LXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)とは?LMSとの違いやメリットやデメリット、導入の手順をご紹介
複雑化し変化の激しい現代社会において、従業員のスキルアップに課題を抱える企業が増えています。そのような中で、LXPという新しい学習ツールが注目を集めています。LXPとはどのようなツールなのか、メリットやデメリット、効果的に活用するポイントをご紹介します。
- 01.LXPとは?
- 02.LXPのメリット
- 03.LXPのデメリット
- 04.LXPをより効果的に活用するためのポイント
- 05.LXPを導入する手順
- 06.LXPの導入事例
- 07.LXPとLMSではどちらが必要か
- 08.まとめ
01LXPとは?
LXPとは、「Learning Experience Platform」の略称で「学習体験プラットフォーム」と訳されます。これは、AIやテクノロジーを駆使し、受講者個々の課題やニーズに応じて、学習内容がパーソナライズされ、最適な学習プログラムを提供できるツールです。。 LXPを活用することで、研修に関する社内コンテンツや外部コンテンツなどを整備し、必要に応じて従業員単位で表示項目をカスタマイズできるため、効率よく学習を進めさせることができます。 受講者単位で学習内容が最適化されることで学習効率が上がったり、直感的で使いやすいUIであることなどから、導入する企業が増えています。
LMSとの違い
LXPとよく似たツールに「LMS」というものがあります。LMSは、「Learning Management System」の略称であり、「学習管理システム」と訳されます。これは、学習を管理するためのツールであり、学習教材の管理や受講者の成績管理、課題の進捗管理などを行うことができます。 LMSが従業員の学習全般を管理するためのツールであるのに対し、LXPは従業員の学習体験の効率化や、最適化を目的としたツールであるという点が異なります。新入社員研修やコンプライアンス研修など、全従業員に対して共通で必要な研修はLMSの方が適しています。 また、両者の用途は異なるため、併用されるケースも多いです。
02LXPのメリット
企業がLXPを活用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下の 3つのメリットをご紹介します。
- 1:従業員一人ひとりに必要な研修を提供できる
- 2:企業課題に応じて研修内容をカスタマイズできる
- 3:受講者のモチベーションが向上する
1.従業員一人ひとりに必要な研修を提供できる
まずメリットとして挙げられるのが、従業員一人ひとりの課題やニーズに応じて、最適な研修内容を自動で提案してくれることです。 LXPでは、AIを活用することで、従業員のデータや過去の研修結果などから、その人に必要な研修を提案してくれます。さらに、単一の研修を表示するだけでなく、必要なスキルを身につけるためには、どういった順序でどの研修を受講したら良いかまで提示してくれます。 これにより、受講者は最適化された提案に沿って研修を受けることで、最短距離で自分に必要なスキルを身につけることができます。
2.企業課題に応じて研修内容をカスタマイズできる
また、LXPでは豊富な研修内容から自社の課題に即した研修を選択して、実装することができます。 営業力に課題のある企業は営業関連の研修を重点的に、マネジメントスキルに課題のある企業はマネジメント関係の研修を、それぞれ重点的に実装できます。 自社の課題に応じて研修内容をカスタマイズすることで、最適な研修内容を取捨選択できるため、効率よく従業員のスキルを高めることができます。 さらに、重点的に特定分野の研修を実装することで、自社の強みを伸ばすことや、弱点の強化を行うこともできます。
3.受講者のモチベーションが向上する
LXPを活用することで、受講者は自分の弱点を克服できる研修や、強みを強化するための研修を選ぶことができるため、学習のモチベーションが向上します。全従業員に対して画一的に行われる研修は、従業員にとってなかなか意欲的に取り組みづらいことも少なくありませんが、自ら選択して学ぶことができるため、学習意欲の向上にも繋がります。 また、LXPに搭載されている学習コンテンツは数分単位の短い動画教材が多く、従業員は通勤時や就寝前など空いた時間で、効果的に学習することができます。高いモチベーションを持って、効率的に学習に取り組むことで、スキルアップのスピードも加速していきます。
