公開日:2022/01/26
更新日:2022/09/21

サーベイフィードバックで組織が変わる。効果的に実施するためのポイントを解説

サーベイフィードバックで組織が変わる。効果的に実施するためのポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

組織開発の手法として従業員サーベイが注目され始めて久しいですが、その効果的な運用のために欠かせないのがサーベイフィードバックです。 当記事では、サーベイフィードバックの概要と、実施の際のポイントについて解説します。

 

01サーベイフィードバックとは

サーベイフィードバックとはその名の通り、組織の中で行われた調査や測定(サーベイ)で得られた結果を、調査対象者へ伝えることを指します。 以下、前提として、そもそも「サーベイ」とは何かという点にも触れておきます。

人事部門が行う「サーベイ」とは

企業活動のなかではさまざまなサーベイが行われますが、人事部門が実施するものは、いわゆる従業員サーベイ、つまり社員を調査対象とするものがほとんどです。 組織の状態や人事的な課題について社員の生の声を集めることで、人事としての目線だけでは見落としがちな課題を把握するとともに、その解決策を検討することを目的としています。以下は代表的な従業員サーベイの例です。

組織サーベイ

従業員サーベイのなかでも特に包括的な意味合いをもつのが、組織サーベイです。 「組織の状態」を把握するためのサーベイであれば組織サーベイといえ、組織風土診断や従業員満足度調査、ストレスチェックなどの幅広い領域をカバーします。

モラールサーベイ

社員が会社に対してどの程度満足しているかという点や、どのようなことに課題を感じているかという点に着目したものがモラールサーベイです。モラールとはフランス語で「士気」や「意欲」のことを指し、先に述べたようなポイントを把握することで社員の意欲を測ることを目的とする調査であるといえます。

▼人事が押さえてくべきサーベイについてさらに詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】モラール・サーベイとは?従業員の本音を知るメリットについて解説

エンゲージメントサーベイ

エンゲージメントは一般的には「婚約」や「約束」といった意味をもつ言葉ですが、ビジネスにおいては主に「関係性」「結びつき」といった意味合いで使用されます。 エンゲージメントサーベイはその名の通り、社員と会社との結びつきにフォーカスします。すなわち単なる労働環境への満足度だけでなく、会社に対する愛着や思い入れといった部分に着目した調査が特徴です。社員のエンゲージメントが高い企業は離職率が低くなるとも言われているため、人材の定着に関して課題を感じている企業にとっては実施する意義は大きいでしょう。

▼サーベイについて詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】人事部門がおさえておくべきサーベイとは?サーベイの種類と類似用語との違いを解説する

フィードバックの重要性

従業員サーベイを実施し、社員の生の声を拾うことで、人事部門は非常に有用なデータを得られます。その一方で、多くの企業で「せっかく行ったサーベイの結果を活かしきれていない」ということが課題として挙げられています。 いくら有用なデータであっても、それを人事部門内で死蔵していてはまさに宝の持ち腐れです。そこで近年注目を集めているのが、サーベイで得られた情報を職場へ還元するサーベイフィードバックです。結果を人事部門や経営層のなかだけで利用するのではなく現場にも伝え、現場主導で課題の発見と解決策の提示を行うことで、よりダイレクトに組織の活性化を図ります。

 

02サーベイフィードバックが注目される背景

組織開発手法としてはもともと存在していたサーベイフィードバックが、なぜ今になって特に注目を浴びているのでしょうか。主要な理由を2点解説します。

HRテクノロジーの普及

従業員サーベイ自体に対する垣根が低くなったことが、まず理由として挙げられるでしょう。 HRテクノロジーの概念が広がる前までは、従業員サーベイといえば外部業者に委託するか、膨大なマンパワーをかけて地道にデータ収集と集計作業を行うかの二択でした。 しかしながら現在、簡便なアンケートツールや診断ソフトの普及によって、データ収集と集計、分析までの一連の流れは格段に容易になっています。これにより、従業員サーベイの実施とその活用方法としてのサーベイフィードバックを人事施策として取り入れる企業が増えています。

