公開日:2021/09/10
更新日:2024/06/21

リスキリングとは|リカレント教育との違いや推進するための具体策を解説

リスキリングとは|リカレント教育との違いや推進するための具体策を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

急激に変化し続ける市場やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応のため、企業では新たなこれらの業務を行うことのできる人材を戦略的に育成しなければなりません。この記事ではこのような時代に欠かせない人材戦略、リスキリングについて詳しく解説します。

 

01リスキリングとは

リスキリングとは、「新しい業務や職種に就いてもらうために、社員に新しいスキルを再習得させること」という意味の言葉です。リスキリングは、個人が自由に好きなことを学ぶリカレント(学び直し)とは異なり、DXに代表されるような組織変革を実現するために行われます。そのため、リスキリングは組織が実施責任を持つ「業務」と捉えるのが正しい認識です。

一方で、社員の視点でリスキリングを定義すると、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就くこと」と言えます。つまり、社員視点でリスキリングを語るとジョブチェンジと同義といえるでしょう。

▶︎引用:『リスキリングとは DX時代の人材戦略と世界の潮流』-2021年2月26日リクルートワークス研究所』

リスキリングとリカレント教育の違い

リカレント教育とは、「社会人が学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく生涯教育のこと」を指します。何を学ぶのか、学習の目的は個人の自由であるため、必ずしも新しい業務や職種に就くことが目的で実施されるとは限りません。リスキリングとリカレント教育の違いをまとめたものが、以下の表です。

  リスキリング リカレント教育
期間 短期間(6~18ヶ月) 長期間(反復)
背景 技術革新による自動化がもたらす雇用消失 人生100年時代におけるQOL向上
目的 スキル習得による職種・業務の転換 学習
実施責任 企業(国によっては行政が主導) 個人
教育提供者 民間企業 大学等の教育機関
学習分野 デジタル分野が中心 個人の意志に基づく

メディアの発信において、リスキリングとリカレント教育は共に「学び直し」と定義されることが多いですが、背景や目的など様々な点で違いがあり、同義で語るべきでは無いということがわかります。

リスキリングとアップスキリングの違い

リスキリングと並んで良く使われる言葉には、アップスキリング(スキルアップ)もあります。アップスキリングは、現在の職務の専門性をさらに向上させるために実施されるものです。

例えば、マーケティング部の社員が、高度なマーケティングのスキルを習得することはアップスキリングです。また、マーケティング業務に関連するデータサイエンスの知識を学ぶことなども、アップスキリングと言います。

一方で、リスキリングは現在の職務と異なる職務への配置転換を目的としています。そのため、学習内容も現在の業務とは異なる分野となります。

【関連記事】従業員のアップスキリングを目指すには?効果的な方法と注意点を紹介
 

02リスキリングが必要とされる背景

リスキリングが必要とされる背景は、技術的失業を防ぐためです。技術的失業とは、AIやロボットの導入によって、オートメーション(自動化)が加速し、人間の雇用が奪われるという社会的課題のことです。2013年に発表された米国の論文では、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化され、消失されるリスクが高いと述べられています。また、2023年から急激に加速した生成系AIの技術革新によって、その論文で述べられていたことが現実のものとなりつつあります。

技術的失業のリスクが高い仕事

オックスフォード大学のCarl Benedikt Frey氏とMichael A. Osborne氏が2013年に発表した「The_Future_of_Employment」によると、2023〜2033年頃にAIやロボットに代替され無くなるリスクのある仕事は米国の総雇用者の約47%もあります。この論文の中で、コンピューターに代替される確率の高い仕事として挙げられたものは以下のとおりです。

  • ・銀行の融資担当者
  • ・スポーツの審判
  • ・レストランの案内係
  • ・保険の審査担当者
  • ・電話オペレーター
  • ・給与/福利厚生担当者
  • ・レジ係
  • ・データ入力作業員
  • ・簿記/会計/監査の事務員

