公開日:2021/09/09
更新日:2023/08/14

高度プロフェッショナル制度とは|メリットとデメリットを併せて紹介

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高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識や技能が必要な特定業務を対象に、労働基準法で定める規定の適用を除外する制度です。本記事では高度プロフェッショナル制度のメリット・デメリットなどについて紹介します。これから高度プロフェッショナル制度の導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

01高度プロフェッショナル制度の内容とは

高度プロフェッショナル制度とは、「働き方改革法」の取り組みのひとつであり、高度なスキルや知識をもつ労働者を対象に、労働基準法の定める規定の適用を除外する制度です。内容について、さらに具体的に紹介します。

労働時間の制限を撤廃する制度

高度プロフェッショナル制度は、厚生労働省が公表している資料によると、一定の要件を満たすことで、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。個々の事情に応じて多様な働き方ができるように設計されています。

参考:高度プロフェッショナル制度について|厚生労働省

高度なスキルを持つ労働者が対象

対象者は、高度なスキルを持つ労働者です。対象職種や業務も限定されており、主な業務は次のとおりです。

  • ・金融商品の開発業務
  • ・金融商品のディーリング業務
  • ・企業や市場などの高度な分析を行うアナリスト業務
  • ・事業・業務の企画運営に関する高度な考案や助言を行うコンサルタント業務
  • ・公認会計士や弁護士などの士業

この他の業務も合わせて、24業務が対象です。 高度な専門性を要する職種の代表格ともいえる医師は、対象に含まれません。医師の業務が制度の内容にそぐわないため、対象外とされています。

参考:高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説|厚生労働省

対象者の収入も要件に入る

対象の職種であれば全て高度プロフェッショナル制度の対象となるわけではありません。該当する職種において、支払われる見込みの収入が1,075万円以上であることが条件です。これは、労働者の成績等に応じて⽀払われる賞与や業績給等、⽀給額があらかじめ確定されていないものは含まれないため、注意が必要です。

裁量労働制度との違い

裁量労働制度は、労働時間を実労働時間で算出せず、労働時間を労働者の裁量に委ねる労働契約です。そのため、出退勤時間の制限がなくなり、実労働時間に応じた残業代も発生しません。 裁量労働制度も、労働の質・評価や業績によって報酬を決定するという点は高度プロフェッショナル制度と同じです。 違いとしては、裁量労働制度では労働時間を事前に「みなし時間」を設定し、労働時間を計算しますが、22時以降から翌朝5時までの労働は割増賃金(深夜手当)が発生します。さらに、裁量労働制では対象労働者の職種に限定されず、年収要件も設けられていません。

 

02高度プロフェッショナル制度が導入された背景とは

高度プロフェッショナル制度は、働き⽅改⾰を推進する動きの中で導入されることになりました。当初は、「ホワイトカラーエグゼンプション制度」として法案が検討されましたが、過労死の原因となるとして提出には至らず、成立するまでには長い時間がかかっています。

働き方改革のひとつ

大きな背景のひとつとなったのが、働き方改革です。残業時間の上限規定や、有給休暇取得の義務化、フレックスタイムの見直し、同一労働同一賃金などを含む働き方改革関連法案のうちの1つとして高度プロフェッショナル制度は成立し、勤務時間に縛られず多様な働き方を促進し、生産性を向上することを目的としています。

海外と足並みを揃える

海外と足並みを揃えるためという点も、導入の後押しとなりました。欧米など他の先進国と比べて日本の労働時間は長く、有給休暇の取得率なども低いです。これらの現状から、日本は柔軟な働き方を導入する必要性があります。 また、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスなどの先進国では「ホワイトカラーエグゼンプション」として既に制度が導入されており、日本でも同様の制度導入を目指したという背景もあります。

 

03高度プロフェッショナル制度のメリットは?

高度プロフェッショナル制度の導入は、モチベーション向上、生産性向上など期待ができるほか、ワークライフバランスの実現も可能となります。メリットについて以下で詳しく解説します。ぜひ今後の参考にしてください。

仕事の成果が評価される

高度プロフェッショナル制度の最大の特徴は、業務の成果そのものが評価されることです。自分の頑張りが正当に評価されるようになったことで、評価の不公平感がなくなり、従業員のモチベーション向上にもつながります。

生産性を上げられる

また、高度プロフェッショナル制度では効率的な業務により労働時間を短縮でき、プライベートの時間を確保しやすくなります。残業代目当ての無駄な残業がなくなり、モチベーションも上がり、労働生産性が高まることが見込めます。

ワークライフバランスが実現できる

そして、高度プロフェッショナル制度は、労働基準法が適用されず、また労働者の裁量で出社・退社時間、休暇を自由に決められます。育児や介護と仕事の両立も可能ですし、ワークライフバランスが実現できます。 近年、育児や介護との両立ができずに離職せざるをえなかったり、フルタイムでの働き方を諦めたりする方は少なくありません。高度プロフェッショナル制度を導入することで、職務と成果を明確に決めて、成果の見込みがあれば早く帰宅することも可能にしたり、労働者の裁量で在宅勤務にしたりすることも可能です。

 

04高度プロフェッショナル制度のデメリットは?

