公開日:2021/08/26
更新日:2024/03/24

キャリアラダーとは?導入するメリットや活用事例について解説する

キャリアラダーとは?導入するメリットや活用事例について解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

企業において、様々な職種の働きを適切に評価することは重要です。しかし、職種によっては直接的な成果に結びつかないケースもあります。そこで有効な評価制度がキャリアラダーです。本記事では、キャリアラダーの概要や導入するメリット、その活用事例について解説をします。

 

01キャリアラダーとは?

キャリアラダーとは、キャリアアップを目指すためのキャリア開発のプランです。キャリア(経歴)とラダー(梯子)を掛け合わせてできた言葉で人事制度や能力開発のシステムを指します。梯子のように一つひとつのステップを上るように設定された制度で、その一つひとつのステップにはそれぞれ仕事の内容やスキル、目標が定義されています。 看護職やアパレル業界、外食産業などさまざまな企業で導入されており、優秀な人材を確保し成長させるための制度として注目されています。また、人事システムと連動させることにより評価の基準を明確にし従業員のモチベーションを高めるとともに、公平な評価を行いやすくなるのです。

キャリアパスとの違い

キャリアパスとは、企業の中での移動や昇進のルートです。人事制度の中でどうやってキャリアを築いていくのかの道筋を指します。キャリアラダー同様に企業内でのキャリアアップの道筋を示すために有効です。しかし、一般的にキャリアラダーは職種間の異動は加味されていません。専門職としてスキルを上げて、より高度な業務をこなせる習熟の目安に使われます。一方、キャリアパスでは営業職の場合に成果を上げれば、本社勤務で管理職にキャリアアップするといった職種間の異動も含めたキャリアのルートです。

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クリニカルラダーとの違い

クリニカルラダーは、看護職やアパレル業界、外食産業の専門職において用いられる実践能力段階的システムです。キャリアラダーの中でも、看護師の評価システムに特化して作り直されたのがクリニカルラダーです。看護実践能力は基礎教育で知識や技術を学び、実践で経験して知識を積み重ねて身に付けます。その技術や知識のレベルをレベルⅠ〜レベルⅤまで定めて高めていくシステムです。 また看護師の評価システムとして一般的に使われているため、転職の際の評価にも有効です。レベルⅠであれば初心者、レベルⅡは新人、レベルⅢは一人前、レベルⅣは中堅、レベルⅤは達人と明確に分かれるため、外部からでも実力の判断がしやすくなります。

 

02キャリアラダーを導入するメリット

前述のように専門職においてキャリアラダー制度は重要です。そのほかの従業員に明確な役職がついていないことが一般的です。しかしキャリアラダー制度では明確に細かい技術レベルを評価する制度を用意することができます。 ではその明確に細かい評価制度を用意することのメリットとはどういうポイントでしょうか。

明確なキャリアステップの明示

それぞれの職種ごとに明確なキャリアステップを示すことができます。前述の飲食店の例であれば店長になるまでにいくつかのステップを用意します。例えば入社時はレベル1、メニューを覚えたらレベル2、接客の技術が一定以上であればレベル3、会計ができるようになればレベル4など設定します。そして店長になるまでに必要な技術と知識のレベルを明確に示すことで従業員のモチベーションを向上させます。また各段階で次の目標が明確になるため、スキルアップのために何をすればいいのかがわかりやすくなるでしょう。

公平性を保てる

キャリアラダー制度では各レベルごとに求められる能力や技術が示されています。指標があるため公平性が高く保てます。同一職種についている人であれば全員に平等にチャンスが与えられるので従業員からも納得のいく評価制度を作ることが可能です。また細かく設定することにより評価者による評価のばらつきを防げます。一番のメリットは、明確なキャリアステップと公平性により従業員が自ら能力開発を行いたいと思える環境づくりができる点です。

社員のモチベーション向上が期待できる

キャリアラダーは、各職位や階層における期待されるスキルや成果を示すため、社員は明確な目標を設定することができます。そのため、自身の成長に向けた方針を持つことが容易となり、モチベーションを高める要因となります。また、キャリアラダーがあることで自分のスキルやするべき経験が明確となるため、自信や達成感を養うことが可能となり、モチベーション向上に寄与します。加えて、自身の業績がどの程度評価されるかを理解しやすくなるので、公正な評価と報酬システムは、社員が自身の成果に対して適正な評価を受けることを確信し、それがモチベーション向上に繋がるのです。このように、キャリアラダーの導入は社員のモチベーション向上に寄与し、組織全体のパフォーマンス向上につながることが期待されます。

 

03キャリアラダーを導入するデメリット

「組織や業種によっては機能しない可能性があったり、導入までのコストがかかるといったデメリットも存在します。これらのデメリットを克服するためには、導入前の調査・計画、柔軟性のある設計、適切なトレーニング、継続的なフィードバックと改善が重要です。ここではそれぞれのデメリットについて具体的に解説していきます。