このように、すでに代替され始めている仕事も2013年当時に多く述べられています。サッカーではビデオ判定が導入され、審判の必要性が問われ始めていますし、案内や配膳をロボットに任せ始めたレストランも出始めています。さらに、今後は生成系AIによって事務関連やデータ入力作業員の仕事は不要となっていくでしょう。

▶︎参考:「The_Future_of_Employment」

日本では解雇が規制されている

技術的失業のリスクがあるとはいえ、日本は米国とは異なる雇用慣行と労働契約法第16条があるため、簡単に社員を解雇することができません。

1955年頃から始まった高度経済成長期から形成された終身雇用という雇用慣行は、多くの日本企業で現在でも続いています。そして、この意識は社員の中にも定着しているため、会社の業績が多少悪化した程度では社員を解雇することは難しいのです。また、裁判所もこの雇用慣行を踏まえて、安易な解雇を認めていません。

そして、労働契約法16条によって、法的にも簡単に解雇ができない状態にあります。労働契約法16条で明文化されている内容は以下のとおりです。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

▶︎引用:e-GOV|労働契約法

つまり、技術革新によって業務が自動化でき、生産性の向上も目指せるが、それによって仕事がなくなった社員を簡単に解雇することもできないので、リスキリングによって新しい業務に就いてもらうことを企業が主体となって実施する必要性があるのです。

 

03リスキリングのメリット

企業がリスキリングを行うメリットは、端的にいうと企業の成長に繋がるという一点に集約されます。では、具体的にリスキリングによって、どのような効果が期待でき、企業の成長に繋がるのかは、主に以下の5つが挙げられます。

  • ・生産性の向上
  • ・エンゲージメントの向上
  • ・離職率の低下
  • ・採用コストの圧縮
  • ・学習文化の形成

それぞれについて詳しく解説します。

生産性の向上

まず、AIやロボットの導入により生産性が向上します。その結果として空いた時間で、本当に取り組むべき業務に充てる時間が増え、さらなる生産性の向上が期待できるでしょう。

また、リスキリングによる成長事業・新規事業への人員増加も可能になります。技術革新が加速していく中で、デジタル技術を用いた新規事業の創出は企業の成長に欠かせません。リスキリングによって人員を戦略的に成長事業や新規事業に投入することができれば、生産性向上に繋がります。

エンゲージメントの向上

教育費用とエンゲージメントの相関は、多くの論文で証明されています。つまり、リスキリングを企業が推進して、社員に教育機会を提供することで従業員エンゲージメントの向上に繋がるのです。

また、リスキリングによって組織の成長に貢献する仕事をすることで、社員の自己効力感が高まることも期待できます。組織に貢献しているという感覚を持つことで、自分の居場所として組織を認識でき、結果として従業員エンゲージメントに返ってくるのです。

離職率の低下

リスキリングは、離職率の低下にも繋がります。前述したエンゲージメント向上と離職率低下には相関関係があることが証明されています。さらに、離職理由には「このまま、この会社にいても大丈夫なのか」・「もっと成長したい」という自身のキャリアに関する不安が多くあり、特に若年層に多い傾向にあります。リスキリングによって成長機会を得られることは、キャリアに関する不安を打ち消し、離職率の低下にも繋がるでしょう。

一方で、リスキリングによって、社員を成長させると転職されてしまうと懸念している人もいます。しかし、それは成長した結果としてのポストを用意していないことが主な要因です。新しいスキルを身につけても発揮する機会を得られなければ、外の環境にその機会を求めるのも仕方ありません。そのため、リスキリングは学習ありきではなく、新しい業務のポストを用意するところから始めると良いでしょう。

採用コストの圧縮

新たな人材を採用するには、コストが大幅にかかります。人口減少・人手不足が叫ばれている日本において、今後はさらに採用が難しくなるでしょう。特に中小企業において、この傾向はすでに顕著に現れつつあります。

リスキリングによって、必要なところに必要な人員を配置することができれば、不要な採用コストを圧縮することができます。もちろん、採用で伸ばす必要性のあるケースもあるので、あくまでも不要な採用コストを削減できるという点は留意してください。

