BPRとは?導入するメリットや一般的な5つのステップについて解説
業務そのものだけでなく、組織構造を根本から再構築するBPRが注目されています。BPRの導入により、政府が推進する「働き方改革」への取り組みを成功させている企業もあります。本記事では、BPRを導入するメリットや一般的な5つのステップを企業事例とともに解説します。
- 01.BPRとは
- 02.BPRが注目されるようになった背景
- 03.BPRを導入することのメリット
- 04.BPRを進める際の一般的な5つのステップ
- 05.BPRの手法
- 06.BPRを成功させるための注意点
- 07.BPRを導入した企業事例
- 08.BPRの学習ならSchoo for Business
- 09.まとめ
01BPRとは
まず、BPRの概要と4つのキーワード、業務改善との相違点を解説します。
BPRとは業務改革のこと
BPRとは「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」の略で、業務改革の手法を指します。この手法は、1993年に刊行されたマイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピ―の「リエンジニアリング革命」で注目されるようになりました。本書によるとBPRの定義は以下の通りです。 「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」 多くの企業が導入するBPRは国の行政機関も導入すべきであるという見解から、「三菱UFJリサーチ&コンサルティングは上記の情報に加えて企業や自治体の導入事例の研究発表をしています。このことから、組織改革においてBPRは効果的かつ注目すべき手法の一つであることがわかります。
BPRの定義の4つのキーワード
BPRの定義から、「根本的」「抜本的」「劇的」「プロセス」の4つのキーワードを抜き取ることができます。ここでは、それぞれのキーワードの意味を解説します。
根本的
根本的とは、現在なぜそれを行っているのか、なぜその方法なのか、根本から問いかけることです。流れの中で何となくその業務を行っているかもしれませんが、組織にとってどのような意味があるのかを見直すきっかけとなります。
抜本的
抜本的とは、古いものを捨ててしまうことです。既存のものに手を加えるなど、表面的な変革を行うことはありません。業務の中には、「今までもそうしてきた」「慣れていて仕事がしやすい」など、なぜそれが今必要なのか説明できない業務や組織構造が存在します。これを変革するのが抜本的の意味合いです。
劇的
劇的とは、小さな改善や漸進的な改善のことではなく、大胆な改革をすることです。現行の仕組みやプロセスを考慮して、そこを見直すのではなく、ゼロからやり直すのがBPRのキーワードです。劇的な飛躍を目指すことで、大きな成果が得られるという考え方です。
プロセス
ビジネスプロセスを複数インプットして、顧客に価値のあるアウトプットを生み出します。プロセスに関係する組織の見直し、企業理念の変更を行うこともあり、こうして最善のプロセスを選ぶようにします。
業務改善との違い
BPR(業務改革)と業務改善には、特徴と動き方に相違点があります。BPRの特徴や、企業におけるプロセス全体の見直しが行われますが、業務改善は、部分的に改善して業務を効率化させるのが目的です。また、BPRの動き方は一気に大きく劇的な改善を目指しますが、業務改善は漸進的な取り組みを行います。
02BPRが注目されるようになった背景
ここでは、BPRが注目されるようになった背景を、これまでの時代における取り組みを振り返りながら解説します。
日本でBPRが最初に注目されたのはバブル崩壊後
BPRが注目されるようになったのは、1993年にベストセラーとなった「リエンジニアリング革命」の刊行ですが、その当時の日本は90〜93年のバブル崩壊が起こった後のことでした。長期不況で疲弊したアメリカの企業経営を立て直すための抜本的な革新として世界中で注目されるようになったBPRは、日本のバブル崩壊後の企業改革の手法として歓迎されました。 しかし、組織のプロセスそのものを劇的に変革するBPRは、業務改革を理由としたリストラや、その他さまざまな混乱を生むことにもなり、成功したとは言い難い状況であったと言えます。
「働き方改革」で再び注目されるようになった
バブル崩壊後の施策として注目されたBPRは、昨今の「働き方改革」で再び注目されるようになりました。少子高齢化により生産年齢人口の比率が減少の一途をたどっていること、ワークライフバランスの実現や長時間労働の是正、DX推進など、企業にとって難易度の高い取り組みが急務となっています。そこで、働き方改革やDX推進の後押しをする取り組みとして、BPRが注目されるようになりました。
03BPRを導入することのメリット
BPRを導入することが企業にもたらすメリットを、大きく3つに分けて解説します。
業務効率化と生産性向上