組織や業種によっては機能しない可能性がある

一般的なキャリアパスが特定の組織や業種に適用されない場合があり、これが適切に対処されないと、導入されたキャリアラダーが機能しない可能性があります。各組織の文化やニーズを十分に理解し、適切にカスタマイズする必要があります。例えば、デザインなどのクリエイティビティが求められる業界では、創造性や柔軟性が重視されることがあります。このような環境では、キャリアラダーは従来の階層的なモデルよりも柔軟で、プロジェクトベースのスキルや成果に焦点を当てることが重要です。

導入までのコストがかかる

キャリアラダーの導入には、人的コストと時間的コストがかかります。新しい制度やプロセスを導入するにはトレーニングが必要であり、それに伴う作業やコミュニケーションに時間がかかることがあります。特に組織全体に影響を与える大規模な変更の場合、導入プロセスを慎重かつ綿密に計画する必要があります。

 

04キャリアラダー制度を導入する手順とは

“キャリアラダー制度を導入する手順”

キャリアラダーを設定する際には注意が必要です。人事評価制度は一度設定したら簡単には変えられません。頻繁に変更してしまうと従業員は何を目指せばいいのか定かにできず、せっかく努力して身に付けたスキルや知識が評価されなくなってしまうこともあり得るからです。そのため、手順に沿って適格に制度を構築していく必要があります。

キャリアステップの構築

まずはキャリアに必要な技術や知識を洗い出します。漏れなくダブりなく集めることが大切です。そして適切な順序に並び替えて、徐々にステップアップをしていく過程を描きましょう。そしてその後に各段階に分けてキャリアを階層化します。この際に重要なことは、隔たりが大きくならないように細やかな階層構造を作らなければいけません。階層の隔たりが大きすぎると、短期の目標がなくなり、中長期的な目標が立てづらくなってしまいます。

評価システムの整備

キャリアステップを構築したら評価システムと連動させます。従業員が1段上のステップを目指すモチベーションを保つため、給料など待遇面で明確な差をつける必要があります。今まで使っていた給料テーブルを細かく分割して連動させる必要があるでしょう。また、ステップごとの差を付けるのに研修制度を活用することも有効です。各段階において受けられる研修の内容を変更することによって違いをもたらすでしょう。 しかし、完全に給与評価をキャリアラダーと連動させることにより技術や知識だけでは測れない項目を見落としてしまうことになりがちです。シフトへの貢献度や人間性、職場の雰囲気を盛り上げる能力、管理職であれば部下の成長など一概に数字で表せない評価ポイントもあります。そのため別枠で表彰制度などを設けることも有効でしょう。

研修の実施

職位ごとの研修を用意することで次のステップへの明確な道しるべを示すことが可能です。前述のように各段階における研修のレベルを変えることで差別化を測ることにもなります。また、一定数は現状維持を望む人もいるでしょう。自己努力だけに頼らずに従業員の成長のための場を用意することは大切です。

 

05キャリアラダー制度の活用事例とは

各企業ごとに業務内容はことなり求められる技術や知識は異なるでしょう。自社の実状に合わせたキャリアラダーの設定が求められます。一部の職種のみに導入する場合や業界全体で通用するキャリアラダーを作る場合もあります。キャリアラダーを活かした事例を確認していきましょう。

正社員の評価への応用事例|株式会社メルカリ

株式会社メルカリではエンジニア組織のみキャリアラダー制度を導入しています。看護や飲食と同様にエンジニアも専門職で技術と知識が重要視されます。エンジニアでキャリアラダーを導入しているのはメルカリだけではなく、SpotifyやCircle CIでも導入されています。このように一部の職種にのみキャリアラダーを導入することも選択肢の一つです。 株式会社メルカリはエンジニアの外国人比率が高く独特な文化が形成されています。さまざまな文化で育った従業員を公平に評価するためには、キャリアラダーを使った明確な技術と知識の評価制度が最適です。そして、エンジニアが使うプログラミング言語は世界共通であるため世界共通で使える評価制度を作ることが可能です。

教育研修への応用事例|公益財団法人日本看護協会

日本看護協会ではレベルに応じて実施する研修プログラムを明確に分けています。レベルごとのスキルに合わせて研修プログラムを用意し、それぞれの課題を解消できる仕組みを作り上げました。レベルⅠでは基本的な看護の実践ができるための新人看護職研修を行います。レベルⅡでは自立して看護の実践ができるためのプログラムが組まれています。レベルⅢでは看護チーム内でリーダーシップを発揮し看護実践ができる知識を目指します。レベルⅣでは指導的役割が遂行できるための研修が行われます。レベルⅤでは組織横断的な看護活動ができるように指導者研修やキャリア開発研修などが行われます。 各レベル段階に求められるスキルを明確にしているため課題も明確になり研修プログラムもより実践的で効果的に行えるでしょう。


 

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06まとめ

キャリアラダーはさまざまな職種で活用されています。働き方が多様化していくなかで社内で統一された人事評価制度では対応しきれないこともあるでしょう。職種の特性にあった評価制度を導入することが求められます。また、自社の業務の棚卸にもなり無駄の発見にもつながることもあるでしょう。これを機にキャリアラダーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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    法政大学キャリアデザイン学部 教授

    一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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