ネットワーク型組織とは?メリットやデメリットと企業事例を紹介
ネットワーク型組織とは、中央集権的な組織と異なり、強力な権限を持つリーダーがいないフラットな組織です。本記事では、ネットワーク型組織の特長、メリット・デメリット、企業事例等について紹介します。これからの組織のあり方について検討している方は、参考にして下さい。
- 01.ネットワーク型組織とは?
- 02.ネットワーク型組織のメリット
- 03.ネットワーク型組織のデメリット
- 04.ネットワーク型組織を実現するための施策
- 05.ネットワーク型組織の事例
- 06.まとめ
01ネットワーク型組織とは?
企業の組織体系として、大きくは「ネットワーク型組織」「階層型組織」の2つが存在します。 その中で「ネットワーク型組織」とは、特定のリーダーを設定せずに、チームメンバーがフラットな立場として、チームの皆でアイディアを出し合いながらひとつの仕事に取りくむ組織のことです。特徴としては、自由な意見が言いやすいことや、素早い意思決定、また立場に関係なく業務に取り組みやすいことがあげられます。 そのため、比較的規模の小さい組織や風通しの良さを重要視するスタートアップ企業で採用されるケースが多いものです。また、チャットやグループウェアなどの発達によりITを活用したコミュニケーションも浸透してきたことで、ネットワーク型組織の構築は以前よりも容易になっています。
階層型組織との違い
次に「階層型組織」とは、その名の通り立場が階層構造をしている組織のことです。 図にするとピラミッドのようになるため「ピラミッド型組織」、また組織の序列が組織の形として表れていることから「ヒエラルキー型組織」と呼ぶこともあります。 特徴として、組織内の序列、上下関係がはっきりしているため責任、権限の所在が明確であることや、トップダウンで組織を動かしやすいことが挙げられます。 そのため、官僚機構や比較的規模の大きい組織で採用されています。一方、組織が大きくなるほど階層も増え、情報伝達に時間が掛かります。 このような階層型組織の問題を解決するために登場したのがスピーディーかつ柔軟に対応できるネットワーク型組織です。
ハイブリッド型組織とは
前述の通り、小規模の企業であれば各部署は自立した意思決定を行うネットワーク型組織として、十分に機能します。しかし、企業の成長に伴って必然的に規模を大きくしていく必要があり、その際には、新規の新たな仲間も迎えることになるはずです。そうなると責任者を立てる、一定の階層が必要となります。 ハイブリット型組織とは、この「階層型組織」を大きく崩さずに、組織間の壁(サイロ)を超えた連携をすることで情報を分断せずに迅速な意思決定をする組織です。 具体的には、リーダーと経営層という「階層型組織」は存在しながらも、各リーダーがチーム間の枠を超えて連携することで、リーダー同士の関係性はネットワーク型組織に近いものになります。
02ネットワーク型組織のメリット
ここまでは、それぞれ「ネットワーク型組織」「階層型組織」「ハイブリット型組織」の3つの組織体系について説明しました。 次に「ネットワーク型組織」が持つメリットについて見ていきましょう。主なメリットとしては、「闊達な意見交換ができる」「アイディアの創出につながる」「スピード感のある意思決定が可能になる」「他部署との情報共有がしやすい」の4点となります。
闊達な意見交換ができる
1つ目のメリットとしては、各メンバーが役職に囚われず、上下の関係のないフラットな関係性であるため、闊達な意見交換ができることです。 また、ネットワーク型組織では、上下関係はもちろん分野や部署も関係なく交流できます。部門内での議論では出てこない意見も出てくるようになれば、より議論が発展します。ネットワーク型組織をつくる際には、部署に囚われず、多様な社員と交流を持てる機会をセッティングしたり、仕組みづくりを意識しましょう。
アイディアの創出につながる
2つ目のメリットは、個々人が自由に形成したネットワークを通して部門間の情報共有が促進され、そこからイノベーションにつながるアイディアの創出につながることです。 また、創出されたアイデアが現場主導で即座に実現できるようになることで、組織の中にアイデアの創出から実現までのサイクルを、持続的に生み出すメカニズムが生まれるようになります。
スピード感のある意思決定が可能になる
3つ目のメリットとしては、課題に応じて自律的にチームが作られ、委譲された権限、あるいは意思決定者に直接アプローチすることによって、スピーディーに意思決定を行えることです。 階層型組織の場合、現場で新たなアイデアが浮かんだら自身で企画書を作成し、各階層の組織長に何度も上申すれば、最終的には役員・意思決定者へアプローチできます。 ネットワーク型組織の場合、現場でアイデアが浮かんだ場合、個人が自律的にスキルのあるチームを作りながら、中間階層を挟まず、最終意思決定者に直接判断を仰ぐことができます。
他部署との情報共有がしやすい
4つ目のメリットとしては、上からの命令・指示もなく、部署や役職も関係なく交流が持てるため、部署を飛び越えた情報共有がしやすいことです。 このように情報共有をより広く強固にすることで、各メンバーのつながりが強くなり、持っているスキルや知識の共有が自然に起こるでしょう。相互学習の環境が構築されることで、社員同士がお互いを高め合うことができます。 ネットワーク型組織を導入することで、社員ひとりひとりが新たなスキルや知識を獲得する機会が自然と増えると期待されます。
03ネットワーク型組織のデメリット
