企業文化とは?必要な8つの項目を中心に、実際の企業事例を踏まえて徹底解説
企業文化とは、企業と社員(従業員)の間で共有、形成される会社独自の価値観や風土、規範、ルールのことです。 会社独自の企業文化を醸成することは従業員にとっても企業にとっても良い影響をもたらします。 本記事では実際の事例を交えながら、企業文化に必要な8つの項目を紹介します。
- 01.企業文化とは
- 02.企業文化の重要性
- 03.企業文化のデメリット
- 04.企業文化を作るための必要な8つの項目
- 05.企業文化の形成方法
- 06.企業文化の熟成(定着化)方法とは
- 07.企業文化の実例
- 08.まとめ
01企業文化とは
企業文化とは、企業と社員(従業員)の間で共有、形成される会社独自の価値観や風土、規範、ルールのことです。企業文化は、創業当時から積み重ねられて構築されており、社員が企業に属し業務を遂行する上での価値観や行動規範に大きく影響を与えます。また、企業イメージにも直結するため、外部から見た企業の印象や活動にも大きな影響を与えるものです。
企業文化と企業風土の違い
類似した用語に企業風土があり、社員の行動や価値観に影響する側面では同じです。企業文化は、企業の経営理念や行動規範などをベースに「意識的・無意識的に築き上げたもの」のことを指します。それに対して企業風土は、そこで働く社員の人間関係をベースに「自然に生まれるもの」であるため、その時点に明確な違いがあります。企業文化は「外部の影響を受け、場合によっては変化するもの」ですが、一方企業風土は「外部の影響を受けず、世代をこえて継承され、めったに変化しないもの」と定義されていると認識しておきましょう。
企業文化と社風の違い
企業文化と同じように使われる言葉に社風があります。社風は、社員が感じている会社の特徴や雰囲気であり、空気感に近いようなニュアンスも内包されている。一方で、企業文化は社員の間で共有・統一されている文化であり、いわば価値観や哲学といえます。つまり社風は性格や雰囲気を表し、優しい・穏やかなどと表現されるもの。企業文化は価値観や哲学を表し、尊重し合う・成果主義などと表現されることが多いです。
企業文化と組織文化の違い
企業文化は企業と社員(従業員)の間で共有、形成される会社独自の価値観や風土、規範、ルールを指す一方で、組織文化は、組織内のメンバーが共有するルールや行動のパターンを指し、組織内の相互作用や運営に影響を与えます。どちらも、組織内の人々の行動や態度に影響を及ぼし、組織の成功や効率性に大きな影響を持つ重要な要素です。組織文化が企業文化を構成し、企業文化が組織の方向性を示す一因となることが多いですが、両者は互いに関連しながらも独立して存在することもあります。
02企業文化の重要性
企業文化は社員にとっても会社にとっても良い影響を与えることが多く、主に以下のようなメリットがあります。
- ・意思決定のスピードが速まる
- ・連帯感に繋がる
- ・生産性向上
- ・採用,育成の指針になる
- ・コーポレートガバナンスの強化
- ・企業価値の向上
ここではそれぞれについて、具体的に解説していきます。
意思決定のスピードが速まる
企業文化は意思決定のスピードを速める効果があります。企業文化が全ての社員で共有されていることにより、意思決定の指針としての役割を果たします。判断に悩むことがあったとしても、企業文化が羅針盤の役割を果たし、企業文化に沿っているものを正しい判断とできるのです。昨今はテクノロジーの進化が著しく、迅速な意思決定が会社の明暗を分けることも珍しくなくなっているため、企業文化がもたらすメリットは大きくなる可能性が高いのです。
連帯感に繋がる
「組織として、一体感がなくなってきている」・「各社員がそれぞれ異なる方向を向いて仕事をしている」。このような悩み・危機感を抱いている企業も少なくありません。企業文化によって、社員は同じ価値観や判断基準を持つことができ、連帯感が生まれやすくなります。また、この効果はチームワーク向上や、チームビルディングにも活用できます。
生産性向上
意思決定の速度が上がれば、社員の生産性向上にも繋がります。企業文化に照らし合わせて、自分がすべきことを思考し、行動に移すことができるためです。また、企業文化を羅針盤にして意思決定を各社員に委ねることで、働きがいが生まれます。自分で思考したことを実行に移すというサイクルが、社員の自律性を向上させ、その結果エンゲージメント向上にも繋がる可能性があるのです。
採用,育成の指針になる
