ゼロベース思考とは?メリットや具体例・トレーニング方法を紹介
ゼロベース思考とは、今までに持っている前提の知識や思い込みを0にし、基礎ベースがない状態から物事を考えることです。本記事ではゼロベース思考のメリットやデメリットなどについて紹介しています。ぜひ、ゼロベース思考について参考にしてください。
- 01.ゼロベース思考とは
- 02.ゼロベース思考のメリット
- 03.ゼロベース思考のデメリット
- 04.ゼロベース思考の具体例
- 05.ゼロベース思考のトレーニング方法
- 06.ゼロベース思考をさらにレベルアップさせるには
- 07.まとめ
01ゼロベース思考とは
ゼロベース思考とは、今までに持っている前提の知識や思い込みを0にし、基礎ベースがない状態から物事を考えることです。何かを考えるときは自分の知識や経験、価値観などに基づくことが一般的となっています。 ただし、新たなアイデアを考えるときや他の企業と戦略面で違いを出したい場合、過去の事例や価値観の固定によって思考の幅を狭めてしまうことがあります。また、思考が複雑になってしまい、課題解決が困難になることもあるでしょう。そのため、ゼロベース思考が注目されているのです。
ゼロベース思考が注目される背景
ベース思考が注目されている背景には、企業や市場が新しい視点を求めている背景があります。今では多くの商品やサービスが提供されており、似た製品も多く作られています。そのため、商品やサービスは他の物と差別化しなければ売上を伸ばすことが困難です。他と差別化を図るためには、他の企業とは違う視点で物事を見ることが必要となるため、ゼロベース思考による斬新な発想が求められているのです。 昨今はテレワークや在宅勤務など、働き方に関しても新しい視点が注目されているため、重要性はさらに増していると考えられます。
トレンド思考との違い
ゼロベース思考はトレンド思考と同じと考える人もいます。しかし、トレンド思考は過去の経験や知識に頼る思考法です。過去の原因を調べて検証する仮説検証を繰り返し行って目標達成に向かう方法であるため、ある程度の価値観や事例を元に考える方法といえます。 ゼロベース思考は過去の事例や知識がない状態から物事を考えるため、トレンド思考とは明確に違いが生じます。また、ゼロベースは基本的に相手の立場や不可能をどう可能にするのかを考えるため、思考においても明確な違いがあります。
02ゼロベース思考のメリット
ゼロベース思考には、どのようなメリットがあるのか知っておくことも重要です。ゼロベース思考のメリットを知ることでその重要性を認識できるためです。ゼロベース思考の主なメリットは4つ存在します。
革新的・創造的なアイデアの創出
ゼロベース思考を身に付けられれば、革新的で創造的なアイデアを出すことが可能になります。アイデアを出す際に固定観念や前提の知識があると、他の企業と似たような商品やサービスになりがちで、革新的な発想を出せないことがあるのです。 新商品や画期的なサービスの発想は、昔の経験や事例を元に考えると邪魔になるため、ゼロベース思考で一度全ての知識を無にすることがおすすめです。顧客の視点や可能性のみを重視して考えることで柔軟な発想となり、新商品を企画できる可能性が増します。新しいことを行うのであれば、ゼロベース思考を身に付けることが効率的と考えられます。
顧客視点での思考や発想を得られる
ゼロベース思考を身に付けることで、顧客視点での思考や発想を得ることができます。商品やサービスの開発をする際に、顧客ではなく会社の視点を重視してしまうことがあります。 しかし、ゼロベース思考で顧客の立場になって考えると、会社ではなく顧客からのニーズに答えるアイデアを出せて、本当に必要な商品を開発できるきっかけになります。顧客の必要を満たすようにと考えることで、会社の業績がアップする可能性は十分にあります。
課題の再定義をおこなえる
課題の本質を捉え解決策を見いだせる ゼロベース思考は、課題の本質を捉えて問題解決をできるようにします。今までの価値観をもとにしてしまうと、根本的な解決にならないこともあります。 例えば紙の消費が多いために節約を目標としたとしても、多く消費している原因を突き止めなければ、大きく改善されません。それもゼロベース思考であれば、原因を突き止めようとする思考回路が身につき、「紙に頼っている多くのものをデータ化して保存しよう」など、根本的な解決策を思いつけるようになります。課題の本質を捉えることで、再度問題を見直すことも、防ぐことも可能となるのです。
複雑化した課題の解決方法を見出せる
ゼロベース思考は、ある問題や課題に対して過去の概念や既存のアプローチにとらわれず、一から新しいアプローチを検討することを奨励します。これにより、従来のやり方では解決できないような複雑な課題に対しても新しいアイディアや戦略を見つけ出すことが可能です。従来の方法に縛られずに物事を考えることで、革新的で効果的な解決策が浮かび上がる可能性を高めることができるのです。
生産性の向上
ゼロベース思考は、プロセスや活動をゼロから見直すことを意味します。これにより、過去のやり方にこだわらず、無駄な部分を削減したり、より効率的な手段を見つけ出すことができます。新しいアイディアやテクノロジーを導入し、生産的なプロセスを構築することで、組織やプロジェクトの生産性が向上する可能性があります。また、これによって新たな成果や価値を生み出すことが期待されます。
03ゼロベース思考のデメリット
ゼロベース思考は、様々なメリットがある一方で次のようなデメリットが考えられます。
- ・時間と労力が求められる
- ・過去実績や前提が度外視されてしまう
