労働組合とは? 労働組合の概要についてわかりやすく解説
労働組合とは労働者が主体となり結成する組織で、従業員の代表として会社側と労働条件の改善を目的としたさまざまな交渉にあたります。当記事では労働組合の概要と従業員と会社、双方にとってのメリットについて解説します。
- 01.労働組合とは
- 02.労働三権と労働組合法
- 03.企業に禁止されている不当労働行為
- 04.労働組合があることのメリット
- 05.従業員側のメリット
- 06.会社側のメリット
- 07.労働組合の存在意義
- 08.まとめ
01労働組合とは
厚生労働省のホームページによると労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」と定義されています。労働者が団結して、雇用の維持や労働条件の改善についての交渉を行う組織で、労働組合に加入している労働者は組合員と呼ばれます。
参考:厚生労働省ホームページ 労働組合/労働委員会
労働組合の目的
労働組合の活動の目的には、労働条件の改善要求のほかにもさまざまなものがあります。組合員の不満や苦情を会社側に伝えることをはじめ、ほかには不当な解雇やリストラを防ぐといった雇用の安定を図ることが挙げられます。また、会社と組合員の良好な関係構築のため情報交換をするというように、風通しの良い職場環境の構築も目的としています。
02労働三権と労働組合法
労働組合は、日本国憲法第28条と労働組合法によりその存在と権利を保障されています。労働三権とは「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」と呼ばれる3つの権利です。これを補完する形で「労働組合法」が定められ、詳細を規定することで労働組合の存在を労働者の権利として保障しています。
団結権
団結権とは、労働者が自由に労働組合を結成できるとする権利です。個々の労働者が個別に会社と交渉しようとしても、立場が弱いためうまくいかない場合が多いといえます。また会社側も個別に対応していては時間をとられ、本来の業務に支障が出てしまいます。労働者の代表として労働組合が窓口になり会社と交渉することは、双方にとってのメリットとなります。
団体交渉権
団体交渉権とは労働条件をはじめ、さまざまな事項に対し会社側と交渉ができる権利です。労働組合は組合員の代表として、会社と対等の立場で交渉ができます。団体交渉を申し入れた場合、会社は正当な理由なくこれを拒むことはできません。
団体行動権
団体行動権とは、労働条件や労働環境の改善が交渉により進展しないときに、一斉に業務を放棄して争議行動を起こすことができるとされる権利です。いわゆる「ストライキ権」と呼ばれるもので、交渉により問題が解決できない場合、このように強硬な姿勢をとることができるとされています。
労働組合法
労働組合法は日本国憲法第28条に定められた労働三権を、具体的に保障するために定められた法律です。労働組合法は労働者と会社側が取り決めた約束を、「労働協約」として書面で締結する権利を認めています。また会社が労働組合や組合員に対し不利益な扱いをすることを、「不当労働行為」と定義し禁止しています。
03企業に禁止されている不当労働行為
労働組合法では労働組合や組合員に対し、組合活動を理由に不利益な扱いを行うことを禁止しています。その不利益な扱いとは以下の4点に定義され「不当労働行為」と呼ばれます。労使紛争において労働組合または組合員が、会社から不当労働行為を受けたときは、第三者機関である「労働委員会」に救済を申し立てることができます。
組合員であることを理由にした不利益な扱い
労働組合法では、労働組合の結成や加入を理由に解雇や降格、減給、嫌がらせといった不利益な扱いを禁止しています。また不利益な扱いだけではなく、組合員と非組合員の待遇に差をつけることも禁止しています。
団体交渉の拒否
会社には団体交渉には誠実に応じなくてはならないという義務があります。よって、労働組合からの団体交渉の申し入れについて、正当な理由なくこれを拒否することはできないと規定されています。
運営に対する支配・介入
労働組合法では、会社側が労働組合の運営に対し、支配・介入することも禁止しています。 具体的には従業員に対し組合への加入を妨害したり、脱退を促したりする行為を禁止しています。また、会社が組合の運営に対し資金の援助をするといった利益供与も禁止しています。
報復的な不利益な扱い
労働組合や組合員が、労働委員会に不当労働行為の申し立てをしたことや、証拠を提示したことを理由に、労働組合や組合員個人に報復的な不利益な扱いを行うことを禁止しています。このように労働組合法では不当労働行為を定義することで、会社と労働組合が対等な立場で交渉できる権利を保障しています。
04労働組合があることのメリット
