変革力とは?人材と組織の両面からビジネスを強化する方法を解説
変化が激しい現代、ビジネスにおける変革力の重要性が高まっています。いかにして人材面と組織面の両面から変革力を高めるのか。その方法について解説していきます。
- 01.変革力とは
- 02.変革力が現代のビジネスに求められる理由
- 03.個人・組織双方で求められる変革力
- 04.自己変革力を身につける方法
- 05.まとめ
01変革力とは
変革力とは、周囲の状況や環境の変化に応じて自分を変革し柔軟に対応する力、そして周囲に影響力を発揮して変革を牽引する力を指します。 現代は様々な変化が矢継ぎ早に起こり、かつ先の予測が難しい時代として「VUCAの時代(外部環境が複雑で予測困難である時代)」と呼ばれています。そんな環境下で企業が生き残っていくためには、会社組織として変革しつづけることが重要になります。また、企業が変革を続けていくためには、そこで働く従業員にも変革力が求められます。
02変革力が現代のビジネスに求められる理由
現代のビジネスシーンにおいて、企業やそこで働く人々に変革力が求められる理由としては主に以下が挙げられます。
- 1.労働環境の変化
- 2.IT技術の急速な進歩
労働環境の変化
従来の日本の労働環境は、新卒で入った企業で定年まで勤め上げる終身雇用が中心であり、そのため企業は比較的同質性の高い人材で構成されていました。しかし現代では、労働市場の流動性の高まりや少子高齢化の進行を背景に、様々な雇用形態や国籍・バックグラウンドの人々が共に働くようになっています。 企業が成長を続けるためには、組織を構成する人材の力を最大限引き出すことが重要です。そのため上のような変化を踏まえると、多様な人材が各々の力を最大限発揮できる環境を整えることが必要です。従来の年功序列型のマネジメントから脱却し、より柔軟に適材適所の人材配置や評価制度を構築していくことが求められるのです。
IT技術の急速な進歩
また、IT技術の進歩も変革力が求められる背景の一つです。最近ではChat GPTが大きな話題となっているように、AIを含むIT技術の進歩により速いスピードで私たちを取り巻く環境は変化をしています。 そのような環境下で日本においてもDXの必要性が強く認識されるようになっていますが、実態としては大きくDXは進んでいないとも言われており、課題がある状況です。実際にスイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表している世界デジタル競争力ランキング2022年度版によると、日本の総合順位は63カ国中29位であり、中国(17位)や韓国(8位)と比較しても低い順位になっています。 人口減少による国際競争力の低下が懸念される日本においては、IT技術を使って生産性を上げ、新しいビジネスを推進していくことの重要性は高く、企業においてもこれらに対応するべく変革力が求められているのです。
03個人・組織双方で求められる変革力
企業変革を実現するためには、変革を目指す経営方針だけでなく、それを実行し実現していく人材にも変革のマインドが求められます。 ここからは、個人の変革力と組織の変革力、それぞれについてどういった要素があるのか、どうすれば身につけられるのかを解説していきます。
人材の変革力(自己変革力)とは
人材の変革力とは、自分自身を変える力であり、自己変革力とも呼ばれます。言い換えると、変化する環境や必要な成果に対して自身を俯瞰的に分析し、過去の経験に囚われず行動を変えていく力のことです。 これら変革力を備えた人材が結集することで、組織としての変革も推進されます。自己変革に必要な要素は次の3点です。
- 1.正しい危機感を持つ
- 2.目標を設定する
- 3.成功体験を積む
正しい危機感を持つ
自己変革力を身につける第一歩として、正しい危機感を持つことが挙げられます。正しい危機感とは、環境の変化や自社の置かれた状況を冷静に分析し、適切に問題点や懸念点を受け止めることを意味します。 例えば市場環境が大きく変わり、自社が扱う製品の市場がどんどん縮小している状況において、その変化に対応せず今までの業務を継続すれば事業は立ち行かなくなるでしょう。このような危機や不安な状況をまっすぐに受け止め、乗り越えるためのアクションを取っていくことが、変化の激しい時代を乗り越える上では大切なポイントとなります。
目標を設定する
自己変革のためには、自分自身がどのように変わりたいのか、明確に目標を設定することが必要です。目の前にある問題に対して危機感を持てていたとしても、どう変わるのかの理想像がないと具体的なアクションには繋がりません。 また、この目標が業務に関する何らかのスキルを習得することである場合は特に、内容や目指すべき水準について上長など関係者の意見も聞いた上で設定するなど、できるだけ客観的に設定できるようにするのが望ましいでしょう。
成功体験を積む
自己変革のためには実際に行動を変え、かつその行動の成果を実感できることが大切です。 心理学や行動経済学では、人は変化を嫌う現状維持バイアスを持ちがちであると言われています。この特性から自身の考えや行動を変革していくのは決して易しいものではなく、時には大きなパワーを要します。そのためチャレンジに対して不安感が強い状態では、それを続けるのは難しくなってしまうでしょう。 自己変革をしていくためには目標のステップを細かく置き、小さな成功体験を積み重ねられるようにすると効果的です。成功体験の積み重ねは自己効力感の強化につながり、前向きにチャレンジを続けられるようになるのです。
組織の変革力(企業変革力)とは
次は、組織が持つ変革力を確認していきましょう。企業変革力は、「ダイナミック・ケイパビリティ」とも呼ばれ、経済産業省も日本の競争力向上のために注目している概念です。 ここでは企業変革に必要な要素について、ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授ジョン・コッター氏が提唱した「大規模な変革を推進するための 8 段階のプロセス」理論から、重要なポイントを抜き出して解説します。
