公開日:2021/07/20
更新日:2023/01/17

労使とは?安定した労使関係を保つために企業ができることを解説

労使とは?安定した労使関係を保つために企業ができることを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

労使環境を取り巻く環境は変化を遂げ、昨今では労働者個人と使用者の紛争である「個別的労使紛争」が増加傾向にあります。本記事では、企業に大きなダメージを与えかねない労使紛争や、安定して労使関係を保つためにできることについて解説します。

 

01労使とは「労働者」と「使用者」のこと

労使とは、「労働者」と「使用者」のことで、両者の関係のことを「労使関係」と言います。ここでは、「労働者」と「使用者」の定義について解説します。

「労働者」の定義

「労働者」の定義については、労働基準法9条によると、「職業の種類を問わず、事業または事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者」とされています。労働組合法3条でも、「労働者」について、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義しています。 労働基準法の「事業に使用される者」に対して、労働組合法のほうが意味合いが広く、失業者や業務委託契約の場合も「労働者」として認められるケースがあるようです。 労使関係に言及する際は、労働者個人と使用者、または労働組合と使用者を意味することがあり、それぞれ「個別的労使関係」「集団的労使関係」と呼び分けることがあります。

使用者」の定義

労働における「使用者」とは、労働基準法第10条によると、「事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定義されています。 「使用者」と聞くと、社長など経営のトップのことを指すと思いがちですが、労働基準法の定義から、課長や部長のようなポジションでも一定の人事権があれば、広い意味で「使用者」に当てはまることが分かります。


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02労使を取り巻く環境と今後の課題

労使関係の安定は企業の安定にも繋がりますが、ここでは、労使を取り巻く環境と今後の課題について解説します。

厚生労働省の調べでは労使関係の安定を認識している労働者は89.5%

厚生労働省の調べによると、使用者側との労使関係について「安定的に維持されている」「おおむね安定的に維持されている」と回答した従業員が89.5%に上ることが分かりました。 昨今の日本において、労働組合組織率は低下しており、労働組合員の減少やそれに伴う集団的労使紛争が減少していることもあり、労使関係は比較的安定していると認識されています。
参考:労使関係についての認識

非正規雇用労働者の増加により労使関係の見直しが必要とされている

日本における雇用の形は変化し、多様で柔軟な働き方が推進されるようになっています。かつては新卒一括採用が行われ、「年功序列」「終身雇用」のシステムが、日系企業の特徴でした。そして、労使問題には労働組合が対応し、それには正社員のみが当てはまるのが常でした。 しかし、これらのシステムが崩壊し、契約社員やパート労働者など、非正規雇用労働者が増加し、企業としては従来の正社員のみの労使関係だけでなく、非正規雇用労働者との労使関係についても見直す必要が出てきました。

集団的労使紛争が減少傾向なのに対して個別的労使紛争は増加傾向にある

労使紛争と言えば、かつては労働組合と使用者側による集団的労使紛争が中心でした。しかし、集団的労使紛争が減少傾向なのに対し、労働者個人と使用者側による個別的労使紛争が増加傾向にあります。個別的労使紛争は、件数の増加だけでなく、相談内容も多種多様であることが特徴です。 また、企業の枠を超えた「合同労組」や法律事務所に相談する例も増加しており、企業としては、個別的労使紛争への対応が必要不可欠となっています。

 

03個別的労使紛争の相談内容

集団的労使紛争と比較して、個別的労使紛争の相談内容は多種多様だと言われています。ここでは、その中の主なものを紹介します。

解雇

個別的労使紛争の相談内容として多いもののひとつに、解雇についての相談が挙げられます。企業が従業員を解雇するには、客観的合理性と社会的相当性のある理由が必要です。「従業員の勤務態度が気に入らない」「許しがたいミスをした」などの理由で、解雇予告を行ったとしても、解雇権濫用によって無効となることがあります。

契約更新拒否・雇止め

個別的労使紛争では、契約社員の契約更新拒否や雇止めについての相談も多くあります。企業としては、契約期間が満了したので契約更新を拒否するのは当然だと判断するかもしれません。しかし、有期労働契約において、3回以上契約更新が行われている場合や、1年以上継続勤務している人の契約を更新しない場合は、30日前までに予告する義務があります。 また、更新の実績が実質的には無期限契約と変わらないと判断される場合や、雇用継続を期待することが合理的であると考えられる場合は、客観的合理性と社会的相当性のある理由が必要になります。

労働条件の引き下げ

賃金の引き下げなど、労働条件の不利益な変更を行うことで、個別的労使紛争に繋がることがあります。労働条件の引き下げは、基本的に労働者の同意を得れば問題がないとされていますが、同意の有無に関して慎重な判断が必要です。変更による不利益の内容や程度、変更に至るまでに十分な説明があったかなど、従業員が自由な意思で合意したと客観的に認められる必要があります。

