トータル人事制度とは?概要やメリットと課題について解説
トータル人事制度とは、人事評価や賃金・賞与、人材育成などの制度がトータルに連動した人事制度です。 本記事ではトータル人事制度の概要やメリット、また現状の課題について紹介します。これからトータル人事制度を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.トータル人事制度の概要
- 02.トータル人事システムを導入するためのステップ
- 03.トータル人事制度を導入するメリット
- 04.トータル人事制度の課題
- 05.トータル人事制度の効果的な運用方法
- 06.まとめ
01トータル人事制度の概要
経済・経営環境がめまぐるしく変化する中で、企業は人事パラダイムの転換を強く求められています。特に、近年では年功序列から成果主義への流れが大きく加速したこともあり、従来の人事制度を全面的に改めて、お互いをリンクさせた新たな人事制度を導入する企業が増えています。ここでは、トータル人事制度に含まれる主な人事制度について解説します。
リアルタイム評価
リアルタイム評価とは、時間を空けずにリアルタイムに部下にフィードバックをすることで、その成果を高め、適切な評価を下すことを狙いとした人事評価手法です。 タイムリーなフィードバックにより、具体的に業務の振り返りができ、改善点や新たな気づきの発見につながりやすいことがリアルタイム評価の特長です。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、社員の能力をランク付けしない人事評価手法のことです。社員をランク付けする人事評価手法は、社員同士の相対評価となるため、「納得感を得にくい」、「期間全体ではなく評価直前の行動・成果が重視されやすい」などの課題がありました。そういった問題を解決するために、社員ごとに短期の目標を設定するノーレイティングという評価手法が生まれたのです。 ノーレイティングでは、細かく目標設定やフィードバックを行うため、その時点の状況に合わせた適正な評価を下すことができ、従業員の評価への納得感も高まります。また、社員ごとに目標が設定されるため、リモートワークなど多様な働き方をする社員にも対応しやすい点もノーレイティングのメリットです。
360度評価
360度評価とは、上司だけでなく同僚や他部署、取引先など多くの関係者からも評価してもらう人事評価手法です。上司だけが評価する手法では、目に付きにくい普段の行動など、見落としによって正しい評価ができないこともあります。 一方、多角的な評価が集まる360度評価であれば、社員が現場で発揮している能力をより正確に把握することができ、上司のマネジメント能力や人間関係に左右されない公平な評価を実現します。また、社員が別の社員の評価に関わることで、目標や成果、普段の行動などに対する当事者意識も高まりやすくなる傾向にあります。
バリュー評価
バリュー評価とは、会社の価値観を理解して、いかに行動できたかを評価する人事評価手法です。 バリュー評価では、仕事の結果だけではなく、普段の行動や成果に至るまでの過程も評価します。そのため、成果を出している従業員であっても、行動指針に適した行動ができていなければ、高い評価を与えることはできません。ただし、行動指針の基となる企業の価値観は、抽象的なものが多いため、従業員に求める行動指針を明確にしておく必要があります。
ピアボーナス
ピアボーナスとは、「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を掛け合わせた造語で、従業員同士がお互いで報酬を贈り合うことのできる仕組みをいいます。日々の業務の中の行動や結果を、従業員同士で評価し、報酬を贈り合うことができるのがピアボーナスの特徴です。日本では、あまり認知されていない評価手法ですが、Google社が社員を評価する仕組みのひとつとして導入していることから、注目が集まるようになりました。
02トータル人事システムを導入するためのステップ
トータル人事システムの導入は、下記の3つのステップを踏みながら、正しく進めることが重要です。ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。ぜひ、自社でトータル人事システムを導入する際の参考にしてください。
業界動向を含めた調査や分析を行う
まずは、トータル人事システムの方向付けを行うために、業界動向を含めた市場調査などを総合的に進め、問題点を明確にしたうえで課題としてとりまとめます。この際、経営層への個別面談および社員の意識を探るためのモラール調査を行うことで、より調査効果を高めることが可能です。
人事制度の計画を立てる
次に、調査・分析結果をもとに基本人事制度のフレームワークを設計し、職務調査を実施します。さらに、調査結果に基づいて職務および職能基準の策定を行い、基本人事制度をはじめとした人事考課などの諸制度を作成します。
人事制度導入の定着をはかる