意思決定が早く、アイデアが創出され、情報連携がしやすい風通しのよい雰囲気の組織は非常に魅力的ですが、ネットワーク型組織にはデメリットもあります。 ここからはネットワーク型組織が持つ「責任の所在が曖昧になる」「企業組織としてのまとまりがなくなる」の2つのデメリットについて説明していきます。
責任の所在が曖昧になる
1つ目のデメリットとしては、階層型組織のように階層構造があるわけではないネットワーク型組織は役割分担や責任の所在が曖昧になりやすい点です。 役割分担や責任の所在が曖昧であるがゆえに、会社全体が危機に陥った際には空中分解する可能性もあります。そのため、組織のメンバーたちは高い責任感や自律的に行動ができるようにならなければなりません。
企業組織としてのまとまりがなくなる
2つ目のデメリットとしては、階層といった組織のメンバーを縛る制約がないため、各メンバーがバラバラな行動をとって企業組織としてのまとまりがなくなるリスクがあることです。少規模の組織であればメンバー間の意識も統一されますが、組織の拡大に伴ってメンバーが増えることで意識の統一が図れなくなる可能性があります。そのため、組織の目的を明確に定めるとともに、組織のメンバーに対して責任感や自己管理能力、問題解決力といった能力を高めていく必要があります。
04ネットワーク型組織を実現するための施策
ここまでネットワーク型組織のメリット、デメリットの説明をしてきました。 そのメリット・デメリットを理解したうえで、実際にネットワーク型組織へ移行するにあたっていくつか必要なポイントがあります。 ネットワーク型組織を実現するにあたって具体的な施策である「平等な関係を築く環境整備をする」「ネットワーク型組織に適した人材育成に注力する」「部署の垣根を超えた交流を定期的に行う」の3点を説明していきます。
平等な関係を築く環境整備をする
1つ目の施策は、会社全体として平等な関係を築く環境整備です。トップダウン型のピラミッド型組織では、上下関係をしっかりと決めることが有効ですが、ネットワーク型組織においてはそれを良しとせず、フラットな関係性が求められます。 上司だからと言って部下に指示を出すだけではなく、上下関係を気にせず、それぞれが自由に意見を言える環境を作るようにしましょう。上の立場の人も積極的に自分で手を動かして、仕事を進める心がけが大切です。
ネットワーク型組織に適した人材育成に注力する
2つ目の施策は、既存の階層型組織から移行するにあたって少人数のプロジェクトで個人の能力を高め、ネットワーク型組織に適した人材育成をすることです。 少人数のプロジェクトは大人数のプロジェクトに比べると各自の裁量権も大きく、コミュニケーションの取りやすい環境づくりに有効です。
部署の垣根を超えた交流を定期的に行う
3つ目の施策は、分野や部署に囚われずに垣根を超えた交流を定期的に行うことです。ネットワーク型組織の大きな魅力は風通しの良さにありますが、それもメンバー同士が活発にコミュニケーションを取る風土があってのことです。 そのため、積極的にコミュニケーションを取れるような環境づくりに努めましょう。定期的な交流会はもちろん、フリーアドレス制を設けて仕事の席の固定化を避けるのも有効です。
05ネットワーク型組織の事例
前章では、ネットワーク型組織へ移行する際のポイント及び施策を説明してきました。 最後に実際にネットワーク型組織を実行している「トヨタ自動車株式会社」「花王」「株式会社21(トゥーワン)」について、紹介をします。各社がどのように実行しているかの事例を参考にしてください。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社では、ネットワーク型組織のひとつのあり方として、ケイレツというネットワークで実現しています。ケイレツとは自動車業界における自動車メーカーを頂点にした垂直統合型の企業間関係です。 ケイレツで一台の車を組み上げるまでの必要な機能を分担しながら、サプライヤーなどをうまく活用して大きな戦略を描き、その中で自由な探索をさせています。
花王
花王ではネットワーク型組織変革として、これまで問題解決に即応できる組織を目指した組織及び職位のフラット化、企業内での情報システムによる情報共有などを推進しています。また、社内での活発な人事交流や、商品開発研究と基盤技術研究組織が共同して研究を推進するマトリックス運営といった、組織横断的な運営を行っています。
株式会社21(トゥーワン)
株式会社21では、管理職や組織の階層を設けずに、ネットを利用した全員参加型の意思決定システムを採用しています。ネットワーク型組織の経営手法で有名な、メガネ販売チェーンです。社員による100%共同出資・共同経営であり、社長も特別な権限をもたない、究極のネットワーク型組織といえます。
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06まとめ
本記事ではネットワーク型組織の概要やメリット・デメリット、移行する際のポイント、企業事例について、紹介してきました。 階層型組織、ネットワーク型組織のどちらにもメリット、デメリットがあることから、企業の拡大に伴って両者の長所を組み合わせていく必要があります。組み合わせ方法は企業によりさまざまです。本記事を参考に、各社に最適な組織のあり方を検討してみてはいかがでしょうか。
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1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。