一方で、採用コストは削減できるかもしれないが、育成コストがかかるという懸念もあるでしょう。株式会社リクルートが発表した「就職白書2020」によると、中途採用1人当たりの平均採用コストは103万3,000円となっています。その反面、弊社Schoo for Businessの1人当たりのID金額は年間19,800円です。つまり、圧倒的に育成コストの方が低いのです。

▶︎参考:株式会社リクルート|「就職白書2020」

学習文化の形成

組織をあげてリスキリングに取り組むことで、学習文化の形成にも繋がります。組織として目指すべき方向性を提示し、そのための学びの機会を社員に提供、成果を出して評価される社員が増えるという循環を作ることで、学習して成長して結果を出すことが、自身の給与や評価につながり、学びの成功体験になるのです。

リスキリングという文脈に限らずですが、組織として社員に学習機会を提供することで、隠れていた学びの顕在層が浮き彫りになり、自発的な勉強会が頻繁に開催されるようになった企業や、自身の学びを自発的に社内に共有して、組織全体の学習文化が形成されるようになった企業事例もあります。

 

04リスキリングを推進する際の注意点

日本でも一部の企業でリスキリングが既に実施され始めていますが、株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員の小林祐児氏は、多くの企業がリスキリングを工場モデルで考えていると述べています。また、リスキリングの工場モデルには3つの欠点があるとも、「リスキリングを実践し、活用できる仕組みとは」というSchooの授業で述べています。

小林氏が提唱するリスキリングの工場モデルとは、以下のようなモデルのことを指します。

リスキリングの工場モデル

リスキリングの工場モデルでは、「必要なスキルは何か、そのスキルを保有している人は何人いるのか」といった鋳型を考えることから始めます。そして、不足しているスキルを明確化して、それを学ばせ、人手不足のポストや業務に当てはめていくといった発想をするのが工場モデルの特徴です。そして、不足スキルの明確化を持って「動機づけ」をするのを試みます。

しかし、この発想には以下のような欠点を抱えているのです。

  • ・不足スキルの明確化が困難
  • ・スキルの発揮について無策
  • ・学びへの動機付けに対して無策

この章では、リスキリングの工場モデルが抱える3つの欠点について、小林氏の授業内容をもとに詳しく紹介します。

  • 株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員

    上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。働き方改革・ミドル・シニア層の活性化・転職行動など、労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。 著作に『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』(光文社)、『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)など多数。

不足スキルの明確化が困難

必要なスキルはすぐに変わります。特にVUCAと呼ばれる現代において、この傾向はさらに増しています。昨今もChatGPTのような新しい技術が生まれており、新しい技術が生まれる度に「次に必要なスキルはこれ」という議論が行われます。この技術革新が起こるたびに議論をするという構図は、Windows95が登場してから永遠と繰り返されているのです。

ビジネス環境が変化するということは、それに応じて必要なスキルは変わります。それを明確化しようとするのが、そもそも困難なことは想像に難くないでしょう。将来必要なスキルの明確化が仮に可能なのであれば、デジタル人材の育成はスマートフォン登場当時から行われていたはずです。

スキルの発揮について無策

スキルは注入することと、スキルを使うことは全く別のことです。研修上で学んだことが、職場で実践できないという事例は誰しも経験があるのではないでしょうか。リスキリングの工場モデルでは、このスキルを発揮する機会の提供について考えることができないのです。

「学びっぱなし」になる傾向が高い日本の社員研修において、リスキリングだけは全く該当せず、職場で実践してくれると期待する方が危険でしょう。新しい業務・ポストに就くことが約束されている状態でのリスキリングであれば、このスキルの発揮は問題なく行われますが、社内公募で異動できるかはわからないといったような状態でのリスキリングであれば、概ね学んだことが発揮されずに間も無く忘却されるのが目に見えています。

学びへの動機付けに対して無策

自律的に学ばない日本人において、必要なスキルが明確化されることで、学びの動機付けになるとは考えにくいでしょう。パーソル総合研究所が実施した「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」では、諸外国と比較して日本人は社外学習・自己啓発を「何も行っていない」人の割合が圧倒的に高いことがわかっています。

グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)

リスキリングが叫ばれる一方で、キャリア自律の必要性も叫ばれています。社員のキャリア自律を中期経営計画で目標と掲げる企業は多く、その観点で見るとリスキリングよりもキャリア自律の方が優先度は高いと位置付けている企業が多いのでしょう。このような中で、「自らキャリアを描き、自律的に学んで、新しい職務やポストに応募する」といったリスキリングを期待する場合、この工場モデルでは学びへの動機付けに対して無策と言えます。

 

05リスキリングを進める具体策

リスキリングを進める具体策

まず、前提として研修や学習支援への投資が少なすぎるという実情は変える必要があります。ただし、予算だけ増やして、あとは人事部にお任せという状態では、リスキリングは進みません。株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員の小林氏は、リスキリングを支える4つの仕組みを提唱しています。

1.キャリアの仕組み

社会人の学習意識を低下させている要因の1つに、「キャリアは運次第」という無力感があります。会社都合の配置や異動であったり、OJTガチャや上司との相性など、自分自身で制御できない要素によってキャリアが形成され、変化するということは珍しくありません。このような状態では、「自律的にキャリアを描き、そのキャリアに向かって学んでも無駄」と感じてしまうのは仕方がないでしょう。

キャリアは運次第

そのため、リスキリングを支える「対話型ジョブマッチング」というキャリアの仕組みを作る必要があります。対話型ジョブマッチングを図解したものが以下の画像です。

対話型ジョブマッチング

公募型異動や社内副業の制度を導入し始める企業が増えていますが、多くの企業が「社員がなかなか手を挙げない」・「事業部が協力してくれない」という課題を抱えています。これらを解決して、対話型ジョブマッチングシステムを機能させるためには、事業部側と人事側の双方の努力が必要です。

事業部側は、ポジションごとの職務情報の整理や整備による「仕事の見える化」と、資格要件の透明化・ネクストキャリアへのステップが見えるように「キャリアパスの見える化」を実施する必要があります。一方で、人事側は社員の保有スキル・キャリア履歴・異動希望の可視化とデータベース化によって「個人のキャリアの見える化」と、キャリアについての対話・思考・発言の機会を創出し「個人のキャリア意識の自律化」を推進する必要があります。この両者の取り組みが実施されて初めて、内部マッチングが強化され、対話型ジョブマッチングシステムが機能し、社員の学ぶ意欲を底上げすることができます。

2.目標管理の仕組み

「学んでもメリットがない」・「チャレンジが評価されない」といった職場では、社員の自発的な学習は期待できないばかりか、自発的に学び成長する人から社外に出て行ってしまうでしょう。

そのため、目標管理制度の立て直しと全社的訓練を実施する必要があります。例えば、行動評価や成果評価とは別に「学び目標」・「学習目標」を追加し、等級要件・昇格要件に学習成果(研修受講)を記載するといったように、目標管理の仕組みから変えるのです。

また、被評価者であるメンバー層に「被評価者研修」を実施することも重要です。目標をどのように管理するべきかを、評価者である管理職だけではなく、メンバー層にも理解してもらうためです。目標設定や目標管理を、管理職とメンバーが正しく運用し、「やらされ感」をなくすことでリスキリングを支えることができます。

3.学習支援の仕組み

「学ぶ時間がない」といった課題を解決するために、学習支援の仕組みも変革する必要があります。具体的には、以下のような制度や仕掛けを導入すると良いでしょう。

  • 金銭型:個別の学習費用への支援(半期で〇〇万円など)
  • 時間型:勤務時間の1割程度を自己研鑽に充てる制度
  • 機会型:勉強会や事例共有会の開催の支援

研修は就業時間中に実施するが、好きなことを学んで良い自己啓発は就業時間外で行うという企業が多いのが現状です。

しかし、キャリア自律を推進し、自身のキャリアに必要な学びを自身で得てほしいと言いながら、その学習時間はプライベートを削って確保してというのは、企業にとって都合が良すぎます。目標達成のために"仕事"をしてほしい事業部側の管理職との折り合いをつけるのが大変なのは容易に想像できるので、リスキリングを経営課題と捉えるのであれば、トップダウンで仕組み化してしまうのも1つの手です。

