人生100年時代とは?根拠から働き方のヒントまで詳しく解説

人生100年時代という言葉を近年よく耳にするけれど、企業ではどのような取り組みが必要なのかイメージがわかないという人も多いのではないでしょうか。 この記事では人生100年時代とは何かから働き方のヒントまで詳しく解説します。
01人生100年時代とは?
人生100年時代とは、イギリスの組織論学者であるリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」という本の中で提唱した言葉です。 本の中では世界的に高齢化が進むにあたり、先進国では1/2の人が100才を超えて生きる時代の到来を予測し、新しい人生設計が必要だとしています。
02人生100年時代の根拠
人生100年時代とは、どのようなことを根拠に主張されているのでしょうか。 平均寿命や健康寿命などの観点から、3つをご紹介します。
平均寿命が伸びている
平均寿命とは0才時に何才まで生きられるかを統計から予測した平均余命のことですが、2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると2020年現在の男性の平均寿命は81.56年、女性の平均寿命は87.71年でした。 1950年の男性の平均寿命が58.0年、女性の平均寿命が61.5年だったのと比較するとそれぞれ23.56年、26.21年も平均寿命が伸びているのです。 今後も平均寿命はさらに伸び2065年には男性84.95年、女性91.35年となり、女性の平均寿命は90才を超えると予想されています。 このことから近い将来、100才を超えて生きる人はそう珍しくなくなると言えるでしょう。
健康寿命が伸びている
健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる時間のことですが、令和4年高齢社会白書によると2020年現在の男性の健康寿命は72.68年、女性の健康寿命は75.38年でした。 2010年の調査結果と比較するとそれぞれ2.26年、1.76年伸びており、平均寿命の伸び(1.86年、1.15年)を上回っています。 また65才以上の人における体力テスト(握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行)の合計点は、2002年の合計点と比較していずれも上回っているのです。 このことから健康を維持しながら100才を迎える人も増加することが予想されます。
社会活動に参加する高齢者が増加している
令和4年高齢社会白書によると、65才以上の人の30.2%が仕事をして収入を得ています。 また過去1年間に社会活動に参加した人の割合は51.6%で、活動内容については「健康・スポーツ」が27.7%、「趣味」が14.8%、「地域行事」が13.2%でした。 このことからさまざまな社会活動に積極的に参加し、生きがいを感じながら生活している高齢者が増えてきているのがわかります。
03人生100年時代における働き方のヒント
人生100年時代においては、どのような働き方をするのが望ましいのでしょうか。
- ・IT人材が不足している
- ・国はリカレント教育を推進している
- ・高齢者の雇用が進んでいる
ヒントとなる3つについて、現状や推進例をもとにご紹介します。
IT人材が不足している
2020年に情報処理推進機構が発表した「IT人材白書2020」によると2019年度の調査では企業におけるIT人材の量に対する過不足感として「大幅に不足している」と回答した企業が33.0%、「やや不足している」と回答した企業が56.0%でした。 2015年度の調査では「大幅に不足している」と回答した企業が20.5%、「やや不足している」と回答した企業が63.7%だったため、人材の量的な不足がより深刻化している現状がうかがえます。 また企業におけるIT人材の質に対する過不足感として「大幅に不足している」と回答した企業が39.5%、「やや不足している」と回答した企業が51.0%でした。 2015年度の調査では「大幅に不足している」と回答した企業が30.3%、「やや不足している」と回答した企業が59.0%だったため、質的な不足の方がより深刻であることがわかります。 このことから、リスキリングなどで今働いている人材に新たなITスキルを身に着けさせることが、人生100年時代の働き方としても、企業が長く成長し続けていく上でも重要であると言えるでしょう。
国はリカレント教育を推進している
リカレント教育とは、一度社会人として就労した人が生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返すことができる教育制度のことです。 文部科学省では人生100年時代に向けてリカレント教育の必要性を重要視し、文部科学大臣が認定する「職業実践力育成プログラム」認定制度を創設して学び直しを推進したり、社会人向けの教育プログラムの開発、学習基盤の整備、専門人材の育成を行ったりしています。
▶︎参考:文部科学省「文部科学省におけるリカレント教育の取組について」
高齢者の雇用が進んでいる
厚生労働省では高年齢者雇用安定法に基づいて、企業における高年齢者雇用の拡大、地域における多様な雇用・就業機会の確保、企業や高年齢者を支えるための支援を行っています。 2021年に厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告」によると、65才までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.7%、70 才までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は 25.6%でした。 また31人以上規模企業における60才以上の常用労働者数は約421万人で、2009年と比較すると、約205万人増加したのです。 人生100年時代に向け、高齢者の働く場所が着実に確保されてきていると言えるでしょう。
04人生100年時代に必要な社会人基礎力とは?
