自己マスタリーとは?注目される理由や企業事例も紹介
「自己マスタリー」とは、ピーター・センゲ氏が提唱する「学習する組織」における5つの要素のひとつです。本記事では、自己マスタリーの概要を解説したうえで、学習する組織を実現するポイントや実際の企業事例を紹介しています。企業の育成担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.自己マスタリーとは
- 02.自己マスタリーが注目される3つの理由
- 03.学習する組織を構成する5つの要素
- 04.学習する組織を実現するための3つのポイント
- 05.まとめ
01自己マスタリーとは
「自己マスタリー」とは、自分が心から望む目的の達成に向けて、自身の能力と意識を絶えず伸ばし続けるプロセスです。 自己マスタリーでは「指示されたから」という受け身な取り組み方ではなく、自発的に選択してアクションを起こすことが重要です。組織のなかで自ら率先して取り組むことで、チームメンバー同士の理解にもつなげられます。
学習する組織を実現するための一手段
自己マスタリーは、「学習する組織」を実現するための一手段です。学習する組織とは、アメリカのシステム科学者ピーター・センゲ氏が提唱した、組織マネジメントのアプローチです。 学習する組織は、組織のメンバーが互いに関わり合い、自ら考えて意見を交換し合うことで組織が成長するという考え方です。自発性や適応性、柔軟性を高められるため、変化に強い組織を目指す企業にとって重要な取り組みであると言えます。
02自己マスタリーが注目される3つの理由
近年多くの企業が、従業員の自己マスタリー育成に力を入れています。その背景には、変化が激しいVUCA時代への適応や組織の生産性向上といった企業の課題が挙げられます。ここでは、自己マスタリーが注目される3つの理由について詳しく紹介します。
- 1.変化が激しいVUCA時代に適応していくため
- 2.自律型人材を育成して人材不足に対応するため
- 3.従業員一人ひとりの生産性を高めるため
1.変化が激しいVUCA時代に適応していくため
あらゆる環境が常に変化して複雑さを増し、予測が困難な現代においては、一度身につけた能力やスキルでは、すぐに使い物にならなくなってしまいます。 分かりやすい例をあげると、パソコンやソフトは常にバージョンアップを繰り返しているため、これまで使えていた機能がバージョンアップで使えなくなる、といったことです。 このような時代を「VUCA時代」と呼びますが、うまく適応するためには、従業員一人ひとりが自ら積極的に学び続ける姿勢が強く求められます。 そして、すぐに使い物にならなくなるスキルより、いかなる環境や境遇に置かれても活躍できるスキルを身につける重要性が高まっているのです。
2.自律型人材を育成して人材不足に対応するため
IT技術の進化により、ビジネス環境の変化スピードは、年々飛躍的に上がっています。そのような状況で、企業が環境変化に柔軟かつ迅速に対応するためには、従業員の自律性が不可欠です。 自らの意志で考え、行動が起こせる自律型人材を育成することで、上司からの指示を待たずに、迅速に判断・行動できる人材が増えて、企業活動のスピード感は加速します。
3.従業員一人ひとりの生産性を高めるため
学習する組織を構成する5つの要素をバランス良く伸ばし、個々人が学習する人材となることで、持続的な成長を実現できます。 さらに従業員の業務効率が上がれば、組織全体の生産性もアップし、企業としてのパワーを強化できるのです。
03学習する組織を構成する5つの要素
学習する組織は、
- 1.メンタル・モデル
- 2.チーム学習
- 3.システム思考
- 4.共有ビジョン
- 5.自己マスタリー
の5つの要素で構成されています。これらの要素は、学習する組織を実践するために不可欠なものです。具体的な内容を見ていきましょう。
1.メンタル・モデル
「メンタル・モデル」とは、個々人の頭の中にある現実を模したモデルであり、思考や行動の前提や枠組みとなるものです。 人は何かしらの意思決定を迫られると、自らが抱いているメンタル・モデルを元に、情報処理を実行しようとします。個人や組織の成長には、従業員一人ひとりが自分のメンタルモデルを認識したうえで、良い方向に変化させていくことが肝要です。
2.チーム学習
