ビジネス課題を解決する課題解決フレームワークの種類と使い方を解説
ビジネスにおいて課題はつきものです。そして課題に直面した際にフレームワークに落とし込んで分析することは欠かせません。課題に当たる都度コンサルタントに頼っていては費用がいくらあっても足りません。また、そもそもコンサルタントもフレームワークをベースに課題を分析します。自社でも課題解決が可能になるように課題解決に使えるフレームワークをご紹介いたします。
- 01.課題解決における重要ステップ
- 02.目的別課題解決フレームワーク
- 03.フレームワークの落とし穴
- 04.まとめ
01課題解決における重要ステップ
課題解決は多くの場合以下の手順で行われます。
- Step1 課題の定義
- Step2 課題を構造化
- Step3 優先度をつける
- Step4 分析方法を設定
- Step5 分析を実施する
- Step6 発見内容を統合して解決策を練る
- Step7 解決策の実行
上記の手順において特に大切なのは課題を「正しく理解すること」「ゴールを設定すること」「真の原因を突きとめること」「解決戦略の実行」です。
目の前の現象を正しく理解する
上記のStep1、2「課題の定義」「課題を構造化」に当てはまります。初めに課題を定義して構造化することで課題を正しく理解します。 そもそも課題を正しく把握していなければ、そのあとの全すべの工程が無駄に終わります。コンサルタントが使う用語に「フリップ・ザ・コイン」という言葉があります。これは、ただコインを裏返しただけの何にも意味をなさない答えという意味で使われます。例えば、書店で「今の課題は返品率の高さです」だから「返品率を下げましょう」では、何の解決もできません。また、「返品率が高い」や「売上が下がっている」などは単なる現象でしかありません。その現象を引き起こしている原因こそが解決すべき課題なのです。
ゴールを設定して問題を整理する
Step3「優先度をつ付ける」の手順で重要なのはゴールを設定することです。現象を正しく理解し構造化をするとありとあらゆる課題が浮き彫りになります。しかし、すべてを一つずつ解決する時間などありません。 ゴールを明確に設定し課題に優先度をつけることで、ゴールにもっとも近づける課題がわかります。例えば前述の書店の例では、返品率の高さが現象として現れていました。その現象を起こす原因は「需要の少ない商品を仕入れている」「そもそも仕入れが多すぎる」「売れるべき本が売れていない」「客数が少ない」など複数考えられます。当然、すべてを解決することは困難です。もしゴールを「売上の10%増」と設定したのであれば、課題は仕入れではなく「客数」と「平均単価」でしょう。集客と売り方の課題の優先順位が高まります。しかし「返品率を10%下げる」とゴールを設定したら課題の優先度はまったく異なります。返品率を下げたいのであれば「仕入れ量」や「マーケティング」などの課題の優先度が上がります。
問題を可視化して真の原因を突き止める
Step4、5「分析方法を設定」「分析を実施する」は、真の原因を探るために行います。ここでは後述するフレームワークが重要です。Step3までで課題を特定してきましたが、さらにその課題の真の原因を突きとめなければなりません。 この際によく使われるのは株式会社トヨタの「Whyを5回」の方法です。なぜ?を5回繰り返して真の原因にたどり着く手法です。Whyを5回繰り返すことやフレームワークで分析し、原因を突きとめてもまだ足りません。次に「なぜ、まだそうなっていないのか?」という質問を使い、さらに分析を進めます。「原因は分かった、でもその原因を今まで取り除けなかったのはなぜだろう」と考えて初めて次の解決策を決定することができます。
解決戦略の策定と実行
上述のように7つのStepのうち5つは問題の原因解明です。原因が分かってしまえば解決策を決めること自体は難しくありません。Step6、7「発見内容を統合して解決策を練る」「解決策の実行」で大切なことは当事者の納得感です。解決策を決めたとしても実行されなければ課題を解決できません。ときには課題の原因が社長であったり、現場の上司の判断であると判明することもあるでしょう。今まで大事に積み上げてきた伝統が足を引っ張っていることもあります。そのようなとき、データを用いて理論的に説明して解決策の有効性を訴えるだけでは不十分な場合もあります。相手を動かして解決策を実行させるために、ときには感情に訴えることや相手が自ら気づくまで待つことも大切です。
