VUCAとは?注目される理由や必要なスキルについて解説する
時代の変化が激しい昨今、予測不可能な時代に入ったと言われています。この時代には、何が必要なのでしょうか。本記事では、予測不可能な時代だからこそ必要となるVUCAの概念と必要な4つの視点について解説していきます。
- 01.VUCAとは
- 02.VUCAが注目された背景
- 03.VUCA時代の変化
- 04.VUCA時代に必要なスキル
- 05.VUCA時代に企業に必要な要素
- 06.学び続ける組織をつくるSchoo for Business
- 07.まとめ
01VUCAとは
VUCAとは、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を指す言葉です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってVUCA(ブーカ)と呼ばれています。
インターネットの普及に始まり、AIやICT技術の急速な進化を変動性が象徴しています。また、不確実性は新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻のように予測がつかない状態、複雑性は働き方や価値観などが多様化していることの象徴です。そして、これらが揃った際にAmbiguity(曖昧性)という状態になるとされています。
この章では、VUCAの頭文字となっている言葉について、具体例とともに解説します。
Volatility(変動性)
Volatilityは「変動性」「激動性」を意味します。これまでは、大きな力やお金を持った組織が多額の広告費を支払うことでテレビやラジオ、新聞や雑誌、電車の中吊り広告など様々な媒体を通じて自社の商品やサービスを紹介してきました。その結果、販売促進の方法が確立し、時には流行を作り出してきました。しかし、現在では、個人による情報の受発信が可能となり、消費者側が主体で情報を入手し、取捨選択を行う時代となりました。その時代に合わせた手法や、主流となる媒体の成長によって、売り手と買い手の関係性は変化します。このような変動、流動性に対応できることが求められます。
Uncertainty(不確実性)
Uncertaintyは「不確実性」を意味します。経済や社会がグローバル化することで世界は大きな発展をとげた影響がある中で、互いに強く関係し合うことより、一つの国の経済的ダメージが世界規模に発展することもあります。このような状況では、世界中のどこかで何かが起きる不安が起きています。こうした予測しきれない「不確実性」に対応していかなければならない時代となりました。
Complexity(複雑性)
Complexityは「複雑性」を意味します。グローバル化にともない競合や協働の関係が世界規模となり、市場も世界各国を紐づけた変動性、多様性、細分化の促進も相まって、非常に複雑な関係性が構築されています。この複雑化した社内の中でビジネスを成功させるには、より一層の変動性のあるビジネス展開が必要になってきています。
Ambiguity(曖昧性)
Ambiguityは「曖昧性」を意味します。Volatility(変動性・激動性)によって、商品やサービスの需要がいつまで続くかの見通しを立てることが困難になり曖昧な状態が続くビジネス環境が構築されています。Ambiguityは不透明性と訳されることもあり、その意味合いは同じとして使用されています。
02VUCAが注目された背景
VUCAという言葉は、経済学者であるウォーレン・ベニスとバートン・ナヌスが著書「Leaders. The Strategies For Taking Charge」で1985年に初めて使用されたとされています。その後、軍事用語として使用され始めました。
U.S. Army Heritage and Education Center(USAHEC)の調査によると、1988年度にはVUCAという用語が米軍のカリキュラムに組み込まれていることが示されています。そして、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件を契機にVUCAという言葉が頻繁に使用され始めたと言われています。
一方で、VUCAがビジネスの場および世界で注目され始めたのは、2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で「VUCA World」と使用されたことがきっかけです。日本においては、2019年に経済産業省が「人材競争力強化のための9つの提言」を出し、その中でVUCAという表現を使用したことで急速に認知度が高まりました。
03VUCA時代の変化
VUCA時代とも言われる昨今、社会ではどのような変化が起きているのでしょうか。これまでも不透明な時代、変化が激しい時代と呼ばれる時代がありました。では、今回起きている時代の変化とは具体的には、どのような変化なのでしょうか。次に、時代の変化がどうおきているかについて解説していきます。
モノづくり社会の限界
1950年代から日本を支えてきた製造業ですが、モノが溢れコト社会への推移にともなって、停滞が懸念されています。日本経済を支え続けてきた製造業は変化の岐路に立っています。日本の根幹産業が危機に瀕していることは、これまでの時代変化と大きく異なる点です。日本では、低迷している製造業ですが北米やアジアの企業は伸び続け、欧州の企業はアップダウンを繰り返しながらも結果的には伸びています。日本だけにおきている変化は、今までにはなかった特徴のある変化です。
終身雇用の終焉
日本の雇用制度の柱であった終身雇用制は終焉を迎えています。年功序列制の賃金の廃止などもあり、長く勤めることが美徳ではなく、いかに生産性をあげるかがテーマとなってきていることも大きな変化の1つです。人生100年時代が到来し、長く働き続けることを希望する人が増えても、同じ職場で働き続けることができない可能性も出ています。このような変化は、ここ数年来の変化であり、それ以前にはありませんでした。
