KJ法とは|ブレインストーミングを活用するやり方や実施のメリット・デメリットを解説
KJ法は、断片的な情報やアイデアを効率よく整理する際に使われる手法のことです。 50年以上前に川喜田二郎さんによって提唱された考え方ですが、今でもビジネス現場で頻繁に使われています。 この記事では、KJ法のやり方やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
- 01.KJ法とは
- 02.ブレインストーミングを成功させるためのルール
- 03.KJ法のやり方や手順
- 04.KJ法のメリット
- 05.KJ法のデメリット
- 06.KJ法で役立つ便利なアプリやツール
- 07.ブレストが学べるSchooのオンライン研修
- 08.まとめ
01KJ法とは
KJ法は、東京工業大学名誉教授の川喜田二郎さんによって提唱された、アイデアを整理するための手法の一つです。名前の由来は、川喜田二郎さんの頭文字(K・J)です。
元々は、文化人類学のフィールドワークで得た情報を整理する目的で生み出されました。しかし、アイデア創出のための「発想法」として、優れた効果があることが判明し、現在のようにビジネスの現場でも頻繁に使われるようになっています。
アイデアやデータを整理してまとめる手法
KJ法は、ただ情報やアイデアを整理するだけでなく、新しいアイデアの発見につながることもあり、「発想法」とも呼ばれます。
基本的にアイデアをまとめられる「場所」と「紙」と「ペン」があれば、どこでも実施することが可能です。
アイデアの洗い出しにはブレインストーミングを活用する
KJ法とブレインストーミングを混同してしまう方がいますが、実際は全くの別物です。 ブレインストーミングは、基本の決まりに沿って、自由にアイデアを出し合う思考法のことをいい、KJ法は、ブレインストーミングで出たアイデアや情報を整理する手法のことをいいます。
そのため、ブレインストーミングを行ってからKJ法を行うといった、基本のセットとして覚えておきましょう。 また、ブレインストーミングは10人以下で行うのが基本です。
02ブレインストーミングを成功させるためのルール
KJ法の前に、ブレインストーミングを円滑に進めていくための基本原則について解説します。ブレインストーミングでは基本的に、以下の3点に基づきアイデアを出していきます。
- ・自由にアイデアを出し合う
- ・質より量を意識する
- ・アイデアに対する判断や決断をしない
それぞれについて、詳しく解説します。
自由にアイデアを出し合う
ブレインストーミングの目的は「とにかく沢山のアイデアを出すこと」です。 思いついた考えをどんどん言いましょう。
「こんな意見を言って良いのか」「こんなアイデアで笑われないだろうか」などは、一切考える必要がありません。ブレインストーミングでは、思いつきで出た意見が全く新しい発想のカギになることはよくあります。
質より量を意識する
ブレインストーミングの次に行うKJ法では、似たアイデアを組み合わせてグルーピングを行います。 新しいアイデアを生み出すためには、ブレインストーミングの段階で、できるだけ多くの情報を出しておくことが望ましいです。
「質」よりも「量」をとにかく意識しましょう。 実現できるかできないかではなく、とにかく意見を出すことに集中するのがコツです。
アイデアに対する判断や決断をしない
ブレインストーミングを円滑に進めるために、批判やその場で結論づけるような判断は禁止です。 批判や判断は、自由な意見を出しにくい雰囲気を作ったり、参加者を委縮させてしまう危険性があります。全員が意見やアイデアを出しやすくなるように、「どのような意見でも歓迎」といった空気を協力して作り出しましょう。
03KJ法のやり方や手順
ここからはKJ法の手順を見ていきます。 まず、付箋とペン、ホワイトボードを用意しましょう。 ホワイトボードがない場合は、大きな紙でも代用できます。
KJ法のやり方は、大きく以下の4ステップです。
- ・アイデアをまとめてカードに記入する
- ・カードをグループに分ける
- ・グループ同士の関係を図解化する
- ・図解化した関係を文章でまとめる
ブレインストーミングを含めた、KJ法の一連の流れについて解説します。
