公開日:2021/07/20
更新日:2023/01/17

降格人事は許される?実施するときの方法とポイントを紹介

降格人事は許される?実施するときの方法とポイントを紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

降格人事は、職位を落としたり、減給したりすることがあるため、会社経営にとってネガティブなイメージをお持ちの方も多いようです。しかし、さまざまな理由により降格人事を実施しなければならないこともあるでしょう。 本記事では、降格人事の概要や実施時の注意点をご紹介します。トラブルを起こさずに降格人事を行うために、ぜひお役立てください。

 

01降格人事の定義と種類

降格処分とは、社内における役職または職務上の資格を下位のものに下げることを指します。降格処分では、それにともなって社員の配置や待遇なども変更されるケースもあります。よくある例としては、部長から課長になるに従って役職手当を減らすというというものです。 この降格処分には、以下の2種類があり、法律上区別されています。

人事降格

人事降格とは、会社が労働契約に基づき、もともと持っている権利として社員を降格させることを意味します。この人事降格には、「降職」と「降格」の2種類があります。 降職では、職位を引き下げることで、社員の役職やポストを解き、下位の職位に変更します。この処分自体が給与を引き下げるとは限りません。 一方、降格では、社員の職能資格や給与等級を引き下げます。能力や経験に応じて定められているグレード、給与階級が引き下げられることで、基本給が減額になるといった処分が起こりえます。

懲戒処分

懲戒処分としての降格とは、会社が持っている懲戒権を行使して懲罰的に降格させることを意味します。 例えば、従業員にハラスメントや、社内規則に対する重大な違反行為違反行為があったとしましょう。それに対する制裁として課す降格処分などがこれにあたります。 会社が社員を懲戒処分として降格させる場合、会社の一存だけで決められる訳ではありません。 懲戒処分を課すには、就業規則に懲戒処分の規定があること、懲戒事由に該当する合理性があること、そして懲戒処分が社会通念に対して相当であることの3つを満たす必要があるためです。


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02降格人事の主な処分内容<

降格人事の主な処分内容は、「減給」と「ポストの変更」の2種類です。 いずれにしても、降格により当事者が受ける不利益などを考慮し、降格処分が適切で違法性がないかを総合的に判断したうえで、実行しなければなりません。

減給

降格人事と合わせて実施されることが多い代表的な処分内容が「減給」です。 人事降格のうち、降職を行った場合は、従来は部長職だったのが課長職になることで、基本給そのものは、変わりません。しかし、役職手当が減額になることが考えれられ、降格を行った場合は、処分にともなう異動により、実質的な等級落ちとなり、直接的に基本給が下がる可能性が考えられます。

ポストのみの変更

減給はともなわず、ポストのみが変わる降格処分内容もあります。 社内の部署整理によって該当のポストが消滅したり、別の下位ポストに就いたりするケースが代表的な例です。そのほか、異動や出向により、部長付けだったのが支店長へと変わる、といったケースも少なくありません。 ただし、この場合、対象となる社員に問題はなく、あくまでも会社の都合による降格です。そのため、役職やポストが下がっても、減給は行われないのが一般的です。

 

03降格人事が認められないケース

降格人事を行う際には、会社側の権利濫用によるものであってはなりません。また、社会通念上妥当であるか否かも重要です。以下で解説する4つの注意点を満たしていない場合には、降格人事は認められませんので、注意しましょう。

就業規則に明記されていない

降格の制度や具体的な判断基準は、就業規則に明記されていなければなりません。 降格人事は、対象の社員にとって減給や精神的なダメージなど、不利益が生じる処分です。そのため、人事部や管理者の判断によって恣意的に降格させることは許されず、根拠となる規定が明示されている必要があるためです。 また、懲戒処分についても、会社の懲戒権によって強制的に社員を従わせることになるため、濫用を避けるために基準を明記しておくことが重要です。 なお、就業規則に記載されたルールが合理的でない場合は、該当項目が無効となることもあります。そのため、会社側の一方的な都合で項目が作られることがないよう、労務担当者へ確認をとりながら作成しましょう。

懲戒処分が重すぎる

懲戒処分では、規律違反行為の程度と比較して重すぎる処分は無効になるというルールがあります。そしてこのルールは懲戒処分としての降格についても同様です。 規律違反行為の内容に照らし合わせて、降格処分が重すぎないかをよく検討してください。

当事者の同意がない賃金カット

賃金の引き下げは、労働者にとって不利益な変更であり、労働者の生活に直結します。そのため、降格人事であっても一方的な賃金の引き下げはできません。 降格人事により、賃金の減額が決定した際には、その旨を当事者に事前説明を行い、書面による同意を得たうえで、実行します。