いじめ・嫌がらせ

個別的労使紛争の相談内容として、いじめや嫌がらせに関するものも多くあります。パワハラ、セクハラ、モラハラなどのハラスメントは、各企業が防止措置を講じなければなりません。上司や相談窓口を利用したものの、対応が不十分で退職せざるを得なくなったというケースもあります。いじめや嫌がらせが従業員の精神疾患に繋がることもあるため、注意が必要です。

退職勧奨

退職勧奨が、個別的労使紛争の相談内容になることも少なくありません。退職勧奨とは、会社側から従業員に自主退職を促すことです。ただし、「自主退職に応じなければ解雇する」などの発言や、強要されていると感じたことが退職動機となることがあり、退職の意思決定に不当な影響を与えたとみなされると、退職が無効と判断される場合があります。

 

04労使紛争が企業にもたらリスク

労使紛争が企業にもたらすリスク

労使紛争は企業に多大なリスクをもたらします。ここでは、主な3つのリスクについて解説します。

経済的コストがかかる

労使紛争により、企業に多大な経済的コストがかかる場合があります。例えば、従業員の解雇が不当であるとみなされると、解雇から現時点までの未払い給料を支払うよう命じられる可能性があります。また、ハラスメント行為による労使紛争の場合、当事者だけでなく企業も慰謝料の支払いをしなければならくなると考えられます。 多大の経済的コストがかかる可能性を考慮して、労使紛争は未然に防ぐように企業全体で取り組む必要があると言えるでしょう。

人的コストがかかる

労使紛争が生じると、関係者全員が労働審判への出席を求められます。人事や総務の担当者をはじめ、会社関係者が平日から裁判所に出頭することになると、業務に支障が出ることが考えられるでしょう。また、裁判の準備を進めるために、時間や労力を使うことにもなり、多数の会社関係者が労使紛争への対応に追われることになります。 多大の人的コストがかかることを考えると、労使紛争に発展する前の防止対策が重要であることが分かります。

企業イメージや信用の低下

労使紛争がメディアで取り上げられることもあり、企業名が公表されることで企業イメージや信用が低下するリスクもあります。また、SNSが普及している昨今では、労使紛争に関する情報が簡単に拡散されることもあり、思わぬ形で企業イメージを落としてしまうリスクがあります。 企業イメージや信用が低下すると、売上の減少や顧客を失うことにも繋がるため、労使紛争を起こさないよう予防策を講じるのは非常に大切なポイントです。

 

05安定した労使関係を保つために企業ができること

最後に、労使紛争を事前に防止し、安定した労使関係を保つために企業ができることを3つ解説します。

労働条件を書面で明示する

労使双方にとって誤解がないよう、労働条件を書面で明示することが大切です。労働基準法でも、労働契約期間、就業場所や従事すべき業務、始業及び終業時刻や休憩時間、賃金の決定や支払い方法などについて明示しなければならないことになっています。 必ずしも書面で明示しなければならないわけではありませんが、従業員を採用する際に書面で明示し、内容を確認することで、労使紛争の防止に繋げることができるでしょう。できれば雇用契約書を作成することも、安定した労使関係を保つために有効であると考えられます。

就業規則の作成と定期的な見直し

常時10人以上の従業員を使用する事業者には、就業規則の作成が義務付けられていますが、常時10人以下の事業所でも、就業規則を作成することで、労使紛争を予防することができます。就業規則を労働基準監督署に届け出るために作成するのではなく、従業員に社内のルールを知ってもらうために作成することが大切です。労働裁判などでも、就業規則の内容が重視される傾向にあるため、記載内容を慎重かつ具体的に表現するようにしましょう。また、定期的に見直して、時代の変化に対応した内容となるよう注意することも大切です。

職場環境の整備と見直し

安定した労使関係を保つために、職場環境の整備と見直しを実施することも大切です。職場でのいじめや嫌がらせは、使用者が気づかないうちに常習化するケースもあります。「知らなかった」では済まされないため、ハラスメント防止対策を講じて、発生防止に努めるようにしましょう。 また、労災防止対策などにも力を入れることで、全従業員が安心、安全のうちに働ける環境を築くことができるでしょう。


 

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06まとめ

まとめ

労使を取り巻く環境の変化や、安定した労使関係を保つために企業ができることについてまとめました。多様で柔軟な働き方への関心が高まる中、労使紛争の相談内容も多種多様になっています。非正規雇用労働者も含めて、全従業員が安心して就業できる職場環境を提供することは、安定した労使関係を保つための大切なポイントであると言えるでしょう。

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