公開日:2022/03/11
更新日:2024/06/24

戦略人事とは?必要な構築ステップや能力、具体的な企業事例を解説

戦略人事とは?必要な構築ステップや能力、具体的な企業事例を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

会社の経営資源の一つである「ヒト」を最大限活用するために注目されている「戦略人事」ですが、具体的な実践をイメージできていない人事担当の方は少なくないでしょう。本記事では、戦略人事の概念から構築方法、事例まで解説します。

 

01戦略人事とは?

「戦略人事」とは、企業や組織が自らのビジネス戦略を実現するために必要な人材を、戦略的に選抜・配置し、育成・管理することを指します。つまり、企業が目指すビジネス目標や方針に沿った人材の確保・育成を重視することで、人材戦略を策定し、その戦略を実行することを目的としています。戦略人事の目的は、企業のビジネス戦略を実現するために、優秀な人材を確保し、彼らを組織の中で最大限に生かすことです。また、戦略人事は、企業の将来の成長に向けて、必要な人材を確保することにも貢献します。

従来の人事との違い

従来の人事業務では、人事が策定した施策がその企業の経営戦略や経営目標と関連付けて考えられることはありませんでした。労務管理や給与管理など、的確で安定したオペレーション業務を求められるのが人事の仕事でした。
これに対して戦略人事とは、人事を経営トップのパートナー的存在として経営戦略に携わるポジションに位置付けたものです。つまり、人事も経営戦略に積極的に参画し、経営目標の達成を念頭に人事戦略を立てるということです。この戦略人事では、ヒトという資源を活用して経営戦略達成の一端を担うことが求められています。例えば新たに市場を広げ事業を展開するという経営戦略が策定されていた場合、戦略人事は新規事業を展開できるだけのスキルを持った人材育成を行ったり、事業拡大に伴って組織全体の体制を変革したりします。

戦略人事が求められている背景

戦略人事が求められている背景は、大きく分けて2つあります。

  • 経営戦略
  • 人事戦略

「経営戦略」「人事戦略」は戦略人事とどのような関係性にあると言えるでしょうか。それぞれを戦略人事と比較していくことで、意味合いを確認しておきましょう。

経営戦略との違い

経営を行う上で必要とされる要素に、「戦略」「戦術」「戦力」「環境」の4つがあります。そして戦略人事はこの4つのうち「戦力」「環境」の2つを中心に担っています。人材の登用や有効活用などが「戦力」、職場環境の整備や組織体制の管理が「環境」の要素にあたるためです。また、どんなに優れた経営戦略がを策定していたとしても、その戦略を実現できるだけの人材と統制された組織体制、充実した職場環境がなければその経営戦略は成り立ちません。つまり、この4つがバランスよく備わっていることで円滑な経営を行うことができますが、逆に言えばどの1要素が欠けていても十分な経営を行って経営戦略を実現することはできないのです。このことから、「戦力」と「環境」の要素を担う戦略人事は経営戦略の実現を目指していく上で非常に重要度の高いマネジメントであると言えます。

人事戦略との違い

人事戦略とは、人材の有効活用や育成、優秀な人材の新規獲得など従来の人事における戦略全般を指します。社員の能力向上の為に研修方法を変更したり、ダイレクトリクルーティングを行うことで能力の高い人材を確保したりといったことが人事戦略に当たります。他にもインターンシップを実施して人材を採用するなど、あくまでも人事業務の範囲内でより成果を上げることを目的として立てられる戦略が該当します。 一方で戦略人事は、人事業務だけにとどまらず、経営戦略に携わり戦略を把握した上で人的資源の管理を行います。経営層が策定した新規事業について深く理解し、その戦略を実現するために必要なスキルや能力を持った人材を必要な数確保するといったことを行うのが戦略人事です。例えば社内のDX化を推進するという内容の経営戦略であれば、ITスキルを持った人材の登用や専門の部署を新たに設置するといったことが戦略人事に当たります。 人事戦略は人事業務の中で行われますが、戦略人事は経営戦略に踏み込み、人事的目線から経営に携わる必要があります。人事のプロフェッショナルとして経営目標の達成に向けて働きかけるのが戦略人事の特色だと言えます。

 