デジタル社会への推移
働き方の多様化が進み、リモートワークなどの促進を受け、デジタル社会への変化が急激に進んでいます。従来の対面式会議はWEB会議となり、事務所に出勤することなく業務運営ができる環境が整いだしています。デジタル社会への推移も急激に進む中、より利便性の高い商品の販売なども繰り広げられている点も、ここ数年来におきた大きな変化の1つです。
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【関連記事】DXが社会にもたらす変化とは?その影響や取り組みについて紹介する
グローバリゼーション
グローバリゼーションの推進により、国という垣根を超えた政治・文化・経済などが動く時代となりました。ひとつの情報があっという間に世界中に広がる時代は、情報化社会の一つの効果であるとも言われ、私たちの生活をも大きく変える要素となっています。この動きによりビジネス社会もグローバル化が加速し、国内だけでサービス展開をすることに限界を感じている企業も増えてきました。同時に、競争力がなくては生き残れない時代となったことで企業単位だけはなく個人単位での競争力強化が必須とされています。
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04VUCA時代に必要なスキル
不確実かつ急激な変化が起きるVUCA時代において、個人に求められるスキルは変化しています。この章では、株式会社エイトアロウズ代表取締役の河野氏が講師として登壇したオンライン学習サービスSchooの「VUCA時代の仕事のキホン」という授業をもとに、VUCA時代に必要なスキルや能力を詳しく紹介します。
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株式会社アイデミー執行役員、株式会社エイトアロウズ代表取締役
株式会社アイデミー執行役員、株式会社Eight Arrows代表取締役、グロービス経営大学院客員准教授。著書にシリーズ140万部を突破した『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』がある。
問題解決力
VUCA時代には、答えのない問いに答えを出す能力が求められます。予測がつかない時代においては、想像もしていなかった問題が急に発生します。この問題は過去の成功体験で解決できる可能性は低く、解決策が全く見えない状態の中でも、的確に状況を判断し、問題を解決できる能力が求められているのです。
問題解決力が問われた事例として、新型コロナウイルスへの対応がありました。多くの飲食店が営業不可能な状態に陥った中で、デリバリーという手法で営業を続けることを即決できた飲食店と従来の店舗型ビジネスに固執してしまった飲食店で明暗がはっきりと分かれました。このように誰も予測できない問題が急に発生するVUCA時代において、高い問題解決力を備えた人材は今後さらに市場価値が高まると思われます。
ダイバーシティ&インクルージョン
答えのない問いに答えを出すためには、他者の意見を参考にしながら最適解を出す必要があります。そのために、真の意味でダイバーシティ&インクルージョンという考えが求められるのです。
日本においてダイバーシティ&インクルージョンという言葉は、しばしばジェンダーの問題や外国人労働者の問題において使用されます。しかし、真の意味でのダイバーシティ&インクルージョンは「価値観や専門性の多様性を受け入れ、活かすこと」です。自身の専門知識には限りがあるので、社内の様々な知見を受け入れ、活かすことのできる人材がいることで、解決できる課題が広がります。
学び続ける能力
VUCAと呼ばれる時代において、スキルはすぐに陳腐化します。昨今でも、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の発達により、多くの仕事がAIに置き換えることが可能になりました。そして、大規模言語モデルはこの流れをさらに加速させると言われています。
このような環境下では、自身のスキルが陳腐化することを前提に、学び続けて成長し続ける能力が欠かせません。岸田政権がリスキリングを国として支援すると発表したように、学び続ける人材を増やすことは国の成長を維持するためにも必要なこととされているのです。
また、ただ学ぶだけでは意味がなく、社会の変化を感じ取りながら需要を意識して学ぶことを決めたり、社会の変化に影響されない普遍的なスキルを学んだりと、学習内容を戦略的に決める能力も同時に必要となります。この能力は戦略的学習力と呼ばれ、2030年に仕事で必要なスキルで1位に選ばれています。
OODA
OODAとは、変化の速い状況において強みを発揮する意思決定・行動のためのフレームワークです。観察する(Observe)・状況を理解する(Orient)・決める(Decide)・動く(Act)の頭文字をとって、OODA(ウーダ)またはOODAループと呼ばれています。
Observe(観察) | 市場や顧客など外部環境をよく観察し「データ」を収集する |
Orient(理解) | 集めた生データを基に、今何が起きているのかを把握,理解する |
Decide(決定) | 理解した状況に対して、具体的な方針やアクションプランを決定する |
Act(行動) | プランを基に、実行に移す |
変則不可能な時代だからこそ、OODAループは観察と状況判断から始まり、そしてそのフェーズを重要視します。VUCA時代には、すべてを計画通りに行うことは以前よりも格段に難しくなっており、現場で状況を的確に判断し、柔軟に対応していくことが必要になっているのです。
