従業員エンゲージメントとは?従業員エンゲージメントを上げる方法とメリットについて解説する
本記事では、従業員エンゲージメントをテーマに用語の定義からエンゲージメントを上げる方法などについて解説しています。企業運営において、従業員のエンゲージメントは非常に重要な意味を持つことを含め理解していきましょう。
01従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントとは何を意味しているのでしょうか。最初に従業員エンゲージメントの定義について解説しています。従業員エンゲージメントが示す意味を理解していきましょう。
従業員エンゲージメントの定義
「エンゲージメント」は、もともと企業やブランド、商品やサービスへの愛着を表す言葉でした。企業における「顧客エンゲージメント」とは、お客様がどれだけ自社製品やサービスに愛着や思い入れを持ってくれているかを判断する指標です。「従業員エンゲージメント」は、「従業員が働いている会社に対して、向かっている方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のこと」と定義することができます。従業員のエンゲージメントが高い場合には職場環境や労働条件に満足しているだけでなく、仕事へやりがいを感じ、意欲を持って取り組んでいることを示しています。
経済産業省も持続的な企業価値の向上のために必要な人材戦略上の優先課題として「従業員の自発的貢献意欲(エンゲージメント)の向上」を挙げており、企業にとって欠かせない指標であると言えます。
▶︎参考文献:経済産業省 参考資料集
類似用語との違い
次に従業員エンゲージメントと類似している用語について解説していきます。類似している用語との違いを正しく理解し正確に用語を使っていきましょう。類似している用語については、その意味についても解説しています。
社員満足度(ES)
社員満足度(ES)は従業員満足度は居心地の良さを表す指標です。福利厚生や労働環境などを企業努力によって改善することで従業員がその取組みに対して評価し、満足していたらESは高い数値を示します。この指標はあくまで従業員の会社へ対する満足度であるため、会社の業績には直結しない指標となります。
ロイヤリティ
ロイヤリティは「忠誠心」のことです。通常、従業員ではなく顧客に対しても使用される単語です。従来ではこのロイヤリティを重視する考え方が主流でした。しかし現在では、企業と従業員は明確な主従関係であり、従業員自身の判断力や想像力が育たないなどという意味合いからネガティブな用語として使用されることも増えています。
モチベーション
従業員のやる気を示す言葉です。従業員のモチベーションは従業員自身の心理状態を指すのに対して、従業員エンゲージメントは従業員と企業との間の関係性を示す違いがあります。モチベーションが高い状態は仕事への積極的なチャレンジを期待できます。
ワークエンゲージメント
従業員エンゲージメントは、組織全体の文化や方針、リーダーシップのスタイル、コミュニケーションの質など広範な要因に影響されるのに対し、ワークエンゲージメントは、個々の業務内容、職務の適合性、スキルの使用機会、仕事の意味や達成感など、従業員が個々の仕事やタスクに対して感じる情熱やエネルギーのレベルを指します。いずれも従業員のモチベーションや生産性を高めるために重要ですが、異なる側面を持ち、組織全体の健康を考える上では両方のエンゲージメントを高めることが重要です。
コミットメント
コミットメントとは、従業員が組織に対して感じる忠誠心や責任感を指します。具体的には、従業員が組織の目標や価値観に共感し、長期的に貢献し続けたいという意志を示します。従業員エンゲージメントは仕事への情熱や関与を指すのに対し、コミットメントは組織への忠誠心や長期的な関与を強調するのです。また、従業員エンゲージメントは、業務の達成感や職場環境、リーダーシップの質に影響されやすいですが、コミットメントは、組織のビジョンやミッション、職場の信頼関係に大きく影響されやすいという特徴があります。
02従業員エンゲージメントに注目が集まっている背景
米ギャラップ社の調査によると、日本企業の従業員エンゲージメントは132位と非常に低い順位に位置しています。この調査は、世界各国の従業員がどれだけ仕事に対して情熱を持ち、積極的に取り組んでいるかを測るものです。従業員エンゲージメントが低いということは、多くの日本企業の従業員が自分の仕事や職場に対して前向きな態度を持っていないことを示唆しています。
