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ニューロダイバーシティとは?世界で議論される多様性と雇用問題について解説

公開日:2021/09/10
更新日:2021/09/10
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ニューロダイバーシティとは?世界で議論される多様性と雇用問題について解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

ダイバーシティという言葉を昨今よく耳にします。IT技術の進歩により今では世界中の人とコミュニケーションが容易になり、多様な人材活用が当たり前の時代になりました。そんななかにあって、ニューロダイバーシティは多様性を受け入れる考え方の一つです。しかし、ニューロダイバーシティを後押しする考えは決して差別を無くすためだけではありません。企業の成長において必要だからニューロダイバーシティの思想を取り入れているというケースも多いのです。当記事ではニューロダイバーシティについて解説します。

 

ニューロダイバーシティとは?

ニューロダイバーシティとは教育や障害に対するアプローチであり、考え方の一種です。神経学を表すニューロロジカルと多様性を表すダイバーシティが合わさってできた言葉です。ジェンダー、民族、性的思考、障害などの神経学的差異を認識し、多様性として尊重すべきという考え方を指します。 対になる言葉として「ニューロノーマル」という言葉があります。これは健常者を「普通」として、健常者のみを社会活動の対象とする考え方です。かつては学校教育や企業の人事においてニューロノーマルの思考が蔓延していました。学校教育は健常者を対象とした教育プログラムが組まれています。企業の人事においても自閉症やADHDなどの神経疾患をもった人は採用に至らなかったでしょう。 しかし、現在シリコンバレーなどでは発達障害やADHDの人材も採用されています。コミュニケーションが苦手だとしても特定の優れた能力をもつ場合があるためです。

 

ニューロダイバーシティが注目される背景

ニューロダイバーシティの考え方は論争の的となっています。そもそも神経学的に差異があるとはなんなのか、その差異は直してはいけないのか、など反論は多くあります。差別につながる非常に繊細な問題であることは確かです。しかし、過去障害を理由に差別されてきた人々にチャンスを与える社会が広がっていることは確かです。 ではなぜニューロダイバーシティが注目されるようになったのでしょうか。

多様化する社会

ニューロダイバーシティに限らず、あらゆるところでダイバーシティが、つまり多様性が注目されています。国籍、人種、宗教、性別、年齢などの多様な人材を活かした雇用は1990年代のアメリカで生まれた考えです。 日本においてもかつては性別による差別が横行していました。現代においても課題点は残るものの差別は少なくなっていることは確かです。 そして顧客のニーズも多様化し国際化した現代において、多様性を認めないことは企業の成長をストップさせることと同義です。合わせて労働人口の減少や働き手の価値観の変化なども大きな要因と言えるでしょう。

アクサ生命における啓発活動

日本では2020年4月2日にアクサ生命がニューロダイバーシティの概念を社内外に啓発する活動を開始しました。2020年4月2日は国連自閉症啓発デーならびに厚生労働省による発達障害啓発週間でした。アクサ生命はそれ以前も女性や障害者、LGBTQ+、国籍など多様な人材を受け入れ、自分らしく働ける企業文化の醸成と環境の整備に努めてきました。2019年には自閉症や発達障害の方及び家族の方への相談会やセミナーを開始しています。 “アクサ生命は、AXA が掲げるバリューに基づき、4 つのコミットメント「お客さま第一」、「誠実」、「勇気」、「ひとつのチーム」を社員一人ひとりの行動指針として掲げています。その中の「ひとつのチーム」では、多様性を柔軟に受け入れ、あたりまえに混ざり合って働き、多様化する社会やお客さまの要請に迅速にお応えするために切磋琢磨することが謳われています。
参考:アクサ生命Press release

