更新日:2026/06/25

退職勧告(退職勧奨)とは?違法な退職強要との違いや注意点を解説

退職勧告(退職勧奨)とは?違法な退職強要との違いや注意点を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

勤務態度や業務遂行に課題がある従業員への対応や、人員削減を検討する場面では、退職勧告(退職勧奨)が選択肢のひとつとなることがあります。しかし、進め方を誤ると、違法な退職強要と評価されたり、退職の有効性が争われたりするおそれがあります。本記事では、退職勧告と解雇の違いから、違法な退職強要とみなされないための注意点を解説します。

 

01退職勧告とは?

退職勧告とは、企業が従業員に対して退職を勧めることを指す表現です。労務実務では「退職勧奨」と呼ばれることも多く、会社が一方的に退職を命じるものではありません。

退職勧告は、「能力不足により期待される成果が出ていない」「勤務態度に問題がある」など、従業員の業務遂行に課題がある場合や、業績悪化に伴う人員削減の場面で行われることがあります。ただし、退職するかどうかを決めるのは従業員本人であり、従業員が同意した場合にのみ退職が成立します。

▼参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省

労働契約終了の全体像における退職勧告の位置づけ

Schoo for Businessの授業『労務管理のための労働法-管理職向け|第2回 2.労働契約の開始、終了』に登壇する井上拓先生(弁護士)は、労働契約終了の主なパターンを、「任意退職」「自動終了」「解雇」の3つに大別して解説しています。

労働契約終了の全体像における退職勧告の位置づけ

1つ目は、従業員の辞職や労使の合意によって労働契約を終了させる 「任意退職」です。期間の定めのない労働契約では、民法上、原則として退職の申出から2週間が経過すると労働契約が終了します。

2つ目は、定年や有期労働契約の期間満了など、あらかじめ定められた事由によって契約が終了する「自動終了」です。定年退職のほか、有期労働契約の期間満了や、就業規則に基づく休職期間満了による退職などが含まれます。

3つ目は、使用者の一方的な意思表示によって労働契約を終了させる「解雇」です。解雇には、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇などがあります。

退職勧告(退職勧奨)は、会社が従業員に退職を提案し、双方の合意による労働契約の終了を目指すための働きかけと位置づけられます。そのため、この分類では任意退職に該当します。一方、従業員が自ら申し出る辞職とは異なり、会社からの提案を受けた合意退職である点が特徴です。このことから、雇用保険上は「会社都合」の退職という扱いになる場合があります。

解雇との違い

前述のとおり、退職勧告は、会社が従業員に退職を提案し、会社と従業員の合意による退職を目指す働きかけです。これに対し、解雇は、使用者の一方的な意思表示によって労働契約を終了させるものです。そのため、両者の大きな違いは、従業員の同意を必要とするかどうかにあります。

退職勧告はあくまで退職を勧める行為であり、従業員は応じることも拒否することもできます。一方、解雇については、労働契約法上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、解雇権の濫用として無効になります。

また、解雇を行う場合は、労働基準法上、一定の例外を除き、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払う必要があります。

退職勧告には、こうした法定の解雇手続きそのものは適用されません。ただし、従業員の自由な意思に反して退職を迫るような進め方をすると、違法な退職強要と評価されたり、退職合意の有効性を争われたりするおそれがあります。そのため、企業は従業員の自由な意思決定を尊重し、面談の回数や時間、伝え方、提示条件などに十分注意する必要があります。

割増退職金が支払われることもある

退職勧告は従業員の同意が前提となるため、通常の退職金に一定額を上乗せする割増退職金や、再就職支援、退職日までの年次有給休暇の取扱いなどを提示する場合があります。

ただし、退職金制度はすべての企業に義務づけられているものではありません。退職金制度を設ける場合、就業規則の作成義務がある事業所では、支給対象者、支給要件、金額の計算方法、支払時期などを就業規則に定める必要があります。

▼参考:就業規則作成の9つのポイント|労働基準監督署

 