4.学びのコミュニティ化の仕組み

最後に、学びのコミュニティ化の仕組みがリスキリングには必要です。「日本人は学ばない」という社会課題に対して、人との繋がりによって学びを促進する仕組みを構築することで、学ばない・学びが続かないといった課題の解決策になります。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

学びのコミュニティ化の仕組み

この中でも特に注目されている施策が、コーポレート・ユニバーシティ(企業内大学)です。コーポレート・ユニバーシティは過去にもブルーカラーの育成施策として注目されたことがありますが、技術革新によりLMSで学習管理ができ、eラーニングベンダーも増えてきたことにより、全社施策として実施する企業が増えてきています。

しかし、コーポレート・ユニバーシティが成熟して、社内の人々が自発的に学び合うような世界線に辿り着くには、愚直な努力が欠かせません。元々が「学ばない日本人」であるため、長期的な視点で人事が粘り強く施策を推進していく必要があるという前提のもとで実施を決めた方が良いでしょう。

 

06リスキリングに取り組んでいる企業の事例

リスキリングに取り組んでいる企業事例の中でも、特に注目すべきは以下の7社です。

  • ・SCSK株式会社
  • ・大日本印刷株式会社
  • ・アスクル株式会社
  • ・コニカミノルタ株式会社
  • ・株式会社クレディセゾン
  • ・KDDI株式会社
  • ・株式会社日立製作所

この7社はDX銘柄に選出されていたり、経済産業省が公開している事例集に掲載されていたりと、リスキリングについての先進企業といえます。

SCSK株式会社

SCSK株式会社は、リスキリングを推進することで事業戦略の実現に必要な人材を育成しています。同社のリスキリングは、リテラシーや基礎知識を学ぶリカレント型、より実践的な内容で知識の最新化を図るアップデート型、プロフェッショナル人材向けのリスキリングであるアンラーニング型(職種転換等の変化を伴う育成)の3種類に整理されています。

SCSK株式会社は、Slerという受託開発や運用を軸とする事業から、顧客とともに業務改革を行ったり、新しいビジネスを創り出すようなDX推進企業への変革を目指しています。その変革のためにリスキリングを戦略的に活用している点が、SCSK株式会社の特筆すべき点と言えるでしょう。

▶︎参考:経済産業省|イノベーション創出のためのリカレント教育 事例集

大日本印刷株式会社

大日本印刷株式会社は、生活者に直接向き合いさまざまな社会課題を解決する新しい価値を創出し続ける「第三の創業」を掲げた変革を推進しています。

この変革を行うために、自由度の高い環境でイノベーションを生み出す社内特区組織を設置し、DXによる新規事業開発に挑戦したり、DX実現に重要なアジャイルやクラウドネイティブ開発、AIなどの教育プログラムを充実させていたりします。

さらに、今までと全く違う職種だった人材をリスキリングし、デジタル人材として注力事業領域に配置転換するといった、経営戦略に紐づいたリスキリングを推進している点が、大日本印刷株式会社の特長です。

▶︎参考:経済産業省|DX銘柄2023(P.57)

アスクル株式会社

アスクル株式会社は、DXによるサービス変革を重要課題と特定し、「最高の顧客体験の創造」と「革新的バリューチェーンの構築」を目指しています。

この戦略のもとで、DX人材の育成にも注力しています。例えば、既存社員のリスキリングを推進する教育プログラム「ASKUL DX ACADEMY」の設立、エンジニア向けには専門性の高い技術教育プログラム提供、さらに一般社員向けには「ASKUL-EARTH」のデータを自部門業務で高度に利活用するためのデータサイエンス教育プログラムを提供しています。

教育受講後、自らの力での変革を実感できた社員も出ているようで、エンジニアやデータサイエンティストだけでなく、全社員がアスクルのDXに取り組む環境を整えています。

▶︎参考:経済産業省|DX銘柄2023(P.69)

