更新日:2026/01/19

働き方の多様化とは|メリット・デメリットや具体例を紹介

働き方の多様化とは|メリット・デメリットや具体例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

働き方の多様化とは、従業員が自身のライフスタイルや価値観に合わせて働き方を選択できるようにする取り組みのことです。近年の働き方改革を背景に、テレワークや副業、ジョブ型雇用など、多様な制度を取り入れる企業が増えています。しかし、実際にどう進めればよいのか悩む企業担当者も多いのが現状です。本記事では、働き方の多様化の概要から、企業にとっての利点、具体的な施策までわかりやすく解説します。

 

01働き方の多様化とは

働き方の多様化とは、従来の「フルタイム・定時出社・正社員」を前提とした働き方にとらわれず、時間・場所・雇用形態などを柔軟に選択できる状態を指します。 テレワークやフレックスタイム制、副業・兼業、時短勤務、ジョブ型雇用などが代表例で、個人のライフスタイルや価値観に合わせた働き方を可能にします。

近年は、少子高齢化による人材不足や働き手の価値観の変化、働き方改革やテクノロジーの進展を背景に、働き方の多様化が急速に広がりました。現在では、人材確保や定着、生産性向上を支える前提条件として、多くの企業で重視されています。

働き方の多様化と働き方改革の違い

働き方の多様化と混同されやすい言葉に「働き方改革」があります。両者は密接に関係していますが、意味合いは異なります。働き方改革とは、長時間労働の是正や多様な人材の活躍推進を目的に、国が中心となって進めてきた制度・政策レベルの取り組みです。一方、働き方の多様化は、その枠組みを受けて、企業や個人が実際の現場で実装・選択していく働き方のあり方を指します。つまり、働き方改革が「方向性」を示すものであるのに対し、働き方の多様化は、その方向性をもとに企業ごとに進める「実践」といえます。

働き方の多様化の4つの軸

働き方の多様化は、単にテレワークを導入することではありません。主に、以下の4つの軸で柔軟性を高めていくことを指します。

1. 場所の柔軟性

オフィスへの出社を前提とせず、在宅勤務やリモートワーク、サテライトオフィスなど、働く場所を柔軟に選択できる状態です。居住地にとらわれない採用や、通勤負荷の軽減につながります。

2. 時間の柔軟性

フレックスタイム制や時差出勤、短時間勤務、時間単位の有給休暇など、働く「時間」を調整できる仕組みです。育児・介護との両立や、ワークライフバランスの向上を支えます。

3. 雇用・契約形態の柔軟性

正社員に限らず、限定正社員、ジョブ型雇用、副業・兼業、業務委託(フリーランス活用)など、多様な関わり方を認める考え方です。専門性の高い人材の確保や、外部人材の活用を可能にします。

4. 休日・勤務体系の柔軟性

週休3日制や勤務間インターバル制度など、働き方そのものの設計を見直す取り組みです。長時間労働の抑制や、心身の健康維持、生産性向上を目的として導入が進んでいます。


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02働き方の多様化が進む3つの背景

働き方の多様化が求められる背景には、労働人口の減少、働き手の価値観の変化、企業の人材戦略の転換という3つの大きな要因があります。これらが重なり合うことで、従来の一律的な働き方では立ち行かなくなっているのが現状です。

労働人口の減少と人材不足の深刻化

日本では生産年齢人口の減少が続いており、多くの業界で人材不足が慢性化しています。従来のように、長時間働ける人材や転勤に対応できる人材だけを前提とした採用・配置では、必要な人材を確保することが難しくなっています。そのため、高齢者や女性、育児・介護と仕事を両立する人材など、多様な事情を持つ人が働き続けられる環境づくりが重要になっています。働き方の多様化は、労働供給を維持し、組織の持続性を高めるための現実的な対応策といえるでしょう。