- 1.企業内に危機意識を浸透させる
- 2.変革のためのビジョンと戦略を明確にする
- 3.人材の自発を促す
企業内に危機意識を浸透させる
企業変革を推進する上で必要となる最初のステップが、企業内に危機意識を浸透させることです。いくら経営陣の変革への意欲が高くとも、実際に事業を推進する従業員に変革の意思がなければ実行力に乏しくなってしまうためです。コッター教授によれば、人材の50%以上、管理者の75%以上、経営陣の全員に危機意識が備わってはじめて変革の素地が整うとされています。 一方、不用意に従業員の不安を煽ることになってしまうと離職リスクやモチベーションの低下にもつながるため、危機意識の醸成には難しさもあるでしょう。ビジネスを取り巻く環境を正しく把握し、これからの変革行動が今後の中長期的な発展に繋がっていくということを経営陣や管理者がしっかりと社員に伝え、浸透させていくことが重要です。
変革のためのビジョンと戦略を明確にする
企業の場合、個人の場合と比べてよりビジョンや戦略を明確に打ち出して変革していかなければなりません。 組織は個人の集合体である以上、何かしらの指針がなければ統制がとれません。経営層や従業員をまとめあげ、彼らの活動に一つの方向性を与えるのがビジョンや戦略なのです。 人は根本的に変化を恐れる性質があり、意識しないと現状維持の選択肢を選んでしまいがちです。変革に関してもビジョンと戦略を明確化することで、従業員に浸透させることができるようになります。 こうすることでビジネス的な変革力を身につけるのはもちろん、採用や人材育成の面でも変革力をもった人材の層を厚くすることができ、中長期的に企業変革力を高めることが可能となるのです。
人材の自発を促す
危機意識の浸透や企業の方向性が明確になったら、実際に変革を推進する人材のアクションが必要です。これらの実行には、変化を恐れず自発的に行動することが従業員に求められます。 人材の自発を促すには、ただ経営層から発信を続ければいいわけではありません。企業内には様々な変革阻害要素が存在するため、従業員が自発的に変革行動を取れるようにそれらの障害を取り除いたり、改善したりする対応も必要になります。 具体的には、①新しいビジョンや戦略に合わない組織構造・体制、②変革に必要なスキルトレーニングの少なさ、③新しい戦略に合わない評価などのシステム、④変革方針に賛同しないマネジメント層、が阻害要因になると言われています。変革を推進するために適切な制度や体制になっているのかの精査が必要です。
04自己変革力を身につける方法
ここからは社員が変革力を身につけるための方法について解説します。
- 1.人事評価や行動指針に自己変革力を取り入れ周知する
- 2.アンラーニングのスキルを高める
- 3.社員に向けた研修の実施
人事評価や行動指針に自己変革力を取り入れ周知する
社員の変革力を高め、組織的に浸透させていくなら、まず社内の行動指針や人事評価を見直すと良いでしょう。クレドなどの行動指針や人事評価内の定性目標として盛り込むことで、社員も実際に行動に移しやすくなります。 職種や役職によって求めるレベルは異なりますが、例えば積極的なリスキリングや自己学習、新しい取り組みの提案や実施などを定めることが考えられます。 特に人事評価においては、変革力が高い人材が備えている個別のスキルをコンピテンシー評価などに取り入れるのも効果的です。会社としても変革力がある人材を高く評価すること、その姿勢を重視することが伝われば、社員の働き方も変わってくるでしょう。
アンラーニングのスキルを高める
自己変革力を促すためには、従業員がアンラーニングを取り入れることが重要です。アンラーニングとは、時代や環境の変化を捉え、通用しなくなった知識やスキル・過去の成功経験を捨てて新しく必要な知識・スキルを獲得することを指す言葉です。 私たちは通常過去の経験や知識を活かしながら仕事をすることが多いため、特に専門職や管理者層など、豊富な経験を持つ人ほどアンラーニングは難しくなると言われています。
Schooの授業「アンラーニング論 -変革をリードする人の働き方-」に登壇する長岡健先生によると、大前提となるアンラーニングの必要性を従業員が自覚するためには、興味がないテーマ・自分と異なる価値観の人・直接的な利害関係のない人などと触れることによって、自分の中の当たり前を見直す経験が必要だと説明されています。意識的に自身の価値観や基準を客観視するための行動を取ることで、思考が解きほぐされて自然とアンラーニングを受け入れられるようになるのです。
社員に向けた研修の実施
加えて、自己変革力を高めるためには社員研修を実施することも有効です。上でご紹介した「大規模な変革を推進するための 8 段階のプロセス」理論の中にもあるように、社員の自発を促すためにはそのためのスキルトレーニングが必要であり、社員研修はこれに役立ちます。 研修の内容は、どのような変革を求めるのかによって変わります。全社的に自己変革の必要性を浸透させたい場合や、仕事の型や考え方をアップデートしたいのであれば、各職種や役割に合わせてマインドセット研修をおこなうと良いでしょう。また、個人の新しい業務上のスキルの習得や専門性・テクニックの獲得を目指すのであれば、職種ごとに専門性の高い学びの機会を用意することがおすすめです。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
05まとめ
社会情勢は常に変化してきましたが、IT技術の進歩をはじめとして、近年の変化はこれまで稀に見るほど激しさを増しています。この状況を生き残るだけでなく、企業として成長していくためには変革しつづけるほかありません。ぜひこれを機に、自社や自社従業員の変革力を高める施策を検討してみてください。