02目的別課題解決フレームワーク
フレームワークは上記で説明した手順のなかで、必要に応じて使う「ツール」です。複雑に絡み合う事情をフレームワークに落とし込むことで、整理して論理的に分析できます。数多くのフレームワークがありますが、すべてを使う必要はありません。また、どのフレームワークを採用するのかによって解は変わってしまうこともありえます。そのため、フレームワークを使いこなすだけではなく最適なフレームワークを選択することも重要です。
課題発見
課題が見つからないと、課題解決は始まりません。課題発見において大切なことはMECE(漏れなく、重複なく)です。フレームワークに当てはめることでMECEを実現できます。
ロジックツリー
現象を深堀りして課題を抽出する際に役に立ちます。ここで重要なのは「Why?」を繰り返すことです。先ほどの書店の例では返品率が多いことが現象でした。ではなぜ返品率が多いのでしょうか。「売れない商品を仕入れているから」「店舗の販売力が弱いから」「仕入れの数が多すぎるから」など漏れなく書いていきます。それぞれについてさらに深堀りをします。ではなぜ売れない商品を仕入れているのでしょうか。「仕入れ担当者の知識不足」「周辺住民の需要を把握できていない」「出版社側からの意向に逆らえない」などが上がってきます。さらにそれぞれについて深堀りをしていきます。ではなぜ仕入れ担当者の知識が不足しているのでしょうか。このように、ツリーを描くように枝分かれさせ原因を列挙します。
PEST分析
マクロの視点で世の中の環境変化を捉え、自社の立ち位置を確認するときに役に立ちます。PEST分析では外部要因をPolitixs(政治)、Economy(経済)、Society(社会)Technology(技術)という視点で捉えます。先ほどの書店の例で考えます。 ・Politixs 返品率が多いのは、勝手に値下げすることが許されていない制度が原因です。そのためセールなどで在庫処分ができないのです。 ・Economy 新型コロナウイルスによる不景気や考えられるでしょう。 ・Society 新型コロナウイルスの影響によりネットショッピングでの書籍購入が増えていることが考えられます。 ・Technology 情報を得る方法が多様化し、電子書籍や動画を気軽に手に入れられることなどが考えられます。 以上のようにPEST分析は社会全体のなかでの自社の立ち位置を確認することが可能ですが、解決策を導くものではありません。
SWOT分析
内部環境と外部環境を分析します。プラスとマイナスどちらの側面からも見るのでMECEの構造になっています。内部のプラスはStrength(強み)、マイナスはWeakness(弱み)です。また外部のプラスはOpportunity(機会)、マイナスはThreat(脅威)です。 Opportunity(機会) Threat(脅威) Strength(強み) 強みを活かして機会を活用する 強みを活かして脅威を回避または打ち負かす Weakness(弱み) 弱みで機会を逃さないようにする 最悪の事態を回避する このとき、ただ4つに分けることに意味はありません。分けたあとにそれぞれの領域について分析する必要があります。強みを活かしきれているのか、弱みで最大の機会を逃していないか、などさらに分析が必要です。
解決戦略の策定
前述の課題発見のフレームワークは分析にしか使えません。分析したデータは使ってこそ意味をなします。データを活用して次なる施策の一歩となるフレームワークをご紹介します。
TOWS分析
前述のSWOT分析で分類した4つの要素のそれぞれに対して戦略を考えます。大切なことはまず書き出していくことと、書き出した後にチェックすることです。チェックのポイントは以下の通りです。
- ・実現可能か?
- ・ゴールに対して有効か?
- ・優先順位は?
- ・コストは?
