公開日:2021/07/20
更新日:2023/09/15

アンラーニングとは?意味やリスキリングとの違い、メリットを解説

アンラーニングとは?意味やリスキリングとの違い、メリットを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

本記事については、人材育成に必要と言われているアンラーニングをテーマに解説しています。人材が成長し続けるために必要とされている理由や定義についても解説していますので、人材育成計画を立案する際には参考にしてください。

 

01アンラーニングの意味とは

アンラーニングの定義

アンラーニングとは、「不適切になった既存の習慣・知識・価値基準などを棄て、新たに妥当性が高く、有用なものに入れ替えること」という意味です。こちらは、「みんなのアンラーニング論」の著者であり、法政大学経営学部で教授を務められている長岡 健氏によるアンラーニングの定義です。

また、アンラーニングは学習棄却とも呼ばれています。学習棄却とは、「これまで学んできた知識を捨て、新しく学び直すこと」という意味です。

  • 法政大学 経営学部 教授

    東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、英国ランカスター大学大学院・博士課程修了(Ph.D.)。専攻は組織社会学、経営学習論。組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホールダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいる。現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中。共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』『越境する対話と学び』などがある。
 

02アンラーニングとリスキリングの違い

アンラーニングとリスキリングは、以下のように定義が異なります。

アンラーニング 不適切になった既存の習慣・知識・価値基準などを棄て、新たに妥当性が高く、有用なものに入れ替えること
リスキリング 新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就くこと

このように、リスキリングは新しい業務や職業に就くといったジョブチェンジを目的としています。一方で、アンラーニングはジョブチェンジが目的ではなく、環境やルールの変化に適応できるようになることが目的です。

例えば、管理職はどのような時代になっても必要な役職・役割であり、マネジメントも同様に普遍的な能力であるため、リスキリングの必要性はありません。

しかし、マネジメントの方法や考え方は、時代によって変化します。昨今ではテレワークやD&Iに適したマネジメントスキルが求められており、過去の労働集約型的なマネジメントはアンラーニングする必要があります。

 

03アンラーニングが必要な理由

アンラーニングが必要な理由は、「環境・ルール・常識の変化に対応するため」と言う言葉に尽きます。そして、優秀なビジネスパーソンであればあるほど、アンラーニングは必要なのです。

一橋大学大学院客員教授の妹尾堅一郎氏は、「日本の優秀なビジネスパーソンは、問題解決症候群にかかっている人が多い」と唱えています。問題解決症候群の症状としては以下の3つがります。

  • ・問題は与えられるものだと考えること
  • ・その問題には絶対唯一の正解があると考えること
  • ・その正解は誰かが知っていて、教えてくれると考えること

このような特徴を持っている問題解決症候群にかかっている人は、トラブルが起きた際に、短い時間で端的に答えを出すことを得意としています。

しかし、このようなタイプの人は、そもそも答えのない問題であったり、問いを自ら設定したりすることに関しては不得意な傾向にあるのです。

では、問題解決症候群にかかっている優秀なビジネスパーソンが多い日本において、アンラーニングがなぜ必要となってきているのかを以下で紹介します。

VUCAで環境・ルール・常識が変動する

現在、VUCAとは呼ばれる「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」な時代となっています。2020年以降の事例で言うと、新型コロナウイルスの流行、ウクライナ戦争、生成系AIの発達などがVUCAを象徴する出来事と言えるでしょう。

このような時代において、ルールや常識は常に変動します。これまでは定石と思われていた考え方や戦略が、機能しなくなったり、時には妨げとなる場合もあるのです。

問題解決症候群にかかっている優秀なビジネスパーソンは、突貫型で目前の課題解決においては傑出した力を発揮します。ルールが根本から揺らいでいても、目前の課題を的確に解決するので、一見問題がないように思えるのですが、気づいた時には目先の課題解決では、太刀打ちができない状態に陥ってしまうというリスクがあるのです。

そのため、新しいルールに対応するために、不適切になった既存の習慣・知識・価値基準を棄てる必要性があるのです。

 

04アンラーニングできる人材になる方法

「アンラーニング論 -変革をリードする人の働き方-」という、オンライン学習サービスSchooの授業で、法政大学経営学部教授の長岡 健氏は、「アンラーニングは結果にすぎない。アンラーニングの真髄はアンラーニングを無意識で行える状態になること」と述べています。

「自分の考えが正しい」・「自分の経験やスキルは今でも有用」という思考が凝り固まっている状態を解きほぐし、自分の知識やスキル・経験を日々疑えるようになっておけば、無意識的にアンラーニングを自ら行い、新しい有用なスキルを身につけるようになるのです。