BPRの導入により、業務フローや組織構造全体が俯瞰的に改善されます。業務上無駄である課題ポイントが洗い出され排除されるため、業務効率化や生産性向上に繋がるメリットがあります。業務上の無駄には、社員の知識やスキルの不足、二度手間で不必要な手順や、組織構造が細分化されている故の意思決定の遅さなどが挙げられます。
製品やサービス品質の向上
非効率な業務プロセスは、品質やサービスの品質低下にも繋がりますが、BPRで業務を効率的に行えるようになると、品質やサービス品質の向上を促進することになります。品質向上は顧客満足度の向上にも繋がり、良い口コミ評判による新規顧客の獲得など、ビジネスにとって良いサイクルが生まれることになるでしょう。
従業員の満足度向上
BPRの導入により、従業員の満足度向上も期待できます。業務プロセスの効率化により無駄な作業が配乗されると、長時間労働の問題の解決や、働きやすい職場づくりに繋がるでしょう。その結果、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下などのメリットをもたらすことになると期待できます。
04BPRを進める際の一般的な5つのステップ
BPRの進め方を、一般的な5つのステップで解説します。
検討
まず、BPRの目的や目標を設定するために、階層の異なる従業員に課題点を聞き出します。それを、企業戦略に則る目的や目標となるよう調整し、方向性を共有します。また、対象業務の範囲を設定することで、成功率をアップさせるようにします。
分析
対象業務が決まったら、業務内容やフロー、組織構造など、現状の課題を分析します。課題の洗い出しには、ABC分析やプロセスマッピング、BSCなどの分析ツールを活用できるでしょう。
設計
分析により洗い出された課題の改善策を設計します。改善策として、企業活動の一部または全部を外部委託する「アウトソーシング」、企業内の共通する業務を集約して専門部門や子会社を立ち上げる「シェアード・サービス」などがあります。また、業務の可視化や共有によって業務改善を行うこともできるでしょう。
実施
BPRの実施に入りますが、大がかりな変革に取り組むことになるため、時間と労力がかかると考えられます。それで、短期的な目標も設定し、目的をクリアしているか、方針から逸脱していないかを確認します。不都合や誤りがあれば、早めに軌道修正を行うようにします。
モニタリング・評価
BPRを実施中は、業務をモニタリングし、達成度を評価します。進捗状況や計画との相違を確認し、問題や課題もチェックします。異常があれば原因を追究し、修正を施し、BPRが円滑に行われるようにします。終了後は目標が達成されているか評価します。改革後の定着度や、顧客への影響と評価内容も確認しましょう。
05BPRの手法
この章では、BPRの手法について紹介します。BPRは1つの施策・手法では成し遂げられないので、複数の手法を並行して進める必要があります。
ERP
BPRの手法の1つに、ERP(Enterprise Resources Planning)があります。ERPを直訳すると「企業資源計画」となり、人・モノ・金・情報などの経営資源を適切に配分し、効果的に活用するための計画や、計画を実現するためのシステムのことを指します。 ERPは基幹システムと混合されることが多いですが、基幹システムは「企業の主要な業務を効率よく実施するために用いる業務システムであり、生産管理・販売管理・在庫管理など、それぞれのシステムが独立していることが多いです。 一方で、ERPは「企業資源を効果的に活用する」という考えに基づいたシステムであり、複数のシステムが統合され、データを一元管理できる形になっています。そのため、ERPシステムを「統合基幹業務システム」と呼ぶこともあります。
シェアードサービス
シェアードサービスとは、複数のグループ企業を抱えている組織が、経営・財務・人事などのコーポレート業務を集約させ、効率化やコスト削減を図るBPRの手法の1つです。 シェアードサービスセンター(SSC)と呼ばれる、各グループ内企業の間接業務を請け負う子会社を立てるケースも珍しくありません。またシェアードサービスセンターは、独立した組織として運営されることが多いため、外部企業にもサービスを提供し利益を上げることもあります。
BPO
BPO(Business Process Outsourcing)は、業務の一端を外部業者に「アウトソーシング」することを言います。少し前までは前述したシェアードサービスセンターを対象として、BPOを論じることが多かったですが、近年は社員研修や広告運用などの業務をアウトソーシングする企業も増えています。 BPOを活用することによって、企業は自社が抱える人材をコア業務に集中させることが可能になったり、専門性の高い外部業者と組むことによる効果の最大化が図れたりといったメリットがあります。
SCM