特定の状況において非常に有益ですが、これらのデメリットを理解し、バランスを取る必要があります。適切なタイミングと状況でゼロベース思考を採用することが重要です。ここでは上記のデメリットについて、解説していきます。
時間と労力が求められる
ゼロベース思考は、すべてを最初から考え直すことを要求するため、過去の経験や成果を無視することがあります。これにより、過去に行われた成功体験や学びが無駄になる可能性があり、結果として時間やエネルギーが浪費されることがあります。また、すべてを最初から考え直すことを求めるため、多くの場合、新しいアイディアやプロジェクトのために新たなリソースを投入する必要があります。これが十分に検討されていない場合、リソースの浪費が発生する可能性があります。
過去実績や前提が度外視されてしまう
ゼロベース思考は、課題の再定義をおこなえる一方で、現状の情報を一切無視して再評価することを意味します。しかし、それにより重要な情報を見落とす可能性があり、不十分な情報で意思決定を行うリスクが生じます。また、既存の枠組みやシステムを無視するため、過去の実績から学ぶ機会が損なわれ、同じ成功パターンを再利用することが難しくなります。特に、成功した手法やベストプラクティスがある場合には、それらを軽視することがリスクとなります。このように、ゼロベース思考の利用には慎重なバランスが求められ、適切なタイミングを見極める必要があります。成功や失敗の経験から得られる教訓を無視せず、慎重に実施することが重要です。
04ゼロベース思考の具体例
ゼロベース思考で、どのような成功事例があったのか、知っておくことも重要です。ゼロベース思考の成功事例を知っておくことで、ゼロベース思考の大切さをより深く理解できるようになるでしょう。ここでは代表的な3つの成功事例を紹介します。
ユニクロのヒートテック
1つ目はファストファッションの代表的存在であるユニクロのヒートテックです。ユニクロのヒートテックは、2003年に繊維などを製造する東レ株式会社とユニクロなどを展開する株式会社ファーストリティリングの共同開発で生まれたウェアです。 東レ株式会社は元々「ものづくり」の発想を重視していましたが、消費者が求める新しいサービス開発に発想を転換し、ユニクロと結託する方針を打ち出しました。 ユニクロの情報を元に東レ株式会社がニーズに合った素材を開発し、従来の常識とは違う機能性とデザイン性を兼ねそろえたヒートテックが生まれました。東レ株式会社の素材とカジュアルさを求めているユニクロによるゼロベース思考で、今では多くの人に使用する商品となっています。
ドトールコーヒー
2つ目の成功事例はドトールコーヒーです。コーヒーは今まで1杯500円ほどの金額が一般的であり、消費者からすると少し高い金額設定となっておりました。しかし、ドトールコーヒーは150円ほどと、従来の金額設定よりも大幅に安く設定する方法を取ったのです。 ドトールがこのゼロベース思考を行えたのは「消費者に負担にならないコーヒーを届けたい」という顧客目線の発想があったためです。この発想から今ではコンビニでも挽きたてのコーヒーが飲めるなど広く認知されることになり、新しい販売方法が生み出されるきっかけとなりました。
JR東日本(東日本旅客鉄道)の湘南新宿ライン
3つ目はJR東日本(東日本旅客鉄道)の湘南新宿ラインです。JR東日本の湘南新宿ラインは貨物線路の旅客輸送の経路として使用することにより、顧客のニーズを満たすことに成功しています。以前、首都圏を横断する路線は多くの顧客が利用していましたが、運行には限りがあるため、人の運行に関して非効率な部分がありました。 それもゼロベース思考により、従来は使用されていなかった貨物線路を旅客路線に利用したことで、より多くの顧客を乗せることができるようにしました。 貨物線路を旅客輸送に使用するのは当時常識外れとされていました。しかし、今は多くの顧客が路線を利用できるようになり、JR東日本の湘南新宿ラインの売上アップに大きく貢献しています。
05ゼロベース思考のトレーニング方法
ゼロベース思考のトレーニング方法について知っておくことは、非常に重要です。正しいトレーニングを行わなければ、正確なゼロベース思考を身に付けることができません。ここでは効果的なトレーニング方法を紹介します。
既存のやり方に対して疑問を投げかける
ゼロベース思考のトレーニングでは、まず既存の方法に疑問を投げかけることが重要です。今までの方法で自分が疑問に感じていることや、改善したほうがメリットが大きくなることを書き出します。 疑問を投げかける際には、できるだけシンプルに行うことが重要です。例えば「この製品の価格が高いのはなぜか」など、率直に疑問を投げかけると良いでしょう。複雑な書き出しをしてしまうと根本的な問題が分からなくなるため、シンプルさを意識してください。
<思考についてのSchooおすすめ授業>
既存のやり方に対して疑問を投げかけるためには、思考のトレーニングが必要です。
ChatGPTの登場により、近年では自分自身で考えてアウトプットすることの重要性が問われています。この授業では、誰もが考える際に持っている「問い」を軸に、3ステップでより深く思考するためのコツをワークを通じて学んでいきます。
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東京大学大学院総合文化研究科博士課程