02退職勧告による退職が無効・取消しとなる場合もある

退職勧告により従業員が退職に同意した場合でも、その同意が自由な意思に基づくものではないと判断されれば、退職の意思表示が無効になったり、取り消されたりすることがあります。ここでは、退職勧告による退職の有効性が問題となるケースについて、事例とともに解説します。

退職勧告が行われる時の状況によっては退職の有効性が問われる

中央労働委員会が公開している「HP版調整事件解説集|強迫による退職の意思表示の有効性」では、退職勧奨は「労働者に強い圧力を加える形態で行われること」があるため、退職勧奨が行われる時の状況によっては、退職の意思表示について強迫や錯誤などの瑕疵が問題となる場合があると説明されています。

つまり、従業員が退職に同意していたとしても、その同意が強迫によるものだった場合や、解雇されると誤信したことによる錯誤があった場合には、退職の意思表示の有効性が争われることがあります。また、従業員に真に退職する意思がないことを会社が知っていた、または知り得た場合には、心裡留保による無効が問題となることもあります。

▼参考:中央労働委員会「HP版調整事件解説集|強迫による退職の意思表示の有効性」

【参考判例】昭和電線事件

昭和電線事件は、不注意で工事記録書を破棄したことや、同僚に暴言を吐いたことなどを理由に、企業が従業員に退職勧奨を行った事例です。企業側は、従業員が退職勧奨に応じなければ解雇処分とする意思を示し、従業員は解雇を避けるために退職手続申請書を提出しました。

しかし裁判所は、従業員に解雇事由は存在せず、解雇処分を受けるべき理由もなかったと判断しました。そのうえで、従業員が「退職しなければ解雇される」と誤信して退職に同意したことについて、退職合意承諾の意思表示には要素の錯誤があったとして、退職合意は無効であると判断しています。

このように、退職勧告は従業員の同意が前提であるものの、実質的に退職を強要するような進め方をした場合や、解雇されると誤認させるような説明をした場合には、退職の有効性が否定される可能性があります。

 

03退職勧告が違法な退職強要とみなされないための注意点

退職勧告は、従業員の自由な意思に基づく同意を前提とするものです。そのため、進め方によっては、違法な退職強要と評価されたり、退職合意の有効性が争われたりするおそれがあります。ここでは、企業が退職勧告を行う際に注意すべきポイントを解説します。

従業員は退職勧告に応じる必要がないことを前提に進める

退職勧告を行う際は、従業員が退職勧告に応じる義務はなく、退職するかどうかは従業員の自由な意思に委ねられることを前提に進める必要があります。企業側として退職を促したい事情がある場合でも、退職を強要するような言動や、従業員に強い心理的圧力を与える進め方は避けるべきです。

また、従業員にその場で回答を求めるのではなく、検討する時間を設けることも重要です。必要に応じて、退職条件や今後の選択肢を文書で示し、従業員が冷静に判断できる環境を整えましょう。

▼参考:退職勧奨 具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|確かめよう労働条件

退職勧告をする際の話し方に注意する

退職勧告を行う際は、従業員の人格や名誉感情を傷つけるような表現を避ける必要があります。例えば、勤務態度や能力面の課題を伝える場合でも、感情的な非難ではなく、具体的な事実や業務上の課題に基づいて説明することが重要です。

また、解雇事由が明確でないにもかかわらず「応じなければ解雇する」と伝えることや、威圧的な言い方で退職を迫ることは避けるべきです。従業員が退職勧告を拒否した場合に、執拗に説得を続けると、自由な意思形成を妨げたとして違法な退職強要と評価されるおそれがあります。

退職を促すための配置転換や仕事の取り上げはしない

退職を促す目的で、従業員の経験や能力とかけ離れた業務に配置転換したり 、合理的な理由なく仕事を取り上げたりすることは避けましょう。このような対応は、退職に追い込むための嫌がらせや、違法な退職強要と評価されるおそれがあります。