組織開発への関心の高まり

近年、働くひとの属性や雇用形態の多様化や人材獲得競争の激化といった背景から、組織マネジメントの難易度が上がっています。そんななかで、組織が十分に機能し、効果を発揮するための施策として組織開発への関心が高まっています。このことから、組織開発において有用な手法であるサーベイフィードバックに対しても注目が集まっているのだと言えます。

 

03サーベイフィードバックを行うメリット

組織開発に役立つとされるサーベイフィードバックですが、実施によって具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主だったものを解説します。

組織の課題を可視化し、解決策を生み出す

一番に期待されるのは、組織の課題を可視化し、解決に向けてのアイデアを得ることでしょう。 社員一人ひとりが普段自身の職場について感じている事柄は、そのままでは主観的な感想だとしか捉えられないかもしれません。しかし従業員サーベイという形で複数の意見を集約することで、それが客観的な課題として浮かび上がってくることがあります。 サーベイフィードバックを行うことで、組織のメンバーはその組織がもつ傾向や課題に対して共通認識をもつことができます。ぼんやりと問題意識を感じていた事柄が明確な課題として立ち上がってくる場合もあれば、特に問題視していなかった課題に気づく場合もあるでしょう。 客観的なデータとそこに見出した課題を共有したあとは、その解決に向けた施策を検討していくことになります。人事部門や経営層起点でなく、そこで働くメンバーが主体的に解決策を発案するための場を形成できるのが、サーベイフィードバックの強みです。

組織の生産性や創造性を向上させる

サーベイフィードバックによって課題を把握し、的確な解決策を実施することができれば当然組織の生産性は上がります。加えて、ここでは見落としがちなもうひとつの視点にも触れておきます。 サーベイフィードバックによって組織が把握できるのは、課題だけではありません。ほかの組織との比較によって、普段メンバーが自覚していない、その組織がもっている強みに気づくこともあり得ます。 フィードバックの場においてはつい課題に目が行きがちですが、良いところを伸ばすという視点も意識すると、さらに生産性や創造性を向上させることができるでしょう。

従業員間のコミュニケーションを活性化させ、関係を円滑にする

サーベイフィードバックの肝となるのが、結果を把握した後のメンバー間のコミュニケーションの場です。これは、普段業務で直接のかかわりがないメンバーと話ができたり、業務ではなかなか話すことのできない、組織についての突っ込んだ話をできる機会でもあります。そのため、組織内のコミュニケーションの活性化につながり、メンバー間の関係をより円滑にするという効果も期待できます。

回答に対するモチベーションを上げる

社員の、サーベイに回答するモチベーションを上げることもサーベイフィードバックの重要なメリットです。 従業員サーベイでは社員が感じているさまざまな課題を集約することができますが、人事部門がそのすべてに応えるのは物理的に不可能です。 しかし社員からすると、自身の回答内容に対して会社が何もアクションを起こしてくれないと感じ、次のサーベイに協力するモチベーションが下がってしまうことがあります。それだけでなく、会社そのものに対する不信感の原因にもなりかねません。 サーベイフィードバックを行うことが職場の改善活動につながれば、社員がサーベイへの回答にメリットを感じ、より率直で有意義な回答をするようになるでしょう。

 

04サーベイフィードバックによる組織開発の注意点

サーベイフィードバックを効果的に行うには、いくつか注意が必要です。主要な3点をご紹介します。

「やらされ感」をなくすための工夫を行う

まず注意したいのは、現場に「やらされ感」が漂っていないか、という点です。 サーベイフィードバックをきちんと行うにはある程度の工数が必要ですが、ただでさえ現場は通常業務で忙しいものです。動機づけが不十分な状態で丸投げするようなことをしてしまうと、「よく分からないけど(めんどうだけど)、人事に報告しないといけないらしいから形だけはやっておくか」というような意識が生まれかねません。 サーベイフィードバックを機能させるには、「何を目的として行うのか」「これを行うことで、本当に組織は良くなるのか」という点への腹落ちを経て、「組織を良くするために、フィードバックを受けたい」という動機を形成する必要があります。現場も理解してくれるはず、と過信をせずに、特に実施においてキーマンとなる役職者に対しては、丁寧に説明を行うことが重要です。