企業文化は人材の採用・育成にも寄与します。まず採用の側面では、企業文化に適した人材というのが採用要件に加えることができるようになるため、入社後のミスマッチを防ぐ一助になるでしょう。また、採用広報でも企業文化を訴求することによって、カルチャーマッチした人材から募集される回数が増えるはずです。また、人材育成の側面でも企業文化は指針になります。前述したように企業文化の浸透は意思決定の速度を上げるだけでなく、生産性の向上や、エンゲージメントの向上にも繋がります。そのため、企業文化の浸透・再確認を定期的に行うこと自体が人材育成施策になるのです。
コーポレートガバナンスの強化
企業文化は、組織内の価値観や行動基準を形成します。ポジティブで透明性のある企業文化は、倫理的な行動や社会的責任を重視し、不正行為や違法行為を抑制する助けとなります。これにより、企業の経営・運営を監督し、ステークホルダーの利益を保護するための仕組みやプロセスを指す「コーポレートガバナンス」の基盤が強化され、不正や汚職のリスクが低減されます。逆に、悪徳な企業文化は、不正や倫理的な問題を引き起こし、結果としてコーポレートガバナンスの崩壊や信頼の喪失につながる可能性があります。このように、企業文化はコーポレートガバナンスの強化にあたって、重要な役割を果たすのです。
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企業価値の向上
健全な企業文化は、企業の長期的な成功と競争力の向上に密接に関連しています。ポジティブな企業文化は、従業員のモチベーションとエンゲージメントを高め、生産性を向上させる要因となります。従業員が組織の目標や価値観に共感し、協力して取り組むことで、イノベーションが促進され、効率性が向上します。また、顧客やパートナーも企業文化に魅力を感じ、良好な関係を築きやすくなります。結果として、顧客満足度の向上やブランド価値の向上につながり、結果的に企業の収益性と市場価値を向上させる要因となるのです。
03企業文化のデメリット
企業文化の重要性やメリットを紹介いたしましたが、一方でデメリットも企業文化には存在します。主には次の2つです。
- ・多様性が損なわれる危険性がある
- ・視野が狭まる可能性がある
企業文化の重要性やメリットを紹介いたしましたが、一方でデメリットも企業文化には存在します。主には次の2つです。
多様性が損なわれる危険性がある
企業文化に沿った人だけを採用し、企業文化に社員を染め続けると多様性が損なわれる危険性があります。企業文化に合わない人が仮に中途入社してきた際に、自分とは価値観が合わないと排他的になり、それが集団になると企業内いじめのような事態にまで発展する危険性もあるのです。また、企業文化に染まっているかどうかを評価基準に含めることも危険です。出世するには企業文化に染まったフリをする必要が出てきて、自分らしく働けないという違和感を抱く社員もいるでしょう。
視野が狭まる可能性がある
企業文化を基準に採用を続けていると、似たような思考や行動、価値観を持った人材が集まるようになります。これにより、自然と似たり寄ったりな発想しか出てこず、「らしさ」という曖昧な表現で前例からの脱却ができないというジレンマに陥ります。また、異なる価値観を持った人の意見を「らしくない」という感覚論で否定するようなことも起こり、その否定に違和感を持つ人も企業文化が同じだからいないということにもなりかねないのです。
04企業文化を作るための必要な8つの項目
企業文化を作るためには、次の8項目が必要とされています。
- 1:ビジョン(Vision)
- 2:果たすべき使命(Mission)
- 3:価値観(Values)
- 4:慣行(Practices)
- 5:人材(People)
- 6:ストーリー(Narrative)
- 7:場所(Place)
- 8:外部からの影響(Environment)
ここでは、企業文化を作る8つの項目について解説していきます。この8つの項目があることで、企業文化は形成されていくと考えておきましょう。
1:ビジョン(Vision)
「ビジョン(Vision)」とは、「企業の理想や目標」を示します。「企業理念」とも呼ば、企業文化の根本(根源)です。ビジョンがしっかりと定まっている企業は、その達成に向けた価値観をうまく形成していけます。明確なビジョンは従業員が業務中に行うの意思決定の基準となり、ビジネスパートナーや顧客など外部への周知を行うことで、共感を得るだけはなく支持も得られやすくなるメリットがあります。
2:果たすべき使命(Mission)
「果たすべき使命(Mission)」とは、「事業を通じて成し遂げたいこと」を意味します。企業活動をおこなう上で基礎となる考え方だと理解できます。企業としての社会的な存在意義や存在価値にも大きく関わり、企業の将来目指すべき姿にも連動します。それだけではなく社内へのメッセージ性が高く、企業文化を醸成される過程で重要な役割を果たすことを理解しておきましょう。