経済産業省では人生100年時代を生きる上で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と定義しています。 これからご紹介する3つの能力を身に着け、それを発揮するにあたって適宜振り返りをしながら、目的、学び、統合のバランスを計ることがキャリアを切り開く上で重要だとされているのです。
前に踏み出す力(Action)
前に踏み出す力とは一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力のことで、次の3つの要素で構成されています。
要素 | 概要 |
主体性 | ・物事に進んで取り組む力 |
働きかけ力 | ・他人に働きかけ巻き込む力 |
実行力 | ・目的を設定し確実に行動する力 |
仕事の場では指示待ちをせず、自ら考え行動できるようになることが求められているのです。
考え抜く力(Thinking)
考え抜く力とは疑問を持ちそれを考え抜く力のことで、次の3つの要素で構成されています。
要素 | 概要 |
課題発見力 | ・現状を分析し目的や課題を明らかにする力 |
計画力 | ・課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力 |
創造力 | ・新しい価値を生み出す力 |
自分で課題を見つけ、解決のための手段を導き出す力が求められているのです。
チームで働く力(Teamwork)
チームで働く力とは多様性を持つチームメンバーと目標に向けて協力できる力のことで、次の6つの要素で構成されています。
要素 | 概要 |
発信力 | ・自分の意見をわかりやすく伝える力/td> |
傾聴力 | ・相手の意見をていねいに聴く力 |
柔軟性 | ・意見の違いや相手の立場を理解する力 |
状況把握力 | ・自分と周囲の人たちや物事との関係性を理解する力 |
規律性 | ・社会のルールや人との約束を守る力 |
ストレスコントロール力 | ・ストレスの発生源に対応する力 |
チーム内だけの協力にとどまらず、社内や社外のさまざまな人たちとの連携や協働を生み出す力が求められています。
05人生100年時代に対応するために求められる企業の取り組みとは
人生100年時代に対応するため、企業にはどのような取り組みが求められているのでしょうか。主に挙げられるのは、以下の3つです。
- ・1.キャリア開発を支援する
- ・2.リテンションを強化する
- ・3.新たな関係性を構築する
それぞれについてご紹介します。
キャリア開発を支援する
人生100年時代においては企業に対しても従業員の雇用を守ることばかりに囚われず、社会で活躍し続けられるように支援することが求められます。 生産性を高め、事業を取り巻く環境の変化に強い従業員を育成するためには、次のような施策に取り組むのがよいでしょう。
- ・社内外での研修
- ・人事制度の改革
- ・兼業や出向の推進
従来のスキル研修だけではなく、多面的なキャリア開発支援を行うという観点を持つことが重要です。
リテンションを強化する
リテンションとは自社の優秀な人材の流出を防止するための施策のことですが、人生100年時代においては高齢者になっても働き続けたいと思えるような環境作りをすることが大切です。 社内での意識改革を推進するために、次のような施策を行ってみましょう。
- ・多様な働き方やポジションを作る
- ・d&iを浸透させる
- ・従業員のマインドセット改革をするための研修を行う
高齢者となってもモチベーションを高く持って働き続けることのできる環境を整えることが重要です。
新たな関係性を構築する
人生100年時代においては、社内・社外に関わらず社会全体で人材を最適に配置するという視点が必要です。 転職者を含む広いネットワークを作って事業を拡大していくために、次のような施策を行ってみましょう。
- ・従業員の処遇の整備
- ・多彩な転職先の紹介・マッチング
業界全体で協力し、環境やネットワーク整備を推進していくことが大切です。
06人生100年時代に対応するならSchoo for Business
Schoo for Businessは、国内最大級7,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
