公開日:2021/09/09
更新日:2023/08/25

人材アセスメントとは?従業員の能力を活用するための方法を解説

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近年、正当な人事評価を行なうための有効な手法として、人材アセスメントが注目されています。本記事では、人材アセスメントの重要性や、従業員の能力を効果的に活用するための具体的な方法について解説します。社内の人材の教育・育成にぜひ活用ください。

 

01人材アセスメントとは

人材アセスメントとは、「効果的な人材育成・人材配置・採用を行うために、客観的に社員のスキルや適性を評価する手法」のことです。具体的には、適性検査や360度診断、アセスメント研修などのツールを用いて、社員の強みや特性などを判断することを指します。

人材アセスメントが注目されている背景には、人材の多様性が重視されてきていることが挙げられます。VUCAと呼ばれる時代となり、働き方や価値観が多様化してきたことによって、これまでの終身雇用・年功序列という制度が機能しなくなりました。これからは人材を同質化するのではなく、社員の多様性を尊重し、それぞれの社員が自身の適正や保有スキルを最大限活用できる環境を整える必要があるのです。そのため、人材アセスメントで社員のスキルや適性を客観的に評価したいというニーズが強まっているのです。

人材アセスメントの主な手法

人材アセスメントの代表的な手法は、以下のとおりです。

手法 内容
適性検査 性格や行動傾向、仕事の進め方、対人関係、責任感、意欲、ストレス耐性、特定の職務に対する適性
知能検査 物事の理解力や知識、課題解決力などの認知能力
タイプ診断 事前に用意された複数のタイプのどれに当てはまるかを診断
360度サーベイ(評価) 社員自身の自己評価に加え、上司・部下・同僚などの他者からの評価を包括した能力判断
従業員サーベイ 従業員エンゲージメントやモチベーション、心理的安全性などを測定
アセスメント研修 管理職のマネジメント能力を測定

この中でも、適性検査・360度サーベイ(評価)・アセスメント研修が多くの企業で採用されています。適性試験は主に採用時に用いられます。応募者の能力が最低限自社で活躍できる基準に達しているのか、性格や行動特性が自社の文化に適しているかを判断し、面接に進んでもらうのかを判断する企業が多いです。

360度サーベイは半期や通期の査定時に用いられ、主観による評価ではなく多面的な評価をすることで、社員が納得できる評価を得られるように導入する企業が増えています。

 

02人材アセスメントが注目されている背景

人材アセスメントが注目されている背景は、主に「年功序列の終焉」と「多様性への適応」という2点があります。

日本企業の伝統だった終身雇用が継続できなくなったことにより、年功序列という考え方も終わりを迎えざるを得なくなったのです。その流れに加えて、人口減少や人材の流動性が高まったことにより、企業が社員を選ぶのではなく、企業と社員は選び・選ばれる関係になっています。

このような社会背景の中で、多様な「個」として社員を捉え、それぞれの社員にとって適切な人材配置・業務・スキルの提供をする必要があり、それらを判断すための材料として人材アセスメントを活用する企業が増えているのです。

1.年功序列の終焉

人材アセスメントが注目されている背景の1つには、年功序列の終焉があります。年齢や勤続年数によるエスカレーター式の昇格・昇進は、終身雇用の終焉と共に機能しなくなりました。

このような背景の中で、評価方法も見直しが求められたのです。属人的な評価ではなく、多面的かつ客観的なに社員を評価して、優秀な人材を積極的に昇進させようとする動きが出てきました。

また、昇進や評価だけでなく、従業員エンゲージメントの向上という面でも人材アセスメントは活用されています。社員それぞれの適正に応じて、その人のパフォーマンスが最大限発揮されるような業務についてもらうような人材配置をすることによって、働きがいを感じてもらうのが主な目的です。

2.多様性への適応

ダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれるようになり、女性の役員や管理職の比率について、人的資本開示の内容に含める企業も増えています。また、ジェンダーだけではなく働き方や価値観、職種も多様化してきています。例えば、これまでは出世することが社員共通の目的と言える時代でしたが、昨今では管理職になることを望まない若手も増えてきているのです。

このように、価値観や働き方などが多様化した現代社会で、社員を「集団」として捉えるのではなく、「個」として捉え直す動きが出てきています。例えば、スキルという側面で考えてみると、新入社員だから何も知らない状態という時代ではなく、企業インターンをしていた人もいれば、学生企業をしていた人もいます。そのため、新入社員という枠組みで捉えるのではなく、1人の社員として捉える必要が出てきているのです。

 