人事権や懲戒権の乱用

会社側は降格処分が権利の濫用に当たらないかどうか慎重に判断する必要があります。 降格人事を決定する前には、その社員が現在のポストに不適格なのか、降格処分は業務上必要なのか、会社側に降格の必要性を証明する証拠があるのかといった点を十分に検討しなければなりません。

性差を理由にした降格人事

日本では男女雇用機会均等法が定められており、雇用や職場での待遇において性差があってはなりません。これは、降格人事においても同様であり、降格条件に男女による違いを設けるのはもちろん、性差によって降格の優先順位を決めることも許されないのです。

 

04降格人事が認められる主なケース

降格人事の実行は、正当な理由なく行うことはできず、適用条件も厳しく設けられていることは理解いただけたかと思います。 では、致し方ない事情から降格人事を検討する場合には、どのような点に着目すればいいのでしょうか。ここからは、降格人事が認められる主なケースについて紹介します。

勤務態度の怠慢

懲戒処分を下すまでの問題行動ではないにせよ、勤務態度の怠慢が顕著であり、社内の秩序を乱すような場合には、降格人事が認められます。 遅刻や無断出勤・欠勤などは、明確な回数で降格の基準を設けることは難しいため、まずは、会社側がきちんと該当者に適切な指導を行い、それでも改善されない場合に、指導の証拠を残したうえで、決行しましょう。

規律違反行為の発覚

社員が規律違反行為をした場合、会社は懲戒権を行使して降格人事処分できます。たとえば、セクハラやパワハラといった、労働基準方に触発するものや、会社が独自に定める社内規則に違反した場合にも、規律違反行為として、処分の対象となります。

役職が不適任と認識されたとき

管理職は、管轄している部内の業績が不振に陥ったり、生産性が低下したりすると、管理食としての役割を果たしていないと判断され、降格の対象となる場合があります。この場合は、人事権を行使して降格の処分を実行します。

成績の悪化

営業成績の低下なども、降格の理由とすることができます。昇格にあたって、会社側が設定した予算や、個人の目標管理などで取り決めた数値に対して、著しく未達が続く場合などには、能力不足による降格人事を行えます。

配置転換

配置転換先の状況や、配転先での取得できる能力などを鑑みて、スキルアップの期間を設けるために、以前よりも下の役職やポストを与えることで、実質的な降格とする形式を取ることもあります。 配置転換によるトラブルを防ぐためには、人事発表時にやむを得ず降格となる事由を従業員にきちんと説明することが大切です。

 

05降格人事でトラブルを起こさないポイント

降格人事を行うには、トラブルを起こさないためいくつかの注意点があります。これらをきちんと理解できていなければ、後々労使間でのトラブルへと発展するおそれもあるため、ここで注意点についての理解を深めておきましょう。

降格前に注意指導を行う

降格人事は、いきなり処分するのではなく、段階的な注意指導が絶対条件です。 社員の能力不足を理由に、降格を行う場合は、適切な指導や注意により、状況を改善できる可能性もあります。万一、降格によるトラブルが発生しても、事前に指導や注意を行った事実があると、降格の正当性が認められやすくなります。

降格人事の根拠を収集する

降格人事を行ったことが社会的通念上妥当であるという根拠や証拠を、降格を実施する前に集めておきましょう。 特に、懲戒処分に該当するような行動があった場合には、その社員の行動履歴が書面やデータなどで残されていることが望ましいです。

従業員のモチベーション低下に気を付ける

降格人事は、対象となった社員だけでなく、その周囲の従業員にも影響を及ぼすこと場合がある、ということをを理解しておきましょう。 会社の対応方法に明らかな問題がある場合には、会社へ対する不信感や不安感からモチベーション低下に影響する可能性があるため、気を付けなければなりません。降格人事の対象者はしばらく注意深く見守り、フォローをするようにしましょう。動揺している従業員がいれば、こまめに声をかけ、不安点を聞くようにしてください。


 

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06まとめ

降格人事は、やむを得ない理由で実行することになったとはいえ、社員のモチベーションや給与に直結する重大な決定です。 社員の納得を得られなければ、降格人事を言い渡された社員だけでなく、他の社員の信頼を損ねることにもなりかねません。そのため、判断をする際は、その処分が合理的かどうかを十分に検討し、トラブルにならないよう慎重に進めましょう。

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    株式会社壺中天 代表取締役

    立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。

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