ダイバーシティ研修とは?企業に求められる理由や主な内容について解説
ダイバーシティとは、直訳すると多様性という意味があります。この意味が転じ、幅広い人材を採用する考え方を指すようになりました。本記事ではダイバーシティの考え方やメリット、研修方法などについて紹介します。これからダイバーシティを導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.ダイバーシティとは
- 02.ダイバーシティが推進される背景
- 03.ダイバーシティ研修を実施すべき理由
- 04.ダイバーシティ研修の種類
- 05.ダイバーシティ研修に取り入れたい内容
- 06.ダイバーシティ研修を実施するときの注意点
- 07.まとめ
01ダイバーシティとは
ダイバーシティとは、英語で「diversity」と表記し、日本語では一般的に「多様性」と訳される用語です。ビジネスの現場では、多様性(個々のさまざまな違い)を認めた上で採用する取り組みと捉えられています。
02ダイバーシティが推進される背景
近年、国内の企業において、ダイバーシティを推進する取り組みが増えています。この背景として、次の理由が挙げられます。
- ・労働人口の減少に対処するため
- ・雇用に対する考え方や価値観、消費などが多様化しているため
- ・グローバル化している企業が増えているため
ダイバーシティには、外見で分かる表層的な属性と、外見では区別できない深層的な属性があります。日本では、主に女性・外国人・LGBT・障害者などへの配慮を観点として、ダイバーシティの推進が進められています。厚生労働省や経済産業省においても、推進に向けた法令や政策などを打ち出しているのが現状です。
ダイバーシティ&インクルージョンの考え方
外資系企業を中心に、ダイバーシティのほかに「インクルージョン」という用語を使うケースがあります。 ダイバーシティは多様化を認めた上での採用を意味します。一方、インクルージョンは、個々の能力や考え方を業務に活かすという意味であり、ダイバーシティ&インクルージョンとして用いられることも増えています。 なお、日本の企業では、インクルージョンという言葉を表記せずに、単にダイバーシティ経営という言葉で、ダイバーシティ&インクルージョンの意味を含んでいるケースが見られます。
企業のダイバーシティにおける課題
ダイバーシティを進める上で、課題のひとつに挙げられるのが、多様性があるあまり、考え方や方向性がまとまりづらく、対立や誤解を招くことがある点です。考え方を調整する時間が長引くと、チームの生産性やパフォーマンス低下につながるおそれがあります。さらに、国籍や人種、第一言語などの違いにより、コミュニケーションがうまくいかないことも懸念材料です。 これらの課題へ対処するため、できる限りダイバーシティの推進よりも前に、企業全体で課題や対処法を共有する取り組みを行うことが重要です。
03ダイバーシティ研修を実施すべき理由
先ほど紹介した、企業全体で行う取り組みのひとつが、ダイバーシティ研修です。研修を実施することで、 企業に所属する全社員が、当事者意識と主体性を持てるようになります。具体的に、次のような理由があげられますので、ひとつずつ見ていきましょう。
個人の先入観や偏見に対する意識改革ができる
ダイバーシティにおいて重要な多様性を認めるためには、それまで持っていた個人の先入観や偏見を変える必要があります。先入観や偏見を変えないことには、多様性の重要さに気付けません。企業をひとつのチームに見立て、チーム全体で成果を上げるためには、さまざまな考え方に気付く変化が第一歩といえます。
セクハラやパワハラの予防策として有効
セクハラというと、男性が女性に対して不適切な言動を行うイメージがありますが、LGBT の人に対して不適切な言動を行うのも、セクハラに含まれます。配慮のない行為により問題が発生した場合、企業に法的責任が問われる可能性があるのです。 パワハラ問題も同様であり、上司が部下に対して人格を否定する発言を繰り返し行うと、企業経営に悪影響を及ぼす事態は避けられません。これらの予防策として、ダイバーシティ研修の導入が進められています。
女性社員の働きやすさや課題を解消する
女性社員は、結婚や出産など人生のポイントにおいて、働き方の選択を迫られる場面があります。ワークライフバランスを保った上で、働き方の選択肢を広げたり、働く上での課題を解消したりするために、ダイバーシティ研修が役立ちます。 ダイバー研修を受け、自らの多様性を受け入れることで、他人の多様性も受け入れられるようになるのです。その結果、出産や育児を理由としたハラスメントを防ぎ、女性社員が働く上での課題解消につながります。
ダイバーシティ推進企業としてイメージが上がる
世の中の変化が激しく、ライフスタイルや価値観の多様化により働き方が変わっていることに加え、消費者のニーズも大きな変換期を迎えています。流れに対応するため、企業はこれまで行なってきた戦略を転換する必要性に迫られているのが現状です。 企業をあげてダイバーシティを推進すると、柔軟な取り組みや自由な発想などが世間に受け入れられ、企業のイメージアップに貢献できます。
イノベーション創出・生産性の向上につながる
ダイバーシティを推進すると、多様な考えを持った人材が集まります。これにより、今まで考えがつかなかった斬新的なアイディアが生まれ、新しいイノベーションの創出が可能となり、ひいては生産性の向上にもつなげられます。 実際に、アメリカのシリコンバレーは、エンジニアや研究者たちの半数以上が、アメリカ以外の出身者で占められています。異なる視点を持った人材が集まると、新たなアイディアが生まれるでしょう。