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待ったなしのDX、企画づくりから在庫管理まで、あらゆるプロセスがデジタル化した世界で価値創造し続けるために、各企業は従業員の「リスキリング」を進めています。すなわち、私たち一人ひとりがスキルを"塗り替え"、デジタル化に適応せねばなりません。そこで本放送は、DXトレンドを踏まえた最新の人材市場動向から何を学ぶべきか考えます。一緒に自分DXをはじめましょう。
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リクルートワークス研究所 人事研究センター長 / 主幹研究員
慶應義塾大学法学部卒業後、銀行、コンサルティング会社を経て2001年よりリクルートワークス研究所に参画。以来、人材マネジメント領域の研究に従事。2015年から2年間、機関誌Worksの編集長を務めた。2017年4月から現職。タレントマネジメント、リーダーシップ開発、女性リーダー育成、働き方改革等を専門とする。主な著作に『女性が活躍する会社』(大久保幸夫との共著、日経ビジネス文庫)がある。
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自己認識力 〜キャリア開発のための自分の本質
本コースでは、自分の価値観や願望を明確に持ち、自分のことをよく理解できている「内面的自己認識力」と、他者が自分のことをどのように見ているかを正確に掴んでいる「外面的自己認識力」の両方を高めることがいかに大切かを学びます。
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ブラックラムズ東京 クラブビジョナリーオフィサー
2002年明治大学政治経済学部卒 リクルートグループ2社を経て、2012年㈱ビジネス・ブレークスルー入社。大前研一と共に次世代リーダー育成プログラムの立ち上げに従事。2017年ビジネス・ブレークスルー大学事務局長としてカリキュラム開発、教員採用、学生募集等大学経営全般の業務と並行して、企業やスポーツチームの研修講師として活動。2022年より㈱En人 を設立。同年ラグビーリーグワン、ブラックラムズ東京にてアドバイザーとしてスポーツチームのマネジメントに関わっている。
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LIFE SHIFT実践 -100年時代に活きる「変え続ける力」の磨き方-
「所属している会社で定年まで居続ければ、一生安泰」そんな時代は終わりを迎えようとしています。これからの時代は、会社中心の人生計画を見直し、「人生を悔いのないものにするためには何が必要なのか?」を考え、自分の力で仕事を、そして人生をデザインしていくことが必要になるのです。
本連載授業では『人生100年時代に必要な“変身資産”』をキーワードに以下の3つを学んでいきます。
- 1.変身資産とは何か?
- 2.自分自身を変える一歩目にはどのようなものがあるか?
- 3.先駆者はどのようにライフシフトを実践しているのか?
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多摩大学大学院教授研究科長/株式会社ライフシフトCEO
日産自動車人事部、欧州日産を経て、1999年よりフライシュマン・ヒラード・ジャパンのSVP/パートナー。また、2006年から多摩大学大学院教授を兼任。 多摩大学大学院教授 ・研究科長。野中郁次郎名誉教授との共同開発によるMBB(思いのマネジメント)の第一人者。著書に『40代からのライフシフト実践ハンドブック』、『MBB:思いのマネジメ ント』(野中郁次郎名誉教授、一條和生教授との共著)、『ビジ ネスモデルイノベーション』(野中名誉教授との共著)、『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』(福原正大氏との共著)、 『イノベーターシップ』など多数。東京大学教養学部卒業。
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07まとめ
人生100年時代とは、イギリスの組織論学者であるリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」という本の中で提唱した言葉です。 働き手が意識改革をするだけではなく、この記事も参考にして企業においてもキャリア開発の支援やリテンションの強化など、さまざまな取り組みを行い人生100年時代における働き方を整備していきましょう。