参考:「働き方改革」の実現に向けて | 厚生労働省

参考:令和元年度 年次経済財政報告 | 内閣府

参考:The New Workplace in Japan|OECDレポート

働き手の価値観・ライフスタイルの変化

働き手の意識も大きく変化しています。仕事よりも私生活を重視するという単純な二択ではなく、自分のライフステージや価値観に合った働き方を選びたいという考え方が広がっています。転勤や長時間労働を前提としない働き方、時間や場所に縛られない柔軟な働き方へのニーズは、特に若手層や子育て世代を中心に高まっています。こうした変化に対応できない企業は、採用面だけでなく、既存社員の離職というリスクも抱えることになります。

参考:The Employment Policy Study Group Report | 厚生労働省

参考:兆しレポート | 経済産業省 中部経済産業局

企業の人材戦略の変化

人材獲得競争が激化する中で、企業は「どのように人材を集め、活かし、定着させるか」を重視するようになっています。テレワークやフレックスタイム制、副業・兼業、外部人材の活用などは、単なる福利厚生ではなく、人材戦略の一環として位置づけられる施策です。特に専門性の高い人材や即戦力人材を確保するためには、柔軟な働き方を提示できるかどうかが競争力に直結します。働き方の多様化は、企業が変化の激しい環境に適応し続けるための基盤となりつつあります。

 

03働き方の多様化に向けた制度

多様な人材が活躍するためには、働き方に柔軟性を持たせる制度整備が欠かせません。テレワークやフレックスタイム、副業・兼業制度など、個々の事情に応じた制度を導入することで、労働生産性の向上や人材定着にもつながります。以下では、多様化を支える主な制度について紹介します。

テレワーク

働き方改革の一環として推奨されてきたテレワークは、在宅やサテライトオフィスなどを活用してオフィス以外で業務を行う制度です。特に育児や介護といった家庭の事情を抱える社員にとっては、仕事との両立を図る有効な手段となっています。ITツールの発達により、物理的な出社を伴わなくても業務を遂行できる環境が整っており、満員電車を避けるストレス軽減や、ワークライフバランスの向上にも寄与しています。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度は、従業員が自身の生活スタイルに合わせて始業・終業時間を柔軟に設定できる制度です。決まった時間帯に勤務する「コアタイム」を設けることで、チームとの連携も維持しながら、通勤ラッシュの回避やプライベートの充実を実現できます。多様な働き方を認める文化の醸成や、社員のモチベーション向上にもつながる制度として注目されています。

副業制度・兼業制度

副業や兼業を認める企業が増えており、社員のスキルアップや収入向上を後押ししています。副業は業務時間外に別の仕事を行う形態で、個人の経験の幅を広げることが可能です。一方、兼業は他の団体や自治体などと業務委託契約を結ぶ場合などが該当し、社会貢献や地域連携の観点でも意義があります。企業にとっても、新たな知見を持ち帰る人材の育成につながる制度です。

短時間勤務・時間単位年休

時短勤務制度は、家庭の事情などでフルタイム勤務が難しい従業員が、1日あたりの労働時間を短縮して働ける仕組みです。特に育児や介護を担う社員にとっては就業継続の大きな支えとなり、離職の防止にもつながります。ライフステージの変化によって働き方を柔軟に調整できる環境を整えることで、優秀な人材の離職防止や、長期的な人材活用につながります。制度を「特例」とせず、利用しやすい雰囲気づくりも重要なポイントです。

ジョブ型雇用・限定正社員

ジョブ型雇用は、職務内容や責任範囲を明確にしたうえで人材を配置・評価する仕組みです。専門性を活かしやすく、成果に基づいた評価がしやすい点が特徴です。また、勤務地や職務範囲を限定した正社員制度は、転勤や配置転換が就業継続の障壁となっている人材にとって、有効な選択肢となります。多様な人材が力を発揮できる環境づくりにつながります。

外部人材活用(業務委託・フリーランス)

