トライアル雇用とは? メリット・デメリットと活用の注意点を紹介
企業における雇用形態の一つに、トライアル雇用というものがあります。この雇用形態には、新卒採用や中途採用とは異なる、さまざまなメリットとデメリットが存在します。当記事では実際に活用する際の注意点もあわせて紹介していきます。
- 01.トライアル雇用とは
- 02.トライアル雇用の対象者
- 03.トライアル雇用のメリット
- 04.トライアル雇用のデメリット
- 05.障がい者のトライアル雇用
- 06.トライアル雇用助成金制度について
- 07.トライアル雇用活用の注意点
- 08.まとめ
01トライアル雇用とは
トライアル雇用とは、短期間(原則3ヶ月)の雇用契約を労働者と結び、使用者である企業は適性を、求職者は職場環境と仕事内容を、お互いにみきわめ「期間の定めのない雇用契約」を締結するかどうか判断ができる制度です。実際の流れとしては、まずトライアル雇用制度の利用を希望する企業がハローワークに求人を出します。ハローワークは一定の要件を満たした求職者をマッチングし企業に紹介します。その上で原則3ヶ月の期間限定雇用において、お互いにみきわめをするというものです。
トライアル雇用の目的
トライアル雇用は厚生労働省と公共職業安定所(ハローワーク)が主体となり、就業経験の不足や長期ブランクなどを理由に就職が困難になった人に対する救済措置として制定されました。就業経験の少ない35歳未満の人、子育てや病気・介護などで長期間ブランクがある人、もしくは障害者などの就労支援の目的で運営されています。
トライアル雇用の目的
トライアル雇用は厚生労働省と公共職業安定所(ハローワーク)が主体となり、就業経験の不足や長期ブランクなどを理由に就職が困難になった人に対する救済措置として制定されました。就業経験の少ない35歳未満の人、子育てや病気・介護などで長期間ブランクがある人、もしくは障害者などの就労支援の目的で運営されています。
試用期間との違い
トライアル雇用と試用期間は混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。トライアル雇用は、3ヶ月という短期間の雇用契約を結び、その間にお互いに判断するというものです。これに対し試用期間は、まず本採用されたのち一定期間は業務に対する適性や勤務態度をみきわめるというものです。トライアル雇用であれば3ヶ月間の「お試し期間」が終了した段階で適性がないと判断すれば、その後の契約をしなくてもかまいません。しかし試用期間の場合は最初に本採用しており、契約を解除する場合は「解雇」の扱いとなるためハードルが上がります。
02トライアル雇用の対象者
トライアル雇用は、就労困難な人の就労支援を目的として運営されていますが、具体的な対象者は以下のようになっています。
- 1.紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 2.紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている※1
- 3.妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業※2に就いて いない期間が1年を超えている
- 4.55歳未満で、ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている
- 5.就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※3
- ※1パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
- ※2期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の 所定労働時間と同等であること
- ※3生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、 中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者
03トライアル雇用のメリット
トライアル雇用は企業、求職者の双方にさまざまなメリットがあります。トライアル雇用のメリットについて具体的に見ていきます。
企業にとってのメリット
トライアル雇用における企業側の最大のメリットは、採用の「ミスマッチ」を回避できる点です。短期間でも実際に働いてもらうことにより、求職者の適性を判断できます。 第二のメリットとして、人材を確保しやすい点が挙げられます。ハローワークのマッチングにより求職者を紹介してもらえるため、求人広告を掲載するといった費用をかけることなく、有用な人材を低リスクかつ、低コストで採用できます。
求職者にとってのメリット
トライアル雇用は求職者にとっても「ミスマッチ」を防ぐメリットがあります。実際に就業してみないと分からない職場の環境や、人間関係、業務内容など、詳細を確認したうえで判断できる点です。実際に働き始めてみてから「こんなはずではなかった」「最初の話と違う」という事態を防げます。また、通常の就職活動よりも本採用につながりやすいという点は求職者にとっての大きなメリットです。
04トライアル雇用のデメリット
次にトライアル雇用のデメリットを企業と求職者、双方の視点から見ていきます。
企業にとってのデメリット
就業経験の乏しい求職者を採用することで問題となるのは、育成に時間とコストがかかる点です。基本的なビジネスマナーを最初から教える必要が生じる場合もあり、教育係を専任するといった体制を整える必要があります。採用に関するコストは抑えられますが、育成に関するコストはかかるという認識をもっておく必要があります。
