公開日:2023/05/16
更新日:2023/05/17

DEIとは|注目されている背景や企業の取り組み事例を紹介

DEIとは|注目されている背景や企業の取り組み事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

DEIとは、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を略した言葉です。近年、企業理念に取り入れている企業が増えているようです。それでは、なぜDEIが注目されて、多くの企業がDEI促進に取り組んでいるのでしょうか。本記事では、DEIの定義や注目を集めている背景、DEI促進に取り組む際のポイントなどを解説していきます。

 

01DEIの定義とは

DEIとは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの略語であり、企業経営において、多様な人材がそれぞれ持っている能力を最大限生かすために広まった考え方のひとつです。DEIにはそれぞれD…ダイバーシティ(多様性)、E…エクイティ(公平性)、I…インクルージョン(包括性)の意味が込められています。それぞれの要素は具体的にどのようなことを指し、何を目的としているのでしょうか。

ダイバーシティ(多様性)

ダイバーシティとは、「多様性・相違点」という意味であり、ビジネスにおけるダイバーシティとは集団のなかに価値観や性別、年齢などが異なる多種多様な人材が共存している状態のことを指します。 ダイバーシティには、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの2種類があります。

  • ・表層的ダイバーシティ
  • ・深層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティは、年齢・人種・性別など、外見からわかりやすかったり、生まれつきのもので自分の意思では変えられなかったりする違いを指します。反対に、深層的ダイバーシティとは、価値観・パーソナリティ・習慣・職歴など、外見から識別できない違いを意味します。

エクイティ(公平性)

エクイティ(公平性)とは、あらゆる人々の機会が公平な状態のことを意味します。元々の違いを考慮せずに同じものを与えても、マイノリティにとっての不平等は解消されづらいことから注目された概念です。企業においては、女性の管理職比率目標の設置や社員のワークライフバランスを支える制度設計などがエクイティ実現のための施策に該当します。 同じような言葉として「イクオリティ(平等性)」がありますが、イクオリティが個々の違いや貢献度を考慮せずにすべての人に等しい待遇をとる考え方であるのに対し、エクイティはそれぞれの個性や置かれた状況を考慮し、目標達成に必要なものを与える考え方であることが相違点です。

インクルージョン(包括性)

インクルージョンとは、多様な人材がそれぞれ公平に扱われるだけでなく、すべての人が歓迎される環境を整備することを意味する言葉です。元々は1960年代に米国の公民権運動や女性運動が広がり、ダイバーシティの概念が広まりました。しかし、法制度が整っても無意識の偏見が残り、本質的な多様性の担保に繋がらないケースも多く存在しました。そこで広まったのが「ダイバーシティ&インクルージョン(Ⅾ&I)」の概念です。インクルージョンを推進し、従業員一人ひとりが居場所を実感できるようになれば、従業員の帰属意識やエンゲージメントが高まり、離職を防げます。

DEIBとの違い

DEIに「ビロンギング(帰属意識)」を加えたものが「DEIB」です。企業側の戦略というニュアンスが大きいDEIに対し、ビロンギングは、従業員が安心して働ける環境を作る、という従業員側の気持ちを尊重した意味合いを持っています。 本来帰属意識は、D&Iが推進されるとともに自然と高まっていくと考えられていました。しかし、「女性管理職の割合を10%アップさせる」など、数値目標の達成だけが目的となってしまい、従業員の働きやすさや帰属意識は思うように向上しない、という事例も少なくありませんでした。これらの理由から、従業員の心理的安全性を高め、組織内のコミュニケーションを活性化させ組織力を高めるために必要な概念として、注目されるようになったのです。

 

02DEIが注目を集めている背景

ダイバーシティの概念は前述の通り、米国における公民権運動や女性運動がきっかけで広まり始めました。現在ではダイバーシティの推進は多くの企業が取り組む課題となっていますが、このように注目を集めるようになった背景を次の3つの視点で解説します。

  • 1.労働市場における人材の多様化
  • 2.ビジネスのグローバル化の進展
  • 3.労働力不足が進んでいる

1.労働市場における人材の多様化

背景の一つ目として、労働市場の変化が挙げられます。女性の社会進出や高齢化、グローバル化などの影響で、労働市場における人材の多様化が進んでいます。また、働き方改革により働き方の選択肢が広がったため、優秀な人材を確保するために、多様な価値観に柔軟に対応する事の必要性が企業にとって高まってきているのです。

