公開日:2021/05/31
更新日:2024/03/24

36協定とは?人事が理解しておくべき定義や原則・その注意点について解説する

36協定とは?人事が理解しておくべき定義や原則・その注意点について解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

労務管理を担う場合、36協定の理解は必須といえます。企業内ではあらゆるケースが発生するため、その状況に合わせて正確な情報を理解しておかなければいけません。本記事では、人事部門の方ではあれば知っておきたい36協定の内容を解説していきます。36協定はなぜ必要かや手続きに関しても解説していますので、今後の36協定締結に活かしてください。

 

0136協定とは

36協定の正式な名称は、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」です。労働基準法第36条で法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働、休日勤務などを命じる場合には、労働組合や従業員と書面による協定を結ぶこと、労働基準監督署に届け出ることが義務とされています。36協定と言われる理由は、労働基準法36条で定められる協定届を略したものです。36条に違反した場合には罰則などがあるなど、労働時間に対しての定めを行い従業員の過度な労働が行われないようにしています。

参考:厚生労働省|36協定とは

36協定の限度時間の概念

36協定が結ばれていれば、何時間でも時間労働をさせていいということにはなりません。36協定の中には、限度時間の取り決めもされています。

  • 【一般の労働者】
  • 1ヶ月 45時間
  • 2ヶ月 81時間
  • 3ヶ月 120時間
  • 1年間 360時間
  • 【年単位の変形労働時間制が適用される労働者】
  • 1ヶ月 42時間
  • 2ヶ月 75時間
  • 3ヶ月 110時間
  • 1年間 320時間

労務管理のための労働法 - 管理職向け

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この授業は部下やメンバーの労務管理をする皆さん向けに、労働法を解説する授業です。労働法の理解を深めることで、これから発生し得る問題を予防したり、対応方針を知っておくことができます。日頃の業務で遭遇するような事案を用いて「ここは押さえてほしい」部分を解説していますので、ぜひこれからの労務管理に活用してください。

  • 弁護士・弁理士・YouTuber

    灘高校、東京大学工学部、東京大学法科大学院卒業後、都内の法律事務所での勤務を経て、米国法科大学院へ留学(Berkeley Law、USC Gould)。サンフランシスコの法律事務所での勤務を経て、現在は日比谷パーク所属のパートナー弁護士・弁理士。元数学講師の経験を活かして、法律をわかりやすく解説する。YouTubeチャンネル「弁護士井上拓のフロンティアCH」も公開中。

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0236協定を理解するために時間外労働の原則を理解する

36協定の理解を深めるためには、時間外労働に関する概念や原則を理解しておく必要があります。36協定で定められる時間外労働に関する概念や労働基準の理解を行い36協定を締結する上で問題がなく進めていけるようにしましょう。

所定労働時間を理解する

最も基本となるのが「所定労働時間」の概念です。所定労働時間は、会社の取り決めにより1日単位か1週間単位で働く時間になります。この所定労働時間は就業規則に記載するべき事項であり、従業員との間でも雇用契約として記載する必要があります。この所定労働時間については、労働基準法でも定められています。

・使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
・使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない

この2つの法令に従い所定労働時間を定める必要があります。

法定労働時間を理解する

労働基準法36条で定められている「1日8時間、1週間で合計40時間までの労働時間」のことを「法定労働時間」と呼びます。就業規則や雇用契約上で、この時間を超えた所定労働時間の記載があった場合には、労働基準法36条が定める法定労働時時間が適用されることが法令で定められています。あくまで会社が従業員を働かせる時間の最大は「1日8時間、1週間で合計40時間まで」となり、これを超える場合には36協定の限度時間内にする必要があることを覚えておきましょう。

法定休日を理解する

労働基準法では、休日についての取り決めもされています。

■労働基準法第35条第1項
・使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない

労働基準法第35条第1項のさだめにより1週間に1回の休日を与えることが必要になります。この休日を「法定休日」と呼びます。

 

03働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」の注意点

働き方改革関連法令が制定されたことで、「時間外労働の上限規制」の定めに変更が生じています。ここでは主にどの部分が変更になったかを解説していきます。今後も法令の改正が行われることが予想されます。ここで解説している内容だけはなく、今後の法改正についても確認をするようにしておきましょう。

36協定の「特別条項」

36条の特別条項は以下のように変更となっています。

  • ・限度時間を超えて時間外労働を行う場合には、その具体的な事由を明確にする
  • ・特別条項が適用される場合の割増賃金率・健康確保措置を設定しておく。

この2つについては、法律による要件となり会社としては明確に定義をする必要が出ています。

1年の上限は720時間以内

1年の総労働時間の上限は720時間以内にすることも働き方改革関連法案で定義されています。また、36協定に基づき法定労働時間を超過するのは6回までと定義され、これらは法律上の上限となりました。

1ヶ月の上限は100時間未満

1ヵ月の上限は100時間と定められ、これを超えることは法律違反となります。36協定においても1ヵ月の労働時間は100時間以上をすることは禁止されており、企業として実労働時間についても100時間以下に収めることが義務つけられています。

