副業は推奨すべき?制度導入のメリットを徹底解説
昨今、副業を認める企業が増えてきており、こうした企業は労働者からも魅力的に映るようです。しかし、副業の導入前後にはさまざまな課題が存在します。当記事では副業が広がる背景、メリット・デメリットを紹介しますので、導入の検討をされている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.厚生労働省による副業の推奨
- 02.企業が副業を推奨する理由
- 03.副業を推奨する際の注意点ド
- 04.副業の推奨でトラブルを避ける方法
- 05.副業を推奨している企業3選
- 06.まとめ
01厚生労働省による副業の推奨
平成29年3月28日、働き方改革実現会議において「働き方改革実行計画」 が決定されました。その中では、9の検討テーマとそれに紐づく19の対応策が謳われています。副業については「④柔軟な働き方がしやすい環境整備」の中で取り上げられており、厚生労働省ではこれを受けて、副業の推進を図っています。
ガイドラインの制定
厚生労働省が策定したガイドラインでは、「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。」と副業を推奨しています。また、労働時間管理や秘密保持、競業避止等のリスクについて気を付けるべきポイントを整理し、円滑な導入を支援しています。
モデル就業規則の改訂
厚生労働省は、使用者の就業規則策定に資する「モデル就業規則」を公表しています。平成30年1月にモデル就業規則を改定し、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設しました。さらに、令和2年9月の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定に伴い、副業・兼業についての記述を改訂しました。
アプリ・パンフレットの作成
厚生労働省は、労働者が自ら本業及び副業・兼業の労働時間や健康状態を管理できる「マルチジョブ健康管理ツール」というアプリを開発しています。また、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の解説や、副業・兼業に関するモデル就業規則の規定、各種様式例をまとめたパンフレットを作成し、普及に努めています。
02企業が副業を推奨する理由
副業は従業員にのみメリットがある制度で、企業にはマイナスしかないというイメージを持っている方もいますが、実は雇用する企業側にもメリットがある制度です。ここからは企業にとって副業がどういうメリットがあるのかについて見ていきましょう。
企業イメージの向上
「働き方改革」が叫ばれて久しい日本では、従業員の自由な働き方を推進している企業には良いイメージが持たれやすくなります。特にBtoC企業においては、企業のイメージ自体が商品の購買促進につながるため、マーケティングの観点からも重要です。
従業員のスキルアップ
副業においては本業で取り組めないようなテーマに取り組む従業員であれば、本業とのシナジー効果を期待することができます。例えば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が各企業で重要な課題となっており、どの部門でもITへの知見が高い人材の需要が高くなっています。副業でIT関連の企業で働き、本業での業務改善に活かしている方もいるでしょう。
優秀な人材の確保
副業を認めている企業は、採用応募者にとって自由な働き方ができる企業として魅力的に映ります。結果、応募者数が増加し、採用側としては優秀な人材を確保しやすくなります。また、自社が副業の受け皿となる場合、これまでフルタイムでは働けないといった事情がある優秀な人材が参画してくれる可能性も広がります。
離職率の低下
優秀な人材は常に新しい経験や刺激を求めて、独立や他社への転職に積極的です。副業を推進することで、そうした新しい機会を提供することになり、独立・転職の可能性を小さくすることができます。特に独立の場合、今までであれば、企業を退職するのが当たり前でしたが、今後現在の仕事を続けてもらいながら、副業として独立の可能性を模索するというスタイルで、より長い期間で従業員に働いてもらうことが可能になります(最終的に、独立を諦めて本業を続けるというケースもあり得ます)。
03副業を推奨する際の注意点ド
副業を始めた従業員にはさまざまな変化が起こります。もちろん、上記のようにポジティブな変化もありますが、逆にネガティブな変化が起こることも。ここからは、副業を行う従業員が陥りがちな注意点を見ていきましょう。
本業の生産性低下
副業に慣れていない当初は特に、本業・副業の仕事量の調整や異なる領域の業務を行うことへのストレスから、効率的に業務を進めることが難しくなります。その結果、本業で今までのパフォーマンスが出せないといったことが起こりえます。そうした事態にならないために、副業を始める際には、本業・副業両企業の管理職の理解・協力をしっかりと得ることが重要となります。
本業へのモチベーションや帰属意識の低下