03人材アセスメントを導入するメリット

現在、導入が増えている人材アセスメントですが、実際に導入することで、企業にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。評価される側のメリットも含め、導入により得られる効果について紹介します。

採用時のミスマッチを減らせる

人材アセスメントを用いて採用面接を行なうことで、自社に本当に必要な人材を採用しやすくなります。試験や検査を用いてあらかじめ応募者のスキルや潜在能力を把握しておくことで、面接では好印象だったのに、入社後は社風に合っていなかった、早期に退職してしまったというミスマッチの未然防止に役立ちます。

的確な人材配置が行える

人材の潜在能力や適性が分かれば、企業はより適切な人事配置を行えます。営業としての実績は良いが、マネジメントの立場になって急にパフォーマンスが落ちた、というような事例でも、昇格前に人材アセスメントで評価しておくと、プレイヤーとマネジメントそれぞれの適性を把握できるため、失敗リスクが軽減できます。適材適所に人材を配置すれば生産性も上がり、業績の向上も期待できます。

人材に合った教育が行える

人には少なからず向き不向きがあります。マーケティングでは成果を出せなかった従業員が、営業では大きく成果を出せた、といったケースは珍しくありません。 人材が持つ素質や潜在能力を把握し、それに準ずる研修や教育を行うことで、従業員ひとりひとりのパフォーマンスの最大化を期待できます。もしも研修の適切な方法がわからないということであれば、外部の業者に研修を依頼するのもひとつの手です。人材アセスメントを意識した、ベストな研修が提案されます。

管理職の選任

実務能力の高い社員が管理職候補になることは少なくないでしょう。しかし、実務面の成果と、マネジメントへの適性は別問題であることから、その社員がリーダーや管理職に相応しいとは限りません。 いくら成果を上げることができても、総合力を持っていなければ人をマネジメントすることは難しく、現場の評価だけを尊重して、業務を進めている流れにはリスクが伴います。 人材アセスメントを活用し、客観的かつ総合的な評価でマネジメントに向いていると判断した人材を昇進させることで、このような問題を避けられるようになります。

従業員の新しい強みが見つけられる

第三者の客観的な視点を活用すると、新たな発見が出てくる可能性があります。固定観念がない新しい視点で人物を見ることで、その人の強みが見えてくるようになるためです。社内では誰も気づかなかった新しい強みやスキルの発見は、会社にとっても大きな武器になります。また、従業員も知られざる自分の強みを自覚することで、仕事へのモチベーションを高められるようになるでしょう。

従業員からの納得感が得られやすい

社外の第三者に依頼することで、思い込みや個人的な感情などの主観的な視点での判断ではなく、客観的な判断が下せるようになります。上司の好みや主観が加わった評価に比べて、第三者からの評価は信頼性が高く、社員の納得感も得られやすくなります。

 

04人材アセスメントの導入手順

人材アセスメントは、正しい手引きで導入しなければその効果を実感することができず、時間や労力の無駄使いになってしまいます。導入しただけで終わってしまわないよう、導入時の流れについて理解を深めておきましょう。

1.目的を明確にする

まず、人材アセスメントを導入する目的を明確にしましょう。思考の順序としては、課題・目的の順番に考えるとスムーズです。以下の表は組織によく起こる課題と人材アセスメントの導入目的の例です。

課題 導入目的
入社3年目までの離職率が高い 離職する社員の特性や行動パターンを把握する
幹部候補となる社員が少ない 活躍している人材の特性やスキルなどを分析して、コンピテンシーを明確にする
研修が社員の成長に繋がっていない 各社員に必要なスキルを明確にして、個人に最適化された人材開発を行う

このような、目的を明確にしておくことで、アセスメントが「やりっぱなし」の状態になることを防ぐことができます。

2.測定項目を決める

課題と目的を明確にした後は、測定項目を決めます。測定項目を決める際に必要なものは仮説です。例えば、新卒3年目までの離職率が高いという課題で考えてみましょう。この場合は、なぜ離職率が高いのか仮説を立てます。「パフォーマンスを出しているのに昇進が見えない」・「自身のキャリアに不安を抱いている」などの仮説を出すと、測定項目が自然と見えてきます。

前者の場合、目標達成者に離職者が多いのか、保有しているスキルの幅や深度が離職に影響しているかを測定することで、仮説を確かめられそうです。後者の場合は、自らのキャリアプランが描けている人に離職者が多いかを調べると仮説が正しいか確認できるでしょう。このように、課題に対しての仮説を出していくことで、測定項目が自然に見えるだけでなく、どのような人材アセスメントの手法を選択するのかもスムーズに考えることができます。