業務委託やフリーランスなどの外部人材を活用することで、社内に不足している専門性を補うことができます。必要なスキルを必要な期間だけ活用できるため、人材不足への対応策としても有効です。社内人材との役割分担や情報共有のルールを整理することで、組織全体の生産性向上につなげることができます。

週休3日制・勤務間インターバル

週休3日制や勤務間インターバル制度は、働く時間や休息の取り方そのものを見直す取り組みです。長時間労働の是正や、心身の健康維持を目的として導入されるケースが増えています。十分な休息を確保することで、結果的に集中力や生産性の向上が期待できる点も特徴です。

 

04働き方の多様化によるメリット

働き方の多様化によるメリットは、以下の通りです。

  • ・優秀な人材の確保につながる
  • ・離職率の低下・人材定着につながる
  • ・生産性の向上が期待できる
  • ・コストの最適化につながる
  • ・企業イメージ・ブランド価値の向上

柔軟な働き方を推進することで、企業は多様な人材を採用しやすくなり、従業員の定着率向上にもつながります。また、テレワークや副業制度の活用により、通勤ストレスの軽減やスキルの向上が実現し、生産性向上やコスト削減にも寄与します。さらに、先進的な取り組みとして企業イメージの向上も期待できます。

優秀な人材の確保につながる

柔軟な働き方を認める企業は、採用市場において選ばれやすくなります。勤務地や勤務時間に制約がある人材、専門性を活かしたい人材、副業を通じてキャリアを広げたい人材など、従来の働き方では取り込みにくかった層にもアプローチできるためです。特にテレワークやジョブ型雇用、副業・兼業制度の整備は、企業の採用競争力を高める要素として注目されています。人材不足が深刻化する中で、働き方の多様化は採用の選択肢を広げる有効な手段といえるでしょう。

離職率の低下・人材定着につながる

働き方の多様化は、既存社員の離職防止にも大きく寄与します。育児や介護、家族の転勤、健康上の理由などにより、従来の働き方を続けることが難しくなるケースは少なくありません。柔軟な働き方を選べる環境があれば、社員はライフステージの変化に応じて働き続けることができ、結果として人材の流出を防ぐことにつながります。また、自分の事情を理解してもらえているという実感は、企業への信頼感やエンゲージメントの向上にもつながります。

生産性の向上が期待できる

働き方の多様化は、生産性向上の観点でも効果が期待されます。通勤時間の削減や、集中しやすい環境での業務により、限られた時間を効率的に使えるようになるためです。また、働く時間や場所を自律的に調整できることで、社員一人ひとりが自身のパフォーマンスを最大化しやすくなります。副業や社外活動を通じて得た知識や経験を本業に活かすことで、新たな視点や改善提案が生まれるケースもあります。

コストの最適化につながる

テレワークの活用によってオフィス面積を縮小したり、外部人材を活用して必要な業務を必要な期間だけ担ってもらったりすることで、固定費を抑えることが可能になります。また、人材を柔軟に配置・活用できる体制を整えることで、事業環境の変化にも対応しやすくなります。働き方の多様化は、コスト削減だけでなく、経営の柔軟性を高める施策としても有効です。

企業イメージ・ブランド価値の向上

働き方の多様化に積極的に取り組む企業は、「社員を大切にする企業」「時代の変化に適応している企業」として、社会的な評価を得やすくなります。こうした評価は、採用ブランディングにとどまらず、顧客や取引先、投資家からの信頼にもつながります。中長期的には、企業価値やブランド力の向上にも寄与する重要な要素といえるでしょう。

 

05働き方の多様化によるデメリット

働き方の多様化によるデメリットは、以下の通りです。

  • ・管理職への負担増加
  • ・制度が形骸化するリスクがある
  • ・コミュニケーション不足や分断が生じやすい
  • ・人事評価の公平性を保ちにくくなる
  • ・情報セキュリティ・労務管理のリスクが高まる

多様な働き方を実現するには、企業側の制度整備だけでなく、マネジメントやセキュリティ面の対応も求められます。制度導入直後は現場で混乱が生じやすく、管理職の負荷や情報管理の複雑化などが課題となります。新しい制度を定着させるには、時間をかけた試行と改善が不可欠です。