先陣を切ったのはマイクロソフト社

自閉症の労働者は高い集中力と分析的思考能力をもっていてIT能力が高いことが多いと言われています。AI開発に必要な反復作業に長時間取り組んだり、論理的推論を活かしてAIモデルの開発やテストに取り組むことに優れています。 そもそもモーツァルトやアインシュタイン、トーマス・エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの偉人たちは、現代であれば自閉症と診断されていたであろうといわれることもあります。そして、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏も自閉症的な傾向があるといわれていました。 高い生産性をもつことが証明されたことに合わせてAI関連の需要が高まったこともあり、マイクロソフトは人材に関する考え方を改めたのです。いまではIBMやHPE、デル・テクノロジーズなども採用をしています。

 

ニューロダイバーシティを企業運営に活用する

ニューロダイバーシティはビジネスのみではなく社会全体で広がっている考え方です。しかし、ここ最近でビジネス用語として注目を浴びているのは、ニューロダイバーシティには企業運営にプラスの効果をもたらすメリットが知られはじめたことが理由にあります。 差別をなくすためではなく、そもそも企業が生産性向上のためにニューロダイバーシティ人材を求めているのです。

ニューロダイバーシティ人材による生産性の向上

ハーバード・ビジネス・レビューの論文によるとハードウェアの製造・開発を行うHPEはニューロダイバーシティ人材がいるチームを構成したことで、ほかのチームより30%高い結果を出しました。またIT業界にとどまらず国際会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングも2019年8月までに約80人雇用しています。ウォールストリートジャーナルによると、その結果ニューロダイバーシティ人材を含めたチームが開発したアルゴリズムによって月間200件の契約を組成し、労働時間の削減にも貢献しました。 日本においても同様です。ヤフー株式会社は発達障害者雇用を始めました。採用した発達障害者の9割がアプリテスターとして働いています。発達障害のあるテスターは実直に成果を出しつづけ、誰も想定できなかったようなバグを発見するなど活躍しています。グリービジネスオペレーションズ株式会社においても発達障害者の雇用は進んでいます。ゲーム事業においてゲームのチェックやテスト画像加工などクリエイティブな業務においても活躍しています。
参考:日本型ニューロダイバーシティマネジメントによる企業価値向上(後編)

ニューロダイバーシティ人材には優れた人材がいる

ニューロダイバーシティ人材が優れている点は、前述のような高い集中力だけではありません。例えば自閉症の人の多くはパターン志向があり、細部までこだわる正確をもっています。また脅威に気づく能力にも長けており、自動化されたツールが見逃してしまうような脅威にも気づくことができます。興味がある分野へのこだわりが顕著なのです。 注意欠如・多動症であるADHDの人にも特徴があります。ADHDの人は発想力に富んでいてさまざまなアイディアが豊富に思い浮かぶ人が多いのです。好奇心旺盛で新しいことにもチャレンジし、決断力も早い傾向にあります。細かい作業のミスが多いなどの欠点もありますが、それは人員配置を工夫すれば回避できます。特性を活かして適材適所の配置をすればニューロダイバーシティ人材は立派な戦力となるのです。

 

日本企業におけるニューロダイバーシティの現状

海外に比べて日本ではまだニューロダイバーシティはあまり浸透してはいません。ニューロダイバーシティに限らずダイバーシティの推進自体遅れを取っているといえるでしょう。2020年に発表されたジェンダーギャップ指数において日本は156か国中120位で世界的にみても男女格差があります。世界最大規模の企業ネットワーク組織The Valuable 500(V500)内では障害者インクルージョンにコミットするCEOを500人募っているなか、日本の参加は40社程度です。また障害者雇用への取り組みを評価する指標であるDEIではトップスコアリング企業205社のうち国内企業は2社のみとなっています。 2019年に日本財団が実施したインターネット調査によると95.9%が社会的マイノリティに心の壁を意識していると回答しています。
参考:日本財団ダイバーシティ&インクルージョンに関する意識調査

