リスキリングとは?デジタル時代の人材戦略に欠かせない手法を徹底解説

急激に変化し続ける市場やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応のため、企業では新たなこれらの業務を行うことのできる人材を戦略的に育成しなければなりません。この記事ではこのような時代に欠かせない人材戦略、リスキリングについて詳しく解説します。
- 01.リスキリングとは?
- 02.リスキリングが必要とされる背景
- 03.企業がリスキリングを行うメリット
- 04.リスキリングの始め方
- 05.企業にリスキリングを導入する上での課題
- 06.リスキリングに取り組んでいる企業の事例
- 07.Schooを活用してリスキリングを推進
- 08.まとめ
01リスキリングとは?
リスキリングとは、経済産業省によると「現役のビジネスパーソンの学び直し」のことを指します。
より詳しく言うと、リスキリングとは新しい職業に就くためや、今の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために、新しいスキルを獲得することです。近年ではDXへの対応で新しく生まれる業務や、仕事の進め方の変化に対処するためにリスキリングが行われることが多くなっています。 リスキリングは、「これからも企業が市場において価値を創出し続けるために、従業員がスキルを身に着ける」というように、学ぶ目的がはっきりしているのが特徴です。
▶︎参考:経済産業省の取組|経済産業省
リスキリングとリカレント教育の違い
リカレントとは、「社会人が学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと」を意味します。リスキリングは業務と並行しながら新たなスキルを身につけることを意味する一方で、リカレント教育は一度仕事を離れて大学などの教育機関で学び直すこととして使われることが多いです。
リスキリングとアップスキリングの違い
リスキリングと並んで良く使われる言葉がアップスキリングですが、アップスキリングはすでに持っているスキルを高め、生産性やこなせる業務の難易度を上げることを指すため、リスキリングとは異なります。 企業におけるDXの推進において、リスキリングとアップスキリングは両方必要となるでしょう。
リスキリングとアンラーニングの違い
アンラーニングは、これまでに培った仕事の経験則や知識を一旦捨て去り、新しい状態に順応するために学ぶことを意味します。時代の変化が激しく、過去の成功体験を踏襲するだけでは求めている成果を出せないという事態に陥ることも珍しくなくなりました。このような時代背景からもアンラーニングできる能力は、かなり重要視されてきています。リスキリングは新しいスキル・知識を習得するという意味合いですが、アンラーニングは過去のスキル・知識を一旦手放すという意味合いが含まれていることが大きな違いです。
02リスキリングが必要とされる背景
企業でリスキリングが必要とされる背景には、DXの推進と、日本企業が一度雇用した従業員を法律上解雇しにくいという問題を抱えていることがあります。 DXの推進については、2020年8月に株式会社帝国データバンクが行った「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」で、企業の75.5%がコロナ禍を契機にデジタル施策を推進したことがわかりました。 取り組み内容としては、オンライン会議の設備導入が60.8%で最も多く、テレワークなどのリモート設備導入52.7%、ペーパーレス化の推進36.2%と続いています。 きっかけはコロナ対策かもしれませんが、今後の企業にはデジタル施策で生産性の向上や新しいビジネスモデルの開発、付加価値の高い商品やサービスの創出などが求められるため、それを支える人材戦略としてのリスキリングは欠かせないものとなるでしょう。 また日本企業の雇用慣行を考えると、DXの推進をきっかけに今後は不要となるスキルや能力しか持たない人材を解雇するのは難しいため、そのような従業員にはリスキリングを行ってDXに対応できる人材として活用する方針の企業が多いのです。
03企業がリスキリングを行うメリット
企業がリスキリングを行うメリットは以下の3つが挙げられます。
- ・離職率が下がり企業文化を守ることができる
- ・人材採用・育成にかかるコストを削減できる
- ・生産性が向上する
それぞれについて詳しく解説します。
離職率が下がり企業文化を守ることができる
リスキリングでは企業がそれまで育成してきた人材を活用するため、企業がそれまで築き上げてきた社風や企業文化を継承することができます。 例えば既存の従業員を解雇してDXを推進した場合、デジタル施策は急激に進みますが、必ずしも企業理念やターゲット顧客のニーズに合った形にはならないかもしれません。 しかし既存の従業員をリスキリングしてDXを推進すると、自社の従業員や顧客に合った形で、デジタル施策を進めることができるのです。
人材採用・育成にかかるコストを削減できる
新たな人材を採用してDXを推進する場合、既存の従業員を活用してリスキリングするより採用や育成にコストがかかります。 人材戦略部門にかかるコストは営業部門などと異なり軽視しがちですが、採用や育成にかかる経費を抑えるためにも、リスキリングを上手く活用することが求められるのです。
生産性が向上する
リスキリングをすることでDXが少しずつ推進されていくと、現場の生産性が向上します。 今まで人間の手でしかできないと思われていたことが、新しいテクノロジーを活用することで素早く正確に行えるようになり、従業員のタスクが減少して本来取り組むべき業務に専念できるようになるためです。
04リスキリングの始め方