管理職への負担増加

働き方が多様化すると、勤務時間や場所が異なるメンバーを同時にマネジメントする必要が生じます。進捗管理や成果確認、メンバー間の調整など、管理職が担う役割はこれまで以上に複雑になります。特に、評価基準や業務の優先順位が明確でない場合、管理職個人の判断に依存した運用となり、負担が集中しやすくなります。その結果、管理職自身の業務時間が増えたり、マネジメントの質にばらつきが出たりする可能性があります。多様な働き方を支えるためには、管理職向けの支援や育成、マネジメント手法の見直しが不可欠です。

制度が形骸化するリスクがある

働き方の多様化に関する制度は、「導入しただけ」で終わってしまうケースも少なくありません。業務量や役割分担が従来のままでは、制度を利用する余裕がなく、結果として利用率が低下します。また、「制度を使うと周囲に迷惑がかかる」「評価が下がるのではないか」といった不安があると、社員は制度の利用をためらいます。こうした状況が続くと、制度は存在していても実態としては機能せず、形骸化してしまいます。制度を定着させるには、利用状況を把握し、現場の声をもとに運用を見直す継続的な取り組みが求められます。

コミュニケーション不足や分断が生じやすい

テレワークやフレックスタイム制が広がることで、社員同士が同じ時間・場所で働く機会は減少します。その結果、情報共有の遅れや認識のズレが生じやすくなります。また、ちょっとした相談や雑談が減ることで、孤立感を抱く社員が出てくる可能性もあります。特に新入社員や異動直後の社員にとっては、周囲との関係構築が難しくなる点に注意が必要です。意図的にコミュニケーションの場を設けるなど、仕組み面での工夫が求められます。

人事評価の公平性を保ちにくくなる

働く時間や場所が異なる社員を、従来と同じ基準で評価することは簡単ではありません。勤務態度や残業時間を重視した評価を続けていると、多様な働き方をしている社員ほど不公平感を抱きやすくなります。評価基準が曖昧なままでは、「出社している人のほうが評価されやすい」「在宅勤務だと不利になる」といった認識が広がり、結果としてモチベーション低下を招きかねません。そのため、成果や役割、業務プロセスをどのように捉えるのかを整理し、評価制度そのものを見直すことが求められます。

情報セキュリティ・労務管理のリスクが高まる

働き方の多様化により、社外で業務を行う機会や外部人材との協働が増えると、情報セキュリティ面のリスクも高まります。個人端末の利用やクラウドサービスの活用に伴い、情報漏えいへの対策が不可欠となります。また、副業・兼業を認める場合には、労働時間管理や健康管理の責任範囲が複雑になります。こうしたリスクを放置すると、法令違反やトラブルにつながる可能性もあります。制度設計だけでなく、ルール整備や社員への教育を含めた対応が重要です。

 

06働き方の多様化がうまくいかない企業に共通する特徴

働き方の多様化が思うように進まない企業には、いくつかの共通点が見られます。それらは制度そのものに問題があるというよりも、制度の設計や運用、組織としての向き合い方に起因するケースがほとんどです。ここでは、現場で起こりがちな代表的な特徴を整理します。

制度はあるが、実際には使われていない

働き方の多様化に関する制度を整備していても、実際の利用が進んでいない企業は少なくありません。業務量や役割分担が見直されないまま制度だけが導入されると、社員は制度を活用する余裕を持てなくなります。また、「周囲に迷惑がかかるのではないか」「評価に影響するのではないか」といった不安が解消されていない場合、制度は次第に使われなくなり、形骸化してしまいます。制度の有無ではなく、実際に活用されているかどうかが重要なポイントです。

