他者理解とは?企業での促進が重要な理由と人材に促すための方法を解説
ビジネスシーンにおいては、さまざまな職種や立場の人と関わることから「他者理解」が必要不可欠と考えられています。当記事では、他者理解の定義や企業内で他者理解の促進が重要な理由や従業員の他者理解を促すための方法について解説します。人事・育成担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.他者理解とは
- 02.他者理解の促進がビジネス上重要な理由
- 03.他者理解のために必要なスキルとは
- 04.他者理解を促すメリットとは
- 05.他者理解を促すための方法
- 06.まとめ
01他者理解とは
「他者理解」とは、他者の持っている視点や意見を理解することを言います。相手の立場に立って物事を想像し、理解しようとする姿勢とも言えるでしょう。ビジネスシーンにおいては、顧客やパートナー、競合他社など、さまざまな人と接する機会が多く訪れます。立場や環境の異なる人とでも、良好な人間関係を築くためには他者を理解し、歩み寄る能力が欠かせません。
02他者理解の促進がビジネス上重要な理由
企業において、従業員の他者理解を深めることに、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、企業内で他者理解の促進が必要とされる理由について、次の3つの観点で紹介します。
- ・多様な価値観に対応するため
- ・ハラスメント問題を防止するため
- ・人材の退職を抑制するため
多様な価値観に対応するため
他者理解はビジネスシーンにおいて、社内・社外いずれのコミュニケーションでも欠かせないものです。その理由として、様々な価値観を持つ人と関わる機会があるからです。 近年は社会の情報化によって人々の価値観は多様化していると言われています。そのような環境下で組織のマネジメントを機能させ、必要な人材を確保していくためにはダイバーシティへの対応は欠かせません。そして社内で多様な背景を持つ従業員が働きやすい環境を構築するためには、個々で異なる価値観や文化を尊重し、健康的に働ける環境を整備することが重要です。
また、これは顧客と関わる上でも同様です。近年の顧客ニーズは多様化しており、その背景には価値観の変化が大きく関わっています。そのためには、顧客のライフスタイルや価値観を理解し、それに合わせた企画やコミュニケーションをおこなっていく必要があります。
ハラスメント問題を防止するため
企業において他者理解が重要と言われている背景のひとつに、ハラスメント問題の防止があります。ハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為のことです。ハラスメント問題は、企業内で起こり得る深刻な問題のひとつであり、早急な対策が社会全体で求められています。 企業内でハラスメントが起こる要因には、従業員の他者理解が乏しいことが考えられます。しかし、企業が従業員に対して他者理解を促進する取り組みを実施することで、立場の異なる相手を尊重できるようになり、差別や偏見を排除できます。
人材の退職を抑制するため
自社の人材が頻繁に退職してしまう要因は、他者との関係性やコミュニケーションに問題があるのかもしれません。実際に、内閣府による「平成30年版子供・若者白書」によると、アンケートに回答した10代・20代のうち、23.7%の人が初職の離職理由として人間関係を挙げています。 従業員の他者理解を促進することで、組織内のコミュニケーションが円滑になり、人材の退職を防止することができます。また、他者理解が促進されることで従業員間で信頼関係が築かれ、チームの協力体制が強化されることも期待できます。これらの効果によって企業の生産性が向上し、従業員の定着率が高まることが見込まれます。
03他者理解のために必要なスキルとは
他者を理解できるようになると、相手の意図を上手に引き出し、相互理解を深めながら業務の効率化や業績アップにつなげられます。他者理解は、主に以下の4つのスキルによって構成されています。
- 1.共感力
- 2.ラポール形成
- 3.傾聴力
- 4.オープンマインド
以下では、それぞれのスキルの詳細について解説します。
共感力
「共感力」とは、相手の感情や立場に共感できる能力のことです。共感力を身につけることで、相手の立場や視点を理解することができ、コミュニケーションの質を向上させることができます。共感力を高める具体的な方法としては、相手の話をじっくり聞き、自分の立場や経験に重ね合わせて考えることが挙げられます。また、相手の感情に寄り添うために、非言語的なサインや表情にも注意を払いましょう。共感力を養うことで他者理解を深め、良好な人間関係を築くことができます。
ラポール形成
「ラポール」とは、相手との良好な人間関係のことであり、カウンセリングの用語では「聞き手と話し手の間に築かれる信頼関係」を意味する言葉です。良好なラポールを形成することで、相手に対してより深い理解をすることができます。ラポールを形成するためには、相手に興味を持つことはもちろん、相手の心情を理解しようとする姿勢が必要です。また、傾聴力や相手を批判せず受け容れる姿勢などもラポールを形成するうえでの重要な要素となります。
傾聴力
「傾聴力」とは、相手の話に対して注意深く耳を傾け、真摯な態度で理解を深めようとすることを指します。ただ話を聴くだけでなく、相手にもその姿勢が伝わる必要があるため、相槌や話を聞く時の表情・姿勢など非言語での表現力も含めたスキルです。 相手が発言していることを受け止め、理解することで、相手の気持ちや考え方を正しく把握できます。また、傾聴によって相手との信頼関係が深まりやすくなり、より良いラポールを構築できます。