主な要因としては、「職場文化」「コミュニケーション不足」「仕事の意義や達成感の欠如」「キャリア開発の機会が少ない」といったものが挙げられます。これらは、企業の生産性や競争力に直接的な悪影響を及ぼします。一方で、高いエンゲージメントを持つ従業員は、より高いパフォーマンスを発揮し、創造的なアイデアを提案し、顧客満足度を向上させることができます。エンゲージメントが低いと、離職率の増加や企業文化の悪化につながり、結果的に企業全体の業績に悪影響を及ぼすため、従業員エンゲージメントを向上させるための取り組みは企業にとって必要不可欠となっているのです。
03従業員エンゲージメントが高い状態とは
従業員エンゲージメントとは、「従業員が働いている会社に対して、向かっている方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のこと」を指しますが、従業員エンゲージメントの高い状態として、具体的に次の3つの状態が挙げられます。
- 1:職場環境や評価に満足している
- 2:仕事で十分な成長の機会がある
- 3:自社の方向性に共感している
ここではそれぞれについて解説していきます。
職場環境や評価に満足している
従業員エンゲージメントの高い状態では、従業員が自分の職場環境や評価に満足していることが重要です。良好な職場環境は、仕事に対するモチベーションや満足度を向上させる要素です。従業員は、公平な評価と報酬制度、働きやすい労働条件、コミュニケーションや協力の促進など、職場環境の要素によって満足感を得ることができます。
仕事で十分な成長の機会がある
従業員エンゲージメントが高い状態では、従業員が仕事で自己成長やスキルの向上を実現できる機会が存在することが重要です。仕事における新たなチャレンジや責任の委任、学習やトレーニングの機会、キャリアパスや成果に応じた昇進の可能性などが従業員の成長を促し、エンゲージメントを高めます。
自社の方向性に共感している
従業員エンゲージメントが高い状態では、従業員が自社のビジョンや目標に共感していることが重要です。従業員は、組織の方向性や価値観に共鳴し、自分の仕事が組織の目的達成に貢献していると感じることで、仕事への意欲や熱意を持つことができます。明確なビジョンや目標の共有、組織文化の醸成、従業員への情報提供などが、従業員の方向性に対する共感を促す要素となります。
04従業員エンゲージメントを構成する要素
従業員エンゲージメントは主に次の2要素で構成されています。
- 1:企業理念やビジョンへの理解・共感
- 2:会社への貢献のためのモチベーション
企業理念やビジョンへの理解・共感
従業員エンゲージメントを向上させるためには、企業理念やビジョンへの理解は欠かせません。社員が持つビジョンや使命が企業とマッチしていることで、初めて企業への愛着が沸き、貢献しようという意思が高まります。
また、企業理念やビジョンへの理解だけでなく、どれだけ共感されているかも重要な要素です。共感されていなければ、社員は自分の仕事に対してやりがいや達成感を得づらくなります。企業が掲げる理念やビジョンに共感できれば、意義を持って働くことができ、従業員エンゲージメントの向上に繋がります。
<ビジョンマネジメントについてのSchooおすすめ授業>
従業員のエンゲージメントを高めるために必要不可欠なビジョンの理解・共感ですが、具体的にどのように浸透させていくべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
この授業では、ビジョンとは何か?という基本的な内容から具体的なビジョン実現のためのアプローチやそのアプローチを現場に浸透させるための方法など、より実践的な内容までを学びます。
今回はパーソルキャリア株式会社のエグゼクティブマネジャーである加々美先生と大浦先生をお招きして、パーソルキャリアのビジョンマネジメントについて具体的な事例をもとにお話いただきます。
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doda編集長
2005年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。人材紹介事業、転職メディア事業にて法人営業、およびマネジメントを担い、一貫して企業の採用支援、個人の転職支援に従事。 2013年にはカルチャー変革の仕組みづくりと推進をミッションとした新規部署を立ち上げ、企業変革を成功に導くためのチェンジマネジメントを主導。2014年には人事部門も管掌し、人事制度企画や採用、異動・配置転換、組織・人材開発など、ビジョンの実現と経営戦略の実行に向けた、戦略人事全般を担う。2019年、新しいマッチングサービスを開発する新規事業開発部門を立ち上げ、本部長に。ダイレクトリクルーティング全般、そしてハイクラス転職サービス「iX」(現「doda X」)の事業・プロダクト開発をけん引。2021年には執行役員に。2023年4月、doda編集長、プロダクト&マーケティング事業本部 事業本部長就任。