業務量や会議体が従来のままになっている

働く時間や場所を柔軟にしても、業務の進め方が従来のままでは、現場の負担は軽減されません。長時間の会議や属人化した業務、暗黙の前提に基づく進行が残っていると、多様な働き方との間にズレが生じます。その結果、制度を利用する社員に業務が集中したり、時間外対応が発生したりするなど、かえって負担が増えるケースも見られます。働き方の多様化を進めるには、業務設計そのものを見直す視点が欠かせません。

管理職任せになり、現場の支援が不足している

多様な働き方への対応が、現場の管理職任せになっている企業も多く見受けられます。制度の趣旨や運用ルールが十分に共有されていないと、管理職ごとに対応が異なり、不公平感が生じやすくなります。また、管理職自身も手探りで対応することになり、マネジメントの負担が増加します。働き方の多様化を定着させるためには、組織としての方針を明確にし、管理職を支援する体制が必要です。

利用すると評価が下がる空気がある

制度上は利用可能であっても、「使うと評価が下がるのではないか」「昇進に不利になるのではないか」と感じられる環境では、社員は制度を利用しにくくなります。特に、評価基準が曖昧なままの場合、出社頻度や上司の目に触れる機会が多い社員のほうが有利だと受け取られやすく、不満や不信感につながります。このような状態では、働き方の多様化は表面的な取り組みにとどまってしまいます。

社員の声を反映する仕組みがない

働き方の多様化は、一度制度を導入すれば完了するものではありません。実際の運用を通じて、課題や改善点が明らかになることが多くあります。しかし、社員の声を吸い上げる仕組みがない企業では、現場の実態が把握されず、制度と実務の乖離が広がってしまいます。アンケートや1on1などを活用し、継続的に見直していく姿勢が欠かせません。

 

07働き方の多様化を推進するためのポイント

働き方の多様化は、制度を導入すれば自然に浸透するものではありません。特にテレワークの普及以降は、「オフィスに集まる」ことを前提に成り立っていた暗黙のルールが崩れ、コミュニケーションや評価、支援の仕組みが追いつかないケースも増えています。本章では、Schoo講義「オフィスにとらわれない働き方は何を変える?」の内容を参考に、働き方の多様化を現場で機能させるためのポイントを5つに分けて解説します。

① ITツール・業務プロセスの見直し

多様な働き方を支えるうえで、ITツールは前提条件です。ただし重要なのは、ツールの導入そのものではなく、ツールに合わせて業務の進め方を再設計することです。たとえば、チャットでやり取りが続くほど意思疎通が難しくなる場面もあります。流氏の現場では「チャットで数往復するなら、すぐにオンライン会話に切り替える」といった運用を行い、コミュニケーションの摩擦を減らしていました。こうしたルールがないままでは、確認が遅れたり、認識ズレが蓄積したりしやすくなります。

  • ・どの連絡はチャット、どの相談はオンライン会話に切り替えるのか
  • ・判断や決裁はどこで、誰が、どの順で行うのか
  • ・共有すべき情報が埋もれない導線になっているか

業務プロセスとセットで見直すことで、働く場所が変わっても仕事が回る状態に近づきます。

② 制度を使える組織文化づくり

制度があっても、使われなければ意味がありません。「制度を使うと周囲に迷惑がかかる」「評価が下がりそう」と感じる空気が残っていると、働き方の多様化は形骸化してしまいます。ここで鍵になるのが、発信のハードルを下げることです。オフィスでは雑談や立ち話のような偶発的な会話が自然に生まれますが、リモート環境ではそれが起こりにくくなります。そのため、雑談チャンネルを用意したり、気軽に声をかけられる場を意図的に設けたりと、「話してよい」空気を仕組みでつくる必要があります。また、経営層・管理職が制度利用を肯定的に扱い、率先して活用することで、制度が“特別なもの”ではなくなります。制度と文化はセットで整えるべき要素です。