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は、別職種転換・他部門への人財シフトに対応するためのスキルチェンジをRe-skill(リスキリング)、同一職種内におけるスキルのレベルアップをUp-skillと位置付け、それぞれに研修体系を整備しています。

ITの基礎的スキルに関する教育は、Re-skill、Up-skillのいずれでも必要なベーススキルと位置付け、全従業員に展開し、デジタル人材としての底上げを図っています。

Re-skillでは、開発人員や販売・企画人員に対してIoT転換教育、専門技術のマッチングを行い、インダストリー事業等、新たな柱となる事業を担う人財を育成しているようです。コニカミノルタ株式会社は、配置転換が前提のリスキリングとなっているという点が特筆すべき点と言えるでしょう。

▶︎参考:経済産業省|イノベーション創出のためのリカレント教育 事例集(P.10)

株式会社クレディセゾン

株式会社クレディセゾンは、CX(Customer Experience):お客様の感動体験を創出する、EX(Employee Experience):社員の体験を転換するを実現していくことを、CSDX(クレディセゾンDX)VISIONとして掲げ、デジタル技術を活用することで、ビジネスを変革・転換し、期待を超える感動体験を提供することで、デジタル時代を先導する企業を目指しています。

このような背景の中で、クレディセゾンはオープンチャレンジによるリスキリングを推進しています。オープンチャレンジとは、希望部署への異動をするための公募制度のことです。ビジネスデジタル人材も本制度を活用して募集しています。

株式会社クレディセゾンは、配置転換をして実務を通じてリスキリングをしている点が特筆すべきでしょう。これまで、この公募制度に150人を超える募集があり、約50名がゼロからエンジニアリングやデータ分析の研修を受講し、デジタルスキルを実務を通じて学んでいるようです。

▶︎参考:経済産業省|DX銘柄2023(P.83)

KDDI株式会社

KDDI株式会社は、社内外でDXを推進するDX人財を2023年度までにグループ全体で約4000名に拡大する目標を立てています。同時にDX人財のうち、中核を担う人財を「DXコア人財」と定め、社内人財育成機関であるKDDI DX Universityで、約1年間200時間におよぶ研修を実施し、23年度までに500名規模を育成すると発表しています。

KDDI株式会社の特長は、ジョブ型人事制度を取り入れ、キャリア自律にも力を入れている点にあります。組織主導のリスキリングは、必要なスキルが日々更新されていく現代社会において、イタチごっことなるのは必至。そのため、社員が主体的に自らのキャリアを描き、そのキャリアビジョンに向けて、自ら学び成長する必要性があります。

KDDI株式会社の特長は、ジョブ型人事制度を取り入れ、キャリア自律にも力を入れている点にあります。組織主導のリスキリングは、必要なスキルが日々更新されていく現代社会において、イタチごっことなるのは必至。そのため、ジョブ型人事制度という雇用形態の変化も併せて、社員が主体的に自らのキャリアを描き、そのキャリアビジョンに向けて、自ら学び成長する人材を増やす意図があるようです。

▼KDDIの取り組みに関して詳しく知りたい方はこちら▼
【関連記事】KDDIのSchoo活用事例

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は2008年度に、国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上したことをきっかけに、構造改革に着手しました。抜本的な人事制度改革、また事業の選択と集中を繰り返しながら、今はデジタル技術を生かし、国内外の社会課題を解決するソリューション事業に注力しています。

同社は、2019年に「日立アカデミー」を設立し、デジタル人材育成を始めます。顧客の課題を捉えて解決策を描くデザインシンキング、膨大なデータを分析し価値を生み出すデータサイエンスなど、デジタル事業に必要な12種類のスキル(2022年時点)を定め、担当する事業に求められるいずれかのスキルを持っていれば“デジタル人財”に認定しています。

さらにリスキリングを強化するため、日立製作所は2022年10月には社員1人ひとりのキャリア志向にあわせた自主的な学びをサポートするため、「LXP」という学習システムを導入。専用のサイトに、今の仕事や「デジタルマーケティング」「データサイエンス」など強化したいスキルを登録すると、AIが自動で分析し、その社員に適した研修や教材を2万以上のコースから選んで提案してくれます。そして、この学習システムを、社員は無料で利用できるのです。