02戦略人事の目的

戦略人事の目的は、「企業理念」と「コアコンピタンス」の2つを実現するためにあります。企業の強みになるような行動を社員が自然と取れるようにしていくことが戦略人事の基本的なポイントです。ここではそれぞれについて解説していきます。

企業理念の実現

企業理念とは、自社が大事にする価値観を指します。企業によっては、ミッション・ビジョン、社是、クレドと呼ぶ企業もありますが、分解すると次の2つになります。

  • 社外規範:その会社が世の中にどんな価値を出して、世の中に存続し続けようとしているか
  • 社内規範:その組織で理想とされる行動や考え方、行動指針

これらは同じ業界でも企業によって全く異なります。したがって、戦略人事の主な目的は、上記の「社外規範」「社内規範」に通ずる企業の強みになるような行動を社員が自然と取れるようにしていくことです。会社を強くしていくために「社外規範」「社内規範」を設け、社員に浸透させていくことが重要というわけです。

コアコンピタンスの実現

戦略人事のもう1つの目的は、他社が真似できない自社の強み(コアコンピタンス)を考え、明確にしていくことです。コアコンピタンスとして挙げられるものとしては、自社のビジネスモデルやマーケティング力などがあります。加えて、組織力や社員が共通して持つ強みなどもコアコンピタンスになり得ます。このような自社の強みを人事制度や人事施策を通じて、さらに強固なものにしていくことが戦略人事の目的であるといえます。

 

03戦略人事が必要とされる背景

戦略人事の考え方は、経営資源の中でもヒトという資源のプロフェッショナルとして会社の経営を支えるという新たな役割を人事に見いだしました。昨今経営環境が目まぐるしく変化する中で、そうした変化に対応した人材活用を実現する手段として戦略人事への注目が高まってきています。では、戦略人事はどのような歴史を辿り、日本における現状はどのようなものなのでしょうか。ここでは戦略人事が必要とされる背景について、詳しく解説していきます。

戦略人事の歴史

「戦略人事」は1990年代にデイブ・ウルリッチというアメリカの経済学者が提唱し、現在まで欧米企業を中心に導入が図られています。当時のアメリカでは、産業と雇用の規制緩和や組合の組織率の低下、労働市場が買い手市場となってきたことを踏まえ、どの企業でも人事の規模が縮小し、社内地位が低下していく傾向にありました。そのため、人事スタッフのプロフェッショナル化とコンピテンシーの再定義が企業に求められるようになってきたことが「戦略人事」に注目が集まってきた要因としてあります。

日本における現状

日本において戦略人事は多くの企業で重要とされています。ここでは数値情報などを踏まえて、日本で戦略人事の注目が集まっている背景を解説していきます。

戦略人事の重要性を多くの企業が認識

日本の人事部が2021年3月に実施した調査によると、戦略人事を重要だと思っているという割合は91%という結果になりました。戦略人事という言葉が流行して時間がかなり経ち、多くの企業・人事にその重要性が認識され始めたようです。

参考:日本の人事部 人事白書 2021

戦略人事が機能している割合は約3割

戦略人事が機能している割合グラフ

日本の人事部の調査によると、人事部門が「戦略人事」として機能していると回答した人は、「当てはまる」(5.0%)、「どちらかといえば当てはまる」(26.3%)を合わせても31.3%という結果になりました。従って、重要性は理解しているが機能しているとは言えないというのが現状のようです。

参考:株式会社パーソル総合研究所

 

04戦略人事のメリット

ここでは、戦略人事を行うメリットを解説します。経営戦略と人的マネジメントの視点をあわせ持つ戦略人事が、組織にどのような効果をもたらすのかしっかり理解しておきましょう。

経営状況に即したタイムリーな人材活用ができる

昨今、経営環境は、目まぐるしく変化しています。こうした中で、これまでの人事業務の範囲内で状況判断を行っていては、変化していく経営状況についていけなくなってしまう場合があります。
一方で、常に利益を最大化するためには目まぐるしく変化する経営環境に応じた戦略的な経営が求められているのが現状です。そこで、戦略人事という経営視点と人事視点を両方兼ね備えたやり方の導入によってそうした問題が解決できるのです。
また、戦略人事の導入によってその時の組織経営に最適な人材活用を行うことにつながるのです。従来の人事では経営戦略が策定されてから人材が配置されるまでに時間が空くため、効果が出るまでにタイムラグが生まれてしまうという課題がありました。スピード感のある経営が重要となっている今、経営戦略をしっかり把握した上で人材戦略を策定することで、経営状況に合わせた迅速な人材活用を行えるという点が、戦略人事の大きなメリットだと言えます。

