大企業病とは?中小企業にも見られる原因と症状への対策
大企業病とは、組織が大きくなり安定していることで、現状維持を優先するようになり、チャレンジしなくなる企業体質や企業風土のことを指します。 大企業病は、大企業だけでなく中小企業やベンチャー企業でも発生する可能性があります。 この記事では、大企業病にかかるとどのような症状が起こるのか、大企業病の対策としてどうすればいいのかを具体的に解説し、大企業病にかかったために発生した事例を合わせて紹介していきます。
- 01.大企業病とは
- 02.大企業病の症状
- 03.大企業病にかかる原因
- 04.大企業病による弊害
- 05.大企業病克服のための対策
- 06.大企業病によって生じるトラブル例
- 07.まとめ
01大企業病とは
「大企業病」とは、新しいことにチャレンジしない社内体質や、縦割りで意思決定のスピードが遅く、社内事情を優先する状態にある企業風土のことをいいます。 組織が大きくなり安定していることで、現状維持を何よりも優先し、リスクがある新しいことを避けるような空気が社内に蔓延します。 大企業病にかかると、組織や従業員の成長が阻害され、新しいことをやろうとするモチベーションが生まれず、「どうせやっても無駄だろう」という雰囲気が社内に生まれてしまいます。 「大企業病」という呼び名ですが、大企業だけがかかるのではなく、中小企業やベンチャー企業にも起こりえる病です。
02大企業病の症状
大企業病にかかった企業ではどのような症状が発生するのでしょうか。初期の症状と末期の症状に分けて、具体的に見ていくことにしましょう。
大企業病の初期症状
大企業病の初期症状としては、ルールを優先するあまり次第に事業活動が鈍くなってしまうということが見られます。また、長く安定した状態にあることで、安定を維持しようと考えが蔓延してしまうことが大きな特徴といえるでしょう。 具体的には、以下のような症状が挙げられます。
- 意思決定のスピードが遅い
- 新しいチャレンジをしなくなる
- 臨機応変な対応ができない
意思決定のスピードが遅い
大企業病の症状の一つとして、意思決定の遅さが挙げられます。日本企業特有の縦割り組織では、何かを決定するにも多くの決済が必要であることが原因です。 慎重に検討することは、拙速に進めて間違った方向に行くのを防ぎますが、一方で意思決定に時間かかってしまい、スピーディーに展開できなくなります。また決済に関わる人が増えると責任の所在もあいまいになるため、何かあった場合に誰も責任を取ろうとしなってしまうのです。
新しいチャレンジをしなくなる
大企業では業績が安定しているため、新しいことにチャレンジするよりも、今の状態を保つことのほうが大切だと考えてしまう傾向にあります。 その結果、社内では組織の上層部から減点主義的な発想になり、失敗しないことがなによりも大切と考える風潮が広まってしまうのです。 失敗する可能性があると、新しいことに向かってリスクを取ってチャレンジする人が生まれにくい土壌ができていきます。
臨機応変な対応ができない
大企業では業務の平準化が進められ、細かなマニュアルやルールが細かく規定されています。マニュアルやルールがあることで、どの社員が担当しても一定水準の成果が出せるようになる半面、ルールやマニュアルにとらわれ過ぎてしまう状況が発生してしまいます。 マニュアルにないことはしなくてもいいと判断してしまったり、マニュアルに規定がないため自分で考えて臨機応変な対応するといった行動ができなくなってしまうのです。
大企業病の末期症状
大企業病の症状が末期となるまで進んでしまうと、従業員や部署間で以下のような症状が見られるようになります。
- セクショナリズムが横行
- 顧客ニーズよりも社内ニーズを優先する
セクショナリズムが横行
大企業では業務が分業制になっていることから、一つの部署でも大人数に所属している体制となっています。そんな中、大企業病が進行してしまうと部署内のことにばかり目が向くようになり、部署が分断されてしまうことがあります。 その結果、部署やチームでセクショナリズムが横行してしまうことが懸念されるでしょう。 例えば、他部署で何をしているのか無関心になってしまったり、他部署との連携がとれなくなってしまう症状が挙げられます。 このことによって、部署内での評価を優先したり、部署内の負担を気にするようになり、組織全体のことが見えなくなってしまうのです。