「チーム学習」とは、組織のパフォーマンスを最大化できるよう、同じビジョンを共有したメンバー同士が意見交換を通して学び合うメソッドです。 複雑化する昨今のビジネス環境のなかで成長を続けるためには、個人の成長だけではなく、チームでの成長が欠かせません。チームで学習し合うという過程は、学習する組織そのものと言えます。
3.システム思考
「システム思考」とは、起こっている問題の本質に迫るための思考法です。問題に関連する要素を分解し、抜本的・根本的な問題の解決を探っていきます。 システム思考を取り入れると、表面的な問題解決で終わらせるのではなく、抜本的かつ根本的な解決方法を見つけ出すことができます。
4.共有ビジョン
「共有ビジョン」とは、組織のメンバーが、互いの目的や目指すべき将来のビジョンを共有することを言います。メンバーが同じベクトルで協力しながら学習を継続することで、個人の大きな成長が見込めます。これにより、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
5.自己マスタリー
「自己マスタリー」は、「どのように自己成長したいか、何を実現したいか」を考えながら、継続した学習に取り組むことです。学習する組織を作るためには、メンバー個々人が志を持って自己研鑽を行い、創造的な姿勢で物事に取り組む必要があります。
04学習する組織を実現するための3つのポイント
ここからは、学習する組織を導入した3社の企業事例を紹介します。
- 1.レイセオン・テクノロジーズ社
- 2.サステナブル・フードラボ
- 3.トヨタ自動車
どれも参考になる事例ですので、ぜひ自社に学習する組織を導入する際の手立てとしてください。
1.レイセオン・テクノロジーズ社
航空機のエンジンなどを製作するレイセオン・テクノロジーズ社(旧:ユナイテッドテクノロジー社)は、1990年ごろ、経営危機に陥っていました。見積り作成におよそ50日間もの日数を要していたため、大口の顧客を次々と失うかもしれない状態だったのです。 このような状況を打破するべく、経営陣は関係部署の担当者やマネージャーを集め、話し合いを行います。現状を把握し、その根底にあるメンタル・モデルを調べていきました。 その結果、問題の本質に気がついたチームは新しい目標とビジョンを設定し、10日間で見積りを作成できるようになりました。内発的な動機付けとチーム内の良好なコミュニケーション、そしてそれらを可能にする組織構造が、いかに重要であるかを示す事例と言えます。
▶︎参照元:チェンジ・エージェント社「学習する組織入門(9) 「学習する組織の実践事例(2)」」
2.サステナブル・フード・ラボ
サスティナブル・フード・ラボは、企業と市民が力を合わせてサステナブルな食糧システムを作るプロジェクトです。過去や偏見に捉われず、本当に必要な変化を生み出すスキル「U理論」を、プロジェクトを通じて実践していきます。 例えば、全体会議や定例会の前に行う「ラーニング・ジャーニー」は、組織のリーダーが直接生産地を訪れて見聞きしたことをすぐに振り返り、対話していくものです。こうしたプロセスを経て、多くのメンバーが自身の固定観念を手放し、何をすべきかを明確にできるようになりました。
▶︎参照元:チェンジ・エージェント社「学習する組織入門(10)「学習する組織の実践事例(3)」」
3.トヨタ自動車
トヨタ自動車においては、学習する組織を実現するための施策が実施されています。 具体的には、QC(小集団改善活動)では「なぜ?」を5回考えるなど、学習や問題解決のための思考に重点を置いています。これにより、組織にとって難しい問題を解決できる思考力が身に着くようにしているのです。 また、5S活動は一見すると職場環境の改善に重きを置いているように見えますが、職場を徹底的に掃除することによって設備不良を防ぐなど、生産を安定させる役割も果たしています。
▶︎参照元:日経クロステック「トヨタの課題解決力の秘密は「QCストーリー」にあり」
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05まとめ
今回は、自己マスタリーの概要や注目を集める理由、学習する組織を実現するためのポイントについてお伝えしました。 個々の従業員が自己マスタリーに取り組み、自身で考えて行動を起こせるようになれば、学習する組織を実現することができます。その結果、企業が大きな力を持てるようになって、より良い変化を生み出します。あらゆる問題へ柔軟に対応できる企業になるためにも、本記事を参考に従業員の自己マスタリー育成に注力してみてはいかがでしょうか。