人材育成に投資をしたことによって、2022年度連結決算は、純利益が前年度比11.3%増の6491億円となり、過去最高を更新。連結売上高は前年度比6%増の10兆8811億円。このうちの約1兆9600億円をデジタル技術を使ったソリューション事業が占めています。つまり、人材育成への投資によって業績貢献した日本では稀有な事例が日立製作所と言えるでしょう。

▶︎参考:経済産業省|DX銘柄2023(P.53)


 

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07リスキリングに関する助成金

企業が主導するリスキリングに対しての助成金は、主に以下の2つがあります。

  • ・人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース
  • ・DXリスキリング助成金

人材開発支援助成金には、7つのコースがあります。それらの中で唯一「リスキリング」と銘打っているのが、事業展開等リスキリング支援コースです。

もう1つのDXリスキリング助成金は、東京都の中小企業が利用できる助成金です。

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度のことです。

▶︎参考:厚生労働省|事業展開等リスキリング支援コース

支給要件

事業主の要件を簡単に要約すると以下のとおりです。詳細は社労士や各自治体に確認を取ってください。

  • 1:雇用保険の支払いをしている(雇用保険料が財源であるため)
  • 2:事業主の都合で解雇をしていない
  • 3:研修中も適正な賃金の支払いをしている
  • 4:審査に必要な5年間分の書類を保存している
  • 5:管轄労働局の審査に協力する

労働者の要件を簡単に要約すると、雇用保険の被保険者であり、研修期間中も被保険者であることが条件です。この条件は雇用保険の支払いをしている企業であれば、特に気にする必要はないかと思います。

訓練の要件は以下のとおりです。1と2は必ず条件を満たす必要があり、3と4はいずれかを満たしていれば問題ありません。

  • 1:OFF-JTであって、事業外訓練であること(外部の研修会社などを使用した研修であること)
  • 2:各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること
  • 3:事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
  • 4:事業展開は行わないが、事業主においてDXやGXに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

少し複雑な条件として、事業展開を行う想定か、DXやGXを推進するという前提条件があります。ただし、事業展開やDXといっても深く考える必要はありません。事業展開であれば「新たな集客基盤としてECサイトへの出展を予定しており、それに伴いサイト設計やWebマーケティングに関する訓練を実施する」と言ったような説明が出来るのであれば問題ないはずです。

助成額

助成額・助成率は以下のとおりです。eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等、定額制サービスによる訓練及び育児休業中の者に対する訓練等は経費助成のみとなります。

区分 経費助成 賃金助成
(1人1時間当たり)
中小企業 75% 960円
大企業 60% 480円

また支給限度額は以下のとおりです。

企業規模 10時間以上
100時間未満
100時間以上
200時間未満
200時間以上
中小企業事業主 30万円 40万円 50万円
中小企業以外の事業主 20万円 25万円 30万円

eラーニング及び通信制による訓練等(標準学習時間が定められているものは除く)については、一律「10時間以上100時間未満」の区分となります。

DXリスキリング助成金

DXリスキリング助成金は公共財団法人 東京しごと財団が運営している助成金です。都内の中小企業等が従業員に対して、民間の教育機関等が提供するDXに関する職業訓練を実施する際に係る経費を助成してくれます。

▶︎参考:公共財団法人 東京しごと財団|DXリスキリング助成金

支給要件

DXリスキリング助成金を申請できる事業者は、中小企業もしくは個人事業主に限定されています。中小企業もしくは個人事業主とは、次の表の資本金の額又は常用労働者数のいずれか一方(又は双方)に該当するものをいいます。

業種分類 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
小売業・飲食店 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外の産業 3億円以下 300人以下

業種分類については、募集要項の1ページ及び最終ページをご確認ください。

次に申請要件としては以下の3つがあります。

  • ・都内に本社又は事業所(支店・営業所等)の登記があること
  • ・訓練に要する経費を従業員に負担させていないこと
  • ・助成を受けようとする訓練について国又は地方公共団体から助成を受けていないこと 等

