画像処理エンジニア検定とは?難易度や重要性・将来性について解説
画像処理エンジニアは近年ますます注目を集めています。エンジニアのスキル証明はポートフォリオもしくは資格取得が有効ですが、画像処理エンジニアについてはポートフォリオの作成が難しいでしょう。そのため画像処理エンジニア検定を取得してスキルを証明することは非常に有効です。当記事では画像処理エンジニア検定について解説します。
- 01.画像処理エンジニア検定とは?
- 02.画像処理エンジニア検定の難易度
- 03.画像処理エンジニアの活用方法
- 04.画像処理エンジニアの将来性
- 05.まとめ
01画像処理エンジニア検定とは?
画像処理エンジニア検定とは画像情報教育振興協会(略称CG-ARTS協会)が実施する民間資格です。エンジニア向けの資格で画像処理技術を使った開発、設計のスキルを評価する試験です。 日本のものづくりはAI技術により日々進化をしています。画像処理はその進化に必要不可欠な技術であるため、今注目を集めています。検定ではベーシックとエキスパートの2種類の難易度が用意されており、どちらも画像処理において実用的な知識を問う問題内容となっています。
02画像処理エンジニア検定の難易度
前述の通り、画像処理検定エンジニアには難易度別に2つの試験があります。基本的な知識を元に出題されるベーシックと、専門性を問われるエキスパートのそれぞれにおいて出題される内容が異なるので、紹介します。
二つの難易度
画像処理エンジニア検定の難易度はベーシックとエキスパートの2種類です。ベーシックは画像処理における基本的な知識をもっていれば合格を狙えるレベルです。一方エキスパートでは出題範囲が増え、より専門的な知識が必要になるため十分な勉強時間の確保が必要になります。産業や学術分野のさまざまな領域において、一定の条件(開発目標・システム環境・予算・作業工程・コストなど)のもと、ソフトウェアや関連するハードウェア、システムの開発ができる能力が求められます。工業分野、医用、リモートセンシング、ロボットビジョン、交通流計測、バーチャルスタジオ、画像映像系製品などのソフトウェアやシステム、製品などの開発を行うための知識を測ります。
参考:CG-ARTS
公式ホームページ上では試験概要について上記の説明が記載されています。
画像処理エンジニア検定ベーシックの試験概要
画像処理の技術に関する基礎的な理解と、プログラミングなどに知識を利用する能力を測ります。
画像処理の基礎的な知識と合わせてプログラミングについての知識も出題範囲です。 試験は年に2回で7月と11月に開催されます。試験日程は1日のみです。指定の受験会場にて60分間の試験です。問題数は10問で100点中70点以上の獲得で合格となります。 試験範囲は以下の通りです。
出題範囲 | 内容 |
1. ディジタルカメラモデル | ディジタルカメラモデルとビジュアル情報処理の原理を対応づけて理解する知識 ・ディジタルカメラモデルとビジュアル情報処理の原理を対応づけて理解する知識 ・ビジュアル情報処理とディジタルカメラモデル ・座標系とモデリング ・ビジュアル情報処理の幾何学的モデル ・ビジュアル情報処理の光学的モデル ・ディジタル画像 ・画像処理の分類と役割 |
2. 画像の濃淡変換とフィルタリング処理 | 画像の濃淡変換に関する各種処理技術についての基礎的な知識 ・画像の性質を表す諸量 ・画素ごとの濃淡変換 ・領域に基づく濃淡変換(空間フィルタリング) ・そのほかの処理 |
3. 画像の解析 | 画像から情報を抽出するための主要な方法についての基礎的な知識 ・2値画像処理 ・領域分割処理 ・動画像処理 |
4. パターン・特徴の検出とパターン認識 | 画像から特定のパターンや特徴を検出する方法や、対象物をあらかじめ学習し、新たな画像を識別するパターン認識についての基礎的な知識 ・特徴点による画像間のマッチング ・図形の検出 ・パターンの検出 ・パターン認識 ・ニューラルネットと深層学習 |
5. シーンの復元 | 撮影された画像から3次元シーンを復元する処理についての基礎的な知識
・画像と空間の幾何学的関係と3次元復元 ・光学的なシーン復元 |