副業を始める動機には、金銭面での動機ももちろんあるものですが、本業への何らかの不満や物足りなさを感じて始める従業員も少なくありません。副業を続けていくうちに、そちらのほうが楽しくなってしまい、本業へのモチベーションや企業への帰属意識が低下する可能性があります。 副業を始めたことで本業の方にも良い影響があったと従業員が感じられる環境づくりが大切です。
オーバーワーク
副業を始めたことで単純にこれまでよりも労働時間が増えるというケースもありますし、そうでなかったとしても、突然のトラブルによる残業等で、オーバーワークになる可能性が高まります。 そうすると、健康に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。副業を始める場合には、企業側だけではなく、従業員本人にもタイムマネジメントの意識を高めてもらうことが必要です。
税金の手間が煩雑になる
本業のみの場合には特別な場合を除き、企業で年末調整をしていることと思います。しかし、副業をしていると、確定申告の必要がある場合があります。 副業先で給与をもらっている場合には、その収入が20万円超の場合、また何らかの商売等をしている場合には、もうけ(売上から経費を差し引いたもの)が20万円超の場合、確定申告の対象となります。
04副業の推奨でトラブルを避ける方法
副業が、企業と従業員のトラブル、あるいは、本業と副業を行う企業同士のトラブルにつながるケースがあります。副業を推進する企業がそれらのトラブルを避けるために整備しなければいけない制度や注意すべき点を紹介します。
副業を行う場合のルール制定
企業として促進したい副業のあり方(労働時間・勤続年数・副業先の業種・目的等)がある場合は、それに即したルールの設定が必要です。別の企業へ雇用される場合、残業代の支払いに必要な労働時間の通算や競業避止のために企業に届け出を出すことが一般的です。こうした様式例も厚生労働省のサイトで紹介していますので、参考にしてください。
情報管理の徹底
副業を行う場合、他社への情報漏洩のリスクが高くなりますが、基本的な取り決めは既に就業規則上に存在しているケースが多いと思われます。副業を始めるにあたって規則の見直しが必要ないか確認するとともに、従業員が副業を始める際に周知徹底するようにしましょう。 また、IT機器の整備等により、そもそも機密情報を持ち出せないようにするといった取り組みも重要です。
労働時間の管理
異なる職場で副業を行う場合、労働基準法では労働時間を通算することを定めています。また通算した結果、時間外労働(残業)に該当する場合は、割増賃金の支払いの必要があります。 厚生労働省のガイドラインによると、一般的には後から契約した事業主に割増賃金の支払い義務があるとされています。また、労働安全衛生上の観点からも副業先を含めた労働時間の管理が必要です。
社会保険の手続きの見直し
社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断します。両事業所で適用条件を満たす場合は、被保険者自身が届出を行い、主たる事業所を選択します。詳しい手続き方法は日本年金機構のホームページで参照できます。
05副業を推奨している企業3選
これまで副業に関するメリット・デメリットを見てきましたが、ここからは実際の企業でどのように運用されているのか、具体的な事例を3つ紹介します。いずれも先進的な事例のため、これから導入を考えている方はぜひ参考にしてください。
ロート製薬
本業を大切にしながら、土・日・祝日と就業後なら、ほかで業務を行ってもかまわないという「社外チャレンジワーク」という制度を運用しています。「社外チャレンジワーク」に挑戦することで、会社で与えられた仕事だけをするのではなく、自分自身で考えて行動し、社会に貢献できる働き方をする社員を増やすことが目的です。ロート製薬ではこの他にも、社内で複数の部門・部署を担当できる「社内ダブルジョブ」という制度も行っています。
メルカリ
メルカリでは創業当初から副業を推奨していましたが、2018年の全体の定例会で副業を推奨していると改めて明言しました。メルカリには、成果を挙げ成長する個人を大胆に評価する「無限昇給制」という制度があります副業はお金を稼ぐ目的ではなく、社外でアウトプットし、スキルアップをして本業で成果を上げることを目的に行っています。
アサヒグループホールディングス
2018年4月から定年退職後の再雇用社員に副業を認めていたアサヒでは、さらに勤続5年以上の社員の副業を認める制度を2020年1月から導入しました。勤務は就業時間外のみですが、無給の「副業支援休暇」を月に2日取得できるようにし、働きやすい環境を整えています。
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06まとめ
今回紹介したように、副業の導入までにはさまざまな壁があるものの、従業員のスキルアップを図り、企業が活性化する魅力的な制度でもあります。働き方改革が進む現代の日本企業から取り残されないように、皆さんの会社でもぜひ副業の導入を検討してみてください。
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登壇者:田中 研之輔 様法政大学キャリアデザイン学部 教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数