高度プロフェッショナル制度の導入では、メリットが多い反面、考えられるデメリットもあります。メリット・デメリットの両方をきちんと理解し、うまく制度を活かすためには、以下を参考にして理解を深めていきましょう。

長時間労働発生のおそれがある

まず、長時間労働が発生のおそれがあるということです。フレキシブルな働き方が実現する一方で、本制度は「残業代ゼロ法案」ともいわれており、長時間労働の横行が懸念されています。1日あたりの労働時間規制が撤廃されることで、長時間労働が発生しやすくなるという問題点があります。 従来の所定時間労働であれば、成果が出せても出せなくても、定時になれば退勤できました。残業についても、上司からの指示があって残業する場合は残業代を請求する権利があり、休日も確保できます。 一方、高度プロフェッショナル制度では、どのような経緯があったとしても、求められた労働成果を出すことが求められます。成果が出ないと労働時間が増える可能性があるのです。

残業代および深夜手当がつかない

残業代および深夜手当がつかないということもデメリットです。高度プロフェッショナル制度は労働基準法の適用外となるため、残業手当や深夜手当の支給義務が発生しません。そのため、成果・業績に見合わない長時間労働が発生したとしても、賃金は保証されません。

評価基準が分かりにくい

高度プロフェッショナル制度で指定されている業種・職種のなかには、成果・業績を評価するまでに時間がかかる業種・職種も存在します。例えば、研究開発業務のなかには成果が出るまで数年から10年ほどかかる場合もあります。そのため統一した評価が難しく、結果として評価が適正に報酬に反映されないという恐れがあります。

 

05高度プロフェッショナル制度の導入手順とは

“高度プロフェッショナル制度の導入手順”

高度プロフェッショナル制度の導入のための手続きとして、まずは労使委員会を設置し、必要事項を決議の上、対象となる労働者の署名を得る必要があります。具体的には、以下の6つのステップが必要です。

1.労使委員会の設置

ひとつ目のステップとして、労使委員会を設置します。労使委員会の要件は以下になります。

  • ・労働者代表委員が半数を占めていること
  • ・委員会の議事録が作成され、保存されるとともに、事業場の労働者に周知 が図られていること

労使委員会は、労働者を代表する委員と、使⽤者を代表する委員で構成されます。⼈数については、労働者代表委員が半数を占める必要があります。。また、設置⽇程や⼿順、ルールなどについて⼗分に話し合い、定めておくことが望ましいです。

2.労使委員会で決議する

労使委員会を設置したら、高度プロフェッショナル制度の導入に関する必要事項を決議します。決議すべき事項は以下になります。

  • 1.対象業務
  • 2.対象労働者の範囲
  • 3.対象労働者の健康管理時間を把握すること及びその把握方法
  • 4.対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を 与えること
  • 5.対象労働者の選択的措置
  • 6.対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置
  • 7.対象労働者の同意の撤回に関する手続
  • 8.対象労働者の苦情処理措置を実施すること及びその具体的内容
  • 9.同意をしなかった労働者に不利益な取扱いをしてはならないこと
  • 10.その他厚生労働省令で定める事項(決議の有効期間等)

上記の項目は委員の5分の4の決議によって必要事項を決定する必要があります。

3.決議内容を労働基準監督署長へ届け出る

3つ目のステップが、決議内容を労働基準監督署長へ届け出ることです。委員会での決議事項をまとめ、所轄の労働基準監督署に提出します。提出時に記入ミスを指摘されるおそれもあるので、担当者自身が持参することをおすすめします。

4.書面により対象労働者から同意を得る

4つ目のステップは、.書面により対象労働者から同意を得ることです。職務範囲や期間、報酬について明らかにし、対象労働者の同意の上、書面に署名を受けます。同意を得られることで、いよいよ対象労働者が業務につけるようになります。

5.対象労働者が業務に就く

5つ目のステップが、対象労働者が業務に就くことです。決議事項に従って、対象労働者を職務に就かせられるようになります。また、就いた場合でも担当者は職務の状況を6か月ごとに所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。

6.決議の有効期間の終了

6つ目のステップが、決議の有効期間が満了すると、高度プロフェッショナル制度の適用が終了します。適用を継続する場合には、労使委員会で決議の有効期間を設定する際に、決議内容について再決議によって更新することができる旨も決議しておき、これに基づき再決議が必要となります。

 

06高度プロフェッショナル制度導入の注意点は

企業側と労働者側の双方にメリットが多く存在している高度プロフェッショナル制度ですが、導入する際には注意すべき点も少なくありません。高度プロフェッショナル制度をうまく活用していくためにも、ぜひ以下を参考にしてください。

人事評価制度を見直す

高度プロフェッショナル制度によって、専門的なスキルや知識をもつ従業員が自己裁量で業務の効率化をはかれる一方で、企業は過重な労働になってしまわないよう、十分に監督責任を果たさなければなりません。 この制度では労働時間ではなく、業務の成果に対しての報酬が発生するため、従業員ともよく話し合って業務内容を確認し、人事評価制度を抜本的に見直す姿勢が必要です。まずは、現在の評価制度を見直してみるところから始めてみましょう。

従業員の健康管理を徹底する

高度プロフェッショナル制度が適用されるためには、健康の確保措置などについて労使委員会での決議や、対象労働者本人が同意することが必要です。 この制度を成立させるにあたり、新たに労働政策審議会において、省令12項目、指針1項目が定められています。

参考:「専門業務型裁量労働制|厚生労働省」

勤怠管理を厳密に行う

勤怠管理を厳密に行う事も重要です。使用者は、タイムカードなどの客観的な方法で従業員の健康管理時間を把握します。また、年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を確保する必要がありますから、無理なく業務を行っていけるよう、管理側も配慮しなければいけません。


 

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07まとめ

高度プロフェッショナル制度とは何か、フレキシブルな働き方につなげることはできるのかなどについて解説しました。働き方が時代とともに変わりゆく中で、企業にとっては無駄を省くことができ、労働者にとってはワークライフバランスが取りやすくなる制度です。導入の際にはぜひこの記事を役立ててください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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