2.ビジネスのグローバル化の進展

背景の二つ目はグローバル化の進展です。ここ十数年、IT技術の進化や物流の発達などに合わせてビジネスのグローバル化が進展していきました。グローバル化が進んだ市場で生き残るためには、日本の慣習にとらわれない柔軟な視点と多様な価値観を持つことが求められます。そのため、DEIを意識する企業が増えたのです。

3.労働力不足が進んでいる

三つ目の背景は労働力不足です。近年は日本において少子高齢化で労働力不足が加速しています。そこで、人材を確保するためには女性や高齢者、外国人など多様な人材を積極的に採用していく必要性が共通認識となっています。しかし、女性や高齢者、外国人などのマイノリティ層にとってはDEIを取り入れていない企業は働きづらく、敬遠されてしまいます。そのため、DEIを推進して多様な人材にとって働きやすい環境を提供することの優先度が高まっているのです。

 

03企業がDEIを促進する3つのメリット

社会や労働市場の変化に合わせて取り入れ始めた企業も多いですが、メリットを意識して促進すれば、目標が立てやすくなる他、さまざまな効果が期待できます。企業がDEIを促進するメリットとしては、次の3点が挙げられます。

  • 1.多様な人材を獲得しやすくなる
  • 2.働きやすい職場風土を醸成できる
  • 3.イノベーションが起きやすくなる

1.多様な人材を獲得しやすくなる

企業がDEIを促進しているということは、これからその企業に就職しようとしている人にとって魅力的です。事実、経済産業省の調べによると、ミレニアル世代の女性の約85%、男性の約75%が「職場選びの際に多様性・受容性の方針が重要である」と考えています。人材確保の競争が激化しているなかで、少しでも転職希望者にとってネックとなる要素を取り除けることは、企業にとって人材確保面でのメリットとなっているのです。

▶︎参考:引用元:経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」

2.働きやすい職場風土を醸成できる

共働き家庭の増加やコロナ禍による仕事観の変化などによって、希望する勤務体系はどんどん多様化しています。しかし、現状ほとんどの企業では、従来の1日8時間週5日、固定勤務地という働き方となっています。DEIの推進で個々に合った働き方を選べるようになれば、勤務体系が理由で離職せざるを得なかった社員に仕事を続けてもらえるようになります。

3.イノベーションが起きやすくなる

性別や経歴、出身地や年齢などが同じ人ばかり集まった組織では、発想が偏ってしまい新しいアイデアが生まれにくくなります。反対に、DEIを促進して多様な人材が集まるようになれば、さまざまな視点から豊富な意見が出るようになります。豊富に意見が出されるようになることで、イノベーションが起きやすくなったり、問題の早期解決につながったり、従業員一人ひとりの発想が柔軟になったりなどさまざまなメリットがあります。

 

04DEI促進に取り組むときのポイント

DEI促進を成功させるには、いくつか意識すべきポイントがあります。次の4点について、それぞれ解説します。

  • 1.企業理念や行動指針の中に取り込んで発信する
  • 2.具体的な目標に落とし込む
  • 3.DEI促進に対応するよう社内制度を整備する
  • 4.DEIに対する従業員の理解度を高める

1.企業理念や行動指針の中に取り込んで発信する

方針が曖昧なままDEIを促進しようとしても、現場を混乱させてしまうだけです。DEIを促進する際は、方針や目指している状態を明確に定義し、企業理念や行動指針に取り込みながら、繰り返し発信していきましょう。

2.具体的な目標に落とし込む

DEIを周知する際は、具体的なゴールを設定したほうが理解を得られやすいでしょう。とくに、ダイバーシティの面は男女比や年齢の分散などで、数値として測定できます。「D&Iアワード」や「なでしこ銘柄」など、外部機関が設定している評価指標を基準にしてもよいでしょう。

3.DEI促進に対応するよう社内制度を整備する

意識改革だけでは、DEIの促進は叶いません。勤務体系の柔軟化や障がい者向けの雇用制度の充実など、社内制度の整備もあわせて進めましょう。とくにエクイティの面において、明確な評価基準を設定しておくことは、従業員の不満解消につながります。

