アンラーニングとは|意味やリスキリングとの違い、メリットを解説
本記事については、人材育成に必要と言われているアンラーニングをテーマに解説しています。人材が成長し続けるために必要とされている理由や定義についても解説していますので、人材育成計画を立案する際には参考にしてください。
- 01.アンラーニングの意味とは
- 02.アンラーニングとリスキリングの違い
- 03.アンラーニングが必要な理由
- 04.アンラーニングできる人材になる方法
- 05.アンラーニングの実践ステップ
- 06.アンラーニングを推進する際の注意点
- 07.オンライン研修|Schoo for Business
- 08.まとめ
01アンラーニングの意味とは
アンラーニングとは、「不適切になった既存の習慣・知識・価値基準などを棄て、新たに妥当性が高く、有用なものに入れ替えること」という意味です。こちらは、「みんなのアンラーニング論」の著者であり、法政大学経営学部で教授を務められている長岡 健氏によるアンラーニングの定義です。
また、アンラーニングは学習棄却とも呼ばれています。学習棄却とは、「これまで学んできた知識を捨て、新しく学び直すこと」という意味です。
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法政大学 経営学部 教授
慶應義塾大学経済学部卒、英国ランカスター大学大学院・博士課程修了(Ph.D.)。専攻は組織社会学、経営学習論。組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホルダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいる。現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中。共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』『越境する対話と学び』などがある。
02アンラーニングとリスキリングの違い
アンラーニングとリスキリングは、以下のように定義が異なります。
アンラーニング | 不適切になった既存の習慣・知識・価値基準などを棄て、新たに妥当性が高く、有用なものに入れ替えること |
リスキリング | 新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就くこと |
このように、リスキリングは新しい業務や職業に就くといったジョブチェンジを目的としています。一方で、アンラーニングはジョブチェンジが目的ではなく、環境やルールの変化に適応できるようになることが目的です。
例えば、管理職はどのような時代になっても必要な役職・役割であり、マネジメントも同様に普遍的な能力であるため、リスキリングの必要性はありません。
しかし、マネジメントの方法や考え方は、時代によって変化します。昨今ではテレワークやD&Iに適したマネジメントスキルが求められており、過去の労働集約型的なマネジメントはアンラーニングする必要があります。
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03アンラーニングが必要な理由
アンラーニングが必要な理由は、「環境・ルール・常識の変化に対応するため」と言う言葉に尽きます。そして、優秀なビジネスパーソンであればあるほど、アンラーニングは必要なのです。
一橋大学大学院客員教授の妹尾堅一郎氏は、「日本の優秀なビジネスパーソンは、問題解決症候群にかかっている人が多い」と唱えています。問題解決症候群の症状としては以下の3つがります。
- ・問題は与えられるものだと考えること
- ・その問題には絶対唯一の正解があると考えること
- ・その正解は誰かが知っていて、教えてくれると考えること
このような特徴を持っている問題解決症候群にかかっている人は、トラブルが起きた際に、短い時間で端的に答えを出すことを得意としています。
しかし、このようなタイプの人は、そもそも答えのない問題であったり、問いを自ら設定したりすることに関しては不得意な傾向にあるのです。
では、問題解決症候群にかかっている優秀なビジネスパーソンが多い日本において、アンラーニングがなぜ必要となってきているのかを以下で紹介します。
VUCAで環境・ルール・常識が変動する
現在、VUCAとは呼ばれる「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」な時代となっています。2020年以降の事例で言うと、新型コロナウイルスの流行、ウクライナ戦争、生成系AIの発達などがVUCAを象徴する出来事と言えるでしょう。
このような時代において、ルールや常識は常に変動します。これまでは定石と思われていた考え方や戦略が、機能しなくなったり、時には妨げとなる場合もあるのです。
問題解決症候群にかかっている優秀なビジネスパーソンは、突貫型で目前の課題解決においては傑出した力を発揮します。ルールが根本から揺らいでいても、目前の課題を的確に解決するので、一見問題がないように思えるのですが、気づいた時には目先の課題解決では、太刀打ちができない状態に陥ってしまうというリスクがあるのです。
