懲戒処分とは?その基本原則や目的・種類について解説する
懲戒処分を行うことには慎重なるものです。懲戒処分ときくと非常に重い処分だと考える人も多くいますが、懲戒処分を行う目的を理解している人は少ないのが現状です。本記事では、懲戒処分の目的や種類、適用する前にしておくべきことについて解説していきます。
- 01.懲戒処分とは
- 02.懲戒処分を行う場合の基本原則
- 03.懲戒処分の流れ
- 04.懲戒処分と退職金の扱い
- 05.業種による懲戒処分の違いを理解する
- 06.まとめ
01懲戒処分とは
懲戒処分の基本概念について解説していきます。懲戒処分の修理や目的を確認し、懲戒処分についての理解を深めていきましょう。懲戒処分の概念を理解し、懲戒処分の該当者を出さないことが最も大切なことです。
秩序や業務命令違反を起こした従業員へ課す制裁・罰則
懲戒処分とはなにかについて解説します。懲戒処分とは「従業員による秩序違反や業務命令違反などに対して課す制裁・罰則」です。懲戒処分にはいくつかの段階と種類があり、どの懲戒処分を下すかは企業側の裁量によります。ただし、就業規則への記載など対応しておくべき事項もある点を理解しておきましょう。
懲戒処分を行う目的とは
懲戒処分を行う目的は「違反事項を起こした従業員の戒め」「風紀秩序の改善」です。「違反事項を起こした従業員の戒め」とは、文字通り違反事項を起こした従業に対して反省と今後の改善を期待して行うことを指します。「風紀秩序の改善」とは、不祥事や違反により生じた企業内での風紀秩序を改善し企業風土の改善を図ることです。企業内において懲戒処分を行う不祥事や風紀秩序の乱れを監視している体制が整っていることを、従業員に周知する目的も含まれています。
懲戒処分には主に7つの種類がある
一般的に企業における懲戒処分は、軽い処罰から「戒告」「譴責」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」の7段階に分かれます。
- ・戒告(かいこく)
文書や口頭によって厳重注意をし、将来を戒める処分。事実上の注意となり、懲戒処分の中では最も軽い処分です。
- ・譴責(けんせき)
始末書を提出させ、戒めること。今後、違反行為をしないことを誓約させることが必要です。
- ・減給
支給されるべき賃金の一部を差し引いて戒めること。差し引く金額は、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定されている(労働基準法第91条)。
- ・出勤停止
一定期間の出勤を禁止する、出勤を禁じた期間の給与を無休とする処分であり経済的処分も含まれています。
- ・降格
役職、職位、職能資格を現在より下位に引き下げること。降格により減給となる場合も多い。
- ・諭旨解雇
労働者を解雇するのではなく、双方の話あいの上で解雇処分を進めること。
労働者との労働契約を解消すること。
02懲戒処分を行う場合の基本原則
懲戒処分を行うためには労働契約法第15条に従う必要があります。労働契約法第15条を遵守し懲戒処分を行うための基本原則を解説します。
懲戒処分を行うためには労働契約法第15条に従う必要があります。労働契約法第15条を遵守し懲戒処分を行うための基本原則を解説します。
- ・労働契約法第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
就業規則への記載は必ず必要
懲戒の種類や内容を就業規則に記載することが必要です。就業規則に記載した内容は従業員に周知する義務があります。記載のみで従業員への周知を行っていない場合に実施した懲戒処分は無効となる可能性があるため注意が必要です。就業規則については、所轄の労働基準監督署に届けでする義務もありため、対応に漏れがないように注意しましょう。
就業規則上の懲戒事由であるか
懲戒処分を実施する際には、就業規則上に記載されている懲戒事由でなければなりません。就業規則に記載されている理由を基に懲戒処分を行わない場合には、不服の申し立てをされた場合に企業側が不利になる可能性があります。あらかじめ就業規則により懲戒事由を周知しておき、公正な処分をしていることを示す準備をしておきましょう。
社会的相当があるのか
懲戒処分の内容は、各社にて決めることが可能です。しかし、行き過ぎた処分にならないよう社会的相当であるかを確認しておく必要があります。懲戒処分を行う場合には、処分内容を社労士や労働基準監督署に確認を行い社会的相当であるかの判断を行います。懲戒処分は感情論で実施することが必須とされており、適切な処分を行い改善を促すことが大切です。
03懲戒処分の流れ
実際に懲戒処分を行う場合には、どういう流れで実施していけばいいのでしょうか。次に懲戒処分の流れについて解説します。手順を誤ることで適切な処分が行えない場合もあります。手順を確認し適切な処分を行っていきましょう。
事実関係の調査
処分を行う前には、必ず事実関係の調査を行います。「関係者へのヒヤリング」「周囲へのヒヤリング」「証拠の収集」「本人へのヒヤリング」などの観点から処分対象であるかの情報を収集します。処分するべき事実が判明した場合には、「いつ、だれが、どのような行為があったか」を整理し、いつ、だれが事実確認したかの記録を取ります。事実調査の結果により、懲戒処分の内容が決まることを留意し正しく公正な視点での確認を行う必要があります。また、事実でない可能性もあるため情報の収集には慎重さも必要となります。事実でない場合に、噂が一人あるきし名誉棄損になる可能性を理解して対応していきましょう。