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パーソルキャリア株式会社
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年より約3年間、doda編集長を務め、2019年10月には執行役員に。2022年7月、doda編集長に再就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC) 理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事にも名を連ねる。
会社への貢献のためのモチベーション
従業員エンゲージメントが高い企業の社員は、主体性や積極性があり、会社の成果に貢献しようというモチベーションも高い傾向にあります。社員のモチベーションは、企業理念やビジョンへの共感に加えて、働く環境等に密接に結びついています。
05従業員エンゲージメントを高めるメリット
次に従業員のエンゲージメントを高めるメリットについて解説していきます。従業員のエンゲージメントが高ければ企業の方向性に共感し自発的な貢献を期待できるため、企業成長は飛躍的に進みます。そうした成長に繋がるメリットを詳しく見ていきましょう。
モチベーションの向上
前向きなモチベーションが強く発揮されている状態は、従業員エンゲージメントは高く、日常の業務において与えられた業務をこなすのではなく、自発的に仕事を見つけだし、積極的に取り組んでいく効果が期待できます。エンゲージメントサーベイで従業員のコンディションをキャッチアップすることで、コンディションの変化を察知することも可能です。例えば、スコアが悪くなった場合には、1on1や面談などを通して随時フォローを実施することでモチベ―ションアップを期待できます。
離職率の低下
アメリカコンサルティング会社CEB社調べによると「エンゲージメントの高い従業員は、エンゲージメントの低い従業員と比較すると離職率が87%も低い」という調査結果や厚生労働省の調査結果(平成26年)として「仕事を辞めたい」と考えている人の割合が、「働きがいがある」と答えた人の中では1.6%だったのに対し、「働きがいがない」と答えた人の中では36.5%と約20倍も高かった調査も公表されています。従業員のエンゲージメントが高い場合には、離職率を低下させ企業での人材不足を引き起こさない環境を構築することが可能です。
参照元:一般財団法人 日本次世代企業普及機構「ホワイト化のヒントより」
業績向上
「ES」と「営業利益率」を用いて分析した結果、両者には相関が見られ、「ES1ポイントの上昇につき、当期の営業利益率が0.35%上昇する」ことが分かりました。つまり、「エンゲージメント」は営業利益率にプラスの影響をもたらすということです。
との分析結果が株式会社リンクアンドモチベーション「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果にて公表されており、従業員エンゲージメントと業績向上には強い関係性があることが分かります。
参照元:株式会社リンクアンドモチベーション「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開
顧客満足度の向上
エンゲージメントの高い従業員は、顧客に対しても積極的かつ前向きな態度で接します。彼らは顧客のニーズを理解し、期待を超えるサービスを提供することに注力します。従業員の顧客対応が良いと、顧客は満足度が高まり、リピーターとなる可能性が高まります。また、顧客満足度の向上は口コミや評判の向上にも寄与し、新規顧客の獲得にもつなげることができるのです。
06従業員エンゲージメントを高めるポイント
次に従業員エンゲージメントを高める要素を解説します。従業員エンゲージメントが高まることで企業には多くのメリットがあるため、解説する内容を踏まえてエンゲージメントを高める対策を講じていきましょう。
経営ビジョンの共有
企業の方向性に共感するためには、経営ビジョンを正確に共有する必要があります。共有を行うには、経営者自らが自分の言葉で繰り返し経営ビジョンやその考え方について説明を行う必要があります。経営者自ら、従業員一人一人に説明することはできないため、経営者に代わり伝える役割を担う人材を整え繰り返し伝え続けることが必要です。経営ビジョンの共有が図られると、行動様式自体にも変化が起き相乗効果に期待できます。
信頼関係の構築
従業員同士の信頼関係の強化は、従業員エンゲージメントの向上に大きく影響します。コミュニケーションが活発化し信頼関係を築くことができれば、仕事が進めやすくなり会社での業務をマイナスに感じることが少なくなります。人間のストレスの最大の要因は人間関係だとされており、信頼関係のある職場では、この人間関係が円滑にまわっていきます。こうしたことから、信頼関係の向上は従業員エンゲージメントを大きく向上させる要素を持っています。
