キャリア形成とは|社員のキャリアデザインを支援する取り組みを解説
近年、働き方の多様化が進み、労働を取り巻く環境が大きく変化しました。こうしたビジネス環境において、社員の自律したキャリア構築は、企業・個人の双方にとって重要な課題となっています。本記事では自律したキャリア形成が求められる背景や、企業が社員のキャリア形成を後押しする取り組みを解説します。
- 01.キャリア形成とは
- 02.社員のキャリア形成が重視される背景
- 03.社員のキャリア形成を支援するメリット
- 04.キャリア形成を支援する企業の取り組み
- 05.まとめ
01キャリア形成とは
そもそもキャリアとは「人が人生の主要な期間に渡って行う仕事・職業」のことです。即ちキャリア形成とは仕事・職業を形づくること、つまり個人が理想とする働き方や、将来目指したい姿を具体的にデザインすることを指します。役職や経歴だけでなく、どのようなスキルや経験を得ていくかを加味し、将来における自身の「ありたい姿」を具体的にイメージし行動することです。 キャリア形成は、後述する社会的な変化の影響もあり企業や上司が決めるのではなく、個々の社員が自律して取り組むべきことになってきています。そして企業に求められるのは社員の自律したキャリア形成を促す支援であり、これらの取り組みが自社の長期的な成長につながっていくのです。
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登壇者:田中 研之輔 様法政大学キャリアデザイン学部 教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数
02社員のキャリア形成が重視される背景
近年、キャリア形成が重視される背景には、次の背景が挙げられます。
- 1:雇用形態や働き方の多様化
- 2:人材の流動性の高まり
- 3:ホワイトワーカーに求められるスキルの変化
以降で詳しく説明します。
雇用形態や働き方の多様化
かつての日本では新卒で一括採用した社員に、さまざまな経験を積ませ、ゼネラリストとして育成することが一般的でした。しかし昨今では、IT領域をはじめとした様々な専門職種の需要の増加や成果重視の評価の広がりにより、ジョブ型雇用を推進し、より専門的な人材を雇用・育成する動きが加速しています。そのため、個々の人材はキャリア形成に意識を向ける必要が生じているのです。 加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で普及したテレワークなど、個人の労働観が多様化したことも大きな要因です。ワーケーションに代表される場所を選ばない働き方など、選択肢が増えるなか、人生を充実させる手段としてキャリア形成が重視されるようになりました。
人材の流動性の高まり
終身雇用が一般的であった時代、一つの会社で長く勤めることで、意識しなくとも一定のキャリア形成がなされていました。しかし、現代では人生100年時代が到来し、多くの企業が従来型の雇用スタイルの維持が現実的ではないと考えるようになりました。 終身雇用が見込めない状況において、個々の人材は自身のキャリア形成を見据え、より良い環境の職場を求めるようになりました。こうしたことを背景に、かつてほど転職に対する抵抗感はなくなり、結果として人材の流動性が高まっているのです。
ホワイトワーカーに求められるスキルの変化
企業が持続的な成長を続けるには、DXへの取り組みを強化し生産性を向上させることが欠かせません。ロボティクスやAIの活用により、労働力不足に対応することも求められます。定型業務はAIでまかなわれる反面、人間の側にはこうした技術を活用し発展させる高度なスキルが求められます。急速に変化する技術や環境に対応し、より専門的で高度なスキルを身に着け、人材としての価値を高めるには、積極的なキャリア形成への取り組みが必要となるのです。
03社員のキャリア形成を支援するメリット
社員のキャリア形成を支援することは、企業成長に欠かせない要素であることは前述しました。こうした取り組みを積極的におこなうことにより、企業には以下に挙げるメリットが見込まれます。
- 1:社員の動機付けを促す
- 2:会社へのエンゲージメントが向上する
- 3:自発的な行動を促すことができる
- 4:早期離職の防止につながる
詳しく解説します。
社員の動機付けを促す
企業がキャリア形成を支援することで、社員の多くがモチベーションを高め、意欲的に仕事に取り組むようになります。個々の社員が将来目指したい姿をイメージできれば、目の前の業務に取り組む理由が明確になり、具体的な行動に移しやすくなるのです。今の経験が将来の自身のキャリアにどのような影響をもたらすのか理解することにより、内発的な動機づけを促す効果が期待できるでしょう。
会社へのエンゲージメントが向上する
キャリア形成の支援により、会社へのエンゲージメントを高める効果も期待できます。キャリアを考えるプロセスでは、会社が自身に求めている役割についても深く考えるようになります。求められる行動を理解できることは、会社への貢献意欲にもつながるでしょう。自身の成長を実感できる環境は、日々の仕事に充実感をもたらします。こうした環境を提供してくれる会社に対し、多くの社員が愛着を深めていくのは自然な流れといえるでしょう。