4.DEIに対する従業員の理解度を高める

DEI促進には、経営者層だけでなく、従業員にも理解してもらうことが重要です。具体的には、DEIに関する社内研修の開催や、社内報の発行、上司との面談などの施策を行い、従業員一人ひとりの疑問や懸念を払拭していきましょう。

 

05実際にDEIを促進している企業事例

DEI促進のために取られる施策は実に多種多様で、企業によってどのような施策が合うのかはそれぞれ違います。ここからは、実際にDEIを促進し、成功した事例として次の3つの企業の例を紹介します。

  • 1.パナソニック株式会社
  • 2.株式会社吉村
  • 3.コクヨ株式会社

1.パナソニック株式会社

大手電機メーカーパナソニック株式会社は、重要な経営施策のひとつとして、DEI推進と働きやすい環境づくりに取り組んでいます。例えば、育児や介護との両立をはかる「ワーク&ライフサポート勤務」の導入や、女性社員を対象としたマネジメントスキル向上を目的とした研修の開催など、幅広く施策を行っています。その結果、女性管理職の増加や迅速な顧客対応が実現しました。また、企業のLGBT取り組み評価指標「PRIDE指標」では、2016年から2022年まで7年連続でゴールド評価を得ています。

▶︎参照元:パナソニックがDiversity & Inclusionに関するイベントを継続開催 多様性推進活動を社内外に広め、共生社会実現へと貢献

2.株式会社吉村

日本茶の包装素材メーカー、株式会社吉村では、育児中の女性も働きやすい環境づくりに成功しました。具体的には、短時間勤務中でも担当できるリーダー制度、「ブランドオーナー制」が挙げられます。 以前から株式会社吉村では、子育てしながらでも働きやすいように、子供が小学3年生になるまでは短時間勤務を利用できるようにしていました。しかしその反面、短時間勤務中の従業員は補助的な仕事が多く、企画・提案などを主体的に行いたい女性社員にとっては働きづらい環境でした。そこである女性にプロジェクトの企画を任せて、ブランドオーナーとしたところ、育休後もフルタイムで働く女性が増えたほか、「急須代わりになるワインボトル型のガラス茶器」などの新しいアイデアが生まれました。 また、株式会社吉村ではMO(戻っておいで)制度を取り入れています。MO制度とは女性社員の退社時に「MOカード」を渡すというもので、企業側から「いつでも戻っておいで」というメッセージを伝えることで、一回やめた社員も再就職しやすくなります。

▶︎参照元:株式会社 吉村

3.コクヨ株式会社

文房具メーカー、コクヨ株式会社では、以前から積極的に障碍者を雇用し、2003年には障碍者が意欲的に働ける場所として特例子会社、「コクヨKハート株式会社」を設立しました。しかし、コクヨKハート株式会社は障碍者雇用率を上げるためのものとなってしまい、せっかく雇用した人材を生かしきれずにいました。そこで、コクヨKハート株式会社の事業内容を、取扱説明書の印刷業務から、より付加価値のある業務プロセス代行分野に移行しました。加えて、ノウハウを持つ社員や商品開発に携わっている社員を指導担当として出向させて、フォロー体制を整えました。その結果、コクヨKハート株式会社は経営基盤が安定し、外注先から信頼できるパートナーに変化しました。

▶︎参照元:コクヨ、障がい者の活躍推進に取り組む国際ムーブメント「The Valuable 500」に加盟


 

研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする


■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など


Schoo_banner
 

06まとめ

DEIは、労働市場の多様化やグローバル化、少子高齢化による労働力不足が加速する現代社会で重要な概念です。DEIを促進させれば、従業員のエンゲージメントや働きやすさが向上したり、人材確保において有利になったりするため、積極的に取り入れていきましょう。

  • Twitter
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
執筆した記事一覧へ

20万人のビジネスマンに支持された楽しく学べるeラーニングSchoo(スクー)
資料では管理機能や動画コンテンツ一覧、導入事例、ご利用料金などをご紹介しております。
デモアカウントの発行も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

お電話でもお気軽にお問い合わせください受付時間:平日10:00〜19:00

03-6416-1614

03-6416-1614

法人向けサービストップ