GX(グリーントランスフォーメーション)とは?基礎知識と先行事例について解説

地球温暖化や気候変動などの問題意識が全体で高まる中、気候変動を減少させる対策として、世界中でGX(グリーントランスフォーメーション)という対策が進んでいます。 GXでは、脱炭素社会の実現を目指しており、世界中の多くの産業が再生可能なクリーンエネルギーへの転向を行っています。本記事では、GXの基礎知識やGXに取り組んでいる企業の事例について紹介します。
- 01.GXとは?
- 02.GXリーグとは?
- 03.GXが注目されている理由
- 04.企業がGXに取り組むメリット
- 05.GXに取り組んでいる企業の先行事例
- 06.GXを学ぶならSchooのオンライン研修
- 07.まとめ
01GXとは?
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、地球温暖化や環境破壊、気候変動などを引き起こす温室効果ガスの排出を削減し、環境改善と共に経済社会システムの改革を行う対策です。
世界中の企業がこの対策に取り組んでおり、経済産業省も2050年までに温室効果ガスの排出量を0にするカーボンニュートラルを目指しています。
カーボンニュートラルを実現するためには、多くの企業の協力が必要不可欠ですが、簡単に従来のエネルギーから変換することは難しく、課題も多く残っているのが現状です。
02GXリーグとは?
GXリーグとは、経済産業省が2022年に発表したGXの新たな取り組みです。
主に、企業が2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、行政や金融・研究機関と協力してGX実現に向けた議論と新規市場の開拓を行う場です。
温室効果ガスの削減だけでなく、経済社会システム全体の改革を目指しており、環境を改善しながら経済も活性化させることが求められています。
そのため、GXリーグは企業の成長や地球環境の保持、生活者の充実などに大きく貢献します。
03GXが注目されている理由
GXは、世界中で注目されており、日本に限らずEUやアメリカ、中国などの世界約120ヶ国以上が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。
ここでは、GXが世界中で注目されている主な理由を3つ紹介します。
- ・1.地球温暖化の深刻化
- ・2.世界的に脱炭素化が進んでいる
- ・3.ESG投資による市場の拡大
1.地球温暖化の深刻化
大気汚染や海洋汚染などの環境破壊が進み、地球温暖化による気候変動や海面上昇が進むと、人間社会に大きな悪影響を及ぼします。
実際に、1850年から2020年までの170年間で世界の平均気温は1.09度上昇しており、今後も上昇し続けることが予想されているため、放っておくと地球温暖化による経済社会への影響は深刻になります。
今後、経済社会が発展していくためには、GXによる地球環境の改善・保持が必要不可欠な状態です。
▶︎参考:地球温暖化防止活動推進センター「温暖化とは?地球温暖化の原因と予測」
2.世界的に脱炭素化が進んでいる
日本では、経済産業省を中心にGXへの取り組みが盛んになってきていますが、これは日本に限った話ではありません。世界的にGXに対する取り組みが進んでおり、現在約120ヶ国以上の国が2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組を行っています。
また、世界最大のCO2排出国である中国は2060年、EUの1部のヨーロッパ100都市では、2030年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。このように、GXは世界中で注目されている取り組みです。
<カーボンニュートラルについてのSchooおすすめ授業>
近年、ニュースや職場でよく耳にするようになった「脱炭素社会」、「カーボンニュートラル」について概要から、なぜこういった取り組みが必要かについて解説します。後半では、ビジネスとカーボンニュートラルの関係性と一人ひとりができる具体的なアクションについて触れていきます。
数年後、十数年後の地球の未来をさせるために必要不可欠なアクションであるカーボンニュートラルですが、昨今の国際事情の影響からその取り組みについて懐疑的な意見も出ています。
カーボンニュートラルについての基礎知識を正しく理解し、その必要性についての自分なりの考えを持てるようになりましょう。
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株式会社Drop SDGsコンサルタント
新卒より8年間働いた会社でインド、インドネシア、タイなど7カ国の販路開拓し、海外展開に奔走。2019年8月に退職。翌月よりサハラ以南の現状を自分の目で確かめたく、アフリカのセネガルに1ヶ月滞在し、プラごみ問題の解決に奔走。帰国後は社会課題を解決するスタートアップ企業 株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。 これまで企業・青年会議所・教育機関などでSDGs研修を開催し、これまで計40万人のビジネスパーソン向けにSDGs研修を実施。YouTuberとしても、ビジネスパーソン向けにSDGsの基本知識から取り組み方法について発信中。
3.ESG投資による市場の拡大
ESG投資とは、財務情報だけでなく、環境や社会への配慮や企業の内部統治や管理体制を考慮して行う投資のことです。
そして、2020年の段階では、ESG投資の運用金額は約3,900兆円を超えており、今後も拡大することが予想されます。
そのため、環境や社会、社内状況への意識が低い企業は、今後株価の下落や衰退する可能性が高いので、多くの企業はGXに注目し始めています。
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【関連記事】ESG投資とは?代表的な手法から課題、企業事例まで解説
04企業がGXに取り組むメリット
世界中がGXに取り組むことによって、長期的な経済成長や環境改善・保持に大きく貢献します。企業がGXに取り組むメリットには主に2つ挙げられます。
- ・1.コストの削減に繋がる
- ・2.企業のブランディングになる
1.コストの削減に繋がる
GXの取り組みは、温室効果ガスを削減し再生可能エネルギーを導入することです。エネルギーを削減・再利用できればコスト減にもつなげられます。