04ダイバーシティ研修の種類
ここまで、ダイバーシティの考え方やダイバーシティ研修の重要性について紹介してきました。 実際に研修を行い、ダイバーシティのメリットを活用するには、対象者に合わせて次のような研修から選ぶのがおすすめです。それぞれの内容を解説します。
女性活躍推進研修
この研修の基本的な対象者は、管理職・人事担当者・管理職をめざす女性社員などが適切です。女性の活躍によって企業を活性化させるために、どのような取り組みを行うと効果が上がるのかを学びます。同時に、ダイバーシティ全体に対しての意識改革も進められます。
外国人活躍推進研修
この研修では、外国人の部下を持つ立場の社員が、主な対象者です。日本企業の発展に大きく寄与している外国人労働者が、能力を十分発揮するために、採用時の注意点や知識などが身に付きます。さらに、外国人が持つ価値観や異文化に対して、どのように対応したら良いかも学べる研修です。
シニア活躍推進研修
働くシニアが増えるなかで、上司よりも年齢が高い社員も増えています。年上の部下に対する接し方や指導方法に迷う管理職が増えているため、研修の項目として導入するケースがあります。働き方改革の中でも、減少する労働力をダイバーシティによって補完することを求めているのです。
障がい者活躍推進研修
障がい者に対する正しい理解を持ち、障害者とともに企業の成長を目指すための知識を身につける研修です。障がいの種別によって異なる対応方法を学び、能力に合った仕事を割り当てたり、働きやすい職場にしたりするための改善点を考えます。
05ダイバーシティ研修に取り入れたい内容
ダイバーシティ研修を進めるにあたって、重点を置いて取り入れたい内容は、次の4つです。すべての社員が、持っている能力を最大限に活かし、複雑化している消費者ニーズへ応えるために、各内容の詳細を事前に理解しておきましょう。
ダイバーシティの基本と概念
ダイバーシティ研修の骨格となる項目です。ダイバーシティを学ぶ前に、そもそもダイバーシティとは何か、どのような目的で行うのかなど、基本と概念を理解しておく必要があります。最初に概念を学び、ダイバーシティの更なる知識を深めることが必要です。
クロスカルチャー
クロスカルチャーとは、異文化理解を意味します。異文化理解は、単に外国語を理解しているだけでは、相手に考えを伝えられません。語学レベルが十分でなくとも、相手に伝えられるコミュニケーション方法や思考の転換方法などを学びます。 さらに、文化やコミュニケーションスタイルの違いを知り、働きやすさにつなげます。
ユニバーサルサービス
私たちの周囲には、手伝いを必要としている人たちが多く存在します。妊娠中の方や高齢の方、障がいのある方などを、自然に支え合えるような環境を作り、誰もが過ごしやすい社会を構築する「心のバリアフリー」について理解を深める内容です。
多様な人材を活かすマネジメント方法
ダイバーシティ研修において重要な言葉のひとつに、「ダイバーシティマネジメント」があります。これは、ダイバーシティを活かして組織を強化し、企業の競争力アップにつなげる政策を指します。 ダイバーシティマネジメントを学ぶことで、ダイバーシティを行う際のポイントを学び、人材の育成や活用に役立ちます。
06ダイバーシティ研修を実施するときの注意点
ダイバーシティ研修は、ただ実施するだけでは効果が期待できません。次にあげる点に注意し、内容を充実させながら進行していくことが重要です。どのような注意点があるのか、詳しく解説しますので、研修内容を考える際の参考にしてください。
管理職・マネージャーを参加者のメインにする
現場でダイバーシティを推進するのは、管理職やマネージャーの役割です。そのため、参加者のメインを管理職・マネージャーに設定し、最初にダイバーシティの必要性について理解を深めるようにしましょう。そのうえで、具体的な取り組みを決める必要があります。 ダイバーシティの推進には、職場の人間関係を良好に保つことが必須です。こまめなコミュニケーションの重要性や、雇用形態ごとの仕事内容や役割を明確にする目的などを、管理職・マネージャーはしっかり理解しておかなくてはいけません。
ディスカッションタイムを設けて意見を出し合う
さまざまな価値観や考え方を受け入れるには、相手の意見を聞き、理解を深める必要があります。そのためには、研修の途中にディスカッションタイムを設けるのも、有効な研修の手段です。複数のシチュエーションを設定し、どのように対応するかを話し合うと、実際の場面でも活用できるでしょう。 日頃の業務中では、意見を出し合うチャンスが滅多にないかもしれません。研修の機会を利用して自分の考えを伝えましょう。
推進への取り組みを明確にした研修を設計する
ダイバーシティの推進を行う必要性や、推進への取り組みなどを明確にすると、研修の方向性が定まりやすくなります。例えば、育児休暇や介護休暇が申請しにくい状況を改善するために、管理職が制度の必要性に理解を示すといった内容です。 研修の内容を具体化するほど、 課題解決につながる研修が実施できます。
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・自己啓発への活用方法 など
07まとめ
ダイバーシティの考え方を取り入れ、多様性を活かした働き方を促進するには、これまで紹介した点に心がけ、研修を行う必要があります。通常の業務に加えて、効率良く研修を行うためには、オンラインで研修を行うのもひとつの方法です。 どの研修方法を取り入れると、自社に適しているかを検討しながら、ダイバーシティの推進を進めていきましょう。