新たな人事制度が作成できたら制度の運用を開始し、定着を図ります。また、制度導入後は、定期的に導入効果を測定することも忘れてはなりません。効果的な人事制度を運営するためにも、振り返りを行い、改善点がないかどうかを確認しましょう。
03トータル人事制度を導入するメリット
企業がトータル人事制度を導入するメリットは、大きく分けて2つあります。それは、「従業員のモチベーション向上」と「労働力アップによる企業の業績拡大」です。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
モチベーションアップにつながる
トータル人事評価制度を導入し、適材適所の人事配置を行ったり、適切なインセンティブを付与したりすることで、従業員は「この会社では努力すれば報われる」と感じるようになり、会社へのエンゲージメントが高まります。また、同時に「きちんと頑張ったことや、成果を見てもらえている」という意識も強められるため、従業員のモチベーション向上にも期待ができます。
企業の業績向上につながる
トータル人事評価制度を導入することで、労働力アップが期待できます。なぜなら、従業員が給与・待遇を上げるために、自主的に労働意欲を向上させるためです。 成果を出し続ける社員が増え、組織全体の労働力が向上することで、企業の業績にも良い影響を期待できるでしょう。
04トータル人事制度の課題
トータル人事評価制度は、昨今多くの企業で導入が進められている一方、思うような運用ができずに、効果を活かせていない状況が見受けられます。ここでは、企業が抱えるトータル人事制度の課題について紹介します。
トータル人事制度に対する納得度が得られない
社員にとってトータル人事評価制度は、昇給や昇進に関わる重要な項目です。そのため、社内全体でしっかりと運用ができていなければ、不満が出やすくなる傾向にあります。また、社員が考える評価してほしいポイントと、会社の評価視点が異なる場合、社員のモチベーションや目標達成度にも影響を与えるため、運用前には、社員からの納得感を得られるかどうかを入念に確認しておくことが肝要です。
企業が求める人材が思うように育たない
トータル人事評価制度は、複数の評価手法を連動させて人事評価を行うことから、評価基準を明確化する必要があります。しかし、評価基準の明確化は、裏を返せば基準に沿った人材以外の評価が難しくなることでもあります。その結果、同じようなタイプで画一化された人材ばかりの環境になりかねません。 また、評価対象にならない分野で高い能力をもつ人材にとっては、それを発揮する機会が失われます。さまざまな評価手法を組み合わせたからといって、必ずしも企業が求める人材の育成ができるわけではありません。人材のバリエーションや事業、組織の役割を十分に整理したうえで評価すべき軸を整理し運用する必要があります。
05トータル人事制度の効果的な運用方法
せっかく理想的なトータル人事制度を設計したとしても、正しく運用できなければ意味のないものとなってしまいます。トータル人事制度の導入を成功に導くためにも、ここではトータル人事制度の効果的な運用方法について理解を深めておきましょう。
管理職が適切な人事評価を下しているか確認する
トータル人事評価制度は、評価者である管理職の判断の自由度が高すぎてはなりません。特に数値で評価しにくいものについては、管理職によって判断が変わる可能性があります。 そのような体制では公平に判断することができず、また公正な評価になりません。そのため、トータル人事評価制度を作成する際には、担当者間ですり合わせを図りながら、評価基準や項目を策定すると良いでしょう。
適切な人事評価を実施する
トータル人事評価制度は、企業がそれぞれに設定した基準をもとにしています。そのため、昇格基準を明確にするなど、社員の納得感が得られるような運用にしなければ社員のモチベーションは上がりません。評価する項目や基準、方法や時期を明確化したうえで、分かりやすく共有する必要があります。
業績を理由に昇格をストップさせない
トータル人事制度の運用がうまくいかないケースのひとつに、業績を理由に、昇格をストップしている状況が指摘されています。 このような制度運用のもとでは、個々の従業員の努力よりも、業績に人事評価が左右されてしまうため、従業員のモチベーション低下を招く可能性も考えられます。 先行き不透明な業績を理由に昇格をストップしてしまうことがないように、注意してください。
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06まとめ
本記事では、トータル人事評価制度の概要や導入のメリット、またトータル人事評価制度の課題について解説してきました。 トータル人事評価制度は、円滑に運用することで、従業員のモチベーションや企業の生産性の向上といった大きなメリットを得られます。一方で、公平かつ客観的な評価がなされなければ、従業員の不満が募るおそれがあります。ぜひ、本記事を参考に自社の目指すビジョンや社風に応じて、適切な人事評価手法を取り入れてみてはいかがでしょうか。