ジュニアボード制度の目的とは?メリットや進め方を導入事例とともに解説

若手や中堅社員の育成方法として「ジュニアボード制度」が注目されています。経営への参画意識を高め、次世代リーダーを育成することは、企業にとって重要課題の一つです。本記事では、ジュニアボード制度の目的やメリット、進め方について導入事例とともに解説します。
- 01.ジュニアボード制度の概要
- 02.ジュニアボード制度の目的
- 03.ジュニアボード制度のメリット
- 04.ジュニアボード制度の進め方
- 05.ジュニアボード制度を導入する際の注意点
- 06.ジュニアボード制度の導入事例
- 07.経営者視点の育成ならSchoo for business
- 08.まとめ
01ジュニアボード制度の概要
ジュニアボード制度は、比較的歴史の古い人材育成手法の一つです。まず、ジュニアボード制度の意味と歴史について解説します。
若手や中堅社員で構成される「疑似役員会」のこと
ジュニアボード制度とは、若手や中堅社員で構成される「疑似役員会」のことです。本来の役員会とは別に開催されますが、従業員の視点で経営課題の調査や検討、解決策の提案などが行われます。 経営に接する機会の少ない若手や中堅社員は、ジュニアボード制度を通じて自社の課題を考えることで、経営への参画意識が高まると考えられます。また、斬新なアイディアが企業の課題解決の糸口となることも期待されます。
1932年にアメリカのマコーミック社が考案
ジュニアボード制度は、1932年にアメリカの大手香辛料メーカーのマコーミック(McCormick)社が考案したと言われています。36歳で社長に就任したC.P.マコーミック氏は、社員の意見を経営に反映することを目的とし、本来の役員会とは別に、社員が参加する疑似役員会や各種委員会を設置しました。 この経営スタイルは「複合経営制(Multiple Management)」、疑似役員会は「ジュニアボード(Junior Board of Directors)」と呼ばれました。日本国内においても衛生用品メーカー大手のユニ・チャーム株式会社などが導入したことで知られています。
02ジュニアボード制度の目的
ジュニアボード制度の目的は大きく2つあります。
次世代の経営人材の育成
ジュニアボード制度は、次世代の経営人材の育成を目的として行われることがあります。経営人材に求められる能力には、経営課題の分析、経営戦略の策定、会社経営を総合的に見たうえでの意思決定などが含まれます。 これらの能力は、一般社員の通常業務では身につきにくいため、ジュニアボード制度を活用して、若手や中堅社員に能力開発の機会を与えることができます。特に、後継者不足が課題となっている多くの企業にとって大きな効果が期待できる制度だと言えるでしょう。
若手や中堅社員の意見を経営に反映
またジュニアボード制度には、若手や中堅社員の意見を経営に反映させる目的もあります。企業によっては、経営層の保守的な思考が課題となり、革新的な取り組みに乗り出せないケースが少なくありません。また、経営層と現場の間の認識や意識が食い違うことで、組織として一体感に欠けてしまう場合もあります。 そこで、ジュニアボード制度を活用して、新鮮で斬新かつ現場目線のアイディアを経営に取り入れることが可能になるのです。
03ジュニアボード制度のメリット
ジュニアボード制度を導入することで、社員や企業に大きなメリットがもたらされます。ここでは、ジュニアボード制度のメリットを3つ紹介します。
社員の意識が高まる
ジュニアボード制度の導入がもたらすメリットとして、まず挙げられるのが社員の意識が高まることです。通常の業務では、目先の目標達成や、自身の業務遂行能力に注意が向きやすい傾向にありますが、ジュニアボード制度に参加することで、企業全体の業務を広い視野で見れるようになります。 そして、ジュニアボード制度に参加した後も、自身が担当する業務の役割や意義を理解することが、モチベーション向上に繋がると考えられます。また、自身や他の若手社員のアイディアが採用される過程を見ることができ、自身も会社の一員であることが実感できるでしょう。
社内コミュニケーションの活発化に繋がる
次に挙げられるメリットが、社内コミュニケーションの促進です。ジュニアボード制度では、普段交流する機会が少ない、若手または中堅社員と経営層とのコミュニケーションが活発に行われます。また、部署や部門の異なる社員同士が意見交換を行うため、通常業務では実現することの少ない、縦と横のコミュニケーションが活発化します。 こうして、風通しの良い職場環境が生まれると、社員の満足度も向上すると期待できます。また、社員一人ひとりの意見や気づき、アイディアが積極的に発信されるようになり、質の高い提案が生産性向上や業務効率化に繋がることも考えられます。
経営課題を再確認できる
若手社員や中堅社員に、自社が抱える経営課題を改めて認識させることもこの制度のメリットであると考えられます。ジュニアボードのメンバーは、社内の経営課題の原因や解決策を話し合い、経営層と共有します。このプロセスを通して、経営層は、すぐに解決すべき経営課題を再確認できるでしょう。また、メンバーたちも企業全体の課題を経営目線で見るため、会社の取り組みに協力的になることも期待できます。