3:価値観(Values)
「価値観(Values)」とは「評価基準のこと」です。なにが重要でなにが重要でないかの価値を表します。中核的な存在の価値観は「コアバリュー」と呼ばれており、企業文化を構成する要素の中心です。ビジョンが企業の使命を明確に表現しているのに対し、価値観はビジョンを達成するために必要な行動様式や考え方について一連の方針を示しています。価値観は、多くの人に受け入れられなければ意味がありません。
4:慣行(Practices)
「慣行(Practices)」とは、企業の中で「継続的」「日常的」におこなわれている行動や習慣のことを示します。企業の慣行に反映させなければ、企業文化を醸成できません。企業文化を醸成させるためには、ビジョンや価値観を日々の業務に組み込む必要があります。
5:人材(People)
企業文化を築くには、ビジョンや価値観を共有してくれる「人材」が居なくてはなりません。共有する人材が多いほど、企業文化は確固たるものにできます。こうした人材は、離職率が低いため、生産性の向上や経営の安定にもつながる要素を持っています。
6:ストーリー(Narrative)
「ストーリー(Narrative)」とは、「企業が持つ歴史のこと」です。創業時、商品やサービスを生み出した経緯など、企業の歴史にはいくつものストーリーがあります。このようなストーリーが語られ、現代の文化も取り入れられることで、企業文化はより揺るぎないものとして確率されていきます。
7:場所(Place)
「場所(Place)」も、企業文化を構成する要素です。本社や支社を置く地域の特色、気候や環境にに合わせた企業文化を構築していきます。オフィス内の環境も企業文化を左右するため、場所に含んで考えることができます。地域性によりビジネスの展開は異なったり、差―ビス内容に特徴が出てくるため企業文化には必要な要素です。
8:外部からの影響(Environment)
企業文化は「外部からの影響(Environment)」を受けて変化していきます。企業を取り巻く状況が変化したとき、これに合わせるためにビジョンや価値観に変化を起こす際には、今後の企業の方向性や企業文化を見直すきっかけとなります。
05企業文化の形成方法
次に企業文化の形成方法について解説していきます。企業文化は、先程解説している8つの要素が必要ですが、その他にも留意しておきたいことがあります。どのように、企業文化を形成していくかについて、以下の点を注意しておきましょう。
自社の現状把握を行う
企業文化を形成するには、まず自社の現状把握から行っていきます。自社の企業文化は、どのような内容であり、どの程度定着しているか。まずは現状を整理し、企業文化の変更が必要であるか、定着を促進する必要があるのかを把握しなければいけません。企業文化は、変更を行えるものであるため、企業の未来像に向い軌道修正を行うことや必要に応じて根本から見直すことも可能です。また、現状の企業文化の定着が課題であれば、何が要因で定着化が促進されていないかについても整理を行っていきます。
ビジョン・価値観の明確化と明文化
自社の現状把握の後には、現在の「ビジョン」「価値観」について確認を行います。この確認とは、今の「ビジョン」「価値観」が時代背景や現在の業務状況に合っているのか、変更するべきなのかという観点についてです。その後には、明文化を行い社内へ周知を行い理解を深める必要があります。この周知により、自社のビジョン、価値観を再認識することで、より従業員が企業の存在意義を確認し行動様式の変化を促進していきます。
企業文化の明文化
企業文化の明文化も必要です。従業員にとっての価値観や行動様式については、常に目に触れる場所に掲げておくことで定着化を図ることが可能になります。特に行動様式については、従業員の行動の基礎となる事柄である点も踏まえ、シンプルな表現で明文化し従業員が常に目に触れる場所への掲載や全体朝礼などの前に唱和するなど定着化を促進する方法を用いておく必要があります。
06企業文化の熟成(定着化)方法とは
最後に企業文化の熟成(定着)方法について解説します。企業文化の熟成には時間が掛かりますが、複数の施策を組み合わせることで熟成を促進させることができます。熟成に向けた施策の実施については計画をたて実践していきましょう。
コミュニケーションの強化を図る
コミュニケーションの強化は企業文化熟成のスピードを加速させます。チーム、部門や組織、そして企業全体のコミュニケーションを強化すれば会社独自の価値観や風土、規範、ルールの共有が促進されます。特に価値観の共有は、業務の運営や行動様式の変化にも影響してくるものです。この変化は企業全体の変革にもつながるため非常に重要な変化をもたらします。