配置転換を行う場合は、業務上の必要性、人選の合理性、従業員の不利益の程度を確認し、従業員に丁寧に説明することが重要です。

▼参考:「配置転換及び降格についてその無効とそれに伴い減額された賃金の支払いを求めた事案」 | あかるい職場応援団

高頻度・長時間に及ぶ退職勧告は違法になる場合がある

退職勧告に応じない従業員に対して、再度退職勧告を行うことが直ちに違法となるわけではありません。しかし、従業員が明確に拒否しているにもかかわらず、短期間に何度も面談を行ったり、長時間にわたって説得を続けたりすると、社会通念上許容される範囲を超え、違法に退職を強要したものと評価されるおそれがあります。

退職勧告を行う際は、面談の回数・時間・参加者・伝え方が過度にならないよう注意が必要です。従業員が拒否の意思を示した場合には、その意思を尊重し、執拗な説得を続けないことが重要です。

 

04退職勧告を適切に進めるための6つのステップ

退職勧告は、進め方を誤ると、違法な退職強要と評価されたり、退職合意の有効性が争われたりするおそれがあります。ここでは、退職勧告を適切に進めるための基本的な流れを6つのステップで解説します。

退職勧告の方針や理由を社内で共有する

退職勧告を行う前に、対象となる従業員の勤務状況や業務上の課題、これまでの指導・改善機会の有無などを確認し、実施の必要性を社内で慎重に検討します。直属の上司や人事部門、必要に応じて法務部門・専門家の意見も踏まえ、退職勧告の理由や伝え方を整理しておくことが重要です。

また、割増退職金や再就職支援などの条件を提示する場合は、提示できる内容や期限、社内承認の有無を事前に確認しておきましょう。

担当者用に退職勧告の理由を記したメモを用意する

面談を担当する人のために、退職勧告の理由や説明の流れを整理したメモを用意します。メモには、退職勧告に至った経緯、業務上の課題などを客観的な事実として整理し、会社として提示できる条件、従業員から想定される質問への回答などを記載しておくとよいでしょう。

併せて、従業員の人格や名誉感情を傷つける表現、解雇事由が明確でない段階で「応じなければ解雇する」といった表現、即決を迫る表現など、避けるべき言い方も共有しておくことが重要です。

従業員との面談で退職を勧める会社の意向を伝える

従業員との面談は、プライバシーに配慮した会議室などで行います。面談では、退職を勧める会社の意向を伝えるとともに、退職勧告に至った理由や経緯を、具体的な事実に基づいて説明します。

その際、従業員が退職勧告に応じる義務はなく、退職するかどうかは本人の自由な意思に委ねられることを前提に進める必要があります。感情的な非難や威圧的な言動は避け、従業員が冷静に説明を聞けるよう配慮しましょう。

従業員に十分な回答期限を設けて検討を促す

面談時にその場で回答を求めるのではなく、従業員が家族や専門家に相談し、冷静に判断できるよう検討期間を設けます。退職条件を提示する場合は、内容を文書で示すと認識のずれを防ぎやすくなります。

従業員から反論や質問があった場合も、退職勧告の理由や会社の考えを説明することにとどめ、不利益な取扱いを示唆したり、解雇の有効性を十分に検討しないまま解雇を断定したりしないよう注意が必要です。

退職の時期や処遇について話し合う

従業員が条件次第で退職に同意する意向を示した場合は、退職日、退職金・割増退職金の有無、未消化の年次有給休暇の取扱い、引き継ぎ、再就職支援などについて話し合います。会社の提示内容と従業員の希望をすり合わせ、双方が納得できる条件を整理しましょう。

なお、退職勧告に応じた離職は、雇用保険上の離職理由に影響する場合があります。ただし、基本手当の受給資格や給付制限の有無などは、最終的にハローワークが個別事情を確認して判断するため、企業側が断定的に説明しないよう注意が必要です。

▼参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワーク インターネットサービス

退職合意書を作成する

従業員が退職勧告に応じる場合は、退職合意書の作成により、退職の意思と合意内容を文書で確認します。退職日、退職理由、退職金・割増退職金の有無、年次有給休暇の取扱い、貸与物の返却、守秘義務など、合意した内容を明確にしておくことが重要です。