③ 成果ベースの評価制度設計

働き方が多様化すると、「見えている人が評価される」問題が起こりやすくなります。オフィスに集まっている時代は、暗黙のうちに勤務態度や忙しさが伝わっていました。しかしリモートでは、その前提が成立しません。だからこそ、評価は「時間」や「見え方」ではなく、成果・役割・プロセスを軸に設計する必要があります。特に次の点を明確にしておくと、現場の納得感が上がります。

  • ・期待される成果(アウトプット)と期限
  • ・役割分担(誰が何を担うか)
  • ・良いプロセスの基準(共有・報連相・改善行動など)

評価の基準が曖昧なままだと、制度利用の不安を増幅させ、結果として多様な働き方そのものが敬遠されます。評価制度の見直しは“後回しにしない”ことが重要です。

④ 従業員の声を活かした改善サイクル

働き方の多様化は、導入して終わりではありません。運用を始めると、「相談しづらい」「状況が見えない」「忙しさが伝わらない」といった課題が必ず出てきます。このとき必要なのは、制度の正しさを主張することではなく、現場の困りごとを拾い、改善していく姿勢です。授業では、月末にまとまった時間を取り、1か月の振り返りを行いながらルーティンや環境を調整していると紹介していました。これは個人の工夫ですが、企業側も同様に、定期的に運用を点検し、改善していく仕組みを持つことが重要です。

  • ・アンケートや1on1で困りごとを収集する
  • ・改善内容を小さく試し、定着させる
  • ・ルールを更新し、周知する

このサイクルが回ると、「制度が現場に合わせて進化する」という信頼が生まれ、利用率にもつながります。

⑤ キャリア自律を支える学習・育成施策

オフィスに縛られない働き方が進むほど、個人の「選択」が増えます。講義では、オフィスがなくなることは“制限”が減る一方で、会社が一律に提供していた“保障”も減るという話がありました。 つまり、働き方の多様化は自由度を高める反面、個人には「自分で整える力」が求められます。そのため企業側には、社員が自分の目的や強み、合う環境を理解し、成長し続けられるように支援する役割があります。具体的には次のような施策が有効です。

  • ・自己理解(目的・価値観)を深める研修や対話の機会
  • ・自律学習を促す学習環境(eラーニング、学習時間の確保)
  • ・管理職向けの支援(部下の自律を支えるマネジメント)

働き方の多様化を「制度」だけで終わらせず、「人が育つ仕組み」と結びつけることで、施策は中長期の競争力につながっていきます。

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  • 株式会社ガイアックス 管理本部長

    山口県出身。立教大学経営学部2017年卒業。株式会社ガイアックス新卒入社後、同社で採用担当から危機管理、セキュリティ、労務等、投資先対応など徐々に管掌範囲を広げ、2021年に人事総務部長に、2023年に管理本部長に就任。社外活動では、新卒1〜3年目の頃はいくつかの社外コミュニティの運営に注力し、現在はスタートアップ企業やNPOなど複数社で、アドバイザーや監査役等を務める。
 

08働き方の多様化を実践している企業事例

働き方の多様化を成功させている企業に共通しているのは、制度導入にとどまらず、自社の人材構成や事業特性に合わせて運用を工夫している点です。ここでは、働き方の多様化を実践している企業の取り組みを、特徴ごとに整理して紹介します。

育児・介護と仕事の両立を支援する事例

女性社員が多い組織では、働き方の柔軟性は選択肢ではなく前提条件になります。日本生命保険相互会社は、こうした人材構成を踏まえ、保育所の整備やテレワークの活用など、育児と仕事の両立を想定した制度を整えてきました。ライフイベントによる離職を防ぎ、長期的なキャリア形成を支える仕組みとして機能しています。同じく両立支援の観点で注目されるのが、積水ハウス株式会社の取り組みです。男性の育児休業取得率100%を達成しており、制度の存在だけでなく「利用することが当たり前」という風土づくりに力を入れている点が特徴といえます。