1994年、東京都生まれ。2017年、上智大学文学部卒業。2019年、東京大学大学院総合文化研究科(超域文化科学専攻)修士課程修了。同年より日本学術振興会特別研究員DC1(面接免除内定)。現在、同大学院博士課程、および「東京大学共生のための国際哲学研究センター」リサーチ・アシスタント。専門はポール・リクールの思想、および「VTuberの哲学」。2019年、日本哲学会優秀論文賞受賞。2021年、日仏哲学会若手研究者奨励賞受賞。 主著に『独学の思考法』(講談社現代新書、2022年)。2022年8月に、国内初となる「VTuberの哲学」をテーマとした査読論文を発表する。〈哲学の知と実社会を繋ぐ〉という理念のもと、精力的にオンライン・イベントの企画やアウトリーチ活動に取り組むことで、哲学の〈意義〉と〈魅力〉を世に広く発信し続けている。
思いついた解決策を書き留める
次に思いついた解決策を書き留めていきましょう。提起した問題をどのように解決できるのか、素直に自分の意見を書き留めていくようにしてください。頭の中で解決策を生み出すだけではすぐに忘れてしまい、良い解決策が見つかったとしても実行に移すことができません。 また、解決策はひとつとは限りません。複数の解決策が見つかったら、すべて書き出すようにしてください。また、解決策は仮説思考、ロジックツリーなど何でも良いので、自分が考えたものを書き出してください。
問題の解決策を検証する
最後に問題の解決策を検証しましょう。提起した問題と思いついた解決策を照らし合わせて、本当に解決できるのかを考えていきます。思いついた解決策のなかで、試せるものは実行に移して、結果と評価を繰り返し検証します。 解決策を行っても評価が思うほど伸びない場合は、再度改善点を見つけ出すようにしてください。解決できないものは、まだ固定観念や経験に頼っている可能性が高いと考えられます。ここでは繰り返すことが重要であることを覚えておきましょう。
<仮説検証についてのSchooおすすめ授業>
適切な仮説検証の方法を知らないと解決策の判断や欲しい結果を得られない可能性があります。
そのため、的確なデータを選択し、読み解き、整え、わかりやすく表現していくことなどが重要です。本授業では、仮説の構築と検証について学んでいきます。
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マーケター
1984年生まれ。龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で"学び直し"。 その後、株式会社デコムなどでデジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務に携わり、現在は「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーにてマーケティング全般を担当している。 政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にも登場している。 ◇主な著書 『なぜ「つい買ってしまう」のか?~「人を動かす隠れた心理」の見つけ方~』(光文社)2019 「誤解だらけの人工知能」(光文社)2018 『データサイエンス「超」入門 嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい』(毎日新聞出版)2018
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株式会社HONE 代表取締役 / マーケター
静岡県出身。大手求人メディア会社で営業をしたのち、新規事業の立ち上げ等に携わる。売り手都合の営業スタイルに疑問を感じていた矢先に、マーケティングに出会い衝撃を受ける。その後いくつか新規事業の立ち上げを経て、2021年に独立。現在はクライアントのマーケティングやブランディングの支援、地方Webマーケターのためのコミュニティ運営などを手掛けている。
06ゼロベース思考をさらにレベルアップさせるには
ゼロベース思考を身に付ける際には、レベルアップを意識しましょう。ゼロベース思考に終わりはなく、日々レベルアップしていかなければ固定観念に捉われてしまうことがあるためです。ゼロベース思考のレベルアップ方法には、以下の2つがあります。
ゼロベース思考に関する書籍を読む
ゼロベース思考のレベルアップには、関連書籍を読むことがおすすめです。ゼロベース思考は思考法を体系的に学習することが重要となるため、定期的に読書学習する習慣を身につけるようにしてください。 ゼロベース思考の書籍としては、「0ベース思考-どんな難問もシンプルに解決できる」や「イシューからはじめよ」などが挙げられます。 いずれもゼロベース思考を身につけるポイントが記載されているため、自分の思考を再分析することが可能です。
ゼロベース思考研修を受講する
ゼロベース思考研修の受講も、レベルアップには効果的です。ゼロベース思考研修では、物事を鵜呑みにしない視点の持ち方や、情報を正しく取捨選択する分析力について指導してくれるため、実践的なスキルを身に付けられます。 演習やトレーニングによって現状を疑う思考を身に付けることができ、自分の思考力を効率的に鍛えることが可能です。研修では講師が客観的な視点から改善点を指摘してくれます。着実にレベルアップしたいのであれば、ぜひ研修を受講しましょう。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
07まとめ
ゼロベース思考について内容を紹介してきました。ゼロベース思考を身に付けることで斬新なアイデアを生み出せるようになるかもしれません。自社にゼロベース思考ができる従業員が必要と考えている方は、ぜひ研修の実施を検討してみてください。