▼OODAループについて詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】米空軍発祥のOODAループとは?構成する要素や導入するメリットを解説
OODAループを動画で学ぶ
VUCA時代における思考法として注目が集まっている「OODAループ思考法」を1から学ぶことのできる授業です。この授業では、理論の解説とワークを通して、VUCAの世界で自ら考えて行動するために、自らが改善すべき課題は何か考えることができます。
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アイ&カンパニー・ジャパン代表 経営コンサルタント
経営コンサルタント、経営者、元シリコンバレー・ストラテジスト。米国において、シスコシステムズ本社のマネージングディレクターとして次世代エコシステムの構築、システムロックイン戦略の策定をグローバルで指揮。OODAループをはじめ全体最適・自律分散の先進的な経営モデルの提言と導入を主導。
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05VUCA時代に企業に必要な要素
VUCA時代では、現状維持のままでいると時代に取り残されてしまう可能性があります。では、そんな時代に対応していくために企業にはどのような要素が必要なのでしょうか。ここでは主なものを3つ解説します。
経営のビジョンを明確にする
企業は予測不可能な時代であることを受け入れつつも、ビジョンが明確になっていないとその時々の情勢に右往左往してしまい、一貫した対応ができません。企業や人材がどこに向かうべきなのか、出すべき成果をビジョンとして明確に打ち出し、必要に応じて修正をかけていくこととが大切です。
▼経営ビジョンについて詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】ビジョンとは?共有するメリットからビジョンマネジメントの方法まで詳しく解説
これまでのマネジメントからの脱却
日本の企業はこれまで終身雇用や年功序列といった長期的に安定したマネジメントシステムが一般的でした。しかし、昨今では企業を取り巻く環境が変化し、働き方や価値観が多様化している時代のため、それらに対応できるマネジメントシステムの構築が必要です。 多様な人材をどのように採用し、育成していくかといった人材マネジメントを企業が率先して改革を進めていくことが重要です。
迅速な意思決定
VUCA時代では、経営環境は素早く変化していきます。そのため、十分な情報があるのを待ってから意思決定をしていては、手遅れになってしまうことも考えられます。そのため、できるだけ早い段階で意思決定をして対応していくことが求められます。 そのためには、前述した柔軟な対応力や問題解決力を持った人材が必要になってくるでしょう。
学び続ける組織をつくる
VUCA時代において、これまでのような研修とOJTを中心として人材開発だけでは企業の成長を支援するには十分ではありません。管理職や先輩社員の中に答えがない問題の解決策はOJTでは教えられず、社員に今後必要なスキルを人事が予測することも不可能なため研修だけでは対応しきれないのです。そのため、社員が自分に必要なスキルを自ら学ぶような状態を目指さなくてはなりません。
しかし、社員も自身のプライベートの時間を削って、自己研鑽に充てるとは考えづらく、自分の意志だけで学び続けることも難しいでしょう。したがって、組織として社員が自ら学ぶ組織風土をつくる必要があります。また、社員同士が自発的に学び合い文化をつくることができれば、エンゲージメント向上やイノベーション創発にも寄与します。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06学び続ける組織をつくるSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約8,500本の講座を用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
Schoo for Business |
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受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,500本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
大企業から中小企業まで4,000社以上が導入
Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで4,000社以上に導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
研修と自己啓発を両方行うことができる
schoo for Businessは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約8,500本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
また、研修でも利用することによってSchooの楽しく学べる授業に触れてもらう機会が増えるので、研修と自己啓発の相乗効果で主体的に学び・成長する社員を増やすことができます。
07まとめ
本記事は、VUCAをテーマに概念の理解や社員育成の観点について解説しています。予測不可能な時代だからこそ、その時代にどう対応していくべきかを企業は考える必要性があります。また、働く側も変化に遅れないように知識の習得や変化への対応力をあげていく必要があることを理解し、変化を受け入れていきましょう。本記事が、そうした変化を受け入れるきっかけとなり時代を生き残れるための情報源となれれば幸いです。より一層変化が訪れる時代だからこそ、変化を楽しんでいきましょう。