そのため、新しいルールに対応するために、不適切になった既存の習慣・知識・価値基準を棄てる必要性があるのです。
04アンラーニングできる人材になる方法
「アンラーニング論 -変革をリードする人の働き方-」という、オンライン学習サービスSchooの授業で、法政大学経営学部教授の長岡 健氏は、「アンラーニングは結果にすぎない。アンラーニングの真髄はアンラーニングを無意識で行える状態になること」と述べています。
「自分の考えが正しい」・「自分の経験やスキルは今でも有用」という思考が凝り固まっている状態を解きほぐし、自分の知識やスキル・経験を日々疑えるようになっておけば、無意識的にアンラーニングを自ら行い、新しい有用なスキルを身につけるようになるのです。
つまり、「アンラーニングしなければならない状況になった際に、感度良く、変更できて、柔軟で、凝り固まっていない自分に常になっておく」と言うことが大事なのです。
それでは、このような人材になるための方法を以下で詳しく紹介します。
越境
アンラーニングしなければならない状況になった際に、感度良く、変更できて、柔軟で、凝り固まっていない自分に常になっておくためには、「越境」が大事だと、長岡教授は述べています。
越境とは、「興味のないテーマ、直接的な利害関係が薄い人物、自分とは異なる価値観などに敢えて触れていくことを通じて、自分にとってアタリマエな考え方やモノの見方を見つめ直し、自分の進むべき方向や目指したい未来像を模索すること」という意味です。
例えば、不特定多数の人が参加するセミナーや読書会に参加してみると、日常では出会わない社外の人と交流する機会を持てます。他には、副業も越境の手段として有効です。その際に、自分の置かれている環境と異なる職場状況を選ぶと良いでしょう。スタートアップに勤めている人であれば、大企業からの副業案件を引き受けることにより、自分が普段アタリマエと思っていることが覆されるはずです。
アマチュアリズム
長岡教授は、アマチュアリズムという考え方も重要と述べています。
アマチュアリズムとは、「特定の専門分野に縛られず、自身の興味・関心に基づいて、自身の仕事とは無関係のものであっても触れてみる」という考え方です。
越境と同様に、自分自身にさまざまな刺激を与えて、自分の常識を疑えるようになるために、アマチュアリズムも有効な手段と言えます。
【人事・研修対象者限定】 無料公開:アンラーニング論 -変革をリードする人の働き方-
この授業は、「みんなのアンラーニング論」の著者であり、法政大学経営学部の長岡教授を講師として招き、ビジネスパーソンにおける学習の問題点や、アンラーニングが必要なビジネスパーソンの特徴、アンラーニングできる人材になる方法について解説いただいています。
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法政大学 経営学部 教授
東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、英国ランカスター大学大学院・博士課程修了(Ph.D.)。専攻は組織社会学、経営学習論。組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホールダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいる。現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中。共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』『越境する対話と学び』などがある。
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05アンラーニングの実践ステップ
次にアンラーニングを実施する際の実行ステップを解説します。実際にアンラーニングを導入する際には、どの様なステップでの実施が必要かについて理解し、自社の導入の際の参考にしてください。
ステップ1|個人単位での内省を実施する
最初に行うのは、個人単位での内省です。自分自身の経験や知識について整理を行い古くなっているもの、新しいものに区別をしていきます。特に古いと感じるものは、一度捨てることになるため、しっかりと時間をかけて整理を行う必要がある点に注意が必要です。同時に自分自身では捨てきれない「こだわり」についても整理をします。今までしていることが、「会社のルールとして確定されている」「決まっていると思う。」「そうだと聞いている。」などの概念も全て整理対象となります。内省は非常に難しいと言われているため、一人で全てをさせることではなく慣れるまでの間は、人事部門やチームメンバーによるサポートを行い対応していきましょう。
ステップ2|自分自身のクリティカルシンキングを行う
クリティカルシンキングとは「物事の前提の正誤を検証したのち、その事象の本質を見極めていくこと」です。内省の後には、自分自身をクリティカルシンキングにより整理していくことになります。自分自身が学んだことを整理した上で、今後のビジネスにおいて必要かどうかについて整理をします。実際には、既に使わない知識や変化する経験を捨てる為の整理を行うと理解しましょう。
ステップ3|気付きの場を提供し参加する