03LXPのデメリット
企業がLXPを活用する上で、どのようなデメリットがあるのでしょうか。 以下の3つのデメリットをご紹介します。
- 1:コストがかかってしまう
- 2:管理業務の負担が増える
- 3:制度面の整備が必要
1.コストがかかってしまう
LXPは、最新の学習体験プラットフォームであり機能も豊富な一方で、無料で使えるものは少なく、従業員の数によってはコストが膨らんでしまうデメリットもあります。 その場合は、全従業員に対してLXPを提供するのではなく、自社の中で注力して成長させたい部門や人員に絞ってツールを提供することも重要です。スモールスタートで導入し、成果が見えた段階で少しずつ導入の範囲を広げるという方法が効果的です。
2.管理業務の負担が増える
LXPは、活用する側にとってのメリットは大きいものの、管理する側にとっては使い方のガイダンスや、研修内容の整備など管理業務が増え、負担が増加してしまうデメリットもあります。 管理者だけに負担を押し付けるのではなく、全社的に導入を支援し、利用者も自ら使い方を学ぶなど、管理者の負担を減らすようにすることが大切です。
3.制度面の整備が必要
LXPの導入に際して、組織全体での制度面の整備は必要不可欠です。個人情報の取り扱いやデータセキュリティなど、法令を遵守するための体制を整え、LXPの利用に関するポリシーやガイドラインを制定し、従業員に周知徹底する必要があります。
また、LXPでの学習成果をどのように評価するか、評価基準や方法を見直す必要もあるでしょう。学習の進捗状況や成果を評価するための具体的な基準を設定し、学習成果に対するフィードバックを適時に提供し、従業員の成長を促進していきます。より学習意欲を高めるために、評価に基づく報酬や昇進の仕組みを整えていくことも必要不可欠です。
04LXPをより効果的に活用するためのポイント
LXPを効果的に活用するために重要な以下の3つのポイントをご紹介します。
- 1:常に最新の情報を掲載する
- 2:従業員の学習状況を管理し分析する
- 3:可能な限り実務と繋げる
1.常に最新の情報を掲載する
LXPはクラウドシステムを搭載しているため、研修内容が常にアップデートされています。 そのため、管理者は古くなって効果が薄い研修はシステムから除外し、最新の効果が高い研修内容を追加していく必要があります。 業界のトレンドや、仕事に関わるスキルは日々アップデートされているため、古い情報のまま研修を続けることは非効率的です。学習効率を高め、実践に即した知識やノウハウを身につけるためにも、最新の情報を掲載するようにしましょう。
2.従業員の学習状況を管理し分析する
LXPでは、従業員の学習状況を管理することもできます。 従業員の多くが利用している研修はどのようなものなのかを分析することで、自社の隠れた課題の発見に繋がります。 その場合は研修項目を追加したり、外部から講師を招いて重点的に研修を行うことも効果的です。 また、部署単位などの使用状況も把握することができるため、使用状況の悪い部署に対しては、もっと活用するように助言をしたり、頻繁に活用している部署の例を共有したりすることで、社内全体の利用状況を改善し、全社的なパフォーマンスの向上に繋がります。
3.可能な限り実務と繋げる
研修で学んだ知識は、実務に活かすことができてはじめて価値を発揮します。 学んだだけで活用できなくては意味がないため、可能な限り実務に繋げていきましょう。 特定の研修を受講した従業員同士でCCT(Concept Clarification Test)を行うことで理解度の向上に繋がります。 CCTとは、ディスカッション形式で研修などの振り返り学習を行うことで、理解度を高める技法です。 また、効果的にLXPを活用し、実務に活かすことができた事例を社内で共有することも、非常に効果的です。
05LXPを導入する手順
LXPを社内に導入する際には、どのような手順があるのでしょうか。以下の 4つの手順をご紹介します。
- 1:必要な研修項目を選定する
- 2:ガイドラインを整備する
- 3:各部門長を通して従業員へ周知させる
- 4:定期的に効果検証を行う
1.必要な研修項目を選定する