当事者による弁明機会の提供
懲戒処分の決定を下す前には、当事者による弁明機会を提供する必要があります。懲罰委員会などの開催を設け、当事者に事実確認、弁明機会を提供します。当事者は、事実確認をするだけではなく、反省している旨を伝えることで処分内容が軽くなる可能性があります。この場はあくまでも当事者に対して事実確認をすること、当事者が弁明する場でしかありません。主体は当事者であり、弁明機会の場であることを理解しておきましょう。
処分決定と同時者への告知
弁明の機会で確認された事実をもとに処分を決定していきます。処分については、就業規則にさだめている内容をもととし、最終的な決定は複数人での協議により確定させます。複数人による多数決方式や意見交換の中で確定させる際には、代表者の意見などになびかず客観的、社会的視点で確定させる必要があります。処分決定が行われたら、「懲戒処分通知書」を作成します。懲戒処分通知書には、「懲戒処分の対象となった該当事由」「懲戒処分の根拠となる就業規則の該当条項」「懲戒処分の内容」などを記載し、本人に通知します。できるだけ、本人への手渡しと説明を行い納得するよう配慮していきましょう。
04懲戒処分と退職金の扱い
懲戒処分「諭旨解雇・懲戒解雇」を行う場合に気になるのが退職金の取り扱いです。事実上、労働契約が解除されることで当事者の経済的制裁が行われます。自社において退職金制度が構築されている場合には、退職金の取り扱いについても注意が必要です。
懲戒解雇時の退職金の扱い
懲戒解雇処分を行う場合には、就業規則にさだめている基準に応じて退職金を支給します。記載がない場合には、原則、全額を支給することになり支給しない場合には違法性を問われるため注意が必要です。懲戒処分の取り扱いはあくまで就業規則に記載している内容でないといけないと理解しておきましょう。
不支給範囲を就業規則に記載しておくことが必要
懲戒処分であっても原則として退職金は支給する必要があります。この原則をもとに、不支給範囲を記載している場合に限り、退職金の不支給、減額が可能です。ただし、就業規則内に可能性のある全ての事案別に不支給額決定基準を設けることは不可能であるため、文面上は「退職金は、処罰の内容に応じて減額または支給しない場合がある」などと記載しておきます。減額、不支給を決定する基準は処分対象となる事案の重さや、これまでの会社への貢献度合いにより確定していく必要があり判例の多くは7割カットとなっています。
不支給に関しては退職届の効力が発生する前に懲戒解雇を行うことが必要
懲戒解雇になる前に当事者である社員が退職してしまうと懲戒解雇は行えません。当事者は、退職金の支払いをして欲しいと考える場合や逃げられないという心理的側面から退職を申し出る可能性があります。契約期間がさだまっていない労働者には、退職の申し出があってから2週間で退職の効力が生じることを定められているため2週間以内に処分を行い不支給に関する通知を行う必要があることに注意しておきましょう。
退職後に懲戒解雇事由が発覚した場合の対応
退職後に不正が発覚した場合にはどうなるのでしょうか。退職後に不正が発覚した際の退職金の支払いには就業規則に記載しておくことで、不支給や払い戻しを行うことが可能です。就業規則への記載はあらかじめ行われており、周知されていることが前提となり不正が発覚した後の対応では無効となります。
05業種による懲戒処分の違いを理解する
次に業種による懲戒処分の違いを解説していきます。どのような業種にも懲戒処分は定義されており、違いを理解することも自社の懲戒処分制度見直しの参考になります。実際に公務員や教員の懲戒処分が定めている内容を理解しておきましょう。
一般的な懲戒処分について
企業における懲戒処分の扱いは、自社の裁量に任せられています。就業規則に定義し周知することで適用が可能となり、判断基準や重さについても自社内で検討し確定をすることが可能です。処分を行う際には、社会的相当を意識して処分を下していきます。
国家公務員の懲戒処分について
国家公務員の懲戒処分については、「国家公務員法第82条」に定義されています。第82条をもとに処分を確定する必要があり、処分は「免職、停職、減給、戒告」の4種類です。停職期間中は、給与の受取はできなないなどの違いもあり、処分としては一般企業よりも重い処罰が下されます。
教員の懲戒処分について
居員の懲戒処分は文部科学省により定義され、処罰の確定も文部科学省で決定されます。「教職員の懲戒処分の指針」に記載されている処分は国家公務員と同じ「免職、停職、減給、戒告」の4種類です。教員は未来ある若者を育てる職とされており、模範とならない場合の処罰は重くなると考えてください。
懲戒解雇と懲戒免職の違いを理解しておく
類似用語である懲戒解雇と懲戒免職の違いを解説します。懲戒解雇とは、一般企業における解雇を指します。懲戒免職とは、公務員が処罰を受けて解雇されることを示し職種での違いがあると理解しておきましょう。懲戒免職を受けた公務員には履歴書の記載義務があり再就職は厳しくなります。
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06まとめ
本記事では、懲戒処分をテーマに処分の種類や適用に関する注意点を解説しています。懲戒処分が起きないことが最適ですが、懲戒処分を下さす場合には参考にして頂きトラブルをできるだけ避けていきましょう。