ホーソン効果とは?社員のやる気を引き出す方法を紹介
ホーソン効果とは、周囲の注目を浴びることで行動が変わり、良い結果を生み出す現象です。本記事ではホーソン効果の活用方法や、導入時に気を付ける点などについて紹介します。これからホーソン効果を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.ホーソン効果とは
- 02.ホーソン効果誕生のきっかけになった4つの実験
- 03.ホーソン効果を狙った事例
- 04.企業におけるホーソン効果の活用方法
- 05.ホーソン効果を活用するときの注意点
- 06.まとめ
01ホーソン効果とは
ホーソン効果とは、人が「注目される」ことで成果を上げようと力を発揮する現象です。他人からのポジティブな注目は、自分の意識決定に大きく影響し、それによって自分の行動や結果が変わってくることは往々にしてあります。
ピグマリオン効果との違い
ピグマリオン効果は、教育現場などで使われるケースが多く、教師が生徒の知識向上や意欲向上を期待した態度をとり続けると、実際に生徒が期待に応える行動をすることです。 実際に自分が期待されていると感じると、日常生活はもちろん、ビジネスシーンにおいても意欲が高まることがあります。それを心理学的に応用しようとするものが、ピグマリオン効果を活用した指導方法です。 ホーソン効果は第三者から、ピグマリオン効果は目上の人からの働きかけという違いがあります。
02ホーソン効果誕生のきっかけになった4つの実験
ホーソンとはアメリカのイリノイ州シカゴ郊外にあるウエスタン・エレクトリックの工場の名前です。ここで、照明の明るさと生産性の関係を調べる調査を行ったところ、その観察結果からホーソン効果がわかったという実験です。具体的な実験内容は、以下の通りです。
照明実験
照明実験は、初めに行われたホーソン実験で、「労働環境が生産性に影響するかどうか」を調べるために行いました。実験内容は、「照明が暗い状態で作業すると生産性が下がり、明るい状態だと生産性が上がる」という仮説を置き、それぞれの環境での生産性を測定しました。 多くの研究者が仮説の通りになるだろうと想定していましたが、結果は彼らの予測から大きく外れるものでした。明るさが一定でも変化しても、一定時間が経過すると作業効率が徐々に上がったのです。つまり、照明と生産性は関係しないという結果となりました。
組立実験
組立実験は、環境要因と作業能率の関係を調べるための実験です。まず、無作為に女性6名を選び出し、そのうち5人を作業員、1人を世話役にしました。そして、賃金や休憩時間、部屋の温度などの環境要因を変化させながら、リレーの組み立ての生産性をみて、作業能率を計測するという実験を行ったのです。 「物理的な労働環境が悪くなれば、作業効率も悪化する」という仮説が立てられましたが、実験の結果はこの仮説に反するものでした。最初は賃金や休憩時間といった条件を改善することで作業効率も上がりましたが、その後、労働条件をもとに戻しても効率は悪くなりませんでした。 こうした結果をふまえて状況を整理したところ、影響を与えているのは内部的な環境要因ではないかという推測が出ました。つまり、共通の友人や、日々コミュニケーションをとることでチームの連携が強化され、モチベーションの向上やパフォーマンスの発揮につながったと考えられます。
面談実験
面談実験は「賃金制度や就業時間よりも、管理体制のあり方が作業効率に影響を与えるのではないか」という仮説のもとで行われた実験です。まず、2万人の従業員に対して1人ずつ面談を行いました。 面談した結果、従業員の満足度は賃金や就業時間といった客観的な労働条件よりも、個人の主観的な好みや感情に左右されやすいということが判明しました。同じ条件であってもある者は満足だと言い、ある者は不満を述べたのです。また、「特定の外部環境に関して誰もが不平を述べる」といった共通した事実は見出せませんでした。 実験の結果、「従業員の態度や行動は、感情によるところが大きく」、「満足度は単に相互関係や社会組織内の居場所だけでなく、その人の感情や欲求を考慮した上で測らなければならない」ものだという結論に至りました。
バンク配線作業実験
バンク配線作業実験は、従業員を職種でグループ分けにし、バンクの配線作業を行わせ、その共同作業の成果を観察しました。ちなみに「バンク」とは電話交換機のことです。この実験前に、照明・組立・面談の3つの実験が行われましたが、実験結果から「現場の小グループが社会統制機能を果たしているのでは」という仮説が立てられていました。 さらに、利害関係のない者同士の関係や、従業員同士の関係が、作業にどのような影響を与えているかを観察対象としました。この実験では、仮説の通り小さな集団(インフォーマル組織・非公式組織)が自然と発生することがわかりました。しかしわかったのは、それだけではありません。「上司・部下」「担当作業を行う上での関わりの有無」に関係なく、小さな集団が形成されていたのです。 労働者は、自分の持てる力をすべて出し切るのではなく、状況や場面に応じて労働量をコントロールしていることがわかりました。これは、労働量を増加すると、今後の作業水準が引き上げられたり、賃金単価が下がったりして、人員削減で仲間の誰かが犠牲になるからです。つまり組織の人間関係は、生産性や製品の品質に影響を及ぼすことが判明しました。
03ホーソン効果を狙った事例
これまで説明してきた、ホーソン効果ですが、これをうまく利用している企業が存在します。ここでは2つの企業での取り組みを例にとり、それぞれ具体的にご紹介していきます。企業でのホーソン効果の活用にぜひお役立てください。
東京ディズニーリゾート
