クレドとは?導入する目的からメリットまで詳しく解説

組織において従業員の成長を促すのは大切なことですが、企業活動や方向性の基準がきちんと理解されていなければ、足並みが揃わなくなってしまいます。しかしそのような時に拠り所となるのがクレドです。この記事ではクレドを導入する目的からそのメリットまで詳しく解説します。
- 01.クレドとは
- 02.クレドの類似用語
- 03.クレドを浸透させるメリット
- 04.クレドの作成方法
- 05.クレドを浸透させる方法
- 06.クレド導入の注意点
- 07.クレドの導入事例
- 08.まとめ
01クレドとは

クレドとは、企業活動において意思決定や行動基準となる信条や行動指針のことを指します。元々は、ラテン語で「約束」「信条」「行動方針」「志」などの意味を表す「credo」が語源です。
クレドは、アメリカの医療品メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソンの3代目の社長である、ロバート・ウッド・ジョンソンJrによって提唱されました。ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは「我が信条」と題した文書で、1行目には「我々の第一の責任は、すべての顧客に対するものである」と明記されています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、異物混入事件が起きた際に、このクレドに基づいた行動で消費者の信頼を守りました。このことが、クレドを世間に広めるきっかけとなったのです。
クレドが注目される背景
2000年代に入った頃、企業の不祥事が相次いで発覚しました。このことから、コンプライアンスや企業の社会的責任(CSR)を重視した経営が重要視されるようになったのです。
しかし、法令遵守意識や主体性は、経営層が掲げるだけでは企業全体に浸透しにくいのは言うまでもありません。そのため、クレドを取り入れ、全従業員の意識や行動を改革していくクレド経営が注目されるようになったのです。
02クレドの類似用語
クレドに似た用語として、企業理念やミッション・ビジョン・バリューなどがあります。この章では、クレドと各用語の違いについて紹介します。
クレドと企業理念の違い
クレドは、本来では信条という意味ですが、日本においては行動指針・行動規範の意味合いで使われることが多いです。
そのため、企業理念は企業が存在する意義や価値などを表現したものであるのに対して、クレドは社員がその企業理念のもとでどのような価値観を持ち、どのような行動をとってほしいのかを表現したものと整理できます。
クレドとミッションの違い
ミッションとは、企業・組織が果たす使命や存在意義のことです。そのため、企業理念とミッションは同義で使われることが多いでしょう。従って、ミッションとクレドの違いは主語が企業なのか、社員なのかという点にあると整理できます。
クレドとビジョンの違い
ビジョンは、企業・組織の理想像、中長期的な目標を表す言葉です。いわゆる経営理念がビジョンと同義と考えて良いでしょう。ビジョンもミッションと同様に、組織・経営が主語であるのに対して、クレドは社員が主語という違いがあります。
クレドとバリューの違い
バリューは、ミッションやビジョンを達成するために必要な、社員の行動指針、行動基準を表す言葉です。つまり、クレドとバリューは同義と言えるでしょう。
03クレドを浸透させるメリット
クレドを浸透させる主なメリットは、社員の自律を促進につながるという点が挙げられます。例えば、東日本大地震の際に東京ディズニーリゾートのキャストが咄嗟に現場で判断した行動は、その後SNSを中心に称賛されました。このように、社員が自身の頭で判断し行動するための規範がクレドであり、この浸透度合いによって自律できるかどうかも大きく変わってきます。
社員の自律を促進できる
クレド(行動規範)を定めることによって、社員はその行動規範に基づいて行動することができるようになるので、自律を促進することができます。時には、現場ですぐに判断をしなければならない場面に遭遇することもあるでしょう。その際に、クレドがあればその基準に基づいて、社員が行動することができます。
統一された基準に沿った人材採用、人材教育ができる
クレドを作成することで、企業の信念や方針を従業員と共有できるため、その軸に沿った人材採用や人材教育を行うことができます。 採用や社員教育が属人的にならず、企業にとって有益な人材を統一された基準に基づいて採用・育成できるのが、クレドを用いるメリットだと言えるでしょう。
従業員のエンゲージメントが高まる