外部機関なども利用し、新しい知識習得や意見交換ができる場への参加を促します。自分自身だけでアンラーニングをし続けることは大変難しいため気付きを得れる場所への参加は、大きな刺激になります。周囲の方からの意見を聞くことで、自分のアンラーニングを改良させより促進することが可能になると理解しておきましょう。
ステップ4|効果を測定する
アンラーニングは、1度で終了することはありません。繰り返し行うことで継続した成長が期待できます。そのため、定期的な効果測定とアンラーニングの実施を繰り返して行う必要があります。アンラーニングの効果測定としては、新しい知識の習得度合いと活用度合で測定を行います。決まった形式がある訳ではないため、面談やヒアリングを通して測定を行っていくと理解しておきましょう。
06アンラーニングを推進する際の注意点
次にアンラーニングを推進するうえでの注意点を解説します。アンラーニングを推進することにより、どの様な点を注意すべきかを理解しておかなければ導入後の大きな問題になる可能性があります。予め注意すべき項目を理解しておくことは重要です。
「学習棄却」によるモチベーションの低下
アンラーニングを導入することで最も注意すべきは、モチベーションの低下です。学習棄却を行うことで、今までの学びを捨てることになります。この学習棄却を行うプロセスにおいて今まで自分が学んだことは無駄である、否定されていると捉える人が出てしまう可能性があります。この否定されていると感じることでモチベーションは格段に下がってしまいます。一度、下がってしまったモチベーションを高めることは非常に労力を必要としてしまうため、学習棄却は否定ではなく新たな成長のために必要なことである点をしっかりと説明する必要があると理解しておきましょう。
リフレクションと反省の混同を避ける
アンラーニングとは「これまで学んできた知識を捨て新しく学び直すこと」と定義できます。このアンラーニングの目的には、時代遅れの知識を捨て新しい知識を習得することですが、この時代遅れの知識を捨てるという点で、自分自身の知識は今どきではないと反省をする方がいます。アンラーニングは、反省ではなくリフレッシュをすることにこそ意味があります。今までの学びをリフレッシュし新しく学んだ知識を習得する受け皿を作ると理解していく必要がある点に注意していきましょう。
07オンライン研修|Schoo for Business
Schoo for Businessは、国内最大級8,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。新入社員研修や管理職研修はもちろん、コンプライアンス研修からDX研修まで幅広く実施できることが特長です。また、eラーニングによる研修のため、日々の業務で忙しい方でも隙間時間で受講できます。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,000本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,500円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
Schoo for Businessの特長
研修設定や受講管理も簡単で、研修に関する無駄な工数を大幅に削減できるので、研修効果を高めるのに必要なグループワークやディスカッションといったアウトプットの時間に研修担当者の工数を充てることができるようになります。
また、カスタマーサクセスの支援も充実しているので、研修に関する悩みや課題などをメールやチャットで相談いただくことが可能です。
大企業から中小企業まで幅広く導入
Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで幅広く、ご導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、IT人材育成もあれば階層別研修やDX研修としての利用、自律学習としての利用やキャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
08まとめ
本記事では、アンラーニングをテーマに定義やメリットなどについて解説しています。アンラーニングは導入が比較的難しい人材育成方法と言われており定着までには時間が必要です。本記事を参考にアンラーニングの導入を検討し継続的な人材育成と企業成長をはかってください。
▼【無料】働き方改革から学び方改革へ~学ぶ時間の創出で離職率が低下した事例~|ウェビナー見逃し配信中
働き方に関する制度改善を多数行ってこられた株式会社クロスリバー 代表取締役 越川慎司氏をお招きし、「残業削減ではない方法で働き方改革を行い、社員の自発性と意欲を著しく向上させ、離職率を低下させるための自律学習の制度設計」について語っていただいたウェビナーのアーカイブです。同社の調査・分析内容と自律学習の制度設計を深堀ります。
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登壇者:越川 慎司様株式会社クロスリバー 代表取締役
ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。