1. アイデアをまとめてカードに記入する
まずはブレインストーミングを行います。
主題に対して、頭に浮かんだことをなんでも付箋に書き出していきます。 「ブレインストーミングを成功させるためのルール」でお伝えした3つのことを意識しながら、可能な限り意見を出しましょう。
付箋に書き出す際は、1枚につき1つの事柄を書くように注意してください。付箋の量は気にせず、とにかく沢山の情報を付箋に書き出します。
2. カードをグループに分ける
次にカードを整理して、アイデアを分類していきます。 書き出したカードをホワイトボードに貼り出し、全体を眺められる状態を作りましょう。 直感で構わないので、関連している内容のものを小さくグルーピングしていきます。各グループの付箋は2~3枚程度を目安にするとよいでしょう。 完了したら、小さなグループごとにタイトルをつけてください。
もしグルーピングできないものがある場合は、無理やりグルーピングせずに、そのまま残しておきましょう。
小さくグルーピングができたら、さらに大きくグルーピングを進めていきます。 大きなグループにもタイトルをつけることを忘れずに、10グループ程度になるまでグルーピングを続けましょう。
3. グループ同士の関係を図解化する
大きなグルーピングができたら、矢印や記号を用いて因果関係や対立など、グループごとの関係性を図解化していきます。
例えば、以下のような表し方があります。
- 因果関係:→
- 類似:≒
- 対立:←→
- 関係性の強さ(弱い・強い):⇢、⇒
これらをあくまでも一例として、使いやすい記号を使うと良いでしょう。
4. 図解化した関係を文章でまとめる
最後に、図解化したグループの関係性を文章でまとめましょう。 グループのカードに書かれている言葉を可能な限り使うのがコツです。
文章化を行う際は、重要度が高いと思われるグループから行うことでスムーズに書き出しやすくなります。 いくつかのチームに分けて文章化を行うことで、様々な観点から文章化を行うことができるので、新しいアイデアが出やすくなるメリットがあります。
04KJ法のメリット
KJ法には、5つのメリットがあります。
- 誰でも実施しやすい
- 情報を論理的にまとめられる
- 課題の本質が見える
- 少数意見を活用しやすくなる
- 新しいアイデアを生むきっかけになる
それぞれについて、詳しく解説します。
誰でも実施しやすい
KJ法を実施する上で、特に決まったスキルは求められていません。 また、ペンと付箋さえあれば、どこでも実施可能です。誰でも取り組める汎用性が高い手法だといえます。
情報を論理的にまとめられる
KJ法ではグループ分けなどによって、情報を論理的(ロジカル)にまとめられます。 ロジカルシンキングは、1つの事象を分解、整理して、それぞれの関係性を筋道立てて結論を導き出す思考法です。 KJ法を行うことにより、ロジカルシンキングのステップがスムーズに行えます。
課題の本質が見える
KJ法を実施すると、課題の本質が見えやすくなります。 論理的に情報を整理し、参加者から出た意見やアイデアを分けることで、課題や問題点などをわかりやすく洗い出すことが可能です。
少数意見を活用しやすくなる
一般的な話し合いでは、多数決で意見が決まりがちです。
一方KJ法では、少数の意見でも多数の意見と同じように扱われます。 少数の意見を取り入れることによって、偏りのないアイデアを組み立てることができるのです。
新しいアイデアを生むきっかけになる
KJ法は、自由にアイデアを出すことができるため、バイアスがかからず新しい考え方や発想が出やすいです。
KJ法の手順の中には、アイデア発想のきっかけとなるタイミングがいくつもあります。グルーピングの際に、思いもよらないアイデアが出てくることも珍しくありません。
05KJ法のデメリット
KJ法のデメリットは、以下の2つです。
- 情報の整理に手間がかかる
- アイデアが参加者の特性に依存する
情報の整理に手間がかかる
誰でも取り組める作業の手軽さはありつつも、出た意見を付箋にまとめたり、グルーピングしたりする作業は手間が大きいです。 また、一定数の人数を集める必要があるので、作業時間も多めに見積もる必要があります。 効率的に実施するために、フリーソフトやアプリの活用も検討すると良いでしょう。
