対話型組織開発とは|診断型組織開発との違いやメリット・対話を促す手法を解説
対話型組織開発とは、組織開発の手法で「対話によって組織内の人材の関係性」を向上させ、組織をより良い方向へ導くことを目的としています。近年、従来の「診断型組織開発」から、「対話型組織開発」へ変化する潮流が見られています。不確実性を増すビジネス環境においては、所属する人材の関係性を向上させる重要性が認識されはじめたのでしょう。 この記事では、対話型組織開発と診断型組織開発の違いを明確にし、対話型組織開発のメリットや、組織内の対話を促す手法について解説します。
- 01.対話型組織開発とは
- 02.診断型組織開発との違い
- 03.対話型組織開発のメリット
- 04.対話型組織開発を成功させるポイント
- 05.組織内の対話を促進するフレームワーク
- 06.まとめ
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01対話型組織開発とは
組織開発とは、組織内に醸成された規範や価値観に働きかけることで、個々の人材のエンゲージメントを高め、組織の活性化・アウトプットの質向上、人材確保や定着を図る一連の活動を指します。 なかでも対話型組織開発は、近年、注目をされはじめた手法です。組織内の対話を促すアプローチから、自分たちが所属する組織の「ありたい姿」を明確にし、主体的な変革を生み出していくことを目指しています。 組織開発については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
組織開発が注目される背景
近年、組織開発が注目される背景には「多様化」があるとされます。ダイバーシティの浸透により企業は、性別や国籍、雇用形態にいたるまで、多様化への対応に迫られています。 こうした現状では、従来の画一的な組織運営では組織の方向性を統一することは難しくなりました。加えて、リモートワークの普及など新しい働き方が定着し、コミュニケーションの質や手法が変化したことも挙げられるでしょう。
02診断型組織開発との違い
対話型組織開発と並び、従来おこなわれてきた手法が「診断型」組織開発です。両者の違いは「視点の違い」であるといえます。
- ・診断型組織開発・・・「組織を外から見た客観的な視点」
- ・対話型組織開発・・・「組織の内部から見た主観的な視点」
といえるでしょう。
診断型組織開発とは
診断型組織開発では、外部コンサルタントなどの専門家により、組織の現状を分析・診断します。その結果から、課題の抽出や改善へのアプローチにつなげていく手法です。従業員満足度調査により組織内の現状と課題を把握し、満足度を高める施策を講じるといった取り組みは、診断型組織開発の典型といえます。 外部の目が入り結果が客観的な指標で示されるため、経営層の理解を得やすい点はメリットです。しかし、現場の意識との乖離がおきやすく、実質的な改善が進みにくくなるといった側面もあります。
対話型組織開発と診断型組織開発の違い
診断型組織開発が外部の視点が入るのに対し、対話型組織開発では現場の当事者の視点で組織の改善が語られます。組織課題の抽出や改善策の検討を、現場の社員を巻き込んでおこなうため、当事者意識の醸成や主体的な行動につなげやすい点がメリットです。 ただし、組織開発の専門家が社内にいない場合、進行が難しく導入の難易度は高くなるでしょう。加えて、経営層の納得が得られにくいことや、意思決定が進みにくいといったデメリットもあります。
03対話型組織開発のメリット
対話型組織開発の最大のメリットは、組織内の関係性の向上が見込めることです。社員にとっては管理されるだけではなく、自分たちの思いを組織運営に反映できる機会となるため、組織に対する信頼度は高まります。対話のプロセスで、多くの社員が共通の意識をもつことにつながり、組織としての一体感を生み出すでしょう。
- ・組織内の心理的安全性が高まる
- ・結果を出しやすい組織に成長する
- ・自律型人材が育成される
組織内の心理的安全性が高まる
社内の対話が増えることで、コミュニケーションの総量が増え、質の向上が見込めます。社員どうしの相互理解が進むことにより、自分の意見を気兼ねなく発信できる雰囲気が醸成され、組織内の心理的安全性が高まるのです。 心理的安全性の高い組織は、イノベーションが生まれやすい特徴があります。部署間のコミュニケーションがスムーズであるため、生産性も向上しやすくなるでしょう。
結果を出しやすい組織に成長する
組織内の関係性が向上することにより、コミュニケーションの質が向上することは前述したとおりです。風通しの良い組織では、情報共有が促進されることで、本質的な対話が活発になります。共創やイノベーションが生まれ、新たな価値創造(結果)につながりやすくなるでしょう。 関係性の向上が「思考」「行動」の質を向上させ、「結果」の質向上に循環する「成功循環モデル」が形成され、結果を出しやすい組織に成長できるのです。
自律型人材が育成される
対話型組織開発では、組織課題の抽出から改善策の検討まで、社員が自分たちの意見を反映できます。自分たちで「どうすれば会社が良くなるか」を考えるため、改善策に対しても積極的に取り組むようになるでしょう。 こうした組織風土が醸成されれば、社員の当事者意識が高まります。指示を待つのではなく、自分の頭で考え責任をもって行動する、自律型人材が育成されるのです。
04対話型組織開発を成功させるポイント
対話型組織開発を成功させるには、いくつかのポイントをおさえておく必要があります。事前に組織の状態を把握することや、対話の機会を増やす取り組みなどが挙げられるでしょう。 以下の3点を詳しく解説します。
- ・組織診断を実施する
- ・評価制度を整備する
- ・対話の機会を創出する
組織診断を実施する