研修による企業理解の促進
企業文化は明文化しただけでは熟成していきません。社内研修などを通じて企業文化とは何かについての理解を深めていきます。この研修では、企業文化をテーマにするだけではなく、企業自体の理解を促進する必要があります。事業の目指すところや、業界の変化、中期的な成長戦略など、自社の理解を促進する機会を設けることは有効といえるでしょう。
経営層自らの継続的働きかけの実施
経営者自らが明文化された企業文化の浸透に向けた継続的な働きかけを実践していく必要うがあります。さまざまな場面で発信する際には、企業文化に紐づけた説明を行うなど繰り返し発信します。同時に自らが実践をする役割を担い、率先して実践していくことで従業員へ熟成に向けたアプローチを行っていきましょう。
共感できる人材採用に向けた基準の見直し
人材採用時にも考慮していくべきことがあります。企業文化に共感できる人材、変化に対応できる人材を採用することです。人材採用を成功させるためには、基準を見直し共感しているかどうかについての質問などを積極的に行います。面接の場面において、企業文化以外のビジョンや価値観についての質問を行い企業文化を理解しているのか、共感しているのかを確認する必要があります。
評価制度見直しのよる共感度の把握
共感度の測定には、評価制度などを活用していきます。評価項目の中に共感しているかどうか、行動様式に関する確認項目を盛り込みチェックしていきます。単純に共感しているかどうかをYES、NO形式でチェックするのではありません。行動様式などについての項目を設け、段階での確認を行い評価につなげていきます。
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07企業文化の実例
ここまで企業文化の重要性や構成要素、形成方法について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。企業文化にはさまざまポイントが存在し、形成するだけではなく、定着させていくための取り組みも求められます。では、具体的に成長している企業では、どのような企業文化が形成され、定着させるためにどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、企業事例を元に解説していきます。
株式会社メルカリ
フリマアプリの「メルカリ」の運営やJリーグクラブチーム鹿島アントラーズをグループに持つ株式会社メルカリでは、自社の企業文化として、グループミッションを「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」と定義。また、自社の共通価値観として、「Go Bold 大胆にやろう」「All for One 全ては成功のために」「Be a Pro プロフェッショナルであれ」を持っています。これらの価値観は、メンバー同士を結びつけ、お互いがパフォーマンスを発揮するためのものとして定義し、グループが掲げるミッションを達成するために、Culture Docという形で社内外問わず発信を続けています。
株式会社ファーストリテイリング
ユニクロやGUといった衣料品を取り扱う株式会社ファーストリテイリングでは、あらゆる人の生活をより豊かにするための服は、多様な人々の多様な価値観からつくられなくてはならないという観点から、自社の企業文化として、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と尊重)を推進しています。また、この多様性という価値観の受容と尊重は、社会をより良くしていくものとして、事業のみならず、研修といった施策を通して、対外的に発信していく活動をおこなっています。
サイボウズ株式会社
グループウェア「サイボウズ Office」シリーズなどを手掛けるソフトウェア開発会社サイボウズ株式会社では、“チームワークあふれる「社会」を創る”という理念のものと、多様な働き方を推進し、企業文化を自社のワークスタイルに落とし込んでいます。また、チームワークを教える活動として、学生など、社外の人を対象に社内で実施していたチームワーク向上のための研修を実施するなど、自社の文化を社内外に発信しています。
08まとめ
本記事では、企業文化をテーマに解説しています。企業文化の成長、熟成が促進されることで企業も成長し強くなっていきます。同時に従業員の成長や定着化なども促進されるため、より一層強い企業ができあがってきます。企業文化の熟成には時間を必要としますが、企業の存在意義を高め成長するには必要だと理解し自社の企業文化の精査、熟成を促進していきましょう。企業文化の内容で企業には大きな変化が訪れてきます。