ただし合意書は、従業員が自由な意思で退職に同意したことを確認するためのものです。署名・提出を急がせたり、強制したりすると、後に退職の有効性が争われる可能性があります。従業員が持ち帰って検討できるようにし、署名後は双方が合意書を保管しましょう。

 

05従業員が退職勧告に応じない場合の対応

従業員が退職勧告に応じない場合、企業はその意思を尊重する必要があります。ただし、退職勧告を拒否された後も、業務上の課題が残る場合には、退職勧告とは切り分けて、指導・教育、適切な配置転換、業務改善の機会付与など、状況に応じた対応を検討することが重要です。

退職勧告に強制力はない

繰り返しになりますが、退職勧告には強制力がありません。従業員が応じない場合、企業は退職を強要することはできず、原則として従業員には引き続き勤務してもらうことになります。

業務遂行や勤務態度に課題がある場合は、退職を迫るのではなく、指導・教育、目標設定、改善機会の付与、配置転換の検討など、雇用を継続する前提での対応を行うことが重要です。再度の面談を行う場合も、従業員の拒否の意思を尊重し、執拗な説得にならないよう注意しましょう。

解雇を検討する場合は、合理的理由と社会通念上の相当性を確認する

従業員が退職勧告に応じない場合でも、直ちに解雇できるわけではありません。解雇が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります。

例えば、能力不足や勤務態度の問題を理由に解雇を検討する場合でも、就業規則上の根拠、問題行動や業務上の支障を示す記録、これまでの指導・改善機会の有無、処分の相当性などを慎重に確認する必要があります。

また、解雇を行う場合は、原則として少なくとも30日前の解雇予告、または30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いが必要です。

▼参考:労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)|e-Gov 法令検索

▼参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov 法令検索

会社側に人員整理の必要がある場合は「整理解雇」

会社の経営状況悪化などにより人員削減を検討せざるを得ない場合には、整理解雇が選択肢となることがあります。ただし、整理解雇は使用者側の事情による解雇であるため、慎重な判断が求められます。

整理解雇の有効性は、一般に次の4つの観点から判断されます。

  • ・整理解雇の必要性が本当にあること(人員削減の必要性)
  • ・整理解雇を避けるための努力を会社が尽くしていること(解雇回避努力)
  • ・対象者の選定に合理性があること(人選の合理性)
  • ・労働者側との間で十分な協議が尽くされていること(解雇手続きの妥当性)

これらは法律の条文に明記された要件ではなく、裁判例を通じて形成されてきた判断枠組みです。裁判例によっては、4つの観点を独立した厳格な「要件」としてではなく、解雇権濫用の有無を総合的に判断するための「要素」として捉えるものもあります。

▼参考:整理解雇には4つの要件が必要|労働基準監督署

▼参考:ナショナル・ウエストミンスター銀行(三次仮処分)事件(東京地裁決定2000年1月21日、労働判例782号23頁)


 

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07まとめ

退職勧告は、従業員の自由な意思に基づく同意を前提とする働きかけであり、会社が一方的に退職を命じる解雇とは性質が異なります。そのため、退職を強要するような言動や、過度な頻度・長時間に及ぶ説得を行うと、違法な退職強要と評価されたり、退職合意の有効性を否定されたりするおそれがあります。

労使間の認識のずれやトラブルを防ぎ、適切な合意退職につなげるには、退職勧告に応じるかどうかは従業員本人の判断に委ねられることを前提に、丁寧に説明し、十分な検討期間を設けたうえで、合意内容を文書に残すことが重要です。

従業員が退職勧告に応じない場合は、その意思を尊重し、指導・教育や、業務上の必要性に基づく配置転換など、雇用継続を前提とした対応を検討しましょう。判断に迷う場合や紛争に発展する可能性がある場合は、早い段階で労務問題に詳しい弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

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