「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「クレド」が浸透した組織で従業員が働くということは、ビジョンやクレドという企業の持つ目的に共感し、それを叶えるためのミッションを受け入れてマーケットにバリューという新しい価値を生み出してくれるという状態になっているということです。 働く目的が同じで、価値観に共感しあえる仲間が企業内に揃っているということなので、企業に対するエンゲージメントは必然的に高まります。
従業員のモチベーションアップにつながる
クレドは、経営層が一方的に掲げるものではなく、従業員が納得した上で制定され、浸透していくものです。 またクレドは、企業の成長や時代の変化に合わせて変わっていく必要があるため、どのように変えるかは従業員自らが考え、議論していかなければなりません。 そのため、クレドを深く理解すれば一人一人の従業員が、何のために仕事をしているのかを腹落ちでき、自社をより良い方向へと改善するにはどうすれば良いかを考えるきっかけとなるため、モチベーションアップに繋がります。
他社との差別化が図れる
クレドは社内外に向けて掲げるという性質から、競合他社との差別化を図る手段にもなるでしょう。 例えば、高品質な商品やサービスの提供をクレドに盛り込めば、競合他社と比較して高級感のあるイメージを明確に示すことができます。 クレドに自社のバリューを反映することで、従業員の意識統一も図ることができるでしょう。
コンプライアンスの遵守につながる
近年、企業に求められるコンプライアンス意識はますます高くなってきています。 SNSなどの普及により、さらに高いコンプライアンス意識が求められる範囲も広くなってきていることから、企業としては、リスクマネジメントの意味も含めて全従業員にクレドを浸透させ、守るべき基準を明確化してコンプライアンス遵守の意識を向上させる必要があるのです。
チーム間、部門間の連携が取りやすくなる
異なる役割を持ったチームや、部門間でスムーズなコミュニケーションを行うのは難しいですが、クレドが浸透することで共通の判断基準が生まれます。 このことから前向きな議論やコミュニケーションができ、連携が取りやすくなるでしょう。
04クレドの作成方法
クレドを作成する手順を4つの段階に分けてご紹介します。
クレドを作成する目的やスケジュールを決める
最初に、クレドを作成する目的や理由を明確にして、いつまでにどのような作業をするのかスケジュールを決めましょう。 曖昧な理由でクレド作成に着手したり、担当や日程をしっかりと決めなかったりすると中身の伴わないクレドが完成してしまいます。 要点を押さえ、無駄のないプロセスでクレド作成を進められる環境を整えましょう。
経営陣にインタビューをする
クレドには、全従業員の意思を反映させるのが望ましいため、経営陣が考える判断基準や価値観、将来のビジョンなどをヒアリングしましょう。 企業としてのあり方をクレドに反映させられるよう、経営陣の中でも意見をまとめておくことが重要です。
従業員にアンケートを行う
従業員へのアンケートを行い、自社を良くしていきたいと考える熱意や想いを積極的に汲み上げましょう。 このプロセスを丁寧に行うことで、従業員へクレドを浸透させるのに後で役立ちます。
クレドを文章化して配布する
クレドを文章化して配布する際、読み手として意識するのは従業員です。 簡潔でわかりやすく、企業の独自性が現れている具体的な内容とすることが重要だと言えるでしょう。
05クレドを浸透させる方法
クレドは作成するより浸透させることが大切だとよく言われますが、企業内で効率的にクレドを浸透させる方法を3つご紹介します。
クレドカードの配布や掲示
クレドを導入している会社の多くは、クレドを記載して日常的に見てもらうことでより意識付けをさせる「クレドカード」を作成して配布し、社員証と一緒に持ち歩いてもらったり、従業員だけではなく、外部の人の目にも止まるような場所に掲示したりして周知を図っています。 まずは身近な環境にクレドを存在させることで、認知度や理解度を高めていくのです。
朝礼や全社会議での周知
朝礼や全社会議でクレドを繰り返し読み上げ、従業員に多く耳にしてもらうのも良い方法だと言えるでしょう。 誰がどのようにしてクレドを作成したのかや、企業が何を目指しているのかなどのストーリーを併せて伝えると、より浸透しやすくなります。
イントラネット、社内SNSなどを活用して周知
イントラネットや社内SNSなどを活用してクレドを周知すると、いつでも閲覧可能となるので従業員が活用しやすくなります。 また、定期的に発信するといった工夫もできるため、より社内に浸透しやすくなるでしょう。
06クレド導入の注意点
