公開日:2021/08/26
更新日:2024/06/25

キャリアアンカーとは|8つの分類の診断方法や活かし方を紹介

キャリアアンカーとは|8つの分類の診断方法や活かし方を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人事に有益とされているキャリアアンカーの導入を検討している担当者の方が多いのではないでしょうか。本記事では、キャリアアンカーの定義や分類、要素について詳しく解説します。ぜひ、自社社員の人材育成に活用してください。

 

01キャリアアンカーとは

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択・形成する上で最も重要視していて、譲ることのできない価値観や欲求のことです。

マサチューセッツ工科大学の組織心理学者であるエドガー・H・シャイン教授によって提唱され、キャリア理論として多くの企業で利用されています。

一度形成されたキャリアアンカーは、その後の経験や環境によって大きく変わることはなく、根幹の部分は揺らがないと言われています。キャリアアンカーが確立するのは30歳前後のため、学生や新卒〜若手社員などの若年層にはキャリアアンカーを当てはめる事は難しいようです。

キャリアアンカーの3要素

“キャリアアンカーの3要素”

キャリアアンカーを考える際には、「コンピタンス」・「動機」・「価値観」という3要素を深堀りする必要があります。一般的な自己分析のように、「何がしたいか」・「何が得意か」といった表面的な内容だけではなく、「どのように」働きたいかを考え、これまで築いてきた価値観から、自分の譲れない点を分析し、それを中心にキャリアを考えるのです。

3要素の重なる部分をキャリアンカーとすることで、仕事に対する満足度が高まり、継続して自発的に業務を遂行できます。以下で、3要素について詳しく解説します。

コンピタンス

コンピタンスとは、 仕事に必要なスキルや知識を持ち、それを実践することができることを指します。コンピタンスを持っていることで、自信を持って業務を遂行でき、仕事へのモチベーションも高まります。キャリアアンカーにおいては、「仕事における専門性」がコンピタンスに該当します。

動機

動機とは、自分自身が何をしたいのか、何に関心があるのか、自己実現に向けた欲求を指します。動機に沿った仕事に従事することで、自分自身が満足し、達成感を感じることができます。キャリアアンカーにおいては、「管理・指導」と「クリエイティブ・チャレンジ」が動機に該当します。

価値観

価値観とは、自分が大切にする価値観や信念を指します。自分が持つ価値観に沿った仕事をすることで、自分自身が意義を感じ、仕事に対するモチベーションが高まります。キャリアアンカーにおいては、「自律・独立」と「生涯学習」が価値観に該当します。


 

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02キャリアアンカーの8つの分類

“キャリアアンカーの8つの分類”

キャリアアンカーは、8つの分類に分けられます。

この章では、8つのキャリアアンカーの詳細と、それぞれのキャリアアンカーを持つ人がどんな傾向にあるのかをひとつずつ紹介します。

専門能力

キャリアアンカーが「専門能力」の人は、特定の分野のエキスパートを目指すタイプで、昇進して管理職になるよりも、現場で活躍し続けることを好みます。自分の才能をフルで発揮し、専門性を高めていくことに満足感を覚え、またそれによってやる気がみなぎるタイプです。 技術職や研究職といった、知識やスキルをコツコツ積み上げる職業に向いており、別の職種や向いていない仕事を任されると、やりがいを失い、仕事への満足度が下がる傾向があります。

管理能力

キャリアアンカーが「管理能力」の人は、出世思考が強く、経営者やマネージャーを目指したり、集団を統率したりすることに価値を見いだします。専門的な職務よりもスケールが大きく、自分が組織を牽引するようなポジションに立つことを望みます。 若いうちは多くの経験を積むために、職種変更を伴う異動を積極的に受け入れ、キャリアアップのための資格取得の努力も惜しみません。誰かの世話や問題解決などが好きな傾向があり、責任を持つことで成長するタイプです。

自律と独立

キャリアアンカーを「自律と独立」に置く人は、自分のスタイルで仕事を進めることを重視するタイプで、組織のルールや規則に縛られることを嫌います。スキル習得後はフリーランスを目指す人が多く、自分が納得できる方法でマイペースに仕事に取り組みます。 裁量が大きい企業や、在宅勤務・フレックスタイムといった柔軟な働き方ができる企業で能力を発揮します。社内にとどめて置きたい優秀な人材であれば、社内ベンチャー的なプロジェクトを任せるのも有用です。

安定

「安定」をキャリアアンカーとする人は、保証や安全性を重視し、社会的・経済的な安定を求めます。大企業や公務員といった安定していて終身雇用が期待できる大企業や公務員として働く事を目指し、将来が見通せる環境で堅実にキャリアを歩みたいと考えます。 堅実な性格であることが多く、危機管理やリスクマネジメントの分野において特に力を発揮します。一方で、これまでのキャリアと異なる働き方や異動には大きなストレスを感じやすい特性があり、よほどのことがない限りは転職せず、ひとつの組織に忠誠を誓います。