つまり、都内に本社や事業所があり、費用負担を社員に課しておらず、他の助成金を受けていなければ、申請が可能ということです。ただし、助成対象となる訓練の要件も細かく決められており、以下がその条件です。

  • 1.中小企業がDXに関する自社内に外部講師を招いて実施する訓練及び民間の教育機関等が提供する集合又はeラーニング等により実施する訓練
  • 2.DXに関する専門的な知識・技能の習得と向上を目的とする訓練又は資格の取得をするための訓練であること
  • 3.教育機関等の受講案内と受講に係る経費(受講料等)が、ホームページやパンフレット等で一般に公開されており、1講座及び受講者1人当たりの受講料があらかじめ定められていること(単講座)
  • 4.企業の課題に応じた内容を企画し、自社内に外部講師(教育機関等)を招いて実施するものであり、1時間あたり10万円以内であること(オーダーメイド講座)

上記の1.2は必須で、3.4はいずれか片方を満たせば問題ありません。

さらに助成対象者も、以下のように細かく規定されています。

  • 1.中小企業が雇用する従業員
  • 2.常時勤務する事業所の所在地が都内である者※在宅勤務中や自宅待機の場合は在宅場所を問いません
  • 3.訓練時間の8割以上を出席した者

上記3点を全て満たした人が助成対象者になります。注意点としては2の事業所の所在地です。常時勤務している所在地が東京都でなければならないので、地方の支社に在籍している人は、仮に本社が東京にあっても助成対象となりません。

助成額

DXリスキリング助成金の対象となる経費は以下のとおりです。

  • ・受講料 ※消費税は対象外です。税抜価格が助成対象経費となります。
  •  教育機関等が提供する価格(料金表)を公表しており、1講座あたりの対象期間、受講料が定められているもの(単講座)
  • ・教科書代、教材費
  • ・eラーニング実施に係るID 登録料、管理料等
  • ・訓練に付随するヒアリング料等

助成額は、助成対象経費の3分の2となっており、上限額は64万円/社・年度となっています。

 

08リスキリング推進を支援|Schoo for Business

Schoo for Business

オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約8,500本の講座を用意しており、DXに関する講座も多く取り揃えています。また、DXスキル診断という機能も備わっており、社員のデジタルスキルを測定し、学習効果を測定することも可能です。

受講形式 オンライン
(アーカイブ型)
アーカイブ本数 8,500本
※2023年3月時点
研修管理機能 あり
※詳細はお問い合わせください
費用 1ID/1,650円
※ID数によりボリュームディスカウントあり
契約形態 年間契約のみ
※ご契約は20IDからとなっております

Schoo for Businessの資料をダウンロードする

大企業から中小企業まで幅広く導入

Schoo導入企業ロゴ

Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで4,000社以上に導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。

導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。

Schooの導入事例集をもらう

リスキリングに関するSchooの講座を紹介

Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、リスキリングに関する授業を紹介いたします。

「なんとなく学んでない」のメカニズム

この授業では、より良いリスキリングを実践するための仕組みについて学ぶことができます。本記事で紹介した「リスキリングの工場モデル」や「リスキリングを進める具体策」について、『リスキリングは経営課題』の筆者でもある小林祐児先生に、ご講演いただいています。

  • 株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員

    上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。働き方改革・ミドル・シニア層の活性化・転職行動など、労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。 著作に『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』(光文社)、『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)など多数。

「なんとなく学んでない」のメカニズムを無料視聴する

※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。

 

09まとめ

リスキリングとは新しい職業に就くためや、今の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために新しいスキルを獲得することですが、現在ではDXへの対応で新しく生まれる業務や、仕事の進め方の変化に対処するためにリスキリングが行われることが多いと言えます。 日本企業ではDX推進の遅れに伴いリスキリングの認知や推進があまり進んではいませんが、海外の事例を見習い、積極的にリスキリングを推進していきましょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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