クレドは、作成して終了ではなく、しっかりと運用できるようなものを選定し、導入する必要があります。次では、クレド導入に際して、注意するべきポイントについて解説します。
経営陣のみで作成する
クレドは社員の行動指針となるものです。そのため、経営陣のみで作成するのではなく、ボトムアップ方式で作成し、運用していくことが良いとされています。経営陣が手動で作成してしまうと、経営陣にとって都合の良い文言ばかりがクレドに盛り込まれてしまい、社員が賛同しにくいものが生まれてしまいます。結果的に、離職などに繋がってしまう恐れもあるので、経営陣は導入自体の決定権のみにとどめ、「作成に対してはなるべく意見を言わない」といった意識を持つことが重要です。
目的や成果が共有されない
クレドは導入して終わりではありません。導入し、運用されることで会社の利益や従業員のエンゲージメントなど、目に見える成果を構築することが重要です。そのため、事前にクレド導入に伴う成果や導入後の状態目標を決めて、随時社内で共有できる体制を作っていくようにしましょう。
形式的な作成になってしまう
クレドを導入し、対外的に公表していくことで会社の価値観をアピールすることができます。そのため、会社の方針に則した求人を集められるというメリットがあります。そのため、形式的なクレドを作成しても意味がありません。社内全体の行動指針となるようなクレドを作成し、浸透しているものでないと、入社後に新入社員はギャップを感じてしまいます。また、社員の意思が反映されず、形式的に作成したクレドは社員からの反感を買う材料となり、離職に繋がる恐れもあるのです。
07クレドの導入事例
ここまでクレドの特徴やメリット、導入方法などを解説しました。では、実際にどのようなものがクレドとして導入されているのかわからないという人も多くいるかと思います。ここでは、導入事例について解説していくので、実際に導入を検討している企業の担当者は参考にしてみてください。
ジョンソン・エンド・ジョンソン社
クレドを提唱したジョンソン・エンド・ジョンソン社の導入事例をご紹介します。 ジョンソン・エンド・ジョンソン社ではクレドを「我が信条」として次の通り定めています。
- ・第一の責任は全ての顧客に対するもの
- ・第二の責任は全社員に対するもの
- ・第三の責任は地域社会、全世界の共同社会に対するもの
- ・最後の責任は会社の株主に対するもの
顧客第一の姿勢を貫くことで企業を大きくしていこうという姿勢が、このクレドで表現されていると言えるのではないでしょうか。
リッツ・カールトン
リッツ・カールトンでは、企業理念として6つの「ゴールドスタンダード」を定めています。会社の基準となる考え方を表す「ゴールドスタンダード」ですが、その中の1つとして、クレドが存在します。リッツ・カールトンでは、クレドを以下のように定めています。
- ・リッツカールトンのクレド
- 「リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。」
リッツ・カールトンの定めるクレドの特徴として、社員に対して具体的な行動指針を示しているだけではなく、企業の価値観をあらゆる層の社員に向けて伝わりやすいように記載していることが挙げられます。これにより、社員は行動指針が明確になるのです。
楽天グループ株式会社
楽天では、「ブランドコンセプトを実現する」という企業目標のもと、以下の成功のコンセプトがあります。
- ・常に改善、常に前進
- ・Professionalismの徹底
- ・仮説→実行→検証→仕組化
- ・顧客満足の最大化
- ・スピード!!スピード!!スピード!!
楽天では、従業員一人ひとりがプロフェッショナルの自覚を持って業務に取り組んでもらうように、クレドを採用しているのです。
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

08まとめ
クレドとは、企業活動において意思決定や行動基準となる信条や行動指針のことで、全従業員の意思が反映されているため、組織に浸透するほど従業員のエンゲージメントを高め、モチベーションアップに繋がるなどメリットが大きいとわかりました。 ぜひクレドを自社に合った方法で取り入れ、従業員の意識改革や行動改革のきっかけとしてみてください。
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登壇者:小金 蔵人 様株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長 / 組織開発アドバイザー STANDBY 代表
1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。