創造性

キャリアアンカーが「創造性」の人は、新しいものを生み出す起業家や芸術家、発明家を目指すタイプです。新商品やサービスの開発、発明やクリエイティブな仕事など新しい何かを創り出すことに関心があり、リスクをおそれずクリエイティブな挑戦を続けられます。 刺激的な仕事が好きなため、困難な課題や変化の激しい状況に立ち向かうことに、モチベーションを見いだす傾向があります。

奉仕・社会貢献

「奉仕・社会貢献」をキャリアアンカーとする人は、世の中に貢献したいと考えるタイプで、仕事を通じて世の中を良くしていくことを目指します。仕事に対しても、「世の中のためになるか」に最も重要な価値を置くため、自分の能力を発揮したり出世したりといった欲よりも、人の役に立つことに喜びを感じます。 誰かを支援する医療、看護、教育系の仕事や、人のためになる商品・サービスの開発、監査部門、福利厚生部門で能力を発揮し、誠意のない仕事や内部不正は絶対に見逃せないタイプです。

チャレンジ

キャリアアンカーが「チャレンジ」の人は、挑戦を人生のテーマに掲げており、困難に自ら挑み、そこから受ける刺激に喜びを感じる傾向にあります。ハードワークにも対応できますが、ルーティンワークは好まず、仕事を覚えるとまた違う業界に飛び込み、さらに挑戦を続けることを好みます。 得意・不得意、専門性を問わず難しい仕事に挑戦したがるため、一貫性がなく、多様なキャリアを持つようになる人が多いと考えられます。困難をものともしないため、異動や配置換えにも前向きで、幅広い事業を展開する企業でさまざまな仕事にチャレンジすることに向いています。

ワークライフバランス

「ワークライフバランス」をキャリアアンカーに置く人は、仕事とプライベートの両立を最も重視します。熱心に仕事には打ち込みますが、私生活を犠牲にすることはまずありません。予定にない残業や、会社のイベントなどはきっぱり断るタイプで、子供が生まれると育児休暇を取得し、育児にもしっかりと関わりたいと考える人が多いです。 プライベートが充実すると仕事へのモチベーションが上がるため、フレックスタイムや育児休暇、在宅勤務といった制度が整った、柔軟な働き方ができる職場が向いています。

 

03キャリアアンカーの診断方法

自身のキャリアアンカーは、40問の設問に対して1~6段階で回答することでわかります。6段階の回答は以下のとおりです。

  • 1:全く違う
  • 2:やや違う
  • 3:どちらかというと違う
  • 4:どちらかというと当てはまる
  • 5:だいたい当てはまる
  • 6:完全に当てはまる

40問の設問に対して、それぞれ上記の6段階評価で該当する数値を選び、8つの分類ごとに合計点を出すことで、どの分類が自身に最も当てはまっているかが分かります。40問の設問をカテゴリーごとに分類すると以下のようになります。

専門能力を診断する設問

専門能力を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.「この分野は、〇〇に聞いて」と言われるような、専門家としての助言を求められる分野で成果を上げていくことを目指す
  • 2.仕事を通じて、専門的なスキルや技術を磨き上げることができれば、成功しそうだと感じる
  • 3.ゼネラルマネージャー(部門長)になるよりも、専門分野でマネージャーになる方が魅力的だ
  • 4.自分の専門領域外の仕事・職種へ人事異動になるのであれば、退職する方を選択する
  • 5.自身のスキルや才能を活用できたときに、仕事への充実感を最も感じる

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

管理能力を診断する設問

管理能力を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.チームメンバーの士気を高め、マネジメントすることで大きな成果を出せたときに、仕事に対する充実感を最も感じる
  • 2.組織を率いて、多くのメンバーに影響を与える意思決定ができる立場を目指す
  • 3.ゼネラルマネージャー(部門長)として仕事をするときにこそ、活躍できそうだと感じる
  • 4.自身の専門職能領域で上級マネージャーになるよりも、ゼネラル・マネージャー(部門長)として仕事をする方が、魅力的である
  • 5.ゼネラルマネージャー(部門長)になるキャリアから外れる可能性がある仕事を任されるなら、退職する方を選択する

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

自律・独立を診断する設問

自律・独立を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.自分が決めた「方法」や「スケジュール」の通りに、仕事を進めていくことを目指す
  • 2.自分の思い通りに、仕事の「スケジュール」や「手順」を決められるとき、仕事への充実感を最も感じる
  • 3.完全な「自律」や「自由」を得られたときにこそ、活躍できそうだと感じる
  • 4.長期的な保障や安定よりも、規則や規制に縛れられず、自分の望むように仕事できる機会を得ることの方が重要
  • 5.「自律的に行動できない」・「自由が少ない」と感じる仕事に就くくらいなら、退職する方を選択する

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

安定を診断する設問

安定を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.自由や自律が容認されるよりも、将来が保障されていることの方が、自分にとっては重要
  • 2.職務や処遇などが保障されていない仕事に配属させられるなら、すぐに退職する
  • 3.変化の少ない環境で「安心感」を感じられる組織での仕事を希望している
  • 4.収入面、雇用面が十分に保障されていると感じるときに、仕事への充実感を最も感じる
  • 5.将来が保障されていて、安心して仕事に取り組めることが重要