企業目標の達成確率を上げられる

戦略人事では、企業目標に合わせた戦略的な人材選抜や配置が行われます。つまり、必要な人材を採用し、適切な部署や役職に配置することで、その人材の能力を最大限に発揮させ、企業目標の達成に貢献することができます。
また、戦略人事は、必要な人材を早期に確保し、育成することで、将来の成長に向けた人材戦略を立てることができます。これにより、企業が目指す方向性に沿った人材の確保ができ、企業目標の達成に向けた人材環境が整備されることになります。
以上のことから、戦略人事は、人材を戦略的に活用することで、企業目標の達成確率を高めることができます。

 

05戦略人事の導入方法

ここでは、実際に戦略人事を導入する方法について説明します。戦略人事を導入するには、経営ビジョンや人材ビジョンを適切に把握・策定することが大切です。自社に戦略人事を適切な形で導入できるよう、その手順についてしっかり理解しておきましょう。戦略人事の導入方法は以下の5つの手順があります。

  • 1.経営ビジョンを正確に把握する
  • 2.経営ビジョンを踏まえた人材ビジョンを策定する
  • 3.中長期経営計画を把握する
  • 4.経営計画と人材ビジョンを元に中長期人事計画を策定する
  • 5.人事計画を具体化し、採用・人材育成の計画を策定する

1.経営ビジョンを正確に把握する

戦略人事は経営目標を達成するサポートを行います。そのため、まずは経営ビジョンについて正確に理解する必要があります。経営ビジョンを深く理解することで、人事戦略に役立てることができます。

2.経営ビジョンを踏まえた人材ビジョンを策定する

経営ビジョンについて十分に理解したら、その内容を踏まえた人材ビジョンの策定を行います。経営ビジョンが達成された時の社員の状況を想定し、それに合った人材ビジョンを決めましょう。

3.中長期経営計画を把握する

人材ビジョンが策定できたら、中長期経営計画を把握します。ここ数年の経営計画について理解することはもちろん大切ですが、より長期的な経営ビジョンについて把握することも欠かさないようにしましょう。中長期的な目線で会社の経営計画を良く理解することで、企業が目指している将来像に向けて着実に準備を進めることができます。これによって今どのような人事戦略が適切なのかということを逆算的に明確化することが可能になるのです。経営計画から自社が人的資源に求めている役割を汲み取るようにしましょう。

4.経営計画と人材ビジョンを元に中長期人事計画を策定する

把握した経営計画と人材ビジョンを踏まえ、中長期人事計画を策定します。ビジョンからどのような人材を確保する必要があるのかを分析し、人事計画に落とし込んでいきましょう。例えば将来的な海外進出を計画している場合には、現地の言語スキルを持った人材を確保すべきと考えられます。必要とされている人員について早い段階から具体化し、余裕を持った人事計画を策定しましょう。

5.人事計画を具体化し、採用・人材育成の計画を策定する

先ほど策定した人事計画をより具体化し、採用や人事育成に関する計画を練っていきます。経営計画の実現のために必要な人材の人数や、戦略の実践の為に習得すべきスキルを可視化する必要があります。特に人材育成について計画を立てる際には、1か月単位や年単位など期間に区切りをつけましょう。段階的に人材育成のスケジュールを立てておく必要があります。どの期間にどのような方法で育成を行うのか具体化しておくことで、円滑な人材育成に繋がります。

 

06戦略人事がの実現に必要な4つの機能

ここでは、戦略人事を導入するにあたって求められる機能について説明します。従来の人事から戦略人事にシフトしていく為には、新たな機能を備える必要があります。今回紹介する機能を導入することで、オペレーション業務中心のそれまでの人事から、経営に積極的に携わっていく戦略人事への転換をスムーズに行うことができます。戦略人事の実現に必要な機能は以下の4つです。