つまり、「アンラーニングしなければならない状況になった際に、感度良く、変更できて、柔軟で、凝り固まっていない自分に常になっておく」と言うことが大事なのです。

それでは、このような人材になるための方法を以下で詳しく紹介します。

越境

アンラーニングしなければならない状況になった際に、感度良く、変更できて、柔軟で、凝り固まっていない自分に常になっておくためには、「越境」が大事だと、長岡教授は述べています。

越境とは、「興味のないテーマ、直接的な利害関係が薄い人物、自分とは異なる価値観などに敢えて触れていくことを通じて、自分にとってアタリマエな考え方やモノの見方を見つめ直し、自分の進むべき方向や目指したい未来像を模索すること」という意味です。

例えば、不特定多数の人が参加するセミナーや読書会に参加してみると、日常では出会わない社外の人と交流する機会を持てます。他には、副業も越境の手段として有効です。その際に、自分の置かれている環境と異なる職場状況を選ぶと良いでしょう。スタートアップに勤めている人であれば、大企業からの副業案件を引き受けることにより、自分が普段アタリマエと思っていることが覆されるはずです。

アマチュアリズム

長岡教授は、アマチュアリズムという考え方も重要と述べています。

アマチュアリズムとは、「特定の専門分野に縛られず、自身の興味・関心に基づいて、自身の仕事とは無関係のものであっても触れてみる」という考え方です。

越境と同様に、自分自身にさまざまな刺激を与えて、自分の常識を疑えるようになるために、アマチュアリズムも有効な手段と言えます。


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この授業は、「みんなのアンラーニング論」の著者であり、法政大学経営学部の長岡教授を講師として招き、ビジネスパーソンにおける学習の問題点や、アンラーニングが必要なビジネスパーソンの特徴、アンラーニングできる人材になる方法について解説いただいています。

 
  • 法政大学 経営学部 教授

    東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、英国ランカスター大学大学院・博士課程修了(Ph.D.)。専攻は組織社会学、経営学習論。組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホールダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいる。現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中。共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』『越境する対話と学び』などがある。

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05アンラーニングを導入するメリットとは

次にアンラーニングを導入するメリットについて解説します。アンラーニングを導入することで企業において生じるメリットとは何かを理解することで、自社においてアンラーニングを導入するべきか判断する材料にしていきましょう。

経験値の高い人材の意識改革を実現

経験値が高い人材は、変化を好まない人が多いと言われています。アンラーニングを導入することで価値観に変化を起こし意識改革を実現します。経験値が多いことは決して悪い事ではありませんが、その経験に固執し物事を決めつけてしまう可能性があります。こうした事態を防ぎ、かつ、新しい価値観の中で経験を活かすことで今まででは実現できなかったサービスの提供などを実現可能にすることに期待が持てます。経験値の高い人にこそアンラーニングを推奨したいと考えがちですが、抵抗勢力にもなりえる存在である点には注意が必要です。こうした場合には、アンラーニングを取り入れる意味や目的を繰り返し伝える方法をとり、理解を促進していきましょう。

既存業務の効率化を促進

既存業務の効率化にもアンラーニングは役立ちます。今までのルールや思い込みを捨てることで新たな気付きや発見を行うことが可能であり、かつ、改めて業務フローを整理し直しより効果的なフローへの変更を行うことも可能です。この様に既存業務の見直しを行うことで業務の効率化を促進することが可能になることを理解しておきましょう。

マネジメント力強化による収益性の向上

従来より行っていた評価を見直す際にもアンラーニングは役立ちます。新たに部下の良さを見出したり、マネジメント方法を見直すことでマネジメント力が向上し積極的な働き方による収益性の向上に寄与することが期待できます。マネジメント方法についてもアンラーニングを行うことで今までにない評価軸の構築や気付きが得られることを理解し経営層を含めたアンラーニングを推進していきましょう。マネジメント力の強化は企業成長に欠かせない要素であるため、アンラーニングを取り入れた効果には大きな期待がもてます。

従業員の成長

たとえば、デジタルマーケティングなどの業界ではツールのアップデートに合わせて、必要な知識をつけていく必要があるなど、変化の激しい時代において、これまで培ってきた知識やスキルは常にアップデートしていく必要があります。また、アンラーニングを実施することで、これまでの進め方ややり方を捨て、新たな手法を習得することで、個人としてもスキルアップをすることができます。

 

06アンラーニングを導入する上での注意点とは

次にアンラーニングを導入するうえでの注意点を解説します。アンラーニングを導入することにより、どの様な点を注意すべきかを理解しておかなければ導入後の大きな問題になる可能性があります。予め注意すべき項目を理解しておくことは重要です。