求職者にとってのデメリット
トライアル雇用の求職者にとって、最大のデメリットは3ヶ月の期間終了後、本採用が確約されていないという点です。不採用になった場合は、職歴が一つ増えるといったことに注意が必要です。またトライアル雇用実施期間中はほかの企業に応募ができません。その点では早急に正規雇用を求める求職者にとっては適切な方法ではないかもしれません。
05障がい者のトライアル雇用
企業にとって障がい者の雇用は義務であり一定数の雇用を維持していく責任があります。そのためにも障がい者のトライアル雇用は有用な手段であると考えることもできます。
障がい者トライアル雇用制度
心身に障がいのある人で次の4つの条件のいずれかに当てはまり、週20時間以上の勤務 を希望する人が対象となります。
- 1.これまでに経験のない職業へ就労を希望している人
- 2.離職転職を繰り返し長く働ける職場を探している人
- 3.6ヶ月以上のブランクがあるが再び就職を考えている人
- 4.重度の身体障がい、重度知的障がい、精神障がいのいずれかがある人
上記要件のいずれかに当てはまる求職者を対象に3ヶ月〜6ヶ月(精神障がいの場合は最大12ヶ月)の有期雇用契約で勤務してもらうことが可能となり、適性や障がいの程度によって勤務可能かどうかの判断ができます。
障がい者短時間トライアル雇用制度
精神障がいや発達障がいのある人で、週20時間以上の長時間勤務が難しい場合は、週10~20時間の短時間勤務から始める制度もあります。長時間集中することが難しい特性を持つ障害者にも、徐々に仕事に慣れてもらい、最終的には20時間以上の長時間勤務を目指す制度です。
06トライアル雇用助成金制度について
企業がトライアル雇用を活用すると助成金の対象となります。原則として、対象者一人あたり4万円を最長3ヶ月間受給できる制度です。この助成金制度は、一般の求職者を対象にした「一般トライアルコース」と障がい者を対象にした「障がい者トライアルコース」の2種類があります。
一般トライアルコースの受給要件
トライアル雇用の開始から2週間以内にハローワークに実施計画書を提出する必要があり、終了の2ヶ月以内に申請書を提出することで受給できます。28の要件すべてに該当することが必要であり、ここではいくつか重要なものを抜粋して紹介します。
- 1.ハローワークや職業紹介事業者の仲介により雇用を行う
- 2.過去3年にわたり、自社で雇用や職業訓練を行っていない対象者であること
- 3.過去6カ月にわたり、雇用主都合でのトライアル雇用者の解雇がない
- 4.トライアル雇用労働者に対し、労働条件の相違などの不利益や違法行為がない
- 5.トライアル雇用労働者に対して適切に賃金を支払っている
- 6.雇用保険適用の事業主である
- 7.助成金の支給決定に関わる書類を整備し保管している事業主であること
このように支給要件は非常に細かく定められています。
障がい者トライアルコースの受給要件
障がい者トライアルコースは、対象者一人あたり月額最大4万円、原則3ヶ月が支給対象になります。また精神障がい者をトライアル雇用する場合は、月額最大8万円、最長6ヶ月となります。(短時間勤務トライアルコースの場合は月額最大4万円最長12カ月)一般トライアルコース同様、開始後2週間以内の実施計画書の提出と、終了後2ヶ月以内の申請書の提出が必要となります。 受給要件は厚生労働省が定める各雇用関係助成金に共通の条件を全て満たし、かつ 1.ハローワークもしくは職業紹介所の仲介により雇い入れること 2.障がい者トライアル雇用の期間において雇用保険に加入させること この2点に該当する場合支給の対象となります。
07トライアル雇用活用の注意点
企業がトライアル雇用を活用する際には、いくつか注意点があります。活用を検討する場合は、以下の3点を十分に考慮してください。
煩雑な事務手続きが発生する
トライアル雇用の活用には、申請手続き、計画書・終了報告書の提出など、それぞれの段階で、規定のフォーマットを提出する必要があります。対象者の人数が多い場合は、人事担当者や採用担当者の事務処理が煩雑になり、業務量が増える可能性があります。既存の人員体制で対応可能かどうか、よく検討する必要があります。
周囲の理解と配慮が必要
就業経験の乏しい求職者を就業させる場合、周囲の理解と配慮を取りつけておく必要があります。一般的なビジネスマナーや常識が身についていないことも想定されるため、そうしたことも含めて「長い目で見て、育成していく」という共通の認識を、事業所全体に浸透させておく必要があります。また障害者の場合は、障害の程度に応じて特別な配慮が必要になる場合があります。就業を予定する部署を中心に、事業所全体で綿密に打ち合わせをしておかなくてはなりません。
教育研修に手間と時間がかかる
トライアル雇用の求職者は、即戦力としては見込めません。時間をかけ「長い目で見て、育成していく」という「覚悟」が必要になります。教育担当者の専任や、定期的な研修を実施するといった手間をかけた育成を行う必要があります。またトライアル雇用の対象者には、限られた3カ月のトライアル期間中、早期に職場になじんでもらうために、事前研修を実施するのも効果的です。基本的なビジネスマナーに関する映像教材を活用し、事前学習させると良いのではないでしょうか。
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08まとめ
トライアル雇用の活用は、就労困難な求職者に対し、門戸をひらくという点において、企業の社会的責任を果たすという側面もあります。自社の現状を十分に考慮し、活用の際には、十分な教育体制を整備することが必要であるといえるでしょう。