LXPでは研修内容を取捨選択できるため、事前に自社にとって必要な項目を策定する必要があります。 AIによってある程度自動で学習内容を提案してくれますが、会社に必要のない研修が含まれることもあります。 真に自社にとって必要な研修項目は何があるのかを選定し、LXPに実装しましょう。
2.ガイドラインを整備する
LXPのような新しいツールを社内に導入する際は、ガイドラインの整備が非常に大切です。 導入しても従業員が使い方を理解できず、活用されなければコストだけがかかってしまいます。 ガイドラインを整備し、使い方をわかりやすく従業員が理解できて初めて社内で普及していくため、ガイドラインの整備には力を入れる必要があります。 使い方の説明会を開催したり、使い方に関する動画説明を作成することで、使い方を広めましょう。
3.各部門長を通して従業員へ周知させる
人によっては新しいツールに対して抵抗感を示し、なかなか利用しないということもあります。 そこで、各部門長を通して従業員に対して、LXPを活用するメリットや、どのような目的があって導入しているかを周知させましょう。 自分にとってメリットがあると判断できれば、普及が進んでいきます。 また、部門長自らが活用する姿を見せることも大切なため、積極的に活用していきましょう。
4.定期的に効果検証を行う
LXPは導入後、どのような成果が出ているのか効果検証することも大切です。 実際に業務効率の改善や、営業成績の向上などの成果が見えている場合は、引き続き積極的に運用していましょう。一方で、あまり成果につながっていない場合は、導入方法や活用方法を見直したり、場合によってはツールを廃止することも検討しましょう。 コストがかかっているため、成果が出ない状況で使い続けることはコストの無駄になります。
06LXPの導入事例
LXPはビジネス誌「フォーチュン」が選ぶ急成長企業100社のうち、40%近くが活用するなど、海外での普及が進んでいます。では、具体的にどのような形で導入されているのでしょうか。ここでは、実際の企業事例を交えて解説していきます。
株式会社日立アカデミー
日立アカデミーのLXPは、社員のアップスキリングやリスキリングをサポートし、日立のジョブ型人財マネジメントを加速させるため、LXP「Degreed(ディグリード)」が導入されました。LXPを活用して、個々の学習ニーズに応じたコンテンツを適切なタイミングで提供し、社員が自分のキャリアを主体的に築くことを支援しています。
また、学習履歴の共有やフォロー機能により、社員間の学習交流を促進し、組織全体の知識向上を目指しています。加えて、時間的な制約もないため、社内で承認をとるプロセスが発生せず、空いた時間に気軽に学ぶことができるといった評価を得られています。
Airbnb, Inc.
民泊の予約を行えるアプリ「Airbnb」を運営するAirbnbでは、国や地域の規制、競合ホテル企業と向き合い、他のオンライン旅行サービスといった競争に打ち勝つために、適切な人材育成を行う目的で新しく昇進した新任マネージャーに対して、スキルを高成長させるために、LXP「Degreed(ディグリード)」を導入。マネージャーとしてのふるまいを6つのコアとしたラーニングエクスペリエンス「Amplifyプログラム」を作成し、メンバーのオンボーディングやリスキリング、スキル開発といった形でマネージャー陣に利用されています。これまで利用していたLMSの9倍のメンバーに活用されており、学習コストとその価値をビジネス視点で数値化した場合、一人当たりの学習コストが少なくなるという効果も得られています。
07LXPとLMSではどちらが必要か
LXPとLMSはそれぞれ役割や目的が異なるため、一概にどちらが必要かを判断することはできません。企業にとっての課題も様々であるため、従業員の学習管理に課題がある場合はLMSが適していますし、学習効率に課題がある場合はLXPが適しています。 どちらか一方を選択するのでは無く、必要に応じて使い分けることが重要です。
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08まとめ
従業員一人ひとりの課題は異なり、スキルアップのための研修は日々アップデートされているため、学習効率を最適化するためにも、従業員それぞれに適した最新の研修内容を提供する必要があります。 LXPを活用することで、従業員の学習効率が向上し、会社全体のパフォーマンス向上にもつながるため、積極的に導入していきましょう。