「学習棄却」によるモチベーションの低下

アンラーニングを導入することで最も注意すべきは、モチベーションの低下です。学習棄却を行うことで、今までの学びを捨てることになります。この学習棄却を行うプロセスにおいて今まで自分が学んだことは無駄である、否定されていると捉える人が出てしまう可能性があります。この否定されていると感じることでモチベーションは格段に下がってしまいます。一度、下がってしまったモチベーションを高めることは非常に労力を必要としてしまうため、学習棄却は否定ではなく新たな成長のために必要なことである点をしっかりと説明する必要があると理解しておきましょう。

リフレクションと反省の混同を避ける

アンラーニングとは「これまで学んできた知識を捨て新しく学び直すこと」と定義できます。このアンラーニングの目的には、時代遅れの知識を捨て新しい知識を習得することですが、この時代遅れの知識を捨てるという点で、自分自身の知識は今どきではないと反省をする方がいます。アンラーニングは、反省ではなくリフレッシュをすることにこそ意味があります。今までの学びをリフレッシュし新しく学んだ知識を習得する受け皿を作ると理解していく必要がある点に注意していきましょう。

 

07アンラーニングの実践ステップ

アンラーニングの実践手順

次にアンラーニングを実施する際の実行ステップを解説します。実際にアンラーニングを導入する際には、どの様なステップでの実施が必要かについて理解し、自社の導入の際の参考にしてください。

ステップ1|個人単位での内省を実施する

最初に行うのは、個人単位での内省です。自分自身の経験や知識について整理を行い古くなっているもの、新しいものに区別をしていきます。特に古いと感じるものは、一度捨てることになるため、しっかりと時間をかけて整理を行う必要がある点に注意が必要です。同時に自分自身では捨てきれない「こだわり」についても整理をします。今までしていることが、「会社のルールとして確定されている」「決まっていると思う。」「そうだと聞いている。」などの概念も全て整理対象となります。内省は非常に難しいと言われているため、一人で全てをさせることではなく慣れるまでの間は、人事部門やチームメンバーによるサポートを行い対応していきましょう。

ステップ2|自分自身のクリティカルシンキングを行う

クリティカルシンキングとは「物事の前提の正誤を検証したのち、その事象の本質を見極めていくこと」です。内省の後には、自分自身をクリティカルシンキングにより整理していくことになります。自分自身が学んだことを整理した上で、今後のビジネスにおいて必要かどうかについて整理をします。実際には、既に使わない知識や変化する経験を捨てる為の整理を行うと理解しましょう。

ステップ3|気付きの場を提供し参加する

外部機関なども利用し、新しい知識習得や意見交換ができる場への参加を促します。自分自身だけでアンラーニングをし続けることは大変難しいため気付きを得れる場所への参加は、大きな刺激になります。周囲の方からの意見を聞くことで、自分のアンラーニングを改良させより促進することが可能になると理解しておきましょう。

ステップ4|効果を測定する

アンラーニングは、1度で終了することはありません。繰り返し行うことで継続した成長が期待できます。そのため、定期的な効果測定とアンラーニングの実施を繰り返して行う必要があります。アンラーニングの効果測定としては、新しい知識の習得度合いと活用度合で測定を行います。決まった形式がある訳ではないため、面談やヒアリングを通して測定を行っていくと理解しておきましょう。

 

08アンラーニングを活用する際の人材育成方法

アンラーニングを利用する際の人材育成方法について解説します。アンラーニング時にモチベーションを大きく下げてしまう可能性がある点に注意しながら、人材育成を行う必要があると理解しておきましょう。

学びの機会提供による人材成長

今まで学んできたことを捨て新しい知識を習得することを目的としているため、新しい知識を学ぶ場を提供する必要があります。定期的な学びの場の提供により、常に新しい知識を習得し業務に活かす環境を提供することで、アンラーニングの利用を促進します。研修などの場を通して学んだだけでは意味がありません。人材を成長させるためには、学びの場と実践の場の両方を揃える必要があると理解しておきましょう。

評価制度への反映による成長度合い測定

評価制度を見直しアンラーニングの対応度合い、成長度合いにおける評価を実施します。学びを繰り返しても実践で役立たないのであれば、アンラーニングを行った意味がありません。アンラーニングを実践することで新しい知識を吸収し実践で役立てている度合については高く評価しておくことも重要です。


 

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09まとめ

本記事では、アンラーニングをテーマに定義やメリットなどについて解説しています。アンラーニングは導入が比較的難しい人材育成方法と言われており定着までには時間が必要です。本記事を参考にアンラーニングの導入を検討し継続的な人材育成と企業成長をはかってください。

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  • 登壇者:越川 慎司様
    株式会社クロスリバー 代表取締役

    ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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