オープンマインド
「オープンマインド」とは、自分自身の考え方や信念に固執するのではなく、新しいアイデアや異なる見方に対して開かれた心を持つことを意味します。他者理解を深めるためには、自分と異なる考え方や文化、バックグラウンドを持つ人たちと接する機会が必要になります。また他者と会話をする際には、オープンマインドな姿勢で相手の意見や価値観に耳を傾け、理解を深めることが肝要です。
04他者理解を促すメリットとは
企業において従業員同士が互いを理解し、協力して業務を遂行することは非常に重要です。他者理解を深め、円滑にコミュニケーションを取れるようになれば、より良い結果を生み出しやすくなるでしょう。ここでは、従業員の他者理解を促すメリットを深堀りしていきます。
- ・社員のエンゲージメント率の向上
- ・職場の生産性向上
- ・組織の心理的安全性を築く
社員のエンゲージメント率の向上
他者理解を深めることで従業員同士の信頼関係が構築され、コミュニケーションがスムーズになります。また、従業員は職場において自己実現を果たしやすくなり、結果としてエンゲージメント率が向上することにも期待できます。
職場の生産性向上
従業員が互いのことを理解し、協力し合うことで、仕事がスムーズに進むようになります。また、コミュニケーションが円滑に行われることで、問題が早期に発見され、解決することも期待できます。さらに、仕事のミスが減少し、効率的に仕事を進められるようになるため、生産性の向上にも大きく役立つでしょう。
組織の心理的安全性を築く
「心理的安全性」とは、メンバーが自分の意見や感情を自由に表明でき、誰もがリスクを感じずに会話や行動に参加できる環境のことを指します。他者理解を促すことで、メンバー同士が互いの違いを理解し、受け入れることができるようになります。これにより、職場でのコミュニケーションがスムーズになり、メンバーが心理的安全性を感じることができるようになるのです。また、心理的安全性が高まることで、メンバーは自分のアイデアや意見を自由に出し合うことができるため、組織の創造性や革新性が高まり、組織のパフォーマンス向上につながることが期待されます。
05他者理解を促すための方法
他者理解はビジネスパーソンのコミュニケーション力を支える重要なスキルです。そんな他者理解は、以下で紹介する取り組みによって、誰でも身につけることが可能です。
- ・チームビルディングの実施
- ・定期的な他部署や職種と交流の機会を設ける
- ・コミュニケーションやアンコンシャスバイアス研修の実施
ここでは、他者理解を促すための方法をステップごとに見ていきましょう。
チームビルディングの実施
「チームビルディング」とは、メンバー個々の経験や能力を最大限に活かし、目標を達成できるチームを作り上げる取り組みです。チームビルディングには、従業員同士の関係を改善し、チーム全体の生産性を高めるというメリットがあります。 従業員の他者理解を促すためには、社員たちがお互いの価値観や意見を共有し、理解し合うことが何よりも重要です。チームビルディングでは、相手の視点や立場を理解することに重きを置くため、協力して業務を遂行しやすくなります。結果的に、チーム全体のパフォーマンスが向上し、企業の目標達成も実現しやすくなるのです。
定期的な他部署と交流の機会を設ける
職場での他者理解を促すためには、定期的に他部署の人と交流の機会を設けることもポイントです。同じ会社で働いているにも関わらず、他部署の仕事内容や業務フローについてはあまり理解できていないというケースは少なくありません。このような状況が続くと協業や連携が難しくなるだけでなく、不必要なミスやトラブルも生じかねません。 一方、定期的な交流の機会を設けることで、他部署の仕事内容や課題を把握し、お互いの立場や考え方を理解することができます。
研修の実施
従業員が他者理解についてその重要性を考え、社内で実践してもらうためには、研修を実施することが有効です。この際、「他者理解」という大きなテーマで研修を用意するよりも、他者理解を構成する「コミュニケーション研修」や、「アンコンシャスバイアス研修」を実施するのがおすすめです。
コミュニケーション研修
コミュニケーション研修では、部署や職種に関わらずさまざまな人とのコミュニケーションに必要なスキルや心構えを学びます。さらに、実践的なトレーニングを通じて実際に会話をする機会を設けます。コミュニケーション力が向上することで、他者を理解する力が養われ、組織内の協力関係やコミュニケーションが円滑になります。
アンコンシャスバイアス研修
「アンコンシャスバイアス」とは、無意識に持っている先入観のことです。アンコンシャスバイアスがある状態では、他者理解は促進されません。アンコンシャスバイアス研修では、先入観の種類やその影響、具体的な改善策などを学び、自身の意識の改善につなげます。さらに研修を実施することで職場の多様性を認め、受け入れることを促す効果もあります。これによって他者理解が深まり、職場全体のコミュニケーションの質が向上するでしょう。
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06まとめ
今回は、他者理解の重要性について紹介しました。他者理解を促進することは、職場の生産性向上や心理的安全性の確保など、さまざまなメリットがあります。社会的にも他者理解を促進することが強く求められているため、企業においては積極的な取り組みが必要となります。ぜひ当記事を参考に研修などを通して他者理解を促し、業務に活用していくことをおすすめします。