旧来の仕組みからエネルギー確保の方向転換を図ることは、初期投資を含め高コストになるイメージを持つ方も多いです。しかし、近年世界的にグリーンエネルギーの活用が注目されており、国内においても支援策の拡充や、新エネルギーの低コスト化が見込まれています。
光熱費や燃料費の低減
GXの取り組みでは、使用するエネルギーの節約が必須であり、再生可能エネルギーの生産・使用も効果的な対策です。
そのため、GXを通じて従来必要だった光熱費や燃料費などのコストを大幅に削減でき、コストの削減によって利益率の向上も期待できます。
また、自社で生産した再生可能エネルギーを他社に販売することができれば、事業拡大や認知度拡大によって、さらにGXに取り組みやすくなります。
エネルギーコストを削減し、余ったエネルギーで利益を上げることによって、新たな事業等も行うことが可能です。
人材確保の費用低減
企業がGXに取り組むことによって、企業の将来性や認知度の向上を図れるので、就活生や転職活動をしている求職者にいい印象を与えられます。
同じ規模や費用でも、企業がGXに取り組み将来性が高くなる事によって、集まってくる人材も増加し、低コストで優秀な人材を獲得できるようになります。
そのため、人材確保のための費用を削減することができます。
また、GXに積極的な人材が多く集まれば、企業と思想が一致し離職率も低くなり、人材確保にかける費用をさらに削減することが可能です。
2.企業のブランディングになる
GXに積極的に取り組みコスト削減や利益率の向上を達成できたら、企業の認知度や期待値が高くなります。
企業がコスト削減や利益率向上にとって得た費用を、事業に回せるようになるので、競合他社との協力力も高くなります。
また、GXに取り組んでいる企業が長期的に持続すれば、地球環境に大きく貢献できるので、資金調達や人材確保も行いやすくなります。
そのため、企業がGXに取り組むことは、投資家や求職者、地域住民に対してのブランディング強化にとても効果的です。
05GXに取り組んでいる企業の先行事例
カーボンニュートラルと経済発展を実現するために、すでにGXに取り組んでいる企業は世界中に存在します。 また、日本国内でもGXに取り組む企業が増えており、今後も参入する企業は増え続けることが予想されています。 最後に、GXに取り組んでいる有名企業3社と、事例を紹介します。
Apple
Appleでは、風力発電などの再生可能エネルギーを積極的に使用して、2018年時点でカーボンニュートラルを達成している企業です。
2019年から販売されたApple製品はほとんど、100%リサイクルされた再生材料で作られており、スマートフォンとしては初の試みでした。 また、Appleは今後も100%再生可能エネルギーで企業運営を続けることを表明しており、Apple製品の素材に使用されるアルミニウムに、炭素を含まない精錬プロセスの開発支援も行なっています。 2030年までには、Appleだけはなくサプライチェーン全てで、カーボンニュートラル達成を目指しており、既に、世界17ヶ国のAppleに関わる70社以上のサプライヤーが、100%再生可能エネルギーで生産することを確約しています。
▶︎参考:Apple「Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束」
トヨタ
トヨタは、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」という取り組みを発表しました。 自動車が地球環境に悪影響を与えるマイナス要因を限りなく0にして、社会にプラス要因をもたらすための取り組みです。
マイナス要因をゼロにするためのチャレンジとして、以下の3つを掲げています。
- ・ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ
- ・新車CO2ゼロチャレンジ
- ・工場CO2ゼロチャレンジ
社会にプラス要因をもたらすチャレンジとして、以下の3つを掲げています。
- ・水環境インパクト最小化チャレンジ
- ・循環型社会・システム構築チャレンジ
- ・人と自然が共生する未来づくりチャレンジ
日本最大手の自動車企業であり、世界的にも高いシェアを誇っているトヨタでは、自動車を製造する過程で大量の温室効果ガスが排出されてしまいます。 しかし、トヨタは工場から排出されるCO2を2013年から現在までに約35%以上削減するなどの高い実績を残しており、今後も高い期待が寄せられています。
▶︎参考:TOYOTA「6つのチャレンジ 人とクルマと自然が共生する社会を目指して走り続ける」
ENEOS
ENEOSは、2040年までにカーボンニュートラルを目指しており、2015年に「2040年長期ビジョン」を掲げました。
ENEOSでは、排出されるCO2の約8割が精製段階で排出されているため、生産工程の改善や効率化、放熱ロスの削減など、さまざまな対策が地球環境に大きく影響します。 そのため、精製段階で排出されたCO2を2013年から2020年までに500万トン以上削減し、今後もサプライチェーンのCO2削減も並行して目指しています。 また、2014年にはトヨタのFCVが発売されてから、ENEOSでは水素ステーションの開業を進め、現在(2022年時点)では、全国47ヶ所に展開しています。 今後も、ENEOSはFCVの普及に伴い、水素ステーションの設備を進めていく方針です。
06GXを学ぶならSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級8,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級8,000本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
GXに関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、GXに関する授業を紹介いたします。
持続可能社会をつくるグリーン・リスキリング入門
今回の授業では、持続可能な社会に求めれられるグリーン・スキルをテーマに、グリーン・リスキリング普及、支援の第一人者である一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事の後藤宗明さんをお招きし、海外のリスキリング事例などを通しながらご解説いただきます。 働き方の可能性を広げるグリーン・リスキリング、先生と一緒に楽しく学んでいきましょう!