3.利用する手法を決める

決定した目標と測定内容を踏まえて、自社に合った最適な手法を選択します。将来的に組織を牽引する管理者を見極めるために、能力を測定するだけでなく、本人のキャリア志向を把握し、期待する役割を担えるか、担おうとする意欲があるかという側面も把握する、など複数の測定手法を組み合わせて、補完的に活用する施策も効果的です。

4.結果を分析する

実施後は、アセスメント結果をもとに昇進・昇格の是非を決めるといった直接の用途だけでなく、アセスメント結果を属性ごとに細かく分析することで、自社の事業戦略に照らした強みや、現状の課題を明らかにする取り組みが必要です。

5.定期的に行いアップデートしていく

アセスメントにより明らかになった組織の現状と、目指す状態とのギャップから、全社や部門の課題を設定して次なる取り組みを行います。同時に、本人にもアセスメント結果をフィードバックし、 気付きや能力開発の機会として活用すると効果が上がります。定期的に実施、アップデートを行い、事業課題の解決へとつなげましょう。

 

05人材アセスメントの代表的なツール

この章では、人材アセスメントの代表的なツールを紹介します。あくまでも、思考の順序は目的を明確にすることからですが、ツール選定に困った際は参考にしてみてください。

モチベーションクラウド(組織サーベイ)

モチベーションクラウドは、株式会社リンクアンドモチベーションが提供する組織診断サーベイです。国内最大級の8,000社・200万人以上のデータベースをもとに、組織状態を可視化・分析することができます。20分ほどの選択式アンケートで、従業員のエンゲージメント状態を可視化・数値化することが可能です。

▶︎参考:モチベーションクラウド|公式サイト

ミキワメ

ミキワメは、株式会社リーディングマークが提供する適性検査サービスです。事前に社員の診断結果を登録しておくことで、自動でシステムが社風を分析してくれます。この分析結果に基づいた採用基準を、応募者の結果と照らし合わせて、入社後に活躍する可能性をSからEの14段階で評価してくれます。性格・能力検査の双方を実施しても30分程度で実施できるため、実施へのハードルが低いのも利点と言えます。

▶︎参考:ミキワメ|公式サイト

ストレングスファインダー

ストレングスファインダーとは、ギャラップ社が提供している才能を可視化できる診断ツールです。ストレングスファインダーから呼称が代わり、クリフトンストレングスが現在の正式名称ですが、長くストレングスファインダーとして愛用されてきたため、今でもストレングスファインダーと呼ぶ人が多いです。

ストレングスファインダーの特長は、その人の才能(資質)を測定する点にあります。現状のスキルや業務上の強みではなく、今後強みになり得る資質・傾向を診断してくれるのです。入社時にストレングスファインダーを受けてもらい、どのような才能を持った人なのかを判断し、チームマネジメントに活かす企業が多いようです。

この診断は、「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0」という書籍を購入することで得られるウェブテストのアクセスコードからも受験することができます。そのため、個人として自身の才能を可視化したいという人は書籍を購入してみてください

▶︎参考:amazon|さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0

 

06人材アセスメントを導入する際の注意点

人材アセスメントの導入する流れを解説しましたが、ここで導入する際の注意点を解説します。

人材アセスメントの目的は社内で共有しておく

人材アセスメントには対象者もそれなりの負担をかけることになるため、不満につながってしまわないよう導入時には社内で目的を共有しておくことが必要です。また、人材アセスメントの結果次第で昇進等が決まるわけではないことも、対象者が不安にならないようにするために共有しておくとよいでしょう。

人材アセスメントだけを頼りに昇進・昇格を判断しない

人材アセスメントは人材の育成や配置に取り入れられることが多いですが、昇進や昇格のための基準としてしまうと、社員が本来の力を発揮できなくなってしまうことも考えられます。あくまでも社員の適性を判断するものにとどめ、別の指標で昇進や昇格の評価をすることをおすすめします。


 

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07まとめ

人材アセスメントは、納得感の高い人事運営を行うためのツールです。正しく活用することで、従業員の能力を的確に把握でき、さまざまな場面で役立てられます。 ぜひ、本記事を参考に、自社が抱える課題や経営方針に沿った信頼のおけるツールを利用して、活用と改善・充実をはかってください。

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組織マネジメントや目標設計、人事評価についてのウェビナーアーカイブです。20年以上、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、書籍、人事塾などによって、企業の人事を支援している、株式会社壺中天の代表である坪谷氏をお招きし、働きがいと成果を同時に実現する人材マネジメントについてお話しを伺います。

  • 登壇者:坪谷 邦生 様
    株式会社壺中天 代表取締役

    立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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