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【関連記事】チームビルディングとは?定義やその目的、実践時のポイント・施策について解説
適切なフィードバック
定期的かつ具体的なフィードバックは、従業員の成長を促進します。ポジティブなフィードバックはモチベーションを高め、建設的なフィードバックは改善点を明確にします。フィードバックは具体的でタイムリーであることが求められます。これにより、従業員は自分のパフォーマンスを理解し、改善する機会を得ることができるのです。
適切な人事評価
適切な人事評価が実施されることで、がんばりを評価してもらえる、努力を見ていてくれるという満足度があがります。自分自身を評価してくれる会社には愛着がわき、継続して働いていたい、評価されたいという気持ちを生んでいきます。この繰り返しにより、一層高いモチベーションを生みエンゲージメントを高めていくことが可能になります。
ワークライフバランス
従業員のワークライフバランスを尊重することは、エンゲージメント向上に直結します。柔軟な働き方や適切な休暇制度を導入することで、従業員は仕事と私生活を両立させやすくなります。これにより、ストレスが軽減され、仕事に対する意欲も向上させることを可能とします。
定期的なサーベイ
サーベイを定期的に繰り返すことも必要です。サーベイを継続的に実施し、数値の変動を見つけ下がっている場所への対応策を講じることを繰り返し行っていくことは、継続して高い従業員エンゲージメントを得るために必要なことになります。特に前回と比較してエンゲージメントが大きく下がっている箇所があれば原因の追求と対応策を講じた対応が急務と捉え対応を行っていきましょう。
07従業員エンゲージメント向上で成功した企業事例
従業員エンゲージメントを向上させたことで成功した企業事例について紹介します。今後、従業員エンゲージメントの向上を図りたい場合には成功事例から学ぶことは多く、参考にすることで自社の取り組みに活かすことができます。
小松製作所
建設機械の国内でのシェア1位、世界で2位を誇る小松製作所の事例です。小松製作所は、2012年の4月に従業員エンゲージメント強化をはかりました。従業員エンゲージメントを高めるのに行われた施策は、マネージャー層がイノベーションを起こす思考や発想を生むチームを作るための研修とワークショップへの参加です。これは、現場従業員のエンゲージメントを左右するのは、直属の上司と考えマネージャー層の人材育成を行い成功した事例です。この結果、小松製作所の成長は格段にスピードアップしたとさえ言われています。
参照元:トータルエンゲージメントグループ 小松製作所紹介事例
グリー株式会社
多種多様なソーシャルゲームサービスを提供する「GREE」では、マネージャー向けの「1on1研修」の実施を行い、上司と部下の信頼関係を構築することで社員の成長をサポートする取り組みを実施しています。研修後の社内アンケートでは「1on1に満足している」と答えた社員が全体の70%を占めていると発表しており、従業員エンゲージメントの向上に成功している事例です。
参照元:SELECT「株式会社グリーの紹介記事」
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
08まとめ
本記事では、従業員エンゲージメントをキーワードに従業員エンゲージメントを上げるメリットや成功事例を解説してきました。現在多くの企業が、従業員エンゲージメントに対しての対策を講じ対応をしていますが、諸外国に比べれは対応の遅れが否めないとされており、今後の対応を急務と考えている企業も少なくありません。企業成長には欠かせないと言われている従業員エンゲージメントについての理解を深め対応を行う参考に本記事を活用ください。
▼【無料】“働きがい”の追求で実現する人的資本経営|ウェビナー見逃し配信中
従業員エンゲージメントを高める組織作りについてのウェビナーアーカイブです。なぜ、自律的な組織を作る上で働きがいのある環境が必要なのか。どういうプロセスを経れば働きがいのある会社を作れるのか。人的資本時代のスタンダードとなり得る働きがいのある会社と組織づくりの方法を深掘りします。
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登壇者:荒川 陽子 様Great Place to Work® Institute Japan 代表
2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小〜大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。