企業にリスキリングをスムーズに導入するための始め方を、4ステップに分けてご紹介します。
スキルを可視化する
最初に新たに従業員に習得してほしいスキルを可視化します。 スキルの可視化とは、新たな業務をするために必要なスキルの内容や難易度を明確化することです。 また、従業員が現在持っているスキルも同じように可視化し、それを一覧できるスキルデータベースやスキルマップを作成することが望ましいでしょう。 可視化された2つのスキルを比較することで、新しく必要なスキルと現在従業員が持っているスキルのギャップが明確にわかります。
学習プログラムを準備・提供する
スキルを可視化することでわかった、新しく必要なスキルと現在従業員が持っているスキルのギャップを埋めるために、学習プログラムを準備します。 この学習プログラムを準備する際、日本の企業では自社で制作しようとしがちですが、必ずしもそうする必要はありません。 なぜなら、ビジネスアプリケーションを多数提供しているMicrosoftやGoogleでは、それを学習するためのコンテンツも同時に提供していたり、オンラインの教育コンテンツプロバイダーが汎用性の高いデジタルスキルの学習プログラムを提供していたりするためです。 自社で学習プログラムを0から制作するにはコストも手間もかかりますが、内容が自社に合っているのかを精査した上で外部のツールを活用すれば、リスキリングを行う上でのコストを削減することができるでしょう。
学習に伴走する
学習プログラムを提供した後は、従業員が新たなスキルを獲得できるよう個人の学習の進捗管理を行い、離脱せずに学習を続けられるよう支援する必要があります。 学習管理システムなどを用いて個人の理解度や到達度を確認し、従業員自身も自分の獲得したスキルを確認できるようにすると、スムーズにリスキリングが進むでしょう。 また、学習自体への心理的なハードルを下げる工夫も重要ですが、海外では「Learning in the Flow of Work」(業務の流れの中における学習)という手法がよく用いられています。 これは、普段業務で使用するSalesforce、Google Workplaceなどのアプリケーションに学習プログラムをリンクしておく取り組みで、何か不明点が発生した際従業員が1クリックで学習に取り掛かれるようになっているのです。 学習が進まず離脱する人が出るとDXは推進できないため、全員で前に進む意識を大切にしてサポートを行いましょう。
スキルを実践させる
学習プログラムで学んだ内容を従業員に定着させるため、実践する機会を作ります。 プロジェクトのトライアルなど最初は小さなことから始め、少しずつ現場の仕事にも応用していくようにすれば切り替えがうまくいくでしょう。 リスキリングをスムーズに行うためには、それを主導する部署とDXを推進する現場が連携しながら丁寧に進めていくことが大切です。
05企業にリスキリングを導入する上での課題
企業にリスキリングを導入する上での課題として認知度の低さや、抵抗がある社員の存在が挙げられます。どういうことか、それぞれ詳しく解説します。
リスキリングの認知度が低い