自発的な行動を促すことができる
自身の目指すキャリアが明確な社員は、その実現のために自発的な行動をとるようになります。目標達成のために今何をすべきか、自分の頭で考え自走できる人材に成長していけるのです。会社が社員のキャリア形成を支援することにより、こうした自律した人材を長期的に育成することにつながります。社員がレベルアップすることで、結果として強い組織へと成長していけるのです。
早期離職の防止につながる
キャリア形成を支援することにより、会社は個々の社員が思い描いているキャリアを把握できます。可能な限り、それぞれが希望するキャリアに沿った業務配分や人材配置をすることで、離職防止につながるのです。キャリアに対する意識を高く持ってもらうことにより、視野も広くなります。たとえ、現在担当している業務が不得手で離職を考えたとしても、続けることが目指すキャリアの実現につながると理解できるのです。
04キャリア形成を支援する企業の取り組み
キャリア形成を支援する企業の取り組みについて具体的に紹介します。多くは研修やメンター制度の導入など、社員への関わりを深める取り組みです。あわせて制度面の整備に取り組むことで、相乗効果を期待できるでしょう。
キャリアデザイン研修を実施する
定期的にキャリアデザイン研修を実施し、自身のキャリアについて深く考える機会を提供することが大切です。年次を重ねるごとに仕事内容やポジションも変わるため、3年・5年・10年など、キャリアの節目で実施することでより効果を発揮するでしょう。キャリアデザイン研修は、目先の数値目標の管理ではなく、これからの職業人生を考えられる内容がふさわしいといえます。外部の研修サービスを利用することにより、良質なフレームワークを活用できるため、より精度の高い現状分析やキャリアプランの設計が可能です。
メンター制度を導入する
若年社員の支援に効果的なのが、メンター制度の導入です。入社時はもちろん、2年目・3年目にかけて先輩社員が手厚くフォローし手本を見せることで、後輩のキャリア形成に良い影響を及ぼします。また、若手社員がどのようなキャリアを思い描いているかを知ることは、会社にとっても有益なことです。メンターとなる先輩社員にとっても、後輩のキャリアに向き合うことにより自身を振り返り、さらなる成長へのきっかけとなることが期待できます。
1on1やキャリア面談の実施
若年社員だけでなく中堅以上の社員に対しても、キャリア形成支援の取り組みは必要です。1on1やキャリア面談を実施し、個々の社員への関わりを深めることが効果的な手法となるでしょう。しかし、こうした施策は定着に時間がかかり、形骸化しやすい点がデメリットです。効果的に実施するためには、キャリアセンターを設け1on1を制度化するなど、思い切った施策を講じることが必要かもしれません。
自己啓発の支援をおこなう
社員がキャリア形成を考えるなかで、現状で不足するスキルや経験に気付くことがあります。こうしたタイミングで適切な学習機会を提供することにより、スムーズな成長につなげていけるのです。企業の自己啓発支援の取り組みは多岐にわたります。外部研修の受講費用を負担したり、オンライン研修サービスをいつでも受講できる環境を整えたり、といったことが有効な支援となるでしょう。
目標管理制度を導入する
キャリア形成を意識した目標を設定することも効果的な手法です。人事評価に目標管理制度を導入すれば、日常業務レベルにキャリア形成を意識した行動を落とし込めます。評価のタイミングで、定期的に取り組み状況と成果を確認することで軌道修正が可能になり、効率的にキャリア形成を進めていけるでしょう。ただし、目標設定にはポイントがあります。単なる数値目標ではなく、現時点でのキャリア面の課題が克服できる具体的な内容であることが求められるのです。
キャリア形成を支援する人事制度を構築する
社員のキャリア形成を支援する人事制度を構築することで、柔軟な働き方や人材活用が可能になります。社内FA制度や異動自己申告制度の導入で、人事異動に社員の希望を反映させることも一つの方法です。リモートワークやフレックス制度により、個人の事情に配慮した働き方を提供できるでしょう。退職した「元社員」に対しても、アルムナイやジョブ・リターン制度があることで、再び貢献してもらえることも可能になります。
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05まとめ
社員のキャリア形成を積極的に支援することは自律した人材を育成し、結果として組織力の強化につながるものです。キャリア支援の内製化は多くのリソースが必要で、時間と手間がかかる割に思うような効果が見込めないことも多いでしょう。費用面の負担は生じますが、外部サービスの利用が長期的な視点での有効な解決策といえます。特に自己啓発の支援では、オンライン研修サービスの活用が効果的です。スキル不足を実感したときに、会社がタイムリーな学習機会を提供してくれることは、社員にとって心強い支援となるでしょう。