公開日:2021/08/26
更新日:2022/05/27

出向制度とは?左遷・派遣との違いや拒否の可否を詳しく解説

出向制度とは?左遷・派遣との違いや拒否の可否を詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

出向とは、企業との雇用契約を維持しつつ、 別の企業に勤務することをさします。 この記事では、出向の詳細や目的、出向命令を出す際のポイントなどを解説します。従業員に出向を命じる予定のある企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

01出向とは?

出向とは、出向元の企業と雇用契約を結んだまま、別の企業で勤務することで、「企業間人事異動」と呼ばれることもあります。雇用契約は出向元と出向先両方の企業と結ぶのが特徴です。 勤務時間・休日などの就業規則は、基本的に出向先の企業に従いますが、詳細は雇用契約書の中に明記されているのが一般的です。出向には次の2種類があり、契約の内容が異なるため、違いを理解しておきましょう。

在籍出向

出向というと、在籍出向を指す場合がほとんどです。在籍出向の例として、親会社から子会社への出向、もしくはグループ会社への出向などがあげられます。あらかじめ出向期間が決まっており、期間が終了すると出向元に戻ることが主流です。 在籍出向では、出向元の企業および出向先の企業と、二重に雇用契約を結びます。業務内容は、出向先の企業の指示に従って行うことになります。 在籍出向における給料は、出向元から支払われるケースが一般的です。 ただし、就業規則の内容によって、出向先から支払われるケースもあるため、事前に就業規則で規定しておく必要があります。

転籍出向

転籍出向は、出向元企業との雇用契約は終了し、出向先企業とのみ雇用契約を結ぶ形式です。出向元企業に籍がなくなるため、実質的には転職同様ともいえます。 転籍出向では、出向先企業と結ぶ雇用契約の下で業務を行い、給料も出向先企業から支払われます。出向元との契約が終わっていることから、将来的に出向元企業へ戻る可能性は、大変低いと考えられます。

 

02出向と左遷・派遣・転勤の違い

労働契約の中には、出向のほかに、左遷・派遣・転勤などがあります。 これらは、使われる場面が同じであるため混同しがちですが、意味や内容は明確に異なるため、適切に理解しておく必要があります。どのような点が異なるのか、比較しながらみていきます。

地位変動の有無で区別される出向と左遷

出向と左遷の違いは「社内での役職や地位の変動が起こるか起こらないか」という点にあります。出向は、地位が変わらない場合と、地位の降格を伴う場合があるため、一概にいうことができません。 ただし、出向のほとんどはプラスの意味で使われ、出向先企業で技術提供を行ったり、出向先で積んだ経験を出向元で活かしたりするケースが多くみられます。 これに対し、左遷は地位の降格を前提とした人事異動をさします。子会社や系列会社への出向や、社内で重要度が低い部署への異動なども、左遷の扱いとされる場合があります。

労働契約元や労働期間が異なる出向と派遣

出向と派遣は、業務の指揮命令権を出向先(派遣先)が保持している点は共通しています。出向と派遣の明確な違いは、労働契約を結んでいる相手にあります。出向では、出向元と出向先の両方と労働契約を結びます。一方、派遣は派遣元企業とのみ労働契約を結ぶ形式とされています。 また、労働期間においても出向と派遣では違いがみられます。出向は、一般的に1年以上の長期にわたって出向先で業務を行いますが、派遣では派遣先や業務内容によって労働期間が大きく異なります。短期の派遣であれば、期間が2週間から1か月というケースも珍しくありません。

勤務規定が異なる出向と転勤

出向と転勤は、異動先の企業によって呼び分けがされています。出向が、現在の勤務先とは異なる企業への異動をさすのに対して、転勤は同じ企業およびその関連会社内で、別の部署へ配属されることを意味します。勤務する企業が変わるため、勤務規定や労働条件も変わってきます。

 

03出向の目的

出向はリストラ回避などマイナスの意味で捉えられる場合もありますが、ほとんどは社員の経験や成長・スキルアップなど、前向きな目的を持って行われています。具体的に、どのような目的をもって行われるのか、ひとつずつ詳細を解説します。

従業員のスキルアップ

出向の目的として多く見られるのが、従業員のスキルアップです。20代から30代程度の若手社員を中心に、キャリア形成のひとつとして能力開発や技術力の取得などを目指し、出向先で経験を積ませます。普段と異なる職場で勤務し、視野を広げる目的も含まれています。 この年代の社員は、勉強と経験の機会を与えることが重要となるため、インターンシップのような形式でスキルアップを図ることが、企業にとっても重要な戦略となります。