世界経済会議では、2018年から3年連続で「リスキル革命」と銘打ったセッションが行われたり、2030年までに全世界で10億人をリスキリングするという宣言が出されたりしていますが、海外と比較すると日本でのリスキリングへの認知度はまだ低いのが現状です。 これは、日本の製造業などでのDX推進が遅れていることや、企業のIT化を進める上で多数の企業が外注を行っているため、社内にITやテクノロジーへの知見を持つ人材が育ちにくかったというのが背景にあります。 しかし、日本でも大企業などではAI研修を導入したり、DX基礎教育を実施したりとリスキリングへの努力が垣間見えるようになってきました。 日本企業においては海外でのリスキリング事例に学び、従業員に自分事としてリスキリングを捉えてもらえるよう、情報を発信し続けていく姿勢が重要だと言えるでしょう。
リスキリングへの抵抗が大きい従業員の存在
どのような企業においても、リスキリングに抵抗を示す従業員は一定数存在するでしょう。 しかしDXを推進する時代においてリスキリングを行わなければ、企業として生き残りをかけることは難しいと言えます。 そのため、従業員の抵抗をなるべく避けてリスキリングをスムーズに行うためには、リスキリングをすれば企業内で価値を創出できる人材として生き残れるというメリットを、従業員にうまく伝える必要があります。 例えば海外企業では、リスキリングの学習プログラムに参加した従業員を参加しない従業員より高く評価したり、昇進させたりといった目に見える工夫を行っています。 日本企業の人事制度においてこれを取り入れるのはなかなか難しいかもしれませんが、従業員にとってのリスキリングのメリットについて、明確に示す努力をすることが重要だと言えるでしょう。
06リスキリングに取り組んでいる企業の事例
大手企業においてもリスキリングに取り組む企業は存在します。実際にどのような取り組みがあるのか、ここで3社について取り上げます。
サントリーホールディングス
日本を代表する飲料メーカーのサントリーは40歳以上の国内主要グループ社員、3,900人に資格取得支援をすることを発表しています。また、同社では寺子屋といった社内限定の学習プラットフォームがあり、DXについてなどの生放送授業を行うなど社員のリスキリングを促す施策を積極的に実施しています。
【関連記事】サントリーホールディングスのSchoo活用事例
KDDI
KDDIは、社内外でDXを推進するDX人財を2023年度までにグループ全体で約4000名に拡大し、同時にDX人財のうち、中核を担う人財を「DXコア人財」と定め、社内人財育成機関であるKDDI DX Universityで、約1年間200時間におよぶ研修を実施し、23年度までに500名規模を育成することを発表しています。この取り組みは経済産業省のデジタル時代の人材政策に関する検討会も注目しており、日本でも先進的な取り組みをしている企業と言えるでしょう。
【関連記事】KDDIのSchoo活用事例
日立製作所
日立制作所ではグループ内の3つの研修機関を統合し、デジタル人材を育成する新会社「日立アカデミー」を2019年4月に設立しています。国内グループ企業の全社員約16万人を対象としており、DXの基礎教育を中心に社員のリスキリングを積極的に促しています。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

