キャリアディベロップメントとは?得られるメリットと導入方法や課題を解説

キャリアディベロップメントとは、計画的に行う能力開発のことをさします。本記事では、キャリアディベロップメントのメリットや課題、導入方法などを解説します。キャリアディベロップメントの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
01キャリアディベロップメントとは?
キャリアディベロップメントとは、主に「企業が求める能力を持つ人材を育てる」「社員が目指すキャリアアップのための能力」の2つを目的として、計画的に行われる能力開発を指します。 これらを達成するために設定するプログラムは、キャリアディベロップメントプログラム(CDP)と呼ばれます。能力開発には時間がかかるため、このプログラムは短期的な取り組みではなく、長期的なスパンで考える必要があります。 具体的には、教育・研修・人事配置・OJT・自己啓発などを組み合わせて、総合的に能力を引き出せるように取り組んでいく仕組みです。
キャリアデザインとの違いとは
キャリアデザインは、自分の理想となる働き方やキャリアを自ら具体的に計画するものです。企業が関連していない点が、キャリアディベロップメントと大きく異なります。 このため、さらなる能力開発を目指すのであれば、キャリアディベロップメントと併せた取り組みが求められます。
02キャリアディベロップメントで得られるメリットとは
キャリアディベロップメントに取り組むことで、次のようなメリットがあります。どれも、企業と社員の双方にとって重要な事項ばかりです。取り組みを始める前に、ひとつずつ理解を深めておくことが大切です。それぞれの詳細を見ていきましょう。
自発性の高い社員の育成ができる
キャリアディベロップメントプログラムを実践すると、社員が自らのスキルを再確認できます。そこからどのようにスキルを伸ばすかを考えることにより、キャリアを形成しようとする意識が高まります。このことから、自発性を高められる社員の育成につなげられるのです。
社員のモチベーション向上が見込める
キャリアディベロップメントプログラムの実践により、社員が目指すキャリアと企業が求めるスキルの差を縮められるようになります。社員が目標とするビジョンが明確になることで、業務に対する社員のモチベーション向上を見込めるのです。
離職率の低下を防ぐ
仕事を行ううえで、自分がやりたい業務・達成したい目標などは、やりがいを持つために重要なポイントです。キャリアディベロップメントによって、やりがいが明確になると、業務に対して意欲を持って取り組めます。これにより企業への帰属意識が高まり、離職率低下の予防を期待できます。
社員のキャリアや能力の可視化ができる
キャリアディベロップメントでは、社員が現状持っているキャリアや能力が可視化できるようになります。これは、社員のキャリアや能力に合わせた能力向上プログラムが組まれるためです。企業にとっても、効果が見込めるプログラムが策定でき、効率の良い人材育成を行えます。
03キャリアディベロップメントを導入するには
キャリアディベロップメントの導入には、入念な準備が必要です。より高い効果をあげるために、次に紹介する手順を追って、準備を進めていきましょう。この手順によって、企業と社員の双方が納得する流れができあがります。
社員一人ひとりの適性を知る
最初に社員と面接やヒアリングなどを行ったうえで、社員個々の適性を確認します。このステップを踏むことで、社員の適性や求めるキャリアを理解でき、その後のステップをスムーズに進められます。さらにキャリア形成への道筋をより明確にする効果も期待できます。
企業と社員の希望するキャリアのすり合わせを行う
適性がわかったら、企業と社員のそれぞれが希望するキャリアを照らし合わせたうえで、すり合わせを進めていきましょう。企業が求める理想の社員像と、社員が目指したいキャリアの双方を満たすことが重要です。情報が多いと、より理想に近いすり合わせができますので、お互いができる限り多くの情報を提供するようにしましょう。
研修制度や教育制度を充実させる
目指したいキャリアが明確になったら、そのキャリアにたどり着けるような配属および研修を行います。適切なタイミングとしては、企業の戦略を見直したり、組織編成を変更したりするタイミングが良いでしょう。 内容としては、資格取得のための講座や自己啓発、OJTなど、配属先やキャリアに合った内容を検討しましょう。
配置後は定期的なフィードバックを行う
研修の開始後も、内容が適切であるか、効果が得られているかなどを定期的に確認し、必要があれば修正します。研修を進めていくうちに、方向性がずれてしまうこともあるため、定期的なチェックは欠かせません。 方向性だけでなく、企業や社員のニーズに変化が生じる場合も考えられます。これらに合わせた研修内容にするためにも、チェックやフィードバックを怠らないようにしましょう。
04キャリアディベロップメントで注意すべきポイントとは