対話型組織診断においても、取り組みの前に「組織の現状」を知ることは必要です。対話から組織の課題を抽出する方法も有効ですが、時間がかかる点や客観性に欠けるといった懸念もあります。対話による課題抽出と並行して、組織診断により現状を把握することで、より精度の高い組織開発が可能になるでしょう。 株式会社アイ・オー・データ機器では、社員が自主性を発揮できる組織を目指し、組織開発に取り組みますが、思うような効果を得られませんでした。そこで、全従業員を対象に「組織行動調査」を実施しました。専門家を交え結果の分析と検証を重ね、有効な施策を導き出すことに成功しています。
評価制度を整備する
評価制度を整備することも対話型組織開発を成功させるには、欠かせないポイントです。「目標管理制度」や「360度評価」といった「フィードバック」がカギとなる制度を導入することが有効です。 目標管理制度では、目標設定時・進捗確認時・評価時にかならず面談によるフィードバックが必要になります。360度評価においても、上司・部下・同僚が評価をしあうため、フィードバックの機会が多くなります。自然と対話の機会が増えていくでしょう。
対話の機会を創出する
「OKR」や「1on1」を制度として導入し、対話の機会を創出することも有効です。OKRでは組織目標達成のため、頻繁に社員同士で進捗確認のミーティングをおこないます。1on1は、月に1回、週に1回など、定期的に上司と部下が1対1でミーティングを実施する制度です。 ヤフー株式会社は組織開発に取り組むなかで、人材育成の施策として1on1を全社にとり入れます。高い頻度で対話の機会を設けたことで、上司と部下のつながりが強まり、関係性の向上が見られたとのことです。
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05組織内の対話を促進するフレームワーク
組織内で対話を促すことは簡単ではありません。経営層や幹部社員が対話を促しても、すぐに気兼ねのない対話が活発におこなわれることはないでしょう。 そこで有効なのが、研修や会議で対話を促すフレームワークやワークショップを実施することです。いくつかの手法を紹介します。
- ・ワールドカフェ
- ・AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
- ・フューチャー・サーチ
- ・オープンスペース・テクノロジー
ワールドカフェ
ワールドカフェは、カフェでくつろいでいるときのような、リラックスした雰囲気のなかでおこなう会議です。
進め方
- ・4~5人のグループを複数つくり、決められたテーマに沿って話し合う。
- ・一定の時間が経過すると、グループ内の1人を残して、ほかのメンバーをシャッフル。
- ・残ったメンバーは、これまでの話し合いの内容を新しいメンバーに共有し意見交換を続ける。
- ・最初のグループに戻り、ほかのグループで話した内容を共有し意見をまとめる。
- ・最後にグループごとの意見を発表し、全体での共有を図る。
少人数の話し合いのため、全員が話し合いに参加しやすいことがメリットです。リラックスした雰囲気から、斬新な意見が出やすいといった効果もあります。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
AI(アプリシエイティブ。インクワイアリー)は、ポジティブな問いかけにより、個人や組織の強みを発見し、その強みを最大限に活かす仕組みを作り上げる手法です。
進め方
- ・発見フェーズ:メンバーそれぞれの過去・現在・未来について話し合う
- ・夢フェーズ :発見フェーズで出てきた「ありたい姿」を掘り下げる
- ・設計フェーズ:「ありたい姿」実現のための手段・方法を計画する
- ・実行フェーズ:計画をもとに実行に移すプロセス
ビジョンの共有やチーム学習に効果を発揮しやすい手法です。個人と組織の強みを再発見し、それを活かす方法を理解できます。
フューチャー・サーチ
フューチャー・サーチは、大人数の参加者が、3日間を費やす大がかりなワークショップです。利害の異なる関係者(64名が基本)を集め、解決が難しい課題を徹底して話し合うことで、組織の目指すべき未来を参加者全員で描いていきます。
進め方
- ・過去の振り返り:参加者それぞれの年表を共同で作成
- ・現在の探求:組織が抱える課題をマインドマップに落とし込み協議する
- ・理想的な未来のシナリオを作成:「ありたい姿」「あるべき姿」を協議
- ・コモン・グラウンドの明確化:共通の意図やルールを確認
- ・アクションプランの作成:合意したコモングラウンドに基づき行動計画を立てる
利害の異なる大勢の関係者が集まることで、多様な意見に触れ新たな視点や気づきを得られます。3日間にわたり、密度の高い時間を共有することで、参加者の一体感を高める効果も期待できるでしょう。
オープンスペース・テクノロジー
オープンスペース・テクノロジーは、参加者がそれぞれ課題やアイデアを持ち寄り、話し合いのテーマを自主的に決めます。テーマは複数となるため、テーマごとにセッションを割り振り、参加者は各セッションを自由に行き来できます。
進め方
- ・マーケットプレイス:参加者からテーマを集め整理し、セッションを振り分ける
- ・セッション:テーマの提案者を中心に話し合いを進める。途中でほかのセッションに移ることも可
- ・ハーベスト:話し合いから生まれた、気づきやアクションプランを全体で共有
参加者がテーマ設定から進行方法まで、すべてを決めるので当事者意識が高まります。自由にセッションを出入りできることで、心理的安全性の高い話し合いになり、納得感のある合意形成が可能です。
06まとめ
組織開発は、不確実性を増すビジネス環境において、欠くことのできない取り組みであるといえます。対話型・診断型、どちらの組織開発も長所・短所があり、うまく組み合わせることで効果を最大限に発揮できます。 いずれにせよ組織内の対話が増え、社員どうしの関係性が向上することは、組織の健全さを保つうえでも重要です。まずは、研修や会議の場で、対話を活性化するワークショップやフレームワークを実施してみてはいかがでしょうか。