04ジュニアボード制度の進め方
ここでは、ジュニアボード制度の進め方を、4つのステップで解説します。
メンバーを選定する
メンバーが決定したら、次に経営課題を選出します。経営層との話し合いで経営課題を共に考えることもできますが、はじめに大まかな経営課題を決めておくこともできるでしょう。経営課題として提案できるテーマには以下のようなものがあります。
- ・新規事業の展開
- ・新商品の開発
- ・新規顧客の開拓
- ・社風や組織構造の見直し
- ・経営方針の見直し
大まかな経営課題の中から、経営層とメンバーの双方が取り組めるテーマを話し合いにより決めていきます。
提案を検討し実施する
経営課題が決まったら、提案を検討するための調査や分析を行う時間を与えます。そして、月に1回程度のミーティングで、調査や分析結果に基づいて課題への解決策についての討議を行いつつ提案を検討します。経営層は、ジュニアボードで出た提案を聞き、意見を述べます。そして最終的に、役員会はジュニアボードの提案の承認をするか否かを決定します。
プロジェクトを立ち上げる
ジュニアボード制度で承認された提案があれば、プロジェクトチームを立ち上げ、実際に課題解決に向けての活動を開始します。提案内容を社内で共有し、企業全体での取り組みであることをアピールしましょう。ジュニアボード制度の成果を公表することで、他の社員の経営への参画意識も高めることができると考えられるでしょう。
05ジュニアボード制度を導入する際の注意点
ジュニアボード制度を導入する際の注意点として、以下の2つのポイントを解説します。
継続的に取り組む必要がある
ジュニアボード制度は、半年から2年ほどの長い年月を要する長期的な施策です。また、一度に参加できるメンバーの数も限られており、提案の承認ができない場合も考えられます。そのため、効果が得られないと感じて、短期間でやめてしまうケースもあるようです。 社員の意識改革には時間がかかるため、ジュニアボード制度の効果を得るには、長期的に取り組む必要があります。そのためにも、経営層には、継続的に取り組む意思や決意が求められるでしょう。
突飛なアイディアにも積極的な姿勢を見せる
ジュニアボード制度で提出される提案には、突飛だと思われるアイディアも少なくありません。しかし、突飛で斬新なアイディアが、課題解決の糸口になる可能性もあるため、粘り強く積極的な姿勢で社員の意見を受け入れる必要があります。 また、意見に対する返答や態度にも気をつけましょう。経営層のネガティブな反応は、メンバーのモチベーションを低下させる原因にもなるため、提案が承認できない場合でも、良く調査や分析をしてくれたことに感謝するなど、そこに至るまでのプロセスに評価できる部分があるかを探しましょう。
06ジュニアボード制度の導入事例
最後に、ジュニアボード制度の導入事例として以下の3社を紹介します。
株式会社日本総合研究所
若手と中堅社員の問題意識を吸い上げ、企業改革を行うことを目的とし、ジュニアボード制度を2004年に導入したのが株式会社日本綜合研究所です。自薦と事業部長推薦でメンバーを募集し、論文と社長面談を経て30代の中堅社員10名が選出されました。1年間の任期中に、具体的な2つのテーマへの落とし込みが行われ、最終的には具体的なアクションプランを作成するに至りました。そして、ジュニアボードメンバーの4名が、新設部署へと異動し当該テーマを担当することになりました。
株式会社ベネフィット・ワン
株式会社ベネフィット・ワンでは、2005年度からジュニアボード制度を導入し、任期を1年として毎年実施しています。若手社員を約10名抜擢し、社長直轄で経営課題に取り組みます。トップとの意見交換や情報共有により、「発想力」「経営感覚」を養成しており、具体的なプロジェクトの推進にも繋がっています。2008年度には、社員の繋がりを強化するために、ジュニアボード主導の社内報の発行が行われています。
株式会社パソナグループ
若手育成のためのコミュニケーションの場として、ジュニアボード制度を活用しています。全国から10数名のメンバーが選出され、1年間の任期で具体的にプロジェクトを推進します。月に1回、社長を中心に意見交換や情報交換を行い、仕事へ取り組む姿勢の変革や、経営層と現場を繋ぐ役割を果たしています。
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08まとめ
ジュニアボード制度の概要や目的、メリットや進め方を導入事例とともにまとめました。後継者不足が叫ばれる昨今、企業にとって経営人材の育成は優先すべき課題であると言えます。ジュニアボード制度は、経営人材の育成に加えて、経営課題の解決に向けた斬新なアイディアを生み出すことも可能にする施策として、多くの企業で効果を発揮しています。
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登壇者:高木 一史 様サイボウズ人事本部 兼 チームワーク総研所属
東京大学教育学部卒業後、2016年トヨタ自動車株式会社に新卒入社。人事部にて労務(国内給与)、全社コミュニケーション促進施策の企画・運用を経験後、2019年サイボウズ株式会社に入社。主に人事制度、研修の企画・運用を担当し、そこで得た知見をチームワーク総研で発信している。