6. 組織の健康・安全・福祉 | ・労働損失時間数 ・労働災害件数 ・死亡者数 |
7. システムと規格 | 一般的なコンピュータシステム、ビジュアル情報処理、CG専用システム、周辺機器の基礎的な知識 ・CGと画像処理の融合 ・ビジュアル情報処理用ソフトウェア ・リアルタイム3次元CGシステム ・入出力装置 ・画像ファイル形式と記録方式 |
8. 関連知識 | 知覚、知的財産権、情報セキュリティなどについての基礎的な知識 ・知覚 ・知的財産権と情報セキュリティ ビジュアル情報処理の歴史と応用 |
基礎レベルの知識を問う問題が多いですが、エンジニア以外の職種の方にとっては専門用語が多く、難解な内容が含まれています。
画像処理エンジニア検定エキスパートの試験概要
画像処理の技術に関する専門的な理解と、ソフトウェアやハードウェア、システムの開発に知識を応用する能力を測ります。
ベーシックと比べて専門的な知識が必要な上、開発に関する範囲も出題されます。 試験は年に2回でベーシックと同じ日に同じ会場にて行われます。試験時間は80分間の試験で問題数は10問です。こちらも100点中70点以上の獲得で合格です。
出題範囲 | 内容 |
1. ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間 | 画像情報を入力する際の、撮像装置の幾何学的モデルと撮影パラメータ、光学情報のディジタル化、カラー画像を撮影するための方法などについての知識
画像の統計量とそれ以外の特性、人間の視覚特性、色彩を定量的に表す方法、色空間などについての知識 ・ディジタルカメラの構成 ・画像生成の幾何学的モデル ・撮影パラメータ ・画像のディジタル化 ・カラー画像 ・画像の性質を表す諸量 ・人間の視覚 ・表色系と色空間 |
2. 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換 | 明るさやコントラストの変換、カラー情報の交換など画像を画素ごとに変換できることについての知識、平滑化、エッジ抽出、鮮鋭化、モザイク処理などの空間フィルタリングについての知識 ・明るさ・コントラストの変換 ・特殊な効果 ・カラー画像の変換 ・複数の画像の利用 ・空間フィルタリング ・平滑化 ・エッジ抽出 ・鮮鋭化 ・エッジを保存した平滑化 |
3. 周波数領域におけるフィルタリングと画像の復元・生成 | 周波数領域での画像の処理、画像を復元・生成することなどについての知識 ・画像のフーリエ変換 ・周波数フィルタリング ・ローパスフィルタ,ハイパスフィルタ,バンドパスフィルタ ・高域強調フィルタ ・ぼけ・ぶれ画像の復元 ・さまざまな画像復元・生成 ・コンピュテーショナルフォトグラフィ |
4. 幾何学的変換 | 画像の線形変換や幾何学的変換、応用としてのイメージモザイキングなどについての知識 ・線形変換 ・同次座標とアフィン変換・射影変換 ・画像の再標本化と補間 ・イメージモザイキング |
5. 2値画像処理と領域処理 | 2値画像処理や画像の領域特徴量を利用する領域分割処理についての知識 ・2値化 ・2値画像の基本処理と計測 ・線画像のベクトル化 ・領域処理のための特徴量 ・領域分割処理 |
6. パターン・図形・特徴の検出とマッチング、パターン認識、深層学習による画像認識と生成 | パターン・図形・特徴の検出と、マッチングやパターン認識の原理、パターン認識のための特徴選択、深層学習による画像認識と生成などについての知識 ・テンプレートマッチングによるパターンの検出 ・エッジ情報とヒストグラムによるパターン検出 ・特徴点検出 ・特徴点の記述とマッチング ・図形要素検出 ・顕著性マップ ・パターン認識の基本的なアプローチ ・機械学習の概要 ・教師なし学習とクラスタリング ・教師あり学習 ・機械学習による画像認識の応用例 ・ニューラルネットワーク ・深層学習 ・CNNによる画像認識と画像生成 |
7.動画像処理、画像からの3次元復元、光学的解析 | 動画像に対する各種処理や3次元空間情報を取得する手法、シーンの復元などについての知識 ・差分画像を用いた移動物体検出 ・オプティカルフロー ・物体追跡 ・画像と空間の幾何学的関係 ・カメラキャリブレーション ・ステレオビジョン ・アクティブステレオ ・モーション推定と3次元復元 ・光学的解析 ・放射量 ・反射 ・反射成分の分離 ・形状の復元 ・反射特性の復元 ・照明環境の復元 ・形状・反射特性・照明環境すべての復元 |
