カスタマーサクセスとは? カスタマーサクセスの概念と業務内容について解説
近年、耳にすることが多くなったカスタマーサクセスという言葉があります。カスタマーサクセスは製品やサービスを利用した「顧客の目的を達成(成功)させる」という概念と、その役割に従事する人のことを指します。当記事ではカスタマーサクセスの概念、企業における役割と業務内容について解説します。
- 01.カスタマーサクセスとは
- 02.カスタマーサクセスはなぜ注目されるのか
- 03.カスタマーサクセスの目的
- 04.カスタマーサクセスの業務
- 05.カスタマーサクセスに必要なスキル
- 06.カスタマーサクセスに適した人材とは
- 07.まとめと
01カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは日本語に直訳すると「顧客の成功」ということになります。企業活動におけるカスタマーサクセスとは自社の製品やサービスを利用した顧客が、それを利用することで、目的を達成し満足度を高めることを目指す概念のことです。企業理念としての「顧客に提供したい価値」という捉え方と、顧客満足に向け実際に活動する役割・職種としての捉え方の二通りがあるとされます。
カスタマーサクセスの役割
ここでは、企業における役割・職種としてのカスタマーサクセスについて解説していきます。カスタマーサクセスの役割は、自社の製品やサービスを購入した顧客が、それを利用して期待する成果を上げるまで、積極的にアプローチして顧客満足度を高めることです。
カスタマーサポートとの違い
類似する言葉にカスタマーサポートというものがあります。カスタマーサクセスもカスタマーサポートも、どちらも製品やサービスを通じ顧客と関わりますが、両者には明確な違いがあります。カスタマーサポートはどちらかというと待ちの姿勢です。購入した顧客が製品やサービスに不満を感じ問い合わせをしてきたときに、対応するのがカスタマーサポートの役割です。これに対し、カスタマーサクセスは、顧客が自社の製品に対し、より満足度を高められるよう積極的に働きかけることを役割としています。
02カスタマーサクセスはなぜ注目されるのか
近年カスタマーサクセスはなぜ注目されるようになったのでしょうか。カスタマーサクセスが広まった背景には、市場の成熟に伴うビジネスモデルの変化が挙げられます。顧客のニーズは多様化し、既存の製品やサービスだけでは対応できなくなっています。 ビジネスモデルの変化という点では、特にサブスクリプションサービスが台頭したことによって、カスタマーサクセスは注目を集めるようになりました。
市場の成熟
成熟した市場においては、あらゆる「モノ」が高い水準で普及しています。新規の需要は多く見込めず、買い替えや買い増し需要が中心となります。そうした市場において自社製品の競争力を高めるためには、商品力にプラスしたサービス・付加価値が必要になります。そこで、購入後の満足度をより高めるサービスとしての、カスタマーサクセスに注目が集まるようになったのです。
サービスの多様化
サービスの多様化もカスタマーサクセスが広まった要因のひとつです。顧客のニーズは細分化され、狭い範囲でより深くそのニーズを満足させる必要性が出てきています。こうしたことから、製品やサービスの満足度向上に積極的に関わるカスタマーサクセスの存在が重要視されるようになりました。
SaaSの普及
SaaSとは「Software as a Service」の略称で、クラウド上に構築されたサービスやアプリケーションを顧客がインターネットを経由して利用する形態のことです。従来であればサービスやアプリケーションは、製品パッケージを販売して顧客が利用するという形態でした。 SaaSにおいて顧客はパッケージを購入するのではなく、サービス利用料として料金を支払います。よって提供する企業側としては長期間使用してもらうことが利益につながるため、契約後の顧客にアプローチし満足度を高めてもらう活動が必要になるのです。
サブスクリプションの普及
サブスクリプションサービスにおいて、カスタマーサクセスが重要視されるようになったのはSaaSと同じ理由であるといえます。例えば音楽業界において、かつては「CD」などのパッケージ販売がメインでした。しかし昨今では配信サービス、なかでも月額料金を支払えばすべてのコンテンツが利用できるというサブスクリプションサービスが台頭してきました。SaaS同様、長期間契約を継続してもらうことが利益となるため、顧客が満足した状態を維持し、契約を続けてもらう必要があります。そのため、カスタマーサクセスの活動が重要となるのです。
03カスタマーサクセスの目的
LTVの最大化
LTVとは、マーケティング用語で「ライフタイムバリュー」の略です。一人の顧客が自社に対し、生涯にわたってもたらす利益のことです。既存客が何度もリピートしてくれることでこのLTVは増加します。 市場が成熟し飽和状態にある現代においては、新規顧客・新規需要を拡大するにはコストがかかりすぎます。その活動も重要ですが自社の既存客を囲いこみ、定着化させる取り組みも同じくらい重要になります。 カスタマーサクセスは、一顧客が生涯において自社にもたらす利益を最大化することを目的としています。