SCM(Supply Chain Management、サプライチェーンマネジメント)は、企業内外の関連するプロセスとリソースを調整し、効率的に製品やサービスを供給するための戦略的なアプローチです。SCMは原材料の調達から生産、流通、販売、顧客サービスに至るまでの全ての段階を統合し、品質の向上、コストの削減、リードタイムの短縮、在庫の最適化などを実現します。SCMを適用することで、競争力の強化、リスクの低減、顧客満足度の向上などのメリットが期待されます。
シックスシグマ
ックスシグマ(Six Sigma)は、品質管理とプロセス改善の方法論であり、誤差や不良品の発生を最小限に抑えることを目指します。シックスシグマではデータ分析と統計手法を駆使して、プロセスのバリエーションを削減し、高品質な成果物を一貫して提供します。組織全体で品質意識を高め、効率の向上とコスト削減を実現するため、特に製造業やサービス業で広く採用されています。
06BPRを成功させるための注意点
BPRを円滑に進めて成功させるための注意点として、3つのポイントを解説します。
目的を明確にしてから始める
BPRを成功させるために、目的を明確にしてから始めることが重要なポイントとなります。目標が明確になっていないと、分析や検討の段階で方向性にズレが生じ、業務フロー全体の見直しが困難になります。また、企業全体で一丸となって改革に取り組むのが難しくなるとも考えられます。
BPRの必要性を社内全体で共有する
BPRの必要性を社内全体で共有することも大切です。業務手順ややり方の変更は従業員にとってストレスとなる場合もあり、現場の理解が得られていない状態で開始すると、何かしらの反発が生じることも考えられます。計画の段階で社内全体に情報の共有をすることで、従業員のモチベーションの向上や協力する姿勢が期待できます。
改革の本質を定着させる
BPRによる改革を、組織風土として定着させることも重要なポイントです。組織風土はすぐに変わることがないため、表面的な変化だけでなく、改革の本質を定着させるようにします。そうすることで、トップの交代によるBPRの頓挫や、形式的に終わらせてしまう事態を避けることができるでしょう。
07BPRを導入した企業事例
最後に、BPRを導入した企業事例として、以下の2社を紹介します。
株式会社日刊スポーツ新聞
CMS(コンテンツ管理システム)を導入してから10年が経ち、システムレスポンスの遅さが目立つようになりました。しかしメディア事業の中核のシステムであることで、入れ替えまでは考えていませんでしたが、BPRの推進により、業務が止まる深夜の2時間ほどでシステムの入れ替えを行うことにしました。 結果として、システムのレスポンスを改善し、記事更新作業のスピードアップに繋げることができました。また、ワークフロー導入により、作業分担や役割を明確化することができました。
株式会社ビズリーチ
同社では、会社全体のビジネスプロセスの最適化を目的として、BPR部が部署として設置されています。作業に3日程かかってしまう社内アンケート集計業務を効率化を考え、RPAのツールを使用したところ、作業時間を1時間に短縮できたため、BPRとして他の業務の改善にも取り組むことにしました。 UIが使いやすく、学習環境があり、迷ったときに自己解決ができるという条件でRPAツールの検討、導入した結果、毎日30分から1時間かかる事務作業が自動化されました。そして、取り組める業務が増えたことや、負担の大きかった作業の自動化でストレス軽減にも繋がりました。
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1968年生まれ。1992年、東京大学電気電子工学科 卒業。 同年、日本電気株式会社(NEC)に入社。 大規模プロジェクトのシステムエンジニア、プロジェクトマネージャを経験。2008年から全社基幹システム改革プロジェクトでのBPM(ビジネスプロセスマネジメント)方法論の設計と展開の責任者。
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株式会社スタディスト コンサルティング部 事業推進グループ マネジャー。 早稲田大学卒業後、法人向け教育会社に入社。商品企画職としてキャリアを歩み、企画開発部長、執行役員を務める。 リクルートマネジメントソリューションズに移り、人材開発領域における商品開発、事業開発、サービスプロデュースに従事した後、スタディストに入社。
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青山学院大学 経営学部教授
青山学院大学大学院理工学研究科に在籍中「受注即応生産方式の設計と運用に関する研究」に取組み、博士(工学)の学位取得。 1999年青山学院大学経営学部専任講師に着任し、助教授、准教授を経て現職。経営理論、経営工学手法を用いたロジスティクス、サプライチェーンマネジメントに関する教育と研究に従事。
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09まとめ
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