2ヶ月ないし6ヶ月の時間外・休日労働時間の平均は月80時間以内

休日労働時間を含め複数月(2〜6か月)の平均がすべて80時間以内になること。月の時間外労働と休日労働の合計が平均1ヵ月あたり80時間を超えないことも定義されています。これを超えた場合には法令違反となります。

 

0436協定手続の注意点

次に36協定の手続きを行う際の注意点について解説していきます。36協定をさだめても手続きを誤ることで無効となる場合もあります。正しい手続きを行うために、ここで解説する内容に注意して手続きを行っていきましょう。

事業場ごとに締結が必要

36協定は事業所単位での締結、手続きが必要です。営業所や支社、支店などのように複数の事業所が存在する場合には、原則として各事業場で36協定の締結を行い、各事業場を管轄する所轄労働基準監督署に届け出ることが必要です。事業所が複数ある会社においては、手間になりますが、この手続き方法についても定められているため漏れの無いように締結、手続きを行っていきましょう。

36協定を締結する過半数代表者の選定方法

36協定を締結するのは、会社の代表者と各事業の代表者になります。この代表者については、以下の通り取り決められています。

この選出は、労働組合がない場合には従業員の過半数を代表する者とされています。これを「従業員代表」と呼びます。36協定は、この労働者が代表して締結を行います。労働組合がある場合には、会社と労働組合との間で36協定を締結します。

本社一括届出を行う場合

36協定の締結は原則的に各事業場単位ですが、特例として本社一括で届け出を行う場合があります。特例となるのは、各事業場の規模が少ない場合などになります。この規模については、「所属人数」「業務内容」「責任者の配置の有無」などを元に個別に判断されるため、所轄の労働基準監督署に確認を行う必要があります。

  • ・労働基準法41条2号に規定する管理監督者でないこと
  • ・会社の意向に基づき選出された者でないこと
  • ・36協定等を協定する者を選出することを明らかにした上で、投票・挙手等の方法で選出すること
 

052021年の36協定変更点

最後に2021年における36協定の変更点について解説していきます。2021年は36協定の書式なども変更されているため、変更点についてあらかじめ確認をし手続きを行う必要があります。変更箇所は厚生労働省のホームページでも紹介されていますので、以下のURLでも確認しておきましょう。

出典:厚生労働省「36協定届が新しくなります」

36協定届等における押印・署名の廃止等

新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から行政手続きの押印原則が見直しされていることは、ニュースなどでも紹介されています。この一環として、36協定届における押印・署名も廃止となりました。ここで注意したいのは、あくまで協定書は労使双方での合意がされた証拠になり、労働者代表と使用者(会社の代表)の署名または記名押印が必要になります。廃止されたのは、「36協定届」」に関するものだけとなります。

協定当事者に関するチェックボックスの新設

新たに協定当事者に関するチェックボックスが加わった書式に変更されています。36協定を適切に締結するため、労働者代表の適格性について以下の要件を確認するチェックボックスが新設されました。

従業員代表を適切な手段により選出されていることを確認する意図として加わった項目です。36協定が従業員の同意を得て行われ、従業員の不利益になっていないことを重要視した結果、追加されています。

電子申請による手続きの簡素化

2021年3月末から、電子申請に限り、各事業場で労働者代表が異なる場合でも、本社で一括届出ができるようになっています。36協定の締結はこれまで通り各事業場で行う必要がありますが、電子申請を行うことで各事業場を管轄する労働基準監督署へ届出する必要がなくなりました。この仕組みを使うことで、手続きにかかる手間を削減することが可能になりました。手続きに関しては、厚生労働省からの説明が公開されています。こちらについても確認をしておきましょう。

  • ・管理監督者でないこと
  • ・36協定を締結する者を選出することを明らかにした上で、投票・挙手等の方法で選出すること
  • ・使用者の意向にもとづいて選出された者でないこと

出典:厚生労働省

 

0636協定の上限を超えた場合の罰則

労働基準法によって、労働時間は1日に8時間、1週間に40時間までと限度が決められています。雇用者が36協定を締結しない状態で、社員に時間外労働させるのは原則違法となり、罰則の対象となる可能性があります。この章では、36協定に違反した場合の罰則内容や対象になるケースなどを紹介します。

罰則の内容

労働基準法第32条に基づき、36協定を締結しない状態で法定労働時間を超えてしまった場合に、労働基準法違反とみなされ罰則の対象となります。

罰則の内容は労働基準法第119条に記載されており、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金となります。

罰則の対象者は企業だけではない

36協定に違反した場合、罰則の対象となるのは企業だけでありません。労働基準法第10条には、「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と記載されており、簡単に言うと企業・経営者だけでなく労務責任者も罰則対象になるということです。


 

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07まとめ

本記事では、36協定に関して人事部門担当者が理解しておきたい基本的な内容を解説しています。ご紹介している厚生労働省のページで記載例なども詳しく紹介されています。実際に作成をする場合には、記載事例などを参考に作成を行うと間違うこともありません。また、労働基準監督署でも記載方法の説明を行ってくれますので相談しながら作成していくことも方法です。36協定は届出を出すことが目的ではなく、労働者と使用者の間で労働時間の取り決めを行うこと、労働者に不利な労働時間にならないことを目的としています。正しい知識をもとに36協定を締結し、労働者と使用者にとって不利益が起きない手続きを行っていきましょう。

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