顧客ニーズよりも社内ニーズを優先する
大企業病が末期になると、顧客ニーズよりも社内ニーズや社内事情を優先するようになってしまいます。社内での評価や社内での決定にとらわれるあまり、顧客のニーズや課題解決、また社会での役割を忘れてしまい、個人やチームなどの保身を優先してしまうような行動が多くなってしまうのです。 末期症状の企業では、大きな不祥事の発生につながることも珍しくありません。
03大企業病にかかる原因
大企業病にかかる原因としては、組織の肥大化や安定した業績、リスクを奨励する体制がないことなどが考えられます。主な原因と考えられる3つについて、解説します
- ・組織の拡大や細分化
- ・業績が安定している業績が安定している
- ・チャレンジを奨励する制度や慣習がない
組織の拡大や細分化
企業が成長していくと、人数が増えていき組織が拡大していきます。様々な人が関わるようになるにつれて、これまでとは違った考え方を持つ人も入社してくることから、次第に組織としての一体感がなくなっていく可能性もあるでしょう。その結果、大企業病につながることが考えられます。 また組織が大きくなるにつれて、企業がもともと目指していたミッションが十分に浸透しなくなり、経営陣と現場で起きていることにずれが生じてしまい、大企業病につながるケースも少なくありません。
業績が安定している
大企業は業績が安定していることが多く、社員が適切な危機感を感じることが少なくなります。安定を維持しようとする心理が働くため、あえて失敗のリスクがある新しいことにチャレンジしようとしなくなってしまうのです。 企業内で現状維持の風潮が広まってくると、大企業病の始まりと考えられます。
チャレンジを奨励する制度や慣習がない
企業内にチャレンジを奨励する制度や慣習がない大企業では、どうしても現状維持を優先してしまいます。チャレンジには失敗するリスクがつきものです。企業が失敗してもいいからチャレンジするように後押しをしなければ、あえてリスクを取ってまでやろうとしないでしょう。 チャレンジがなくなると現状に留まることができず、次第に衰退してくことにつながります。
04大企業病による弊害
大企業病にかかってしまうと、企業にとってどのような弊害が生じるのでしょうか。社内での特徴に留まらず、中期的に見た影響に絞って解説します。
- ・意思決定のスピードが低下
- ・優秀な人材の流出
意思決定のスピードが低下
大企業病にかかると、縦割り組織で何段階もの決済が必要になるため、市場や環境の変化への対応が遅れてしまいます。新商品や新サービスの開発が遅くなってしまったり、トラブルへの対策に時間がかかってしまって、解決が遅くなるといった問題が生じるようになります。 そうすると、中期的な成長を見込むことも難しくなるでしょう。現代ではグローバル競争や人口減少といった様々な外部要因が影響してくるため、今後の成長を見込むためには素早い意思決定とそれに合わせた行動が必須といえるでしょう。
優秀な人材の流出
大企業病にかかり現状維持を優先する組織になると、社内のモチベーションが低下してしまいます。新しいことをやろうとしても、どうせ無理だろうとあきらめるようになる人も増えてしまいます。そうなると、社内の優秀な人材から流入してしまう可能性が高いでしょう。 優秀な人材であればあるほど、チャレンジできない組織に魅力を感じなくなるため、他社に流出してしまいます。さらに、そういった環境では新しく優秀な人材を獲得することも困難になってしまうでしょう。 中期的に見た従業員のエンゲージメントの低下や、採用戦略にも関わってくるため、全社的な課題と捉えることが重要です。
05大企業病克服のための対策
大企業病を克服するためにはどのような対策をとればいいのか、具体的な方策を考えてみましょう。
- ・組織構造を見直す
- ・人事評価制度を見直す
- ・社内のコミュニケーション方法を再考する
- ・外部からの客観的な意見をもらう
組織構造を見直す
大企業病になる原因として組織構造に問題がある場合があります。決済に時間がかかる組織体系になっていたり、現場からの意見が上がりにくい体制になっているのでは、スピーディーな対応ができません。 現場に権限を与え、フレキシブルな対応ができる体制にしていくといいでしょう。 また、若手中堅の人材を抜擢し、責任を与えることで組織に刺激を与えることも効果があります。