  • 1.HRビジネスパートナー(HRBP)
  • 2.センター・オブ・エクセレンス(CoE)
  • 3.組織開発(OD)・人材開発(TD)
  • 4.オペレーションズ(OPs)

1.HRビジネスパートナー(HRBP)

HRBPとは、人事が経営トップや現場リーダーのパートナー的立場となって協働する機能を指します。戦略人事の目的は、人材を最大限活用することで経営戦略の実現を図ることにあります。そのためには、一つの組織だけでなく複数の部門や組織の垣根を超えた連携が必要です。そこで戦略人事は、人材のマネジメントにおいて各部門とコミュニケーションを取る役目を担っています。現場の社員や各部署と積極的に意思疎通を図り、そこから出た要望を理解します。必要に応じて現場にも足を運び、実際に動いている社員の実態把握に努めなければなりません。そしてそこから見えてきた課題や改善策を人的マネジメントに活かす形で応えることによって、組織間の連携を活性化することができます。また、戦略人事は経営トップの意向も十分に理解しておかなければなりません。経営トップの考えを把握することで、経営層とうまく連携して経営戦略の策定に携わることができます。さらに、経営層の思いやニーズが分かっていれば、それらを効果的に人事戦略の策定に活かすことができます。戦略人事においては、このように各従業員や部門の相談に乗りサポートすることが求められています。

2.センター・オブ・エクセレンス(CoE)

CoEとは、経営トップや現場リーダーを人事のプロ目線から支える機能を指します。戦略人事は、採用や人材の配属、人事評価制度などの人事の専門分野に関するプロです。「エクセレンス」が卓越していることや優秀であることを意味するように、HBPRで捉えた現場の状況や社員の課題に対して高い見識を活かした提言行うのがCoEです。例えば、評価制度がうまく機能せず社員のモチベーションが低下している部署に対し、人事評価制度を工夫する施策を行うことなどが挙げられます。

3.組織開発(OD)・人材開発(TD)

OD・TDとはそれぞれ組織開発、人材開発を指します。組織開発とは人事戦略を実現するために必要な組織の変革を行い、より円滑に業務が進められるような組織体制を構築していくということです。経営戦略の達成には、企業理念やビジョンに共感して業務を遂行できる人材が必要です。会社に適合した人材を生み出すために、各従業員に企業理念を浸透させることはもちろん、組織単位で進むべき方向性を統一して進んでいける組織開発が重要です。組織開発をしっかりと行うことで、自社が抱えている課題を可視化し、改善していくきっかけにもなります。また、人材開発とは経営戦略を実現するための人的マネジメントを指します。 理想の組織を構築して経営戦略を実現するには、もちろん組織内の人材育成にも力を入れないといけません。人材開発では組織開発よりも個人に焦点を当てます。社員一人一人の持つ能力やスキル、モチベーションの向上に向けて人材育成を工夫していくことが求められます。どちらか一つではなく両方が確立されている状態を目指すことで、組織全体の体制を経営戦略に合わせて確立していくことができます。

4.オペレーションズ(OPs)

OPsとは、CoEで講じた施策を実践に移し、日常的に運用していく機能を指します。従来の人事よりも発展した業務を行う戦略人事ですが、給与管理や労務管理などといった業務を正確性を持って行う必要があることに変わりはありません。現場の課題を解決するための配置変更や給与管理業務などがOPsにあたり、人材採用の施策を最小限の費用で実行して最大限の効果を出すことが役割です。例えば、社内で実行できない施策については外注で対応し、かける費用は最小限に抑えつつ効果的な運用・オペレーションを行います。CoEと連動性のある機能であり、CoEは策定した施策についてマニュアルを作成し、それをオペレーション部門に共有する必要があります。

 

07戦略人事導入における課題

戦略人事にはタイムリーな人材活用ができるというメリットがある一方で、課題も残されています。現状、日本企業ではまだまだ戦略人事の導入が進んでいません。戦略人事を導入するにあたってどのような課題があるのか、経営層、人事、そして従業員それぞれの立場から解説します。

  • 1.経営層が抱える課題
  • 2.人事が抱える課題
  • 3.従業員が抱える課題

1.経営層が抱える課題

経営陣が戦略人事導入に当たって抱えているのは主に以下の2つの課題です。戦略人事を行う上で、経営層が問題を抱えていては人事がスムーズに働きかけることができません。経営層が戦略人事導入においてどのような課題を抱えているのか理解し自社の状況と照らし合わせることで、戦略人事を行う環境を整えましょう。