▶︎関連記事:日本生命 公式サイト|ダイバーシティ・働き方の取り組み

▶︎関連記事:積水ハウス 公式サイト|ダイバーシティ&インクルージョン

テレワークを軸に柔軟な働き方を実現した事例

働く場所を固定しないことは、人材確保や生産性向上に直結します。サントリーホールディングスでは、テレワークを軸に、育児や介護と仕事を両立できる環境づくりを進めてきました。場所に縛られない働き方を可能にすることで、業務効率や集中度の向上にもつなげています。さらに一歩踏み込んだ事例が、NTTグループです。「リモートスタンダード」制度により、居住地を問わず働ける体制を整備しました。転勤や単身赴任といった制約を減らし、多様なライフスタイルを前提とした働き方へと舵を切っています。

▶︎関連記事:厚生労働省|働き方・休み方改善ポータルサイトーサントリーホールディングス株式会社ー

▶︎関連記事:NTTグループ|新たな働き方「リモートスタンダード」制度導入

働き方の柔軟化と生産性向上を両立した事例

働き方の多様化は、単なる柔軟性の確保ではなく、生産性向上とセットで考えられるケースもあります。ブラザー工業株式会社では、フレックスタイム制の柔軟化と業務効率化の取り組みを組み合わせることで、残業削減と生産性向上の両立を実現しています。時間ではなく成果に目を向ける姿勢が、社員の主体性を引き出しています。一方、株式会社丸井グループは、ノー残業デーや連続休暇制度、短時間勤務などを段階的に導入し、働く時間そのものを見直してきました。長年の積み重ねにより、有給取得率の向上や定着率改善につながっています。

▶︎関連記事:ブラザー工業 公式サイト|人材・働き方への取り組み

▶︎関連記事:厚生労働省|働き方・休み方改善ポータルサイトー株式会社丸井グループー

働き方の多様化を経営戦略に位置づけた事例

働き方の多様化を単なる制度改革ではなく、経営戦略として位置づけている企業もあります。カルビー株式会社は、「Calbee New Workstyle」のもと、フルフレックスタイム制やモバイルワークを導入しました。働き方の柔軟化を健康経営と結びつけ、社員の主体性やウェルビーイングを重視した取り組みを進めています。

▶︎関連記事:カルビー株式会社|働き方の多様化に関する取り組み


 

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09働き方の多様性を支援|Schoo for Business

Schoo for Business

Schoo for Businessは、オンラインでの柔軟な学習環境を提供することで、多様な働き方を支援する研修プラットフォームです。全国どこからでも、どの時間帯でも学習できるため、テレワークや時短勤務、副業を含むさまざまな働き方と両立可能です。約9,000本の講座があり、個人のスキルアップから全社的な研修まで幅広く対応できます。

受講形式 オンライン
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※2023年5月時点
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働き方の多様性に関するコンテンツ一覧

講座名 時間
テレワーク下でのラインケア - メンタルヘルスマネジメント 2時間
リモート時代のチームコミュニケーション 1時間
リモート新時代に先駆者が語る働き方NEXT 3時間
リモートワークで若手の心理的安全性を高めるには 1時間
リモート時代のマネジメントと信頼構築 1時間
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じつは心が潤う複業の話 53分
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子育てしながら はたらく 2時間
管理職のための育休サポートの心得 45分
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互いのキャリアを諦めない夫婦のあり方 1時間
子育て社員の不安解消講座 2時間45分
男性育休が日本を救うワケ - 法改正直前マインドセット特集 1時間30分

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10まとめ

働き方の多様化は、少子高齢化や価値観の変化、テクノロジーの進化といった社会の構造的変化に呼応した取り組みです。テレワーク、副業、育休、ジョブ型雇用などの制度導入は、多様な人材の活躍を促進する有効な手段ですが、制度だけでは定着しません。企業にはITツールの活用や人事制度の見直し、定期的な検証など、継続的かつ全社的な姿勢が求められます。本記事が、変化に対応しながら組織を前進させていくための参考となれば幸いです。

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  • 登壇者:越川 慎司様
    株式会社クロスリバー 代表取締役

    ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。

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