ホーソン効果をうまく利用している企業として東京ディズニーリゾートがあります。「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」という制度が、ホーソン効果を狙った事例にあたります。 この制度では、キャストはお互いの働きぶりを称え合うため、配られたカードに自分が素晴らしいと思うキャストの名前を書きます。そして、書かれたメッセージの内容や、カードの枚数により「スプリットアワード」が開催されます。年に一回のイベントで、いわば東京ディズニーランドで働いているキャスト全員による総選挙です。他のキャストに認められたいという願望が沸き起こり、モチベーションを奮い立たせ、一生懸命仕事に取り組むようになります。これこそ、他人の目線によって能力が向上するというホーソン効果といえます。
参考:「ホーソン効果|UX TIMES」
サイバーエージェント
サイバーエージェントも、ホーソン効果を狙った取り組みを行っています。もともとサイバーエージェントは、社員の急な退職が多く、人事評価制度に課題を抱えていました。そこで、社員の人事評価の納得度の違いについて部署別に調査を行いました。 その結果、社員の納得度が高い部署では評価面談だけではなく、週に1回または月に1回というように、部下と上司が定期的に目標への進捗と成果について話し合う場を設けていることがわかりました。これを活用し、「月イチ面談」を実施することにしたのです。 面談導入後、現場からは、安心できるという声が多数聞かれるようになりました。また、部下は上司からのフィードバックを的確に受けることで、目標達成に向けての行動が定まり、労働意欲の活発化と離職率低下につながる効果がみられました。
参考:「カルチャー|株式会社サイバーエージェント」
04企業におけるホーソン効果の活用方法
実際に企業でホーソン効果を活用するために、大きな取り組みを行うのはハードルが高く感じるという方も少なくないでしょう。ここからは、手軽に実践できる企業におけるホーソン効果の活用方法について解説していきます。
表彰制度を設ける
ひとつ目が表彰制度を設けることです。表彰されて、注目を浴びたいと思う社員は少なくないはずです。企業内で表彰制度を設け、優秀者を表彰して大々的に扱うことで、社員のモチベーションがアップし、ホーソン効果が狙えます。
個人の目標を社内全体に向けて発表する
2つ目が、個人の目標を社内全体に向けて発表することです。これは、「パブリックコミットメント」とも言われ、公の場で約束をすることで、目標達成率を上げるテクニックです。 たとえば、「今月100万円売上げます!」と大勢の前で約束すると、いい意味での社会的プレッシャーを感じられます。
社内インフルエンサーを決める
3つ目が、社内インフルエンサーを決めることです。SNSは今や誰もが日常で触れるものとなっているため、社員も取り組みやすいといえます。社内でのインフルエンサーを決め、フォロワー、いいね、表彰などの機能を設けることで、反応もしやすくなります。
実績重視の昇進制度を導入する
4つ目が、実績重視の昇進制度を導入することです。どれだけ頑張り、実績を出しても、年功序列制度や、社内の風土などにより評価をされなければ社員のモチベーションは下がります。若いうちから昇進が可能であると社員へ浸透させることが、1人ひとりのやる気アップにつながります。
大きなプロジェクトチームを作る
5つ目が、大きなプロジェクトチームを作ることです。プロジェクトチームを立ち上げるにあたり、メンバーを招集しなくてはなりません。そのメンバーに選ばれたいという想いが、社員の自己成長意欲を引き出し、結果を出すことにつながります。
05ホーソン効果を活用するときの注意点
ホーソン効果は、積極的に部下に話しかけるといったマネジメントや、教育研修に活用できるさまざまなプラスの効果があるといわれています。しかし、効果的に活用するためには気をつけなければ点もあります。以下で詳しく解説していきます。
適切な人材をホーソン効果の対象とする
まず、適切な人材をホーソン効果の対象としてください。モチベーションが高く、プレッシャーにも強い人材が適任と考えられます。あまり適していない人材を対象としてしまうと、ホーソン効果は薄れてしまうおそれがあります。
従業員の扱いに露骨な差をつけない
次に、従業員の扱いにおいて、露骨な差をつけないようにしてください。無意識のうちに態度にでてしまうおそれがあるため、意識して細心の注意を払う必要があります。従業員は自分の評価や、どのように見られているかに敏感です。扱いに不公平感が出ないようにすることが重要です。
プレッシャーを与えすぎないようにする
最後に、プレッシャーを与えすぎないようにしてください。「上司が部下に期待すると、部下はその期待に答えるようになる」ピグマリオン効果とホーソン効果をあわせて使うと、個人のパフォーマンスを効果的に向上できる場合もあります。ただし、あまりに過度な期待をかけないよう、留意することも必要です。
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06まとめ
以上、ホーソン効果とは何か、社員のやる気を引き出す方法をあわせて紹介しました。人は、他人に注目されていると奮闘できるものの、自分一人だけでは、なかなかモチベーションが上がらないものです。 ホーソン効果という心理効果を、自分の仕事に応用していけば、活気のある職場になって、自然と仲間のモチベーションが上がるはずです。ぜひこの記事を参考に、ホーソン効果を活用してみてください。
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登壇者:荒川 陽子 様Great Place to Work® Institute Japan 代表
2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。