キャリアディベロップメントは、メリットが高い取り組みですが、行う際に注意したい点がいくつかあります。ひとつずつ詳しく紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。キャリアディベロップメントを導入するうえでのヒントを見つけられます。
雇用の流動性を考慮する
キャリアディベロップメントには、長期的な取り組みが求められます。しかし、終身雇用制度が崩れつつある日本では、長期間同じ社員が同じ企業に所属するとは限りません。 新卒・中途に関わらず、キャリアを活かせる採用方法にシフトしている現代では、転職が当たり前という風潮が強くなっています。キャリアディベロップメントの実施に、雇用の流動性も加味して考えていかなければなりません。
人事評価制度との整合性を図る
上記で説明した流動性とも関連しますが、これまでのキャリアディベロップメントは、年功序列を前提とした内容でした。現代の人事評価制度は、職能資格制度からへと移行されているため、キャリアディベロップメントとの整合性が図りにくくなっているのです。そのため、人事評価制度とキャリアディベロップメントの内容がリンクされ、正当な評価をするために、整合性を取るような体制を整えましょう。
集合研修ではマインドセットを目的とする
マインドセットとは、生まれ持った性格や今までの経験・教育、先入観などから生み出される考え方のことをさします。「無意識な思い込み」と呼ばれることもあります。 企業のリーダーが、前向きなマインドセットを持っていれば、この考えは部下に浸透します。これが、集合研修でマインドセットを目的とする理由です。マインドセットにより、個人のキャリアアップにつなげられます。
OJTでは実践的なスキルの体得を目的とする
キャリアディベロップメントの実施には、OJTとの連携が欠かせません。役割等級制度への変化の中で、OJTにより実践で活用できるスキルを取得することは、大変重要性を増しています。OJTの実施で、より高いスキルを得られるように心がけていきましょう。
グローバルな視野を取り入れたCDPを構築する
従来のキャリアディベロップメントは、日本の基準で策定されてきました。しかし、日本基準のままでは、グローバルな成長に対応できない可能性があります。 特に、外国人を採用している企業や、現地法人を設けている企業などは、人材獲得のためにグローバルに対応したキャリアディベロップメントを導入しなければなりません。そのため、国内外の両方で通じる構想を立てるようにしましょう。
自己申告制度や社内FA制度の導入
自己申告制度は、キャリア形成や人事配置などの希望を、社員本人から申告する制度です。社員の意思が明確になるため、すり合わせがスムーズに進められます。 社内FA制度は、社員が自らのスキルを売り込み、移動や転籍を申し出る制度です。社員が持つスキルを適材適所で活かせることで、的確な人員配置が行えるメリットがあります。 これらの制度をうまく活用し、社員がモチベーションを持ち続けられるような取り組みが、企業に求められます。
05キャリアディベロップメントを導入している企業を紹介
実際に、キャリアディベロップメントを導入している企業では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。自社で取り組みが活用できるように、いくつかの企業の事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社NTTデータ
NTTデータでは、「プロフェッショナルCDP」を導入しました。これは、高い専門性と、あらゆる変化に対応できる能力を備え持つ人材の育成を目的としています。 企業が求める人材タイプごとに認定レベルを設けたうえで、ビジネス系・テクニカル系と2種類の研修から社員が自由に受講できる仕組みを構築しました。
明治安田生命
明治安田生命では、キャリアディベロップメントの導入により、社員各自の自主性と気づきを重視するプログラムを実施しています。業務ごとに求められる人材要件を明示したり、社員が自らの現状を分析する機会を設けたりすることで、能力やキャリアの開発に一役買っているのです。
キッコーマン
キッコーマンでは、自己申告制度を中心としたキャリアディベロップメントプログラムを導入しています。入社時の集合研修に始まり、2年目以降はキャリアに応じてさまざまな種類の研修が受けられる制度があります。 社員は、自らキャリアを構築する心構えができ、仕事に対する積極的な姿勢を形成する効果を期待されています。
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06まとめ
キャリアディベロップメントは、人材確保のために必要不可欠な取り組みとなっています。企業の発展と社員のスキルアップの双方をかなえるため、社員ひとりひとりと向き合い、キャリア形成のためにできることから始めていきましょう。
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登壇者:田中 研之輔 様法政大学キャリアデザイン学部 教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数