プロダクトポートフォリオマネジメント
自社の商品やサービスの方向性、投資方針を決める際に役立ちます。商品とサービスを市場シェアと市場の成長の2軸で下記の4つの領域に分類します。 ・問題児 市場シェアが低く、市場成長率が高い領域です。今は収益が少ないものの、今後伸びる可能性があります。積極的な投資が必要ですが、市場シェアが低いため投資費用は大きくなってしまいます。 ・花形 市場シェアも市場成長率も高く収益が伸びている領域です。この分野にも積極的な投資は欠かせません。投資効率が高く、利益を出しやすいという特徴があります。 ・金のなる木 市場シェアが高く市場成長率が低い、収益がピークに達している分野です。 競争が激しくないため積極的な投資を必要とせず、低コストで利益を出しやすい分野です。 ・負け犬 市場シェアも市場成長率も低いため収益が乏しく、市場が伸びる可能性も低い分野です。 投資しても利益創出が難しいため、事業を整理してほかの事業に経営資源を分配することを検討するべき領域です。
アンゾフの成長マトリクス
次なる市場戦略を考える際に役に立ちます。市場と商品を両軸に取り、それぞれ既存と新規に分けます。自社の立ち位置や解決すべき課題の性質を当てはめ、該当の解決策を実施します。 既存商品 新商品 新市場 市場開拓 多角化 既存市場 市場浸透 新製品開発
提案
企画や提案が通るかどうかには説明の順序や論理性、プレゼン力が必要です。前述のとおり納得できない提案では実行に結びつきません。論理性は分析時に使ったフレームワークを用いることで説明が可能ですが、大切なことは説明の順番と客観的な証明です。
AIDMA
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の5段階に分けて顧客の購買までの心理を整理したモデルです。顧客の購買行動を促すために作られた心理モデルですが、プレゼンの際にも有効に使えます。
マーケティングの4C
ここまでのフレームワークは自社の強みやマクロ的な立ち位置での論理的な解を導く手法でしたが、顧客行動は必ずしも論理的になるとは限りません。そのため客観的な顧客目線を取り入れることは非常に重要になります。 4CとはCustomerValue(顧客にとっての価値)、Cost(顧客にかかるコスト)、Convenience(顧客にとっての利便性)、Communication(顧客との会話)です。課題解決をした結果が顧客目線からどう映るのかを分析します。
戦略の実行
最後は実行に使われるフレームワークです。普段のビジネスシーンにおいて、意識せずとも使われていることも多いですが改めてご紹介します。
PDCA
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)に行動を当てはめることで、改善改革をします。PDCAのサイクルを回すことで新たな課題が見えてくるでしょう。 課題解決は改善の繰り返しです。解決策を実行するだけではなく、継続的に改善しながら実行しなければなりません。
5W1H
What(何を)、When(いつ)、Who(誰が)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)が抜けている実行は上手くはいきません。当たり前のことのように思えますが、戦略の考案者と実行者が異なる場合に5W1Hを曖昧にしてしまうと齟齬が生じてしまいます。
03フレームワークの落とし穴
世界最高のマネジメント思想家とも称されるミンツバーグは『戦略サファリ第2版』のなかで「分析技法を通して戦略を開発した者はいない。分析技法が戦略を生み出すのではなく、人が生み出すのだ」と言っています。結局完璧な回答は存在せず、いくらフレームワークを使いこなしても最終的に適切な解を作るのは試行錯誤して考え抜いた人です。 フレームワークは論理的に考えるために非常に役に立つツールですが、完璧なツールではありません。なぜなら、変化の激しい現代において必ずしも論理的に正しい解が一番望ましい結果をもたらすとは言い切れないためです。フレームワークに当てはめて論理的に出たもっともらしい解からは、挑戦も生まれなければ大きな失敗もありません。
フレームワークからはイノベーションは生まれない
例えば前述のプロダクトポートフォリオマネジメント分析の結果「負け犬」と判断された事業は分析結果から考えると撤退こそが正しい選択です。しかし、それではイノベーションは起こりません。多くのイノベーションは市場の成長率が低いところから生まれます。 また、アンゾフの成長マトリクスのように2つの指標を選択してマトリクスを形成することは良く使われる方法です。価値とコストの2軸を取ってマトリクスを作成して戦略を考えることもあるでしょう。経済学者のマイケル・ポーターは価値を訴求する差別化戦略とコストを追求するコスト戦略を提唱しました。しかし、本当に望ましくイノベーションが起きる部分は、理論上不可能な「価値を上げてコストを下げる」ことです。
フレームワークに当てはめられるケースばかりではない
フレームワークに当てはめられないケースも多々あります。むしろ、ピッタリとフレームワークに収まるケースのほうが少ないでしょう。無理やりフレームワークを押し当てることにより、重要な点を見落としてしまいかねません。 フレームワークは確かに論理的に現象を理解するためには有効ですが、あくまで一つのツールとして使うのが望ましいでしょう。最終的には、フレームワークから導かれた論理的に正しい戦略と、試行錯誤で生み出された戦略のどちらも組み合わせて使う必要があるのです。
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04まとめ
ここまで述べてきた課題解決フレームワークは、課題解決に有効に働きます。ほとんどの経営コンサルタントは必ずフレームワークに当てはめて分析しています。しかし、コンサルタント自身もフレームワークに落とし穴があることは承知しています。あくまで一つの有効なツールと割り切った上でフレームワークを使って分析をしてみてはいかがでしょうか。