8. 画像符号化 | 画像の圧縮や符号化などについての知識 ・ 2値画像の符号化 ・グレースケール画像の符号化 ・カラー画像と動画像の符号化方式 |
9. 知的財産権 | 知的財産権についての基本的な知識
・知的財産権 |
上記が試験範囲です。
合格率
一般的な合格率として、画像処理エンジニア検定ベーシックは6割、画像処理エンジニア検定エキスパートは3割程度です。初学者が合格を目指す際には、プログラミングの基礎知識から学ぶ必要があるため、試験範囲以上の内容を勉強する必要があります。参考書や試験対策講座があるため独学でも十分合格は狙えます
画像処理エンジニア検定ベーシック | 画像処理エンジニア検定エキスパート | |
合格率 | 60%程度 | 30%程度 |
勉強時間 | 30時間〜50時間 | 50時間以上 |
03画像処理エンジニアの活用方法
そもそも画像処理エンジニアとはデジタル画像技術の領域に関わる開発や運用を行うエンジニアのことを指します。必要とされる職種や職域は幅広く、現在需要が高まっている仕事の一つです。画像や映像に係る業界や仕事のほかにも印刷、医療、ロボット開発などあらゆる分野において活躍の場があります。 また画像処理にAIを利用することにより多くのデータを集める技術にも注目されています。安全な自動運転の実現には大量のデータを正しく認識させることが重要です。AIに画像データを認識させる分野においても画像処理エンジニアは活躍しています。
参考:CG-ARTS
画像処理エンジニアが活用できる具体的な職種や分野は以下です。
概要 | 具体例 |
1. 活用分野 | ・映像通信 ・コンピュータ周辺機器 ・ロボットビジョン ・製品検査 ・医療応用 ・印刷 |
2. 職種 | ・エンジニア ・プログラマ ・開発 ・研究者 |
3. 役割とスキル | 産業や学術分野のさまざまな領域において、一定の条件(開発目標・システム環境・予算・作業工程・コストなど)のもと、ソフトウェアや関連するハードウェア、システムの開発ができる能力が求められます。 |
04画像処理エンジニアの将来性
画像処理エンジニアは将来より需要が高まると言われています。AI技術が進化する際に必要なスキルであり、今後あらゆる産業においてAIが浸透していくと考えられているためです。そもそも画像処理エンジニア検定の前身は1993年に設立された画像情報技能検定です。その後2005年には民間資格に変わり2010年には級位が廃止され現在の形態となっています。今の試験体制になってからも試験内容は年々変化しています。AI技術の進化は早く、新しい技術への対応が求められるからです。そのため、資格試験取得後も継続的な情報収集と勉強は欠かせないでしょう。
画像処理エンジニアは希少で年収が高い
画像処理エンジニアの年収相場は約519万円です。平均年収と比べて高い水準を維持しています。
しかし、画像処理エンジニアは基本的な開発スキルや専門言語を習得していることが多い職種です。画像処理の技術をほかのプログラミング言語や既存のスキルと組み合わせることでより希少性が高くなり、年収増も期待できるでしょう。
参考:fabcrossエンジニア
将来的にも需要は望める仕事
今後需要は一層高まると予測されています。特にディープラーニング活用型画像処理ソフトウェアの市場は2018年で約30億円でしたが、2022年には204億円に達すると考えられています。
参考:株式会社富士経済
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・自己啓発への活用方法 など
05まとめ
エンジニアの検定は数多くありますが、そのなかでも画像処理検定は注目度の高い資格です。エンジニア以外の職種の方には馴染みの薄い資格ではありますが確実に需要は高まっています。今後より重要性が高まってくると予測されるため、早めに取得するのに越したことはないでしょう。これを機に検討してみてはいかがでしょうか。