  • 1.戦略人事への理解や認識が不足している
  • 2.経営戦略が不明瞭

1.戦略人事への理解や認識が不足している

経営層の課題として、戦略人事自体への認識が不足しているという点が挙げられます。戦略人事は人事のプロとして経営戦略に携わる役割を担っています。しかし、経営者側が戦略人事の立場についてあまり理解しておらず、経営戦略について戦略人事から意見が出てもそれを積極的に受け入れようとしないことも多いのが現状です。そのような状態では、戦略人事が経営層のパートナーとして十分にその役目を果たすことができません。戦略人事という経営と人事の架け橋について正しい認識を得なければ、経営層と戦略人事の協働は困難になってしまいます。

2.経営戦略が不明瞭

戦略人事は経営戦略を踏まえた人的マネジメントを行います。そのためには、経営戦略が明瞭で一貫性を持ったものである必要があります。経営戦略が不明確だったり、散漫していたりしては担当者が経営戦略を十分に理解できず、人事戦略に対し適切に反映することができません。戦略人事導入の為には、経営層を筆頭に経営戦略の明確化や一貫性の確認を行うことが大切です。

2.人事が抱える課題

次に、戦略人事導入における人事目線での課題を解説します。戦略人事を行うには、当時者である人事の認識や業務管理が大切です。人事には、主に以下の2つの課題があります。

  • 1.人事担当者の意識改革不足
  • 2.管理業務との両立

1.人事担当者の意識改革不足

戦略人事を行う人事担当者は、経営戦略を十分に理解し人事戦略に落とし込むことが求められます。人事担当者が経営目線と人事目線を兼ね備える意識を持っていなければ、戦略人事は成り立ちません。しかし、人事は人材管理や労務に関する業務が中心だというイメージがいまだ強いのが現状です。戦略人事を行う上で、これまでの人事の領域に加え経営的視点を持って業務に携わる必要があります。このような変化に人事担当者が適応できるよう、意識改革を行っていく必要があります。 

2.管理業務との両立

人事が抱えるもう一つの課題として、他業務と戦略人事の両立が難しいという点があります。戦略人事は人事担当として労務管理や給与管理などの日常的な業務も行わなければなりません。それに加え戦略人事として経営戦略にも携わるため業務量が多くなってしまいます。結果的に戦略人事としての業務と他業務が両立できず、経営戦略に積極的に参画できなくなってしまっているのが現状です。人事が長期的かつ余裕をもって戦略人事を行えるよう、これまでの人事業務の見直しが求められています。戦略人事の担当者が行うべき業務か否かを見極め、業務効率化や役割分担を組織として工夫していく必要があります。

3.従業員が抱える課題

最後は、戦略人事導入における従業員目線での課題です。従業員の実態においては、戦略人事導入が自身のキャリアに及ぼす影響や会社の変革を嫌う傾向から、戦略人事に消極的な社員が多いことが課題です。戦略人事という新たな機能を導入することで、企業の組織体系にも様々な変化が生まれることになります。すると必然的に各部署や社員の役回りにも変化が生まれるなど、組織全体に影響を及ぼします。特に年功序列が色濃く残る企業では、上の立場の社員がそうした変革に嫌悪感を示すことが多くあります。このように、上の立場の社員が戦略人事に対し十分な理解を示さないことで、会社全体の戦略人事導入が進まないといった課題があります。

 

08戦略人事を成功させるポイント

戦略人事を成功させるポイントは、主に以下の3つがあります。

  • ・戦略人事の理解を擦り合わせる
  • ・タイミングを見極める
  • ・他部署との連携を強化する

それぞれ詳しく紹介します。

戦略人事の理解を擦り合わせる

まずは戦略人事がどのような役割で、企業として何を求めているのかを明確にしましょう。戦略人事を他社が設置したから自社も設置しよう。新しいポジションを作る必要がある。間違っても、これらの理由で戦略人事を設置すると他部署の理解が得られず、経営陣もバックアップに回ってくれなくなります。そのため、まずは戦略人事がなぜ必要で、会社としてどのような行動・成果を期待しているのかを擦り合わせておきましょう。