ポジティブな場としてイメージづける

自組織についての客観的なデータを目前にすると、どうしても悪い箇所に目が行ってしまいがちです。ましてやその場を組織の課題を把握し、解決策を検討する場として意識しているならなおさらです。 問題意識をもつことは大切ですが、行き過ぎると犯人探しに発展したり、堂々巡りに陥ったりと議論の生産性を失ってしまう原因にもなります。このようなリスクを低減するためにも、サーベイフィードバックについて案内を行う際は、組織をより良くすることを目的とした、ポジティブな場であることを意識的に発信することが必要です。

「変化」へのストレスに理解を示す

人は「変化」にストレスを感じ、本能的に避けようとします。サーベイフィードバックの場においても、組織内の慣行や自身の行動をなるべく変えたくないという潜在意識から、データに対して都合のよい解釈を加えてしまうことがあります。 サーベイフィードバックの実施においては、企画の時点でそのような社員感情を織り込むことが必要です。次項で具体的に示しますが、フィードバックのステップを丁寧に踏むことで、社員の「変わりたくない」という気持ちをある程度解きほぐすことができるでしょう。

 

05効果的なサーベイフィードバック実施のための6ステップ

前項で挙げたようなサーベイフィードバックの注意点をクリアし、効果的に実施するためには、どのようなステップが必要なのでしょうか。立教大学経営学部 中原 淳教授の著書「サーベイ・フィードバック入門」より得られる知見からご紹介します。

目的説明

何を目的としてサーベイフィードバックを行うのか、参加者全員の共通認識を得るために目的説明を行います。 いきなりデータを目の前に出すのではなく、サーベイへの協力に対する感謝や日ごろのねぎらいなどから始めたあとに目的を共有し、一体感を醸成しましょう。

グラウンドルールの提示

サーベイフィードバックを形だけのものにしないためには、その場のメンバーが安心感を覚え、忌憚のない意見を言い合えることが重要です。 立場に関わらず本音で話ができるよう、話し合いにおけるルールを周知します。

データの提示

データはなるべくシンプルで、集計者の恣意性を除いたものを提示します。

データに対する解釈

各メンバーがデータから読み取ったこと、感じたことを率直にシェアします。 その際、各自が以下のような点を意識していることが大切です。

  • ・自分に見えているものが相手にも同じように見えているとは限らない
  • ・自分と他人のズレをなるべくたくさん見つける
  • ・いつも感じているが、なかなか言い出せないことを言ってみる

自他の違いを「あって当たり前」と許容することで、いつもは摩擦を恐れて言い出せないような本音の意見を引き出すことができます。

「未来」に向けた話し合い

各自の解釈を十分引き出してから、自分たちの組織は今どういう状態なのか、これからどうなっていきたいのかというビジョンに向けて話し合います。

アクションプランの策定と、メンバーへのねぎらい

最後に、ありたい姿に向けた具体的なアクションプランを策定します。 検討にあたっては、以下のようなポイントを意識します。

  • ・全員が関わるものであること。課題の犯人さがしはしない
  • ・次週の月曜日から始められること
  • ・実行が容易で、スモールステップから始められること

また、場を結ぶときには再度メンバーへのねぎらいを行うことが重要です。


 

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06まとめ

サーベイフィードバックは組織開発に有用な手段ですが、その効果を発揮させるには現場への動機づけと率直な対話を引き出すための工夫が必須となります。 制度を形骸化させないためにも、ポイントを押さえて効果的な運用を目指しましょう。

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    ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

    1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。

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