人事評価制度を見直す
現状維持を優先する大企業病の克服には、人事評価制度を見直し、新しいことへのチャレンジを促すような制度を作ることが効果的です。 特に立場に応じて、目標達成の度合いを適切に管理すべきです。あまりにも達成が容易な目標であれば、現状維持することは免れないでしょう。 設定する目標や評価基準を改定し、新しいことにチャレンジする企業文化を作っていくといいでしょう。
社内のコミュニケーション方法を再考する
大企業病にかかると、部署内のことを優先するようになり、他部署との連携が取れなくなります。その対策としては、社内のコミュニケーションを活性化するようにしていくといいでしょう。 まずは他部署間の情報を見える化することが大切です。お互いの情報が共有されていなければ、適切な現状把握やそれに応じた対応ができないでしょう。そのためには、社内のグループウェア等を活用して、議事録だけでなく、業務の実施事項や課題などをしっかりドキュメントに残すようにすることが大切です。 そのうえで、全社的に部署間の連携について重要性を伝え、総会や部署間での交流などを実施していくと良いでしょう。まずはコミュニケーションを促す基盤を整えたうえで、部署同士の連携を促すことが大切です。
外部からの客観的な意見をもらう
大企業病にかかっていることは、社内にいては気づかないものです。また社内から上層部に意見をあげることも難しいでしょう。 こうした場合には、企業組織のコンサルタントなど外からの目で見てもらって改善を進めることが有効です。第三者による客観的な意見がなければ、自社にとっては当たり前でも、他者から見れば課題であることに気づけないものです。 特に大企業病の場合は、社内の慣習によって醸成されてしまっていることから、大きな変革を行わない限り、内部のメンバーのみで変えることは難しいといえるでしょう。 組織開発や変革の専門家による診断を受け、今の現状を正しく把握しましょう。そのうえで、全社的に優先すべき対策のアドバイスを受けて改善を推進していくことをおすすめします。
06大企業病によって生じるトラブル例
企業不祥事の多くは大企業病にかかっていることが原因といえます。どのようなトラブルが起こりうるのか詳しく見ていきましょう。
- ・粉飾決算
- ・データの不正改ざん
- ・大規模なシステム不具合の発生
粉飾決算
顧客のことではなく、社内の意向を重視した結果、粉飾決算などの隠蔽が起こることが考えられます。例えば、不況で落ち込んだ業績を回復させるために、各部署に対して企業上層部から無理な目標が押し付けられた、というようなケースです。大企業病にかかっている組織では、策に困った結果不正なやり方で帳簿上の利益を水増し、隠ぺいを長年にわたって続けてしまうということになる可能性も考えられるでしょう。
データの不正改ざん
大企業病によるトラブルとして考えられるのが、消費者に安全な商品を提供するために正確なデータを取らなければならない検査部門で、検査結果の数字を不正に改ざんするといった不祥事が発生するケースです。社内ニーズを優先し、目先の数字ばかりを追いかけてしまうことから、不正が社内で見つかったとしても社内の事情を優先して顧客の利益を無視してしまうのです。
大規模なシステム不具合の発生
顧客の大切な資産を預かる使命がありながら、他部署との連携がとれていないことや、顧客ニーズの軽視、リスクの先送りといった大企業病の体質によって、大きなシステムトラブルにつながることがあります。
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07まとめ
ここまで大企業病の症状と原因、対策について紹介してきました。企業が成長するにつれて組織が大きくなり、業績が安定すれば維持しようとするのは、どの企業でもあることでしょう。 大企業病は大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業でも発生する可能性が十分にあります。 自社が大企業病にかかっていないか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。