07Schooを活用してリスキリングを推進
Schoo for Businessでは、6,500本を超える数の幅広いジャンルの授業を提供しており、RPAやマクロなどを用いた業務効率化の知識から、Pythonを用いた機械学習を学べる授業などリスキリングに活用することが出来ます。サントリーやKDDIなどリスキリングの最先端を走っている企業も導入しており、Schooを研修や自己啓発などの目的でご利用いただいております。ここでは、Schooビジネスプランの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
Schooビジネスプランは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約6000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.自発的に学ぶ人材を育成できる
上記でも説明したように、Schooでは約6,000本もの動画を用意している上に、毎日新しいトピックに関する動画が配信されるため、研修に加えて自ら学び、成長する人材の育成が可能です。近年の社会のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、企業を取り巻く環境が刻々と変化しています。それに伴い、社員の業務内容や求められるスキルも早いスパンで変化しています。このような予測のつかない時代の中で会社の競争力を維持するためには、社員一人一人が自発的に学び、成長させ続けることができる環境、いわば「学び続ける組織」になることが必要です。
Schooビジネスプランでは、体系的な社員研修だけでなく、自己啓発を通じて自発的に学び、成長できる人材を育成することが可能です。ここではSchooで提供している研修動画の一部をご紹介します。

「自身の構築した論理を様々な角度から検証し、よりよい解へと繋げる『批判的思考法』を学ぶ授業です。」 批判的思考は、誰かを非難することではありません。そもそも〜?や、なぜ〜?と論理に問いを立てる事で、物事を正しく解決する方法です。ビジネスでの利用頻度が高く、ロジカルシンキングと合わせて身に付けたい思考法です。
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YouTuber/外資系コンサルタント
大阪府出身。ITソフトウェア企業に入社後、プロジェクト管理業務に従事。経済産業省プロジェクトマネージャ試験、国際資格PMP(Project Management Professional)などを取得。プロジェクトマネジメントの専門家として 大手メーカーのプロジェクトマネジメント業務に携わる。その後外資系コンサルティングファームに転職しIT・会計を中心とした経営コンサルタントとして従事。副業ではプレゼンテーション・思考法の専門家として、コンサル・セミナー・執筆などで活動。YouTubeチャンネル『マナビジネス』では「学び」+「ビジネス」をテーマに仕事の現場で使える仕事術についての情報を発信している。【YouTube】https://www.youtube.com/c/manabusiness
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デジタルマーケティングの強み・弱みを把握する

この授業では、デジタルマーケティング基礎」の授業は、「デジタルマーケティングの強み・弱みを把握する」と題し、デジタルマーケティングとは何なのか、またどのような強み・弱みがあるのかを学んでいきます。
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株式会社WACUL(ワカル)代表取締役
東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービット入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに携わる。2013年、株式会社WACUL入社。 データ分析から改善提案や成果の測定といった「Webマーケティングの売上拡大のPDCA」をAIが支援するSaaSツール『AIアナリスト』を生み出す。 現在は代表取締役兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、さらなるノウハウの構築と新規プロダクトの創出を担当。 3万サイト超の分析とユーザ行動観察から得たデジタルマーケティングの知見を、研究所レポートやTwitter、講演・セミナーなどで発信し、マーケター・コンサルタントから経営者・マネジャーまで幅広い層から支持を集める
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生産性やアウトプットの質を高める上で重要な「課題設定力」をどのように磨いていくか、そのノウハウについて学んでいきます。 課題設定の精度を上げる手法として、ロジカルに考えていく方法、そしてラテラルに考えていく方法があります。第1回目の授業では、ロジカルに課題設定の精度を上げる方法について紹介します。
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株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。 2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティング&SI事業の人材開発部門リーダーとして育成プログラムを設計導入。ベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。講師として、大前研一ビジネス・ブレークスルー、日本能率協会、日経BPセミナー、大手銀行系研修会社などに多数のプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。 著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。
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3.受講者の学習状況を把握し、人材育成に役立てることができる
Schooビジネスプランには学習管理機能が備わっているため、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、受講者がどんな内容の講座をどれくらいの長さ見ていたのかも把握することができるため、社員のキャリアプランの傾向を掴むことも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。

管理画面では受講者それぞれの総受講時間を管理者が確認できるようになっており、いつ見たのか、いくつの講座を見たのか、どのくらいの時間見たのか、ということが一目でわかるようになっています。

さらに、受講履歴からは受講者がどのような分野の動画を頻繁に見ているかが簡単にわかるようになっており、受講者の興味のある分野を可視化することが可能です。これにより、社員がどのようなキャリアプランを持っているのかを把握できるだけでなく、社員のモチベーションを高めながら人材育成するためのヒントを得ることができます。
さらに、社員に自己啓発を目的として受講してもらっている場合、社員がどのような内容の授業を受講する傾向があるのかを把握できるため、社員のキャリアプランを把握することができます。
08まとめ
リスキリングとは新しい職業に就くためや、今の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために新しいスキルを獲得することですが、現在ではDXへの対応で新しく生まれる業務や、仕事の進め方の変化に対処するためにリスキリングが行われることが多いと言えます。 日本企業ではDX推進の遅れに伴いリスキリングの認知や推進があまり進んではいませんが、海外の事例を見習い、積極的にリスキリングを推進していきましょう。