雇用調整

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で仕事が減少する事態が発生しています。この状況において雇用を継続させるために、関連会社へ出向を命じるケースも急増しています。 ネガティブな理由に思われるかもしれませんが、何とか解雇を防ぎたいという会社側の意向が示された対策と考えられます。業績が回復すれば元の部署に戻るケースもありますが、転籍を視野に入れた出向となる場合もあります。

人材交流

企業間の人材交流を目的として、出向を命じる場合もあります。このケースでは、新規の子会社や取引先と信頼関係を構築する目的を持っていることがほとんどです。 今後の取引やコミュニケーションを円滑に行うため、社員を出向させ交流を図ります。社員本人にとっても、出向先で人脈を広げたり経験を積んだりすることで、その後の仕事における糧となることが期待できます。

 

04出向命令が断られることはあり得るのか

出向命令は、企業から従業員に下される業務命令です。このため、従業員は命令に従わなくてはなりません。 ただし、雇用契約の中で出向について明記がないと、企業に出向命令の権限がないとみなされる場合があります。また、次のような場合には、従業員から出向命令を断られることも考えられます。

正当な理由のある出向命令であれば問題はない

従業員が出向命令を拒否する可能性があるのは、出向の業務命令によって従業員が不利益を受ける場合です。例をあげると、出向により賃金が大幅に下がってしまう、家族に要介護者がいるなどがあります。これらのような正当な理由であれば、従業員が出向命令を拒否することも問題はありません。 ただし、 正当な理由がないにもかかわらず、従業員が出向命令を拒否した場合は、企業から従業員に対して懲戒処分を行うことも可能です。この決定は簡単ではないため、まず従業員に指導・警告を行い、その後、是正されなければ懲戒処分といったように、ステップを踏んで慎重に行わなければなりません。

不当な出向命令と見なされやすいケース

不当な出向命令とみなされるのは、先ほどの要介護者がいる場合のほかに、企業側にとって不都合な情報を内部告発した従業員に対する出向命令があげられます。これは従業員への報復ととらえられ、従業員に不利益を与えることから、企業の権利濫用とみなされます。 また、出向の必要性がないにも関わらず出向を求めることも、同じように不当命令とみなされます。従業員に出向を命じる場合は、目的を明確にする必要があるのです。

 

05従業員に出向命令をするときのポイント

出向の内容や目的などについて解説してきました。実際、従業員に出向命令を出すには、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。これまで解説してきたこともふまえながら、ポイントを詳しくみていきます。

労働条件については事前に協議して決定しておく

出向先での労働条件は、労働契約で明確にしておかなくてはいけません。 就業規則の適用や休日の条件など、決めるべき条件の内容は多岐に渡ります。出向の必要性や労働条件は、細部まで協議した上で決めるようにします。 労働条件で決めるべき内容には、契約期間や就業場所、就業時間などが含まれます。

給与や賞与の支払元を確認しておく

労働条件のなかには、賃金に関する内容も含まれます。毎月の給与や賞与がどこから支払われるのかも、あらかじめ明確にしておかなくてはいけません。出向期間における給与は、基本的には出向元から支払われます。 しかし、契約内容によっては出向先から支払われる場合もあるため、必ず事前に決めておかなくてはなりません。合わせて社会保険や 労働保険についても確認しておく必要があります。

出向契約書や辞令など書類を整理する

従業員を出向させるには、複数の書類を準備する必要があります。具体的には、出向契約書や出向辞令などです。 出向契約書は、出向期間や労働条件(給与・社会保険・交通費など)の取り決めが記載される書類です。従業員と企業の間で合意されたことを証明できるよう押印欄が必要なほか、署名欄も設けておくと安心です。 出向辞令を作成するには、「就業規則〇条により」という文言を入れなくてはいけません。また、出向期間や出向先の企業名も記載してください。

出向解除の手続きを理解しておく

出向解除とは、従業員が出向先から出向元へ戻ることです。 出向期間の終了前に、何らかの理由で出向解除となる場合もあります。出向解除を行う場合は、出向元の企業から従業員に対して、辞令などで通知を出します。形式は特に決まっていませんが、出向解除日や出向元企業へ帰任する日などを記載するようにしてください。


 

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06まとめ

出向は、キャリアアップや雇用の点において、従業員や企業にとってメリットが大きい制度です。これから出向制度を利用しようと考えている担当者の方は、今回紹介した内容を参考に、従業員の出向がスムーズに行えるよう手続きを進めていきましょう。

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