公開日:2022/03/11
更新日:2022/09/21

人間関係論とは?非公式組織が従業員に与える影響を徹底解説

人間関係論とは?非公式組織が従業員に与える影響を徹底解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人間関係論とは、経営組織の生産性や業績に人間関係が大きく関与していることを表す理論です。本記事では、人間関係論の内容から人間関係論に基づく企業風土の改善方法まで詳しく解説していきます。

 

01人間関係論とは

「人間関係論」とは、1924年から1932年にかけて、アメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた一連の実験を基に発展した考え方です。経営組織の生産性は、社員教育への投資・高水準の処遇・高い業績目標・厳しい規律などさまざまな要因が挙げられます。こうした要因に加えて、経営組織の生産性や業績が人間関係によって大きく影響されるということ、そして、その因果関係を体系化した理論の総称を指します。

日本企業に見る人間関係論の存在感

日本企業においては、懇親会やQCサークルに代表される小集団活動が、生産性の向上に寄与してきました。QCサークルとは、製造業や小売業などにおいて、現場の従業員が品質改善に取り組む自発的な活動です。 トヨタの「カイゼン活動」については、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。こうした活動は、人間関係論を意識的に取り入れたというよりは、自然発生的に生まれてきたものです。こうした活動が、かつて日本を「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言わしめるまでに日本製品を押し上げた一因でした。

 

02ホーソン工場実験に見る労働に必要な要素

ホーソン工場実験が行われるまで、マネジメントの理論は、フレデリック・テイラー氏が提唱した科学的管理法が主流を占めていました。人間は、経済的合理性に基づいて行動するという前提(経済人仮説)であったものが、さまざまな観察実験をするなかで、経済的な要素だけではないことが判明したのです。 ホーソン工場実験を主導したのは、ハーバード経営大学院の教授、ジョージ・エルトン・メイヨー氏でした。メイヨーは、実験のなかで人間が感情に基づいて行動するという仮説(社会人仮説)を発展させ、感情や人間関係が生産性に大きく影響することを発見したのです。

照明実験

照明実験は、作業環境が生産性にどのような影響があるかを調査する目的で始められました。この実験にメイヨーは直接関わってはいませんが、後の彼の実験に大きな影響を与えました。 実験では、労働者を作業時の照明の条件を変えて作業するグループと、一定の照明で作業するグループに分けて、作業効率を測定しました。明るい環境にしたことで作業効率は向上しましたが、逆に暗い条件にしても作業効率が上昇したのです。実験の結果、作業環境に生産性は影響しないという結論に達しました。

リレー組み立て試験室

本実験では、疲労と生産性の関係性に着目し、補足的な条件として、賃金制度や超過労働時間による割増賃金、さらに作業部屋の室温との関係性についても調査がされました。 「リレー」とは、電気回路を制御するための装置のことですが、それを製造する際の照明以外の作業条件に焦点が当てられたのです。しかし、照明実験同様に、これらの条件の変動と生産性の間に有意な相関性は発見できませんでした。そのため、仕事に直結する作業条件を変えても、生産性向上にはつながらないのではないか、と考えられるようになっていきます。

面接調査

その後、メイヨーは、ウェスタン・エレクトロニック社の労働者2万人に対して、長期間にわたり、丹念に聞き取り調査を行いました。すると、面談を行い続けていくうちに徐々に労働者の生産性が上がっていくという不思議な現象が起きたのです。 そこでメイヨーは、労働者が他者から関心を持って接してもらったことで、生産性の向上につながったのではないかと推論を立てました。人間の感情が生産性に影響を与えるという考え方がここで生まれてきたのです。

バンク配線作業監察室

次に、メイヨーは職種ごとにいくつかのグループに分け、バンク(電話交換機)の配線作業を行う実験をしました。この実験の主な目的は、非公式な集団が職場に存在し、生産性に影響を与えるという仮説の証明と利害関係のない監督者を立てて、生産性に影響を与えるか否かを観察することでした。 実験の結果、個人的な友好関係に基づいて自然発生的な非公式集団が存在し、独自の規範を持つことが分かりました。また、監督者と労働者は、防衛と共存の関係にあり、個人間の関係が生産性や品質に影響を与えることも判明したのです。つまり、労働者の能力的な差異によるものではなく、人間関係が生産性に影響を与えることが結論付けられたのです。

 

03人間関係論に基づく企業風土の改善方法

ここまで人間関係論の考え方について見てきましたが、マネジメントに活かすためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。日本企業において、人間関係論的なマネジメントが無意識に行われてきたことを前章で見てきましたが、それらをより意識的に行う方法をここから見ていきます。