労働組合は労働者の権利を守る組織として、労働者側のメリットが強調されます。しかし、労働組合があることは会社側にとってもメリットがあります。双方それぞれの立場からのメリットについて検証していきます。
05従業員側のメリット
労働組合があることは会社側と対等な立場で交渉できることが、従業員にとって最大のメリットです。具体的には以下の3点に集約されます。
会社に対し要望を上げやすくなる
労働組合があることで会社側に要望を上げやすくなります。賃金や労働時間といった労働条件の改善をはじめ、職場のルールや人事制度などが労働者にとって、より良いものになるように会社に意見できます。また就業規則を改定する際、会社は労働組合に意見を聞かなければならないとされ、労働者にとって不利な規則の改定を、牽制できるようになっています。
不利益な扱いに対抗できる
会社都合による労働者への不利益な扱いに対抗したり、起こさせないように牽制できるのも労働組合が存在するメリットです。会社は労働組合があることで、不当な解雇やリストラ、減給など労働者にとって不利益な扱いを、一方的に行うことができなくなります。やむを得ず労働者にとって不利益な施策をとらなければならない場合でも、労働組合が会社側と交渉することで、双方が納得できる妥協点を探ることができます。
相談窓口として機能する
労働組合は組合員の相談窓口として機能します。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントといったトラブルがある場合、被害者である組合員は労働組合を通じて会社に申し立てをすることで改善を要求できます。労働組合を通じて主張することで、会社側に誠実な対応を促すことができます。
06会社側のメリット
労働組合の存在は従業員のみならず会社にも大きなメリットをもたらします。会社側が得られるメリットは下記の3点が挙げられます。
職場の問題を把握できる
労働組合があることで、会社が職場で起きているハラスメントなどの個別の問題を把握でき、コンプライアンスの強化を図れる点がメリットといえます。また労働組合を通じて問題点を把握できることは、個別のトラブル解決だけではなく、長時間労働やサービス残業といった構造的な問題の解決につながり、健全な企業風土の醸成にも役立ちます。
従業員の生の声が集めやすい
従業員の率直な意見が集めやすくなることも、労働組合がもたらす会社へのメリットです。労働組合が職場集会やアンケートで集めた「従業員の生の声」を会社が吸い上げることにより、従業員が必要としている福利厚生や、不満に感じている制度の問題点を直接把握できます。「従業員の生の声」は会社をより良くしていくための貴重な材料であるといえます。
信頼関係の向上
労働者が会社に対し改善してほしいと思う点を明確に把握して、改善の取り組みを会社と労働組合が連携して行うことは、双方の信頼関係の向上につながります。労働組合を通じて上がってきた従業員の要望に対し、会社が真摯に向き合うことで双方の良好な関係が構築されていくのです。
07労働組合の存在意義
労働組合は労働条件の維持・改善、職場環境の向上を目的に会社と対等の立場で交渉できる点に存在意義があります。これにより、従業員は雇用の安定や労働条件の向上により、安定した生活を送ることができます。会社側も労働者の不満を減らし、可能な限り労働環境と労働条件を改善することで離職を防ぎ、安定した経営が可能になります。会社側と労働者側、双方の架け橋となり、互いにとって良い環境を構築していくことが労働組合の存在意義であるといえます。
働きやすい職場にすること
労働組合の目的は、会社を労働者にとって働きやすい職場にすることです。そのためには、労働組合は会社側とシビアな交渉を行うことが求められます。会社側は労働組合との交渉は時間と労力を要し、デメリットと感じる面もあるかもしれません。しかしこの交渉の過程なくしては、働きやすい職場環境の構築は難しいでしょう。
従業員の意欲を向上させること
働きやすい職場にすることは従業員の意欲の向上につながります。会社と労働組合が力を合わせ職場環境と労働条件の改善に取り組むことで、信頼関係が構築されることは先に述べた通りです。こうした協力関係のもと、職場環境の改善や労働条件の向上に取り組むことが、従業員の意欲を向上させ、結果として企業の発展に貢献するのではないでしょうか。
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08まとめ
会社をより良くしていくためには、労働組合を通じ従業員の意見や考えを把握し、それを会社運営に反映していくことが重要です。労働組合への対応は時間や労力を要し企業にとってデメリットと感じる面もあるかもしれません。ですが、それ以上に大きなメリットをもたらすものでもあります。交渉に際しては真摯に向き合い、相互の信頼関係を構築していくことが重要であるといえます。