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

創造性を診断する設問

創造性を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.起業につながりそうなアイデアを、常に探している
  • 2.他人が経営する組織で高い職位に就くよりも、自分自身で起業することを重視する
  • 3.自分自身の「アイデア」と「努力」によって何かを創り上げられたときに、仕事への充実感を最も感じる
  • 4.自分のアイデアやそれにより生み出された製品で何かを創出し、軌道に乗せたときにこそ、成功しそうだと感じる
  • 5.自ら起業した組織を軌道に乗せることを目指す

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

奉仕・社会貢献を診断する設問

奉仕・社会貢献を診断する設問は以下の5つです。

  • 1.仕事が成功したと感じるのは、「社会に本当に貢献できている」と感じられるときだ
  • 2.仕事を通じて、自身の才能を周囲の人々に役立てることができたときに、仕事への充実感を最も感じる
  • 3.職場で高い職位に就くよりも、自分のスキルや能力を活かして生きやすい社会にする方が、より大切だと思う
  • 4.人類や社会に対する貢献度の高い仕事をすることを目指す
  • 5.自身の能力を、周囲の人々のために発揮することができない仕事を任されるなら、退職する方を選択する

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

チャレンジを診断する設問

チャレンジを診断する設問は以下の5つです。

  • 1.難題を解決したり、難局を打開したりするような、大きな挑戦ができる仕事を目指す
  • 2.非常に難しい課題に直面し、挑戦することでその課題を克服できたときに、仕事への充実感を最も感じる
  • 3.解決不能と思われる問題を解決したり、難局を打開したりしたとき、仕事への充実感を最も感じる
  • 4.自らの「問題解決能力」や「競争に打ち勝つ能力」を存分に活かせるような挑戦を求めている
  • 5.解決困難な課題に挑戦できるということは、高い地位に就くことよりも重要

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

ワークライフバランスを診断する設問

ワークライフバランスを診断する設問は以下の5つです。

  • 1.家族との時間が犠牲になる仕事に異動するぐらいなら、退職する方を選択する
  • 2.「家族」に関する自分の望みと、「仕事」で自分に求められていることが、うまく両立できる仕事を目指す
  • 3.自分の個人的な要望、家族からの要望、職場での要望のバランスをうまくとることができたときにこそ、成功しそうだと感じる
  • 4.高い地位に就くことよりも、プライベートと仕事をうまく両立させることの方が重要
  • 5.自分自身や家族の関心事にあまりマイナスの影響がないかたちで、仕事の機会を得ることを常に求めている

それぞれ6段階評価で点数をつけ、合計点を出してください。

 

04キャリアアンカーの活かし方

キャリアアンカーの活かし方は、主に以下の3つがあります。

  • 1:キャリアデザインに活用
  • 2:研修・人材育成に活用
  • 3:人員配置や異動に生かす

以下で、それぞれ詳しく紹介します。

キャリアデザインに活用

キャリアアンカーの活用方法の1つとして、キャリアデザインへの活用があります。自分が何を成し遂げたいのか、何が得意で何をしているのが楽しいのか、これらを分析することは自身のキャリアデザインを描く上で非常に役立ちます。そして、このキャリアアンカーも環境やライフステージの変化によって変わって然るべきなので、定期的にキャリアアンカー・キャリアデザインをそれぞれ見直す習慣をつけると良いでしょう。

研修・人材育成に活用

キャリアアンカーは、社員それぞれのPurposeやWillを考える上でも非常に役立ちます。そして、その社員それぞれのPurposeやWillは研修や人材育成によって組織が伴走して実現すべきものです。特に人的資本経営が求められている昨今では、社員それぞれのキャリアアンカーも意識しながら、それぞれの社員に沿った人材育成をすることが強く求められています。

人員配置や異動に活用

キャリアアンカーを人員配置や異動に活用することも可能です。いまの部署で専門的な方向性に向かいたいという人もいれば、別の部署で自分の仕事の幅を広げたいという人もいるでしょう。それぞれの社員がどのようなキャリアアンカーを持っていて、それらを加味しながら人員配置や異動を決めることで、組織と社員がWIN-WINとなるはずです。さらに、今の地域からは離れたくないという想いを持っている人もいれば、海外赴任をしてみたいという社員もいるでしょう。キャリアアンカーの文脈とは少しずれますが、社員それぞれのWillを尊重しながら、自社の人的資本を最大化するという考え方は非常に重要になってきています。

 

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06まとめ

これからは、働き方改革を筆頭に、従業員の働き方は多様化し、職の専門性はますます細分化と深化を続ける時代へと突入します。そのため、企業は貴重な人材を有効活用するためにも、個々人が持つ働き方に関する要求にできる限り応じることが求められます。ぜひ本記事を参考に、自社の社員がどのようなキャリアアンカーを持っているのか見極め、把握する機会をつくってみてはいかがでしょうか。

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    法政大学キャリアデザイン学部 教授

    一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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