため、人件費の無駄を無視できなくなりました。
そこで注目されたのが成果主義です。1993年、富士通が成果主義を取り入れたのを皮切りに、徐々に成果主義が広まっていきました。しかし、年功序列に代わるほどまでは浸透しませんでした。
そこから、近年さらに成果主義化を推し進めたのが、働き方改革です。テクノロジーの発展や経済状況の変化により、終身雇用制度の崩壊が始まり、働き方の多様化が進みました。そこで問題となったのが、非正規労働者の待遇です。従来の評価基準だと、非正規労働者の待遇は悪くなる傾向が強くありました。そこで、成果主義を取り入れ、雇用形態に関わらず正当に評価しようとする動きが強まったのです。
現在は、大多数の企業で成果主義が取り入れられています。企業の規模が大きいほどその割合は高く、1,000人以上従業員がいる企業では83.4%が成果主義を採用しています。
03成果主義のメリット
成果主義には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
人材育成や人材の確保
成果主義では、評価を得るために社員一人一人が自発的にスキル向上に励むようになります。なぜなら、成果を出そうと思ったときにスキルを身につけたり、磨いたりするのが近道だからです。その結果社員全体のレベルが底上げされ、質の高い人材へと成長していきます。
また、成果主義を導入すれば、年功序列の企業より優秀な人材を逃しにくくなります。年功序列では、能力に見合った条件を提示できず、優秀な人材を逃してしまうことが多々あります。成果主義であれば、成果を出せば早期出世も可能であるとアピールでき、採用につなげられます。
生産性の向上
成果主義では、社員はより早く成果を出そうと仕事に効率を求めるようになります。その結果仕事の無駄が減り、会社全体としての生産性も向上します。成果につながらない無駄を徹底して省くことで、自然と成果につながる仕事が見えてくるのです。
評価制度の適正化
従来の年功序列では、いくら優秀でも、勤続年数が短いと出世は困難でした。そのため、若い社員は正当に評価されていないと感じ、会社への不満もたまりやすくなっていました。成果主義であれば、勤続年数が短くても成果次第で評価されるので、社員の評価への満足度も高くなります。
人件費の最適化
年功序列の最大のデメリットは、余計な人件費がかかることです。業績に関わらず、勤続年数が長い人には高額の給与を支払わなければならないので、企業にとっては負担が大きくなります。特に、高齢化が進んでいる今、年功序列を続けてしまうと、人件費はどんどん膨れ上がってしまいます。成果主義であれば、その余計な人件費を削減できます。
04成果主義のデメリット
では、成果主義には何かデメリットはあるのでしょうか。
モチベーションの低下
成果主義は、成果を上げられる人にとってはモチベーションを上げる要因となりますが、反対に、成果が上げられない人は、モチベーションが低下してしまいます。
やりがいを感じられない社員が増えると、離職者が増加する危険性があります。さらに、成果が上がらないことに焦りを覚え、残業時間を長くする社員が増加する懸念もあります。
個人主義への傾向
成果主義の企業で出世するためには、ほかの社員より高い評価を得る必要があります。そのため、社員はチームワークよりも個人の成果を意識するようになります。社員の個人主義化が進むと、組織全体としての力が十分に発揮できなくなります。
それだけであればまだ良いのですが、評価を得ようと意識するあまり、案件の奪い合いや、情報共有の滞りが発生する可能性もあります。そうなってしまうと、最悪企業の崩壊を招くかもしれません。また、個人の成果を上げることが第一になり、後進を育てる人がいなくなってしまう点も、個人主義化の懸念点の一つです。
評価項目外の軽視
成果主義では、公平な評価をするために、評価項目が設けられます。そして、業務のすべてが評価項目になるわけではありません。当然、出世したい社員は、評価項目で成果を上げることを目指すので、評価項目外の業務はおろそかになってしまいます。
05成果主義を成功に導くポイント
成果主義を導入した企業の中には、成功事例もあれば失敗事例もあります。成果主義を成功させるには、どのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。
評価基準の設定と明確化
成果主義を導入するなら、まず評価基準を設定する必要があります。評価基準を設定する際のポイントとしては、誰が評価しても同じ評価ができるか、実現可能な目標か、の2点を意識しましょう。
評価基準を設定したら、社員にその内容を周知しましょう。評価基準が不透明だと、社員の不信感にもつながります。もし、評価基準に不満や改善提案が出たら、柔軟に対応していくことも重要です。
評価の公平性の確保
評価内容によっては、多少評価者の主観が入ってしまうことは防ぎようがありません。そこで、少しでも評価のぶれをなくすために、評価者の育成も必要になります。評価者間で細かい評価基準を共有しておくのも、評価の公平性をあげるのに役立ちます。また、評価者が十分に社員を見る時間を確保できるよう、評価者の業務を削減する必要もあります。
組織間の評価
評価の公平性を保つために、360°評価を取り入れている企業も増えています。360°評価では、上司や同僚など組織内だけでなく、他部署の社員やクライアントなど、さまざまな立場の人間が評価を行います。こうすることで、より多面的で、客観性のある評価ができます。
組織内の評価
組織内の評価では、より細かな点も評価できるよう、密なコミュニケーションが求められます。そのため、1on1ミーティングの機会を設けたり、評価項目外であっても評価すべき点があれば積極的に声掛けしたりなどして、チーム意識を高めることが大切です。
定量評価と定性評価の設定
正当な評価のためには、定量評価と定性評価の両方を設定する必要があります。定量評価とは、数値で測れる評価のことです。売り上げや案件獲得数、コスト削減率などがこれに当たります。定量評価は明確な数値が出せるため、評価者がだれであっても公正な評価を下せます。
ですが、すべてのタスクを数値化できるわけではありません。業務に対する意欲や作業スピード、人材育成、コミュニケーション能力などは、数値で表せない定性評価になります。定性評価を導入することで、あらゆる業務を評価対象にできますが、定性評価は主観的になりがちで、評価者によって評価がぶれやすい点がネックです。
設定目標に対する評価の考慮 部署や役職が違えば、設定目標もそれぞれ変わってきます。そのため、社内一律で基準を設けてしまうと、公平性が失われてしまったり、部署としての役割を十分に果たせなくなったりしてしまいます。そこで、例えば研究職であれば長期的な成果を評価する、生産業務であれば習熟度も評価基準に入れるなど、それぞれの設定目標を考慮した基準を設ける必要があります。
マネジメントの整備
成果主義を導入すると、成果を達成できない社員に不満がたまりやすくなります。そうした社員の離職を防ぐために、マネジメントの整備が必要です。マネジメント整備によって、目標管理や能力を最大限活かせる部署への異動がしやすくなります。
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06まとめ
成果主義とは、年齢や学歴、勤続年数にかかわらず、成果を上げた者が評価される人事制度です。元は欧米で主流の制度でしたが、バブル崩壊や働き方の多様化に合わせて、日本でも広まっています。
年功序列が浸透している日本では、成果主義は向いていないといった意見もあります。実際、個人主義化が進みやすくチームワークが低下しやすいといったデメリットもありますが、これからの時代、優秀な人材を確保するにはもってこいの制度でもありますので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。