アイデアが参加者の特性に依存する
ブレインストーミングやKJ法は、様々な視点から沢山の意見を集められることが特徴です。 しかし、元になるアイデアや情報は、一人一人の参加者の特性に大きく依存します。 グループで意見を出し合っても、参加者の考え方が偏っている場合、情報も偏ってしまう可能性があるでしょう。
06KJ法で役立つ便利なアプリやツール
KJ法は場所も準備も大変です。 今はPCやスマホ上でKJ法を模したアイデア整理ができるようになりました。 ここではKJ法に役立つアプリを3つご紹介します。
Xmind
マインドマップ作成用のツールですが、KJ法にも活用できます。 ブレインストーミングやKJ法をPC上で手軽に行うことが可能です。
IdeaFragment2
アイデアを自由自在に並べ替えられるWindows向けのフリーソフトです。 実際のKJ法に近い形で、アイデアを付箋に書き出したり、グルーピングしたりできます。ペンや付箋、ホワイトボードが不要なので、どこでも実施することができるでしょう。
Inkoはホワイトボードを模したアプリです。 イラストを参加者全員で共有できるので、簡単な意見出しに活用可能です。ただし、大規模なKJ法には向いていないので注意してください。
06ブレストが学べるSchooのオンライン研修
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アイデア総研代表/トイクリエイター
アイデア発想の専門家。トイクリエイター。 アイデア商品のセレクトショップ「王様のアイディア」店長兼、アイデア共創コミュニティ「アイデアステーション」代表。大手玩具メーカー勤務時代に「ベイブレード」「夢見工房」「人生銀行」など数々のヒット商品・話題商品の企画開発に携わる。2021年にはクラウドファンディングにて2,000万円以上を集めた話題商品「ミャウエバー」を企画開発。 “共創により新しい価値を生み出す”をビジョンに、多くの企業やクリエイターと日々モノづくりを行う。 アイデア発想のポータルサイト「アイデア総研」運営。大阪府立大学客員講師。著書に『おもちゃ流企画術』(実業之日本社)。Twitterにてアイデア発想のコツを毎日発信中!
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アイデアプラント 代表/早稲田大学・奈良女子大学 非常勤講師
アイデアプラント代表/早稲田大学・奈良女子大学 非常勤講師(デザイン論、創造学)。 アイデアの出し方の研究、創造力のカードゲームを作ったり、ワークショップ(アイデアを出し合う活動)を提供している。 東北大学大学院修了後(理学修士)、日製産業(現・日立ハイテクノロジーズ)に5年勤務、同大2つの大学院(工学、経済学)博士後期課程にて創造工学を研究後に退学、新エネルギー・産業技術総合開発機構のNEDOフェローとして大学発ベンチャーに3年駐在。 2009年にアイデアプラント設立。 創造工学の研究、ブレインストーミング・ツールの開発、アイデアソンのデザインとファシリテーション、創造研修をしている。 研修を実施した企業、教育機関はこれまでに600件以上でのべ2万人以上が参加。実施企業は、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなど。 開発したアイデア創出ツール「ブレスター」が みやぎものづくり大賞受賞。発想を引き出す専用メモ紙「nekonote」が日本創造学会 学会賞受賞。NHK「おはよう日本」にて「アイデアトランプ」をはじめとする複数の製品が紹介された。著書に『アイデア・スイッチ』(日本実業出版社)。
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08まとめ
KJ法は、断片的な情報やアイデアを効率よく整理する際に使われる手法です。 手間がかかるデメリットはありますが、実際に効果のある手法なので、今でも多くの企業で使われています。 ブレインストーミングとあわせて実施することにより、新しいアイデア発想の手助けをしてくれるでしょう。アイデアをまとめたい時だけでなく、深めたい時にも利用できます。 本記事で紹介したステップを参考に、早速KJ法を試してみてください。