障害者雇用率の引き上げ

日本においてダイバーシティはまだ浸透していません。アメリカのIT企業のように率先して障害者を採用し、活用しようという動きは少ないでしょう。そのため日本では法律で障害者雇用率を設けています。2021年3月31日に障害者の法定雇用率が2.3%に引き上げられました。障害者の法定雇用率は従業員を43.5人以上雇用している事業主に適用されます。現状の2.3%だと43.5人の従業員を雇用している雇用主は障害者を最低1人以上雇用しなければなりません。 また、企業に勤める障害者は特別扱いされているケースも少なくありません。現在日本における障害者の平均給料は約14.6万円と非常に低い水準です。
参考:厚生労働省障害者雇用実態調査

健常者と異なる業務に就くケースもあり、労働条件は決して平等とはいえないでしょう。 そして障害者の法定雇用率を達成している企業は45.9%のみです。情報・通信業に限っては25.4%しかありません。
参考:厚労省による平成30年の障碍者雇用状況の集計結果

 

就労移行支援事業所の活性化

就労移行支援事業所は障害者に企業への就職サポートをするための福祉サービスです。全国に約3300箇所あります。職業訓練や就職活動のサポートを受けることができ、障害者の就職を後押ししている国の施策です。 以上のように日本においては障害者は国がサポートして企業に就職するように後押しをしている状態です。企業においても障害者雇用率を守るために障害者を採用するケースもあるでしょう。ニューロダイバーシティ人材を適材適所で活用していくという発想はまだ定着していないのが現状です。

 

未来の雇用

ニューロダイバーシティに限らず、今後雇用は変化していくと考えられています。AIの進歩により既存の業務のなかでなくなる業務があるでしょう。また新たに増える業務も出てきます。今必要とされている能力は未来では必要ではなくなり、まったく別の能力が必要になることも考えられます。そして、日本では少子高齢化と人口減少が加速的に進行します。多様な人材を受け入れないと成り立たなくなる未来が、すぐそこまで迫っているのです。

日本は世界と比べて遅れている

前述のように日本はダイバーシティという面で遅れを取っています。また日本の雇用の特徴であった終身雇用、年功序列という特徴は世界からみても珍しく、その環境で育った日本人は競争力が乏しい傾向にあります。 2019年4月1日から特定技能という新しい在留資格制度が始まりました。しかし、この制度は単純な労働力の確保以上の効果を発揮しないという反論もあります。飲食業や農業・建設業など労働集約型のビジネスに重きをおいており、高度な技術者の門戸は狭いままです。海外からの優秀な人材を受け入れる、もしくは教育する体制が整っていない日本はグローバル人材を迎え入れているアメリカ企業と比べて遅れてるといえるでしょう。

野村総合研究所の研究結果で明らかになった損失

2021年3月野村総合研究所は発達障害者が日本で未活躍であることの損失額を2兆3000億円と推計する調査結果を発表しました。日本で発達障害と診断された人は全部で48万人です。診断を受けていない人を合わせると人数はもっと大きくなるでしょう。
参考:NRIデジタル社会における発達障害人材のさらなる活躍機会とその経済的インパクト

上記のレポートにおいて野村総合研究所は少子高齢化や産業構造の変化などの動向を踏まえて、人材の確保のために発達障害人材の活躍機会を増やしていくことを提案しています。

ニューロダイバーシティの可能性

ニューロダイバーシティとは神経学的差異を認めた上での適材適所の人材活用につながります。それは決して障害者といわれる人達だけに向けた考えではありません。考え方の違い、思考のスピードや癖、得意分野や不得意分野など脳の多様性を受け入れる社会ができ上がれば、誰もが自分の得意分野に集中する社会に近づくでしょう。 社会全体の生産性の向上につながる可能性を秘めている考え方です。

 

まとめ

ニューロダイバーシティは差別をなくすという道徳的思想を超え、経済的な実利益のためにも注目されています。差別をなくすためではなく、その能力が必要だからという理由で障害者が雇用されることに意味があります。また前述のとおり脳の違いはなにも障害者だけではありません。我々皆、脳に違いをもっていて得意不得意、好き嫌いなど志向に違いがあります。人材活用に向けてぜひ一度、ニューロダイバーシティーの考え方に触れてみてはいかがでしょうか。

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