アップセルの獲得
アップセルとは、顧客が現在使用している製品の上位モデルへのアップグレードや、追加オプションを利用してもらうといった追加購入のことです。カスタマーサクセスの活動目的の一つは、このアップセルを獲得することにあります。それにより顧客あたりの購入単価を上げることを目指しています。
アップセルとは、顧客が現在使用している製品の上位モデルへのアップグレードや、追加オプションを利用してもらうといった追加購入のことです。カスタマーサクセスの活動目的の一つは、このアップセルを獲得することにあります。それにより顧客あたりの購入単価を上げることを目指しています。
クロスセルの獲得
クロスセルとは、いわゆる関連販売のことです。顧客が購入した製品に組み合わせて使用すると便利な製品を推奨したり、興味があると推測される商品を紹介し購入してもらうことで顧客あたりの単価アップを目的としています
商品開発や改善の情報収集
購入を促す営業活動だけでなく「顧客の生の声」を集めることも、カスタマーサクセスの重要な業務です。顧客との密なコミュニケーションのなかから、要望や既存製品の不満点を抽出し、新製品の開発や既存商品の改善のヒントとして開発部門へ投げかけます。顧客にもっとも近い立場で活動するカスタマーサクセスの、重要なミッションであるといえます。
04カスタマーサクセスの業務
ここからは、カスタマーサクセスの具体的な業務内容について解説していきます。カスタマーサクセスの業務は、顧客が自社の製品を購入したり、サービス利用を契約したところから始まります。
導入支援
カスタマーサクセス業務の最初のステップは導入支援です。顧客が製品やサービスの利用を開始した初期の段階でつまずくと、その悪い印象は後まで根強く残るものです。そうしたことを避けるため、顧客が利用を始めてすぐに便利さやメリットを感じ取れるようにすることが導入支援の目的です。具体的には使用方法のレクチャーや便利な使い方の説明を行います。
継続利用の獲得
導入がうまくいったら次のステップは継続利用を獲得することです。具体的には定期的なフォローによるコミュニケーションのなかで、顧客に疑問点が発生していないか、機能をフルに活用できているか確認しながら、利用満足度を高めていく活動です。結果として途中解約を防ぎ、継続利用の契約を獲得することにつなげていきます。
アップセル・クロスセルの獲得
製品やサービスの利用を通じて、カスタマーサクセスは顧客と密なコミュニケーションをとっています。この関係性をもとにアップセルやクロスセルの営業をかけていきます。 ここで注意しなくてはならないのは、いわゆる「押し売り」になってしまうことです。あくまで顧客のメリットを考えて提案していくことが必要になります。コミュニケーションが十分にとれていなければ有意義な提案であっても、顧客は強引な押し売りと感じてしまいます。
05カスタマーサクセスに必要なスキル
カスタマーサクセスに必要なスキルについて解説していきます。カスタマーサクセスは顧客に信頼されるための圧倒的なコミュニケーションスキルが必要です。それ以外に必要なスキルはどのようなものがあるでしょうか。
関係構築スキル
顧客との関係構築スキルはコミュニケーションスキルと並んで、カスタマーサクセスにとって必須のものです。顧客のニーズを的確に掴み、密なコミュニケーションをとることで関係性を深めていきます。常に顧客の「成功」のために尽力する姿勢を見せることが重要です。信頼関係が構築できれば高い確率で「長く付き合える顧客」となるでしょう。
情報分析スキル
カスタマーサクセスはその活動のなかから、さまざまな顧客に関する情報を収集します。収集した情報は膨大な量に及びます。そのなかから自社の今後の商品開発や、サービスや性能の向上につながる情報を抽出し分析するスキルも必要になります。改善の必要性を開発部門に提案するには、顧客が抱えている悩みを分かりやすく伝える必要があります。そのためにも情報分析のスキルは欠かせないものとなります。
課題解決スキル
自社製品やサービスに対し顧客が抱える課題を解決するスキルも必要です。課題解決にはカスタマーサクセス部門だけで対応できないものもあります。その際には関係部署に支援を求めるなど、部署の垣根を越え調整を図ることも必要になります。
06カスタマーサクセスに適した人材とは
カスタマーサクセスの経験者の数はまだ少なく、経験者を中途採用で獲得するのは難しい状況にあります。可能であれば自社のサービスや製品に精通したスタッフを教育して、その役割を担ってもらうことが望ましいのではないでしょうか。 顧客のニーズを汲み取る力があり、提案営業において高い成果を出している営業スタッフは、カスタマーサクセスとして活躍できるポテンシャルを十分に秘めていると思われます。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
07まとめと
カスタマーサクセスは昨今注目を集めていますが、まだ一般的な概念であるとはいえません。ですが成熟市場において今後は重要性が増してくる役割であるといえます。企業が持続的に発展するためには、カスタマーサクセスの概念を理解し、人材育成に早期に取り組むことが得策であるといえるでしょう。