タイミングを見極める

先述したように、なぜ戦略人事が必要なのかを経営陣と擦り合わせをした上で、適切なタイミングを見極める必要があります。戦略人事がその役目を全うするには、他部署との連携・協力が欠かせません。そのため、組織として設置するタイミングは丁寧に見極め、必要とあれば社内でのコンセンサスをそれぞれの部署の部長クラスと握っておく必要があるでしょう。

他部署との連携を強化する

戦略人事を機能させるためには、各部署の管理職・マネージャーとの連携が欠かせません。採用や人材育成、目標設定やキャリア支援など戦略人事が包括する内容は多く、それらは現場の管理職の目標とも関連する内容です。そのため、各部署と連携しながら現場の状況を正しく把握し、適切な意思決定を行えるような関係性を作る必要があります。現場からの反発が起きないように、経営陣からトップダウンで戦略人事の役割や必要性、権限なども社員に伝達してもらうと、スムーズな連携が取れるようになるでしょう。

 

09戦略人事を行っている企業事例

ここでは、実際に戦略人事を導入している日本企業の事例をご紹介します。日本国内でも、積極的に戦略人事を行って組織経営を展開している企業があります。各社がどのようにして戦略人事を取り入れ、どのような施策を行っているのかについて知り、自社に適宜活かしていくことが大切です。今回は以下の3つの企業を紹介します。

  • ・セブン・イレブン・ジャパン
  • ・日清食品株式会社
  • ・オムロン

セブン・イレブン・ジャパン

セブンイ・レブン・ジャパンでは、戦略人事の一環としてマネジメントシステム「HITO-Talent」を導入し、現場の情報や社員の状況を一括管理することで組織全体の生産性向上につなげています。人事業務に関する情報を一元的に管理することで業務効率の向上はもちろん、社員との面談内容なども記録として管理することで、社員一人一人と十分なコミュニケーションが可能になりました。これにより現場の声や業務状況を即座に把握し、戦略に活かすことができています。

参考:セブン・イレブン・ジャパン

日清食品株式会社

日清食品は、インスタントラーメンなどを販売する食品加工業の大手企業です。日清食品では戦略人事を行うにあたって「企業が向かっていく方向性」「企業戦略から分かる必要な人材の定義」「人材育成方法」の3つを課題として掲げました。また、施策として「グローバルSAMURAIアカデミー」という企業内大学を創設し、グローバルな次世代人材の育成を行っています。その結果現在は200人以上の経営人材の育成に成功しており、まさに戦略人事によって経営戦略を反映した人材育成を行った企業であると言えます。

参考:日清食品株式会社

オムロン株式会社

オムロン株式会社は、ヘルスケアに関する事業を中心に行っている企業です。オムロンでは、海外の生産拠点が課題として捉えていた採用不足や離職率に対し、人事が先頭に立って施策を講じました。社会課題の解決を事業を通じて行うという企業理念を元に様々な経営課題に対して向き合い、人事主導で働きかけています。例えばメキシコでは、新設される自動車工場を中心に人材の争奪戦が起きており、それに起因する高い離職率が課題とされていました。この現状を踏まえオムロン株式会社は、高等教育を行う「オムロンハイスクール」を設置し離職率の低下を図りました。自動車工場の中で教育の場を作ることで、離職の防止に繋がったのです。このように、経営を行う中で直面する課題に対して人事を筆頭に施策を取り、人事目線から解決を図っています。

参考:オムロン株式会社


 

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11まとめ

戦略人事を取り入れることは、変化の大きい経営状況に臨機応変に対応していく為にも有効な手段の一つです。しかし一方で、戦略人事を導入するにはそのための環境を準備する必要があります。これまでの人事への認識を一掃し、戦略人事として経営に携わっていくことに対する社員の意識改革や理解が求められます、また、戦略人事を適切に導入する為には組織内で導入の目的がしっかりと明確化されていることが大切です。まずは戦略人事に対する正しい認識を社内で一般化し、経営層を筆頭に社員と十分なコミュニケーションを取ることで戦略人事を導入できる環境を構築していきましょう。戦略人事を導入するための土台となる環境づくりから始めることで、将来的に戦略人事を効果的に導入することができます。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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