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一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事ト
銀行、研修事業、社会起業家支援を経て、40歳で自らのリスキリングを開始。フィンテック、通信、外資コンサルティングを経験し、ABEJAにて米国事業、AI研修企画を担当。リクルートワークス研究所にて「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年より現職。2022年、SkyHive Technologies日本代表に就任し、AIを活用したリスキリング支援を行う。
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カーボンニュートラル 「綺麗ごと」から「自分ごと」へ
近年、ニュースや職場でよく耳にするようになった「脱炭素社会」、「カーボンニュートラル」について概要から、なぜこういった取り組みが必要かについて解説します。後半では、ビジネスとカーボンニュートラルの関係性と一人ひとりができる具体的なアクションについて触れていきます。 数年後、十数年後の地球の未来をさせるために必要不可欠なアクションであるカーボンニュートラルですが、昨今の国際事情の影響からその取り組みについて懐疑的な意見も出ています。 カーボンニュートラルについての基礎知識を正しく理解し、その必要性についての自分なりの考えを持てるようになりましょう。
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株式会社Drop SDGsコンサルタント
新卒より8年間働いた会社でインド、インドネシア、タイなど7カ国の販路開拓し、海外展開に奔走。2019年8月に退職。翌月よりサハラ以南の現状を自分の目で確かめたく、アフリカのセネガルに1ヶ月滞在し、プラごみ問題の解決に奔走。帰国後は社会課題を解決するスタートアップ企業 株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。 これまで企業・青年会議所・教育機関などでSDGs研修を開催し、これまで計40万人のビジネスパーソン向けにSDGs研修を実施。YouTuberとしても、ビジネスパーソン向けにSDGsの基本知識から取り組み方法について発信中。
カーボンニュートラル 「綺麗ごと」から「自分ごと」へを無料視聴する
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脱炭素×ITからひも解くイノベーション最前線
西欧諸国の脱炭素推進の流れに追随するかたちで、管元内閣総理大臣が2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と所信表明で発表しました。また岸田政権下においてもクリーンエネルギー戦略の策定が進められています。いまやSDGsや脱炭素の取り組みは社会課題解決に前向きな一部の層だけの問題ではなく、国や企業全体で取り組むべき、大きなイシューとなっています。 脱炭素社会の実現は、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)供給の地盤固めが不可欠です。イノベーションの最前線がITから再生可能エネルギーへと軸足がうつっていくことが予測される中で、具体的にどのようなビジョンが描けるのかを学んでいきます。
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樽石デジタル技術研究所 代表
レッドハットおよびヴィーエー・リナックス・システムズ・ジャパンにて、OS、コンパイラー、サーバーの開発を経験後、グーグル日本法人に入社。システム基盤、『Googleマップ』のナビ機能、モバイル検索の開発・運用に従事。東日本大震災時には、安否情報を共有する『Googleパーソンファインダー』などを開発。その後、楽天を経て2014年6月よりRettyにCTOとして参画。海外への事業展開に向け、技術チームをリードし、22年1月に退職。21年12月に立ち上げた樽石デジタル技術研究所の代表のほか、PowerX社外CTO、22年3月からは某大手企業でCTOを務める。
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07まとめ
企業がGXに取り組むことは、長期的に大きな利益が得られる投資です。現在では、Appleやトヨタのような世界的な企業もGXに取り組んでおり、今後もESG投資市場の拡大や環境問題の深刻化に伴い企業が参入してきます。 しかし、短期間ではあまり大きな変化が見られないこともあり、GXに関心を示している企業が少ないことも現在の課題です。今後、地球環境の改善・保持と経済成長が並行して進んでいくように、GXに積極的に取り組んでいきましょう。