社内にコミュニケーションの場を作る

第一に、社内で意識的にコミュニケーションの場を作ることが効果的です。例えば、期初や期末といった目標立案・振り返りのタイミングで、社員のモチベーションを上げておくことは重要です。 レクリエーションなどのイベントを行うのも、好例として挙げられます。ただし、突然イベントの企画をしても人が集まらない可能性があるため、会社の設立記念日や全社会などのイベントに際して行うとよいでしょう。また、こうしたイベントを企画するチーム自体が非公式組織のひとつと言えます。

相談窓口を設ける

従業員が抱えている悩みを受け止める場を作ることも重要です。社内の従業員を活用する場合には、メンター制度を取り入れると良いでしょう。メンター制度とは、職務遂行に直接関係のない社員同士で助言者・相談者の組み合わせを作ることです。 ただし、メンター制度は形骸化しやすい制度であるため、目的(キャリア・メンタルケア)や対象(新入社員、管理職、全社員)を明確にしたうえで、関係者への周知に努めます。 社内の利害関係で気軽に悩み相談ができない場合は、カウンセリングを専門的に行っている機関を活用するなどして社外に相談窓口を設けるのも良いでしょう。

社外活動を企画する

同好会や勉強会などの社外活動を企画するのも、ひとつの方法です。スポーツやボランティアなど、社内には共通の趣味を持つ社員がいるはずです。こうした同好会は、一般社員からはなかなか声が集まりにくいため、管理職が積極的に声掛けすると良いでしょう。また、競合相手や取引先の動向など、身近なテーマをもとにした勉強会も有用です。

 

04人間関係論から考える理想的な人材の育て方

人間関係論に基づく企業風土の改善方法を理解したところで、人材育成に活かすためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。ホーソン工場実験から見えてきた発見を、人事視点で実行できる施策を見ていきます。 誠実かつ人望のある人材を管理職に登用する

管理者に昇進させる社員は、業績だけでなく、対象者の人柄やチームマネジメント経験を考慮して登用することが重要です。バンク配線作業監察室の実験から見えてきたように、監督者と作業者の間には、共存・防衛の関係があり、良好な関係がある場合のほうが、よりミスが少ないことが判明しているためです。

従業員一人ひとりに明確な目標を持たせる

従業員一人ひとりに明確な目標を持たせることも重要です。個人のモチベーションが生産性に影響を与えることは前述してきましたが、そのためには人間関係だけではなく、前向きに取り組める目標も必要なのです。従業員がお互いの目標を共有し、目標達成に向けて協力し合える風土をつくっていきましょう。

従業員研修を実施する

人間関係論を人材育成に活かすためには、従業員に研修を実施することも重要です。メイヨーの考えは、アサーションやコーチングなどのコミュニケーション技法やリーダーシップ開発などの研修テーマが起源のひとつとなっています。 こうしたことを踏まえて、新任管理職研修、コーチング研修、解決志向研修など研修対象者にあったプログラムを選定するようにしてください。

 

05人間関係論を重視するときの注意点

人間関係論が生産性に好影響を与え、人材育成にも役立てられるメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここからは、人間関係論を活かしたマネジメントをする際に、気をつけるべきポイントについて解説します。

作業効率の低下には気を配る

人間関係論的なマネジメントが、作業効率が低下していないかなど、定期的なモニタリングが必要不可欠です。 実際のところ、人間関係を重視したマネジメントが、作業効率に良い影響を及ぼすことは他の実験でもわかってきています。例えば、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究では、職場の「心理的安全性」が生産性に良い影響を与えるという結論が出ました。 とはいえ、どのような条件下において、どの程度の影響力があるのか定量的にわかってはいません。人間関係論的マネジメントのみで、自ずと生産性が上がるわけではないため、作業効率にどのように影響を与えているかを、チェックしつつ運用していくようにしましょう。

メンバー以外の人とのコミュニケーションも忘れない

非公式組織のメンバー内部の人とだけではなく、外部とのコミュニケーションを取るのも忘れないようにしましょう。メンバー間の親密さが、即、生産性の向上につながるわけではありません。非公式組織の同質性が高すぎる場合、他グループとの軋轢を生むおそれがあることを念頭に置いておきましょう。


 

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06まとめ

非公式組織が従業員に与える影響について解説してきました。人間関係論は、生産性向上につながったり、人材育成に役立てられると言えます。ぜひ本記